31. 435MHz 14エレ・エレメント位相式クロスアンテナの製作例(ロングブーム)    2015/2/12
                                                      2015/2/13  2015/2/20
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下記は、436.5MHz 14エレ・エレメント位相式クロス八木アンテナ(軸比モドキ 0.5dB以下) に統合しました。2015/11/28

下記は、ラジエーター寸法に一部間違いが有りました。2015/11/28
下記に右旋円偏波と記されていますが、左旋円偏波が正しく、訂正します。(直線偏波の衛星は関係しないはず)

このアンテナは、マッチングケーブルや円偏波のための位相ケーブル等を使わずに円偏波※※1アンテナにして、50Ω
 の同軸ケーブルを直接接続できる欲張ったアンテナです。
  このアンテナは、クロスするラジエーターの水平と垂直エレメントの長さを変えて、水平(垂直)エレメントを共振周波数より長くして誘導性にし
   、垂直(水平)エレメントを共振周波数より短くして容量性にして、90°近い位相を作って円偏波にし、誘導性と容量性をほぼ同じ値にして目的
   の周波数で共振させ、さらに水平と垂直エレメントの長さの差を付ける事によって結果的にインピーダンスが高くなる事が分かったので、この性
   質を利用してクロスする部分のインピーダンスを高くして、クロスする2つのラジエーターを並列接続で50Ωにして同軸ケーブルを直接 接続す
   るアンテナです』

そのためも有ってか、各部の寸法誤差が特性に大きく影響します。
特にラジエーター回りの製作精度が影響して『調整』をしないと必要なSWR等を得ることができません。
その調整も八木アンテナと比べると難しく、特性の誤差を集中定数に設定してシミュレーションでラジエーターの長さを
算出して可変しないと、必要な特性を得る事は難しいと思います。
MMANAとAA-1000を、ある程度使いこなせることが必要です。
従って、『誰でも、作っただけで、性能が出る』アンテナではありません。
難しく困難に挑戦したい人は、作ってみて下さい。

1.外 観



2.MMANAによるシミュレーション
 ・
特性表


 ・
アンテナパターン、SWR特性等 ↓ ↓


3.各部寸法



 ・アンテナ寸法図等










クロス部分に同軸ケーブルの接続長さをシミュレーションに設定して
行った。

この分部の太さ長さはエレメント長に敏感に影響します。
0.1mm単位で影響するので、製作誤差でインピーダンス等が大きく
変わります。通常の八木アンテナ等に比べて寸法差に対する特性
の変化が大きく現れます。
Rahは、Y軸座標5.0から160.0なので実長は160-5=155mmとなる。
左図に右旋円偏波と記されているのは間違いで、左旋円偏波です。
訂正します。



4.作 り ま し た 
 ・クロス部の加工







      半田付けは確り出来たが改善の余地有り。
φ4銅パイプ、155mmに切り込みを入れて、90°に曲げた。網線
を曲げたパイプの中に入れφ3圧着端子を半田付けした。
右写真の下の方から同軸ケーブルを差し込んで半田付けしたが、
この部分が13mmぐらいと、10mm以上になってしまった。
 
