大江戸倶羅羽弗城南町奉行所捕り物帳





「親分、てえへんだっ!」

ここは倶羅羽弗城の城下町。
南町奉行所の同心(どうしん:与力の手下)が、
南町奉行所筆頭与力瑠麗大船主賭事之信盗桝
(みなみまちぶぎょうしょひっとうよりき・ルーレ・おおふなぬしかけごとのしん・トーマス)がいる
倶羅羽弗城南町奉行所
(ぐらばどるじょうみなみまちぶぎょうしょ)にばたばたと駆け込んできた。

「おまえはいつも騒々しいなぁ・・・。それに親分ってなんだよ親分とは」
「いいじゃねえか。今回は大江戸町奉行捕り物帳らしいから雰囲気出してんだからさ。
じゃ、いつもどおりキャプテンの方がいいか?」
「江戸なんだから横文字はやめてくれ」
「じゃ、船長!」
盗桝は呆れまくって二の句が継げない。

はぁ〜〜っとため息をひとつついて言った。
「もういいよ・・・親分で」
「がってんでぇ!」

「まったくこのサイトの管理人はアホなことばっかり思いつくんだからな」
すまん・・・(汗)


「ところでなにがあったんだ?」
「おう、忘れるところだったぜ。
魔女の海の沖に呀留駕(ガルガ)が出たんで!」
「なんだと!」

クジラよりも大きな海獣、呀留駕。
大きな図体におっかない顔を持ち、彼に出会った人たちは即座に逃げ出すことうけあいの風貌である。
だがそんな姿とは裏腹に性格はとてもおとなしく、人を襲うことはめったにない。
しかし、これだけ大きなものが海中に存在していれば魚は逃げるわ、
呀留駕の身体が海流をさえぎるために魚の通り道が変わるわで、
漁業に多大な影響を与えること確実である。

「町じゅうでうわさになってるぜ。馬留歌巣って漁師が見たって。
暗くてよく見えなかったらしいが、
魔女の海にいきなり小山のように大きなもんが現れて、
あっという間に海中に消えちまったんだと。
あれだけでっかい図体の生き物なんて呀留駕ぐらいしかいねえからな」


「呀留駕は人は襲わないはずだと聞いてますが・・・」
その言葉のあとにずずーっとこぶ茶をすする
南町奉行羅風遊稚児之丞美瀬流
(みなみまちぶぎょう・ラップ・ゆちごのじょう・ミッシェル)。

「ああ。だから被害はないと思うがな。
しかし、もしもということがあるからな」
「それに漁業に影響が出るのは防がないと」
「魚が高くなっちまうのはいただけねえな」
「そういう問題じゃないと思うんですが・・・」
と突っ込みを入れるのは同心の瑠架動力絡繰之助(ルカ・えんじんからくりのすけ)。

美瀬流は湯飲みをちゃぶ台に置いた。

「魔女の海に呀留駕が現れたことはいままでなかったですね」
「それがいまなんでこの海域に現れたかだ」
盗桝と美瀬流は腕組みして考え込んでいる。

「なにかのはずみで凶暴化したとか・・・」
「それならあっというまにこの町にも襲ってきますよ」
「それもそうだな・・・」

瑠架が口をはさんだ。
「どこかへ行こうとしているんでしょうか」
「エサを求めて彷徨っているのか・・・」
「もしくは誰かが呼び寄せたか・・・」
ふと口を突いて出た美瀬流の言葉に盗桝と瑠架の視線が集まった。

美瀬流はしばらく考えていた。
「では呀留駕対策本部を設置しましょう」
「瑠架!同心たちを集めてくれ!」
「わかりました」

盗桝は同心たちを前に号令をかけた。
「これから舞露出院城北壁で呀留駕監視をおこなう!
同時に町内の警備も強化する!
十二刻体制(24時間体制)で町じゅうをくまなく巡迴するんだ。
不審なやつを見かけたらしょっ引け!」
「了解!」

同心たちは町に散っていった。




一刻も過ぎた頃。

「やだあああっ!」
「わあああ!」
「おとなしく観念しろ!!」

奉行所の門前がなにやら騒がしい。

同心のひとりが飛び込んできた。
「怪しいやつを捕らえました!」
「・・・えらく早いな。よし、今行く!」



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