12.お祈り

イスラム教ではお祈りを1日に5回するように要求されています。即ち、日の出時、正午、日没の約2時間前、日没時、就寝時にお祈りします。 そのため新聞には毎日、主要都市の日の出、日没の時間、お祈りの時間が記載されています。お祈りの時間になると消防署の火の見矢倉のような、モスクに併設されている、ミナレットと呼ばれる塔のスピーカーからコーランの朗読が大音量で流れます。私はこれで何時も起こされていました。このような塔は、朗読が町中に届くように、至る所にあります。

職場では従業員全員が広い部屋に集まって、床に絨緞を敷き、その上でメッカの方角に向かって、立ったり座ったり、額を床に着けたりして約20分間位お祈りします。このようなお祈りの場所には必ずメッカの方角を示す標識が壁に付いています。

自宅にいる人達は三々五々、モスクに集まってお祈りします。モスクは剣道場のような板敷きで、祭壇も何もありません。モスクは単にお祈りをする為の場所ということですから日本人が考えるような寺院や教会とは全く違います。聖なる場所という意識も無いようです。ですからモスクに行かれなければ何処でお祈りしても良いのです。自宅でもよし、人が集まる場所では一寸した広場で、時には道端でもお祈りします。

アラブ人は良く数珠のような物を手首に掛けて持っています。これはカトリックのロザリオと同じで、1回お祈りするたびに石を一つ動かして、お祈りの回数を数えるのです。

買物をしている時にお祈りの時間になると、一斉に店の出入り口を閉めます。小さな店では外に出されますが、欧米人の客の多いスーパーマーケットのような所では出入りが出来なくなるだけで、そのまま買物を続けることが出来ました。アラブ人は店の中央の広場で並んでお祈りをしていました。

このようなお祈りの時間には、私服の宗教警察が見回っているという噂でした。小さな店で中に閉じ込められた時、お祈りしない非イスラム教徒は物陰にじっと隠れていました。実際にはこのような私服警官を認識するような事態は幸いありませんでしたが、我々が知らないで戒律を犯すことも考えられますので、外出している間は何時も誰かに見張られているような感じがして緊張していました。特に町の写真を撮るときは車の中から撮るようにしていました。サウジ人の警官は殆ど英語を話せないので、何かあると直ぐに何日も拘留されてしまうから兎に角、言掛かりを付けられないようにと注意を受けていました。

夕方タクシーに乗っていた時、運転手が突然車を止め、一寸待ってくれと言いながらトランクから小さな絨緞を取り出し、道端に敷いてお祈りを始めたのには驚きました。私は車の中で待つしかありませんでしたが、本当に敬虔な信者が多いと感心しました。


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