11.コーラン、戒律

コーランはマホメットがアッラーから啓示を受けた経典で、アラブもイラン(ペルシャ)もイスラム世界では共通の経典です。勿論、翻訳本もありますが、原典と同じアラビア語のもののみが公式の教典とされています。 従って、文字に関してはイスラム教国では共通ですが、発音が違ったり、方言が出来たりしています。イランでは発音が全く違うそうです。子供たちは12歳位までにコーランを暗誦できるように指導されます。エジプトがアラブ世界の文化の中心となっていて、中世にはヨーロッパより遙かに進んでいました。今日では金持ちの子弟は欧米の大学に留学する事が多くなりましたが、昔はカイロ大学が学業の中心でした。

「左手にコーラン、右手に剣」という言葉がありますが、これは後世にアラブを恐れた欧州人が言った言葉で、実際のイスラム教徒は他の宗教に対しても寛大で、キリスト教や、ユダヤ教も認めています。タリバンがバーミヤンの石窟遺跡を破壊したことなどは正常なイスラム教徒の行為とは考えられません。

コーランはイスラム教徒の生活全般を規定しており、豚肉や酒を禁止しています。イスラム教の始った7世紀当時の環境では理由のあることだったかも知れませんが、イスラム教では現在もこれを遵守しているわけです。イスラム教の創始者たるマホメッドは「最後の預言者」とされているので、新しい預言はあり得ないわけで、戒律も変わることはあり得ないのです。従って、世俗的な政府や戒律の緩みを見かねたグループがマホメッドの時代に戻ろうというイスラム原理主義運動を起こしているわけです。

サウジ国内で豚肉製品を入手することは不可能ですが、国外でもイスラム教徒は豚肉を食べません。豚肉が使われた調理器具、皿などもその時には豚肉を取除いても不浄だからと言って、その料理は食べません。しかし、知らずに食べた場合には問題としないそうです。

イスラム教では一夫多妻や、女性の就業を制限するとか、顔を隠させる、車の運転も許さないなど、女性を差別するような規制が沢山ありますが、これは決して女性を見下している訳ではありません。一夫多妻の制度ができたのは戦争未亡人達の救済、保護のためです。従って、複数の妻を持つと総て平等に扱わなければなりません。女性を人前に出さないようにするのも保護することが目的です。今日では重婚する人は非常に少なくなっているそうです。アラブでも保護されなければならないような女性が減っているのでしょう。アラブの女性自身が差別されていると感じるようであれば、これだけイスラム教が広まることは無かったでしょう。種々の戒律にしても弱者については免除されていますし、アッラーを中心として、相互扶助を奨励する宗教です。

サウジ滞在中に私が直接見た職業女性は、メイドの他は飛行機のスチュワーデスだけでした。勿論これらの女性も出稼ぎ外国人で、メイドはアラブ系、スチュワーデスは欧州人やインド系の女性でした。
ホテルなどの部屋の掃除やベッドメーキングするのは総て男性でした。

アルコールに関してはサウジ以外の国ではある程度許容しており、ホテルでならば飲めるという国が大部分です。今日ではサウジとバーレン(島)が橋でつながれ、週末になるとサウジの金持ちたちがバーレンに押しかけるそうです。

サウジに入国するときは入国検査で持ち物を全部詳細に検査されます。大抵の物は持ち込めますが、豚肉とアルコール、麻薬、ポルノ等を厳重にチェックしていました。これらの物品が発見されたら没収されるだけでは済みませんので絶対に持ち込んではいけません。


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