このクロスする部分は、3エレ・エレメント位相を参照のこと


 
・エレメントは全てブームから絶縁する
ラジエーターはポリカーボネイト板で絶縁し、その他のエレメントはスペーサー:
廣杉計器(株)(C-420-6)で絶縁する。







エレメントはスペーサーを入れて接着剤で
固定する。

半田付けしたクロス部分は、アクリルラッカ
ースプレー(ニッペ、クリヤー)を十分に塗布
する。

ブーム内に雨が入らないように防水する。

 ・なかり忠実に作りましたが!     ・重量は1.2kg   ・アンテナへの入力は50W程度を想定しています。

   ↑ ↑ SWRシミュレーション

   N-Rコネクターで中継しました。

 加工組立参考図 ↓ ↓


 ・作ったままのSWR特性(AA-1000により測定)
作ったままの状態です。
SWR1.36
jX14.9Ω

リアクタンスがかなり+(誘導性)です。
1/2λ長同軸ケーブルで測定した。


 
・水平ラジエーター(Rah)を可変した時のインピーダンス等のデーター 



←シミュレーション値




 
・垂直ラジエーター(Rav)を可変した時のインピーダンス等のデーター



←シミュレーション値




5.調 整 し ま し た !    
 ・準 備 
アンテナは、給電点からN-Rコネクターまで5D-FBでつないでいます。

下記は、それぞれA、B、C長さの違う3種類ケーブルに給電点からN-Rコネクターまでの5D-FBで繫いでい測定したもの
です。(上左写真、Aケーブル測定中、先に5D-FBを繫いで先端はオープン、AA-1000による測定)


           ↑↑ Aケーブル            ↑↑ Bケーブル                 ↑↑ Cケーブル
Aケーブルは、ほぼ1/2λです。(435MHzに対して1.6%短い)
Bケーブルは1/2λより長く1/4λよりも短いケーブル、
Cケーブルは1/2λより短く1/4λよりも少し長いケーブルです。


 ・アンテナを室内に置いて、周囲環境によってインピーダンスが変わった状態で、A、B、C、のケーブルで測定した値です。
アンテナの状態は同じですが、ケーブルによって
測定値は大きく変わります。特にリアクタンスは!
ただし、SWR値はほとんど同じです。

ここでは、Aケーブルを真値とします。

 ・アンテナを屋外に出して、上向きにしてAケーブル(1/2λ)で測定しました。

インピーダンスは50(Ω)になっていますが、jXが
14.9(Ω)になっていてリアクタンスが、かなり+
(誘導性)です。



仮説によるシミュレーション
 
・アンテナ製作で最も寸法が出しにくい部分は、ラジエーターに同軸ケーブルを接続する部分で、この同軸ケーブルの芯
線と編組の長さをシミュレーションでは、長さ10mm、幅10mmとしたのですが、まだ不足していた感じです。
この長さが大きくなるとインダクタンスを挿入した状態となります。(その他の誤差も集積している模様)
このインダクタンスを想定してシミュレーションしました。
短ラジエーター(Rah)の長さを可変すると、主に抵抗成分(R)が変化します。(リアクタンスも変化します)
長ラジエーター(Rav)の長さを可変すると、主にリアクタンス(Ω)が変化します。(抵抗成分も変化します)
リアクタンス14.9Ωを集中定数で実現します。







ラジエーターは
160⇒160.2にして、
集中定数インダクタンス
0.00545μHにした時に、   

R50.397、jX14.877と、ほぼ
測定値と一致しました。


 ・次に、このR50.397、jX14.877をR50.397のままで、jX<1.0にするラジエーター長を探します。(最重要)





ラジエーターを
160⇒158.5
183.0⇒190.0にすれば、
R50.855、jX0.008になりまし
た。

円偏波4.5dB
Ga16.31dBi、F/B23.76dB
あまり変化しない。
修 正
 ・ラジエーターの長さを、160-5⇒158.5-5=153.5、183.0⇒190.0にします。
160-5⇒158.5-5は、1.5mmをヤスリで削りました。(両端)
183.0⇒190.0は、7mmを左図の様に継ぎ足しました。(両端)

実長は、7mmより長く10mmにしました。

 測 定
 ・最終的な測定結果は、下表の通りです。

193mmをもう少し長くすれば0に近くなると思います
が、160-5を削り過ぎて+する事になるので、これで
『良し』とします。
BケーブルはSWR最低点が低い方に移動していて
最低点のSWR1.13(433.0MHz)

測定の時は、1/2λ及び少し低い方が測定誤差が少ないかも?
R50Ω、jX=0に近くなるほど、ケーブル長による測定値差は無くなります。


 ・測定グラフ(Aケーブルによる測定、AA-1000による測定) リアクタンスは、+4.  435.0MHzでSWR1.09

            430~440MHzはSWR1.5以下                            425~445MHz
 ・ 結 果
リアクタンスは、jx<1.0より多くて+4.0Ωですが、良しとします。

