13.ラマダン

ラマダン(断食月)には飲食する余裕のない貧乏人の境遇を体感しなさいと言う趣旨で、日中は一切の飲食が禁じられ、レストランも開きません。日中はということは日の出前と日没後は飲食しても良いということです。人々は暗いうちに起きて食事を済ませ、日没後に夜食を摂ります。夜食はどこでもご馳走を食べるそうです。日中は唾液を飲み込むことも煙草を吸う事も禁止です。外国人はホテルの自室や、屋内では飲食を許容されますが、人の集まる場所では厳禁です。老人や幼児、妊婦、病人等は免除されます。

ラマダンの期間中は勤務時間も変更され、私のいた会社では昼寝の時間が長くなり、通常は12時から2時までが休みでしたが、4時まで延長されて夜8時までの勤務になりました。それから町に出るとどこでもお祭りのように騒いでいました。この期間には金持ちは外国に退避する者が多いとの噂でした。私がいた会社の社長もこの期間、姿を消していました。

サウジアラビアは陰暦に基づくイスラム暦を公式に採用していますが、西暦よりも1年が11日少ないので、毎年季節がずれてきます。 西暦622年にモハメッドがメッカからメディナに拠点を移した(ヘジラ)年を元年とする陰暦です。新聞には必ず西暦とイスラム歴の日付が書いてありますし、私の運転免許証の日付もイスラムの年号になっていました。私がいた1982年のラマダンは8月の真夏でしたから、日中、水も飲まずにいる事は本当に辛い事だと思いました。

ラマダンが終わるとお祝いです。人々は金持ちのところに押しかけてザカート(喜捨)を現金でもらいます。金持ちは貧者に喜捨する義務があり、貧者は金持ちに義務を果させてやるのだと言う意識ですから、貰って当然という顔です。私のいた会社にも毎日行列が出来て、お金を配っていました。一人当たり数千円です。 金持ちは面子にかけても金を出すのです。
私も一緒に列に並びたいなと思って指をくわえて見ていました。
                                     






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