12.衛星用アンテナ状態?の検証、その1(迷信?)               2014/05/12    de JA1CPA/中村
   大地反射は何処まで働くか!                            目次に戻る  



検証
1.衛星と月がEL90°(天頂)とEL0°(水平、地平)で空間ロスが、どのようになるか。
2.さらに大地反射によるアンテナのゲインアップが、この空間ロスを何処まで補うかシミュレーションした。



月の天頂距離(H2)はEL44°の時の距離。
なお、月との距離は地平と天頂の距離変動よりも、地球と
月の距離変動の方がはるかに大きい。






 
  上記は、シミュレーションソフトMMANAで計算しました。
↑↑
  
アンテナのゲインを含めた「実際ロス」は、仰角に比例して少なくなっている。

 
 
下図は、仰角0°の時は空間ロス143.0dB、アンテナゲインは大地反射が5.48dB有って17.8dBとなり、実際ロスは
 143.0-17.8=125.2dBとなる。
 一方、仰角90°では空間ロス127.2dB、アンテナは大地反射が0.12dBなので、実際ロスは127.2-12.44=114.76dBと
 なって、仰角0°の125.2dBより仰角90°の方がロスが少ない。従って、大地反射のメリットは無い。


 アンテナゲインを含めた「実際ロス」(dB)は、仰角に比例して少なくなっている。(145MHz)


1. シミュレーションソフトは正しいか?(アンテナの垂直面パターンは?)
 シミュレーションソフトとしてMMPCやMMANAをよく使っています。
 MMPCやMMANAで計算してアンテナを作りますが、特に垂直面のアンテナパターンは、簡単には確認できません。
 そこで衛星から電波を受信して、そのアンテナの垂直面のパターンを確認しました。
 ・測定方法
  使用アンテナ:3ele HB9CVアンテナ×2(水平)、アンテナ仰角30°固定、方位も固定。
  AO-51の頭上オービットの電波を、アンテナを仰角30°固定、方位も固定して受信した。
  Sメーターの指示値(電圧をデーターロガーで記録し、それをエクセルのレーダーチャートの180°分に0
 ダミーデーターを付けて描き、ダミーデーターの下半分を切って、上をつぶして距離補正した。(下、図3)

  (現在、AO-51は停波しています)
 ・結果 
  シミュレーターによるアンテナの垂直面パターンは、ほぼ正しい!。



図1(周波数は435MHz)
シミュレーターによる(MMPC)
自由空間、仰角30°のパターン

最大ゲインの仰角30°
ゲイン:12.86dBi 






図2
シミュレーターによる(MMPC)
地上高4m、仰角30°のバターン

最大ゲインの仰角7°(30°では無い)
ゲイン:16.30dBi (約3.44dBiアップ)






図3
上記アンテナの実際のパターン(左写真

(AO-51の電波を受信した)
「絵」としてはシミュレーションと一致している。
ただし仰角7°付近はゲイン最大では無い。

ここは地形によると思われるが、海岸等で測定
するとシミュレーションと同じになるかも?。

シミュレーターによるアンテナ垂直面パターンは、ほぼ正しい!。
このアンテナ(AOS方向固定、30°固定)で衛星からのピーコン(AO-51)を受信して、データーロガーで記録したものです。 
0.1秒間隔で約10分間記録し、エクセルでデーターと同じ数だけ0をダミーデーターに入れて、レーダーチャートで円グラフに
してダミーデータ部分を切り、適当に天頂の距離補正をしたものです。


2. 仰角を可変して衛星通信を行う場合に自由空間と大地(地球)反射が有る場合の検証をしました。
一般に衛星は、ほぼ一定の地上高で地球を周回しています。
衛星が地平線から上がって来た時(仰角0°)は、地上局と衛星の距離が最も遠く、 空間ロスが最も多くなります。
そして衛星が高く上がり天頂(仰角90°)の時には、地上局と衛星の距離が最も近く、 空間ロスが最も少なくなります。

一方、衛星からの電波は、衛星が見通しなのでアンテナには直接波が入りますが、同時に大地(地球)反射波も入ってきます。
衛星が地平線から上がって来た時(仰角0°)の最も距離が遠くて空間ロスが多いときには、衛星からの直接波と大地反射波が
アンテナの同じフロント方向から入って来ます。
この時は、直接波より反射波が遅れてくるので、反射波の経路によりプラスマイナスされてアンテナに入力される電波は、激しく
増減すると考えられます。上記、図2の仰角0~30°付近はその状態を示していると考えられます。

一方、図2の仰角30°以上では、この増減が少なくなっています。
これは仰角が高く(30°以上)なると、反射波はアンテナのサイド方向から入力されることになり、ビームアンテナの場合は直接波
より入力される電波が弱くなって反射波の影響が少なくなると考えられます。
従って、多エレメントでフロンドゲインが高くビームがシャープになるほど、反射波はフロントに近いところしか影響を与えないと考え
られます。

・8エレメントと15エレメントのアンテナでシミュレーションしました。
シミュレーションでは、大地(地球上)に設置して、アンテナを水平にしてシミュレーションすると、自由空間より最大約6dB多いゲイン
が表示されます。
これは大地反射が有るからで、そのゲインが多くなる範囲はビーム幅に比例してます。
    145MHz 8エレメントクロス八木
↓↓              437MHz 15エレメントクロス八木↓↓

図4















 上記、図4は、145MHz/437MHz共に地上高10mにした時のシミュレーションです。
横軸は、仰角0~90°、縦軸は自由空間の時と地上高10mにしたときの最大ゲインの差(dB)です。

・結果
 仰角0°では、8エレメント145MHzが5.5dBアップ、15エレメント437MHzが6dBアップしています。
 8エレメントでは仰角40°、15エレメントでは仰角30°で自由空間とほぼ同じになります。
一般に、自由空間のゲインに比べて地上に設置した場合は、6dBアップすると云われているのは、仰角0°、すなわちアンテナが
水平になっている時です。
エレメントが多く、ゲインが有るとビームがシャープになって、ゲインが増加する仰角範囲が狭くなります。
(2014/12/5)
この結果から、15エレメント1本よりも8エレメント水平2スタックにした方が仰角に対するゲインの低下が少なくなります。
スタックは2列2段よりは、水平4列の方が仰角に対するゲイン低下は少ない事になります。


 シミュレーションのパターン図
↓↓
 
   15エレメント437MHz 仰角0°
↑↑                  15エレメント437MHz 仰角30°↑↑


おわり     おわり                  目次に戻る