 ・ラジエーター部分、ポリカーボネイト板5t

半田付け部分はアクリルラッカースプレーを同軸ケーブルに染み
込むまで吹き付けた。

強度的、性能的にポリカーボネイト板5tは十分に使えます。
ただし、耐候性(特に紫外線)については不明。




6.電 測 し ま し た   
この電測は、大地反射が有るので、それなりの誤差を含んでいます。直線偏波を円偏波アンテナで受信すると3dB低くな
るはず。軸比が4dB有るので、これを考慮しないと正確な測定にならない。



 6eleYagiからロープを引き、測定アンテナをロープの上に置いて、上下左右に動かして一番大きな電圧を得て、アッテ
ネーターを増減して読んだ。(冬は樹木に葉が無いので影響は少ないと思われる)


このアンテナのゲインは、10エレ八木アンテナ(第
一電波A430S10R)との比較で、
16.3dBiとなりシミ
ュレーションと一致しました。
(ホントかな~)

ブームを軸として、
90°回転させた時のゲイン最大最小の差は、4dBです。
シミュレーションは4.5dBでした。

10eleYagiアンテナの水平/垂直比は40dB以上でした。

直線偏波を円偏波アンテナで受信すると3dB低
くなるはず。4dB有るので、これを考慮し
ないと正確な測定にならない。

.考 察
・電測の送受信間の傾斜が緩い(約15°)ので大地反射がかなり有ると思います。出来れば45°にしたいのですが。
シミュレーションでは、15°だと10eleが+4dB、14eleが+2.6dB、従って10eleが1.4dB多く測定されているはずです
ゲインの低いアンテナほどビームがブロードなので、下から来る大地反射を受けやすくなります。
この場合は、14eleより10eleの方がゲインが有るように測定される可能性が有ります
このアンテナは、マッチングケーブル、円偏波のための位相ケーブル等を使わずに円偏波アンテナにして、50Ω同軸ケ
ーブルを直接接続できる欲張ったアンテナです。
そのためも有ってか、各部の寸法誤差が特性に大きく影響します。
特にラジエーター回りの製作精度が影響して『調整』をしないと必要なSWR等を得ることができません。
その調整も八木アンテナと比べると難しく、シミュレーションでラジエーターの長さを算出して可変しないと、必要な特性を
得る事は難しいと思います。
MMANAとAA-1000を、ある程度使いこなせることが必要です。
従って、『誰でも、作っただけで、性能が出る』アンテナではありません。
難しく困難に挑戦したい人は、作ってみて下さい。
なお、このアンテナは現在の低軌道衛星通信では十分すぎる性能です。

.アンテナ作製ストーリー
MMANAでシミュレーション②アンテナを作る③AA-1000で測定④シミュレーションと実際の違いを修正するシミ
ュレーション
⑤アンテナを修正(調整)⑥AA-1000で測定⑦完成 となります。必要によっては④⑤⑥を繰り返す。
特に『シミュレーションと実際の違いを修正するシミュレーション』が重要で、シミュレーションで何処をどの様に修正するか
を、あらかじめ算出しておかないと、屋外で「試行錯誤して調整」するのは困難です。

その様な意味では、MMANA と AA-1000 に感謝感謝です。
                  『完』                         目次に戻る
追加  
☆ 1/2λと1/4λの測定値比較 (抵抗成分51Ω、誘導性リアクタンス0で無い場合の例)     2015/2/13

①ある長さの同軸ケーブルの先端をオープンにして
 R,Xを測定すると、
・432.0MHzでR最大になって1/2λとなった。
・RとXがゼロクロス(376.0MHz)しているところが
 1/4λとなる。









