(6)四 酸 化 三 鉄 の 電 気 伝 導 性

 四酸化三鉄(Fe3O4)には、2価の鉄イオン(Fe2+)と3価の鉄イオン(Fe3+)があると説明されています。しかし、結晶模型では6個の酸素イオンで囲まれた鉄イオンについては、Fe2+とFe3+をまったく区別できませんでした。これは、Fe2+から電子が1個飛び出して鉄イオンの間をあちこち動き回っていると考えるとうまく説明がつきます。Fe2+から電子が飛び出せば、Fe3+になりますから鉄イオンはすべて同じ状態だというわけです。
 鉄イオンの間を移動する電子が存在するということで思い当たるのが、四酸化三鉄(Fe3O4)はわずかではあるが、電気を通すということです。四酸化三鉄(Fe3O4)の電気伝導性が、「Fe2+とFe3+の間を電子が行き来していることによる」ということも、結晶模型を見ると無理なく理解できます。

(7)結晶模型によるスチールウールの燃焼の説明

 空気中の酸素分子がスチールウールの表面で鉄原子にぶつかると、鉄原子の「自由電子」が酸素分子に移動します。鉄原子は(+)の電気を帯びた鉄イオンになり、酸素分子は2つにわかれて(−)の電気を帯びた酸素イオンになり、(+)と(−)の電気的引力で結合します。このままではスチールウールの表面に酸素イオンが結合して燃焼反応は終わりということになりますが、実際には中のほうまで酸素イオンが入り込んでいます。かっては、酸素イオンが鉄イオンの間に押し入ると考えていたのですが、結晶模型を見ていると、小さい鉄イオンが酸素イオンの間を擦り抜けて、表面に上がっていくように思えます。そして、自由電子も鉄イオンに引かれて表面に出ていく。そこにまた、空気中の酸素分子がぶつかって電子の移動が起きるということによって、鉄の原子と酸素分子の反応が続くだろうと思えるのです。無機化学の教科書には、「鉄およびその低級酸化物に酸素を添加すると、表面にまず酸素原子がぎっしりとすき間なく配列した層ができ、次に鉄原子がこの層中に拡散してゆくと考えられる」と説明されています。(ヘスロップ・ロビンソン『無機化学』第3版(東京化学同人、1979) p.730)
 結晶模型を見て、もっと細かく酸素イオンの移動や鉄イオンの移動を想像するのも楽しいことです。結晶模型は、発泡スチロール球を2つに切って、下図に合わせてプラ板に接着するだけで出来ますので一度作ってみて下さい。

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