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 塩素は水道水の消毒やプールの消毒に使われているものですが、普通の温度では薄い黄緑色をした気体です。気体状態では、2個の塩素原子が結合した塩素分子(Cl2)が飛び回っていますが、温度を下げていくと−34.6℃で分子がくっつきあって液体になり、−101℃以下では固体になります。固体状態では、塩素分子(Cl2)が写真のように規則正しく並んでいます。

 分子が規則正しく並んでいる固体を結晶といいます。だから、塩素の固体も結晶です。

   塩素の結晶構造

 塩素分子の中心をつなぐと、縦・横・高さが1億分の4.48、8.26、6.24cmの直方体が積み重なった構造をしています。塩素分子(Cl2)は、この直方体の8つの頂点と