②上の同軸ケーブルの先端に51Ωカーボン抵抗
 器をリード線を長くして、誘導性リアクタンスにし
 て測定すると。
・1/2λの432.0MHzでは、R52.1Ω、X21.0Ωとな
 った。(ほぼ真値のはず)左写真下右
・1/4λの376.0MHzでは、R42.3Ω、X-13.5Ωとな
 った。Rは低く、Xは-(容量性)になった。左写
 真下左
③1/2λと1/4λの間は、左のグラフの様に変化
 するのが分かる。
ただし、SWR値は、1/2λで1.5、1/4λで1.4と大きな違いは無く、SWRだけの測定であれば同軸ケーブルの長さはあま
り気にしなくて良い。ただし同軸ケーブルが長くなるとSWRの変化も大きくなる。
④アンテナを調整する時に、1/4λで測定すると、R42.3Ω、X-13.5Ωと表示されるのでRを高くし、-の容量性を打ち消
すために誘導性にすると、実際はR52.1Ω、X21.0Ωなので、Rはますます高くなり、誘導性もますます高く(多く)なって
しまい、SWRはどんどん高くなってしまう。
そして・・・・・

51Ωのリード線を最短にすると誘導性リアク
タンスはほしんど無くなり、1/2λ、1/4λ、
周波数、等に関係無く、ほぼ51Ωとなる。

カーボン抵抗器もリード線を最短にすれば
145MHzぐらいまで使えるか?

高周波特性の良いダミー抵抗器の場合は、
R50、jX0で一直線になる。



☆このようなケーブルを作っておくと便利です。 2015/2/20

435.0MHzで1/2λ✕n倍のケーブルです。















                                                                2015/2/20
☆クロスする垂直エレメントを取り払って水平エレメントだけで14eleYagiにした時のインピーダンスは?



ラジエーター長を調整して共振させたときのRは23.072Ωとなり、このままで垂直エレメント(Yagi)と並列接続すると、1/2の
約12Ωとなってしまう。
これを垂直又は水平ラジエーターを短くし/水平又は垂直ラジエーターを長くして、位相差を90°近くして、短くしたための
容量性と長くしたための誘導性を同じにして共振(jX≒0)させるとインピーダンスが高くなり、50Ωにすることが出来る不可
思議なアンテナです。

☆材料の物理特性 2015/2/27

絶縁材料は誘電率が低い方が良い。メーカー製アンテナはABS樹脂が多いのは安くて成型しやすく誘電率も比較的低く
強度も有り耐候性も良いらしいので多く使用されている模様。
アマチュアの手作りには、ホームセンター等で入手できる透明アクリル樹脂を使うことが多い。しかし誘電率は悪くないが、
脆くて加工性が悪く機械的強度も無いので使いにくい。
ポリカーボネイト樹脂は、比較的誘電率が低く、機械的強度や粘りも有り加工性が良いのでアマチュアの手作りに向いて
いると思われるが、あまりホームセンター入手ではないので、もっぱに通販によることになる。ただし紫外線等の耐候性に
ついては不明。(とりあえず「おすすめ」)
エレメント材料は、ラジエーターは、はんだ付けために


※※1    軸比モドキ(垂直・水平偏波の最大電圧、最小電圧のdB差)
 軸比モドキ90°(F/B差)0dBが本当の円偏波になっているか検証していません。また、右、左旋円偏波の特定もしていません。
現在のアマチュア衛星は、そのほとんどが直線偏波のアンテナのようです。(ダイポール、またはモノポール)
したがって衛星から出る電波は直線偏波ですが、衛星がスピンしているので、衛星から出る電波の偏波は、水平~垂直とゆっくり
と変化しているものと考えています。
従って、その変化を低減するために、アンテナのフロント方向を見た指向性は円形で有ればよく、右、左旋円偏波の違いは考慮
していません。

検証としては、このアンテナのフロント方向から八木アンテナ(直線偏波)から出た電波を受けて、このアンテナを軸周りに回転させ
たときのレベルの変化は、ほぼシミュレーション値と一致しています。(上記の 6.電測 で確認した)
従って、目的に合っていると思っています。


このアンテナについては、未解明な部分が多くエレメントの長短の関係も経験的に設定してシミュレーターで計算している状態です。
また、作り方においてもクロスするラジエーターの部分をどのように作ると耐久性が有るか検討する部分が多々あります。
みなさんもこのアンテナに興味を持って頂いて、解明して頂けるとさらに良いアンテナへと変身できるのではないかと思っています。
「まえがき」(目次)にも書きましたが、あまり耐久性は考えていません。(作っては壊しですからhi) 



                   
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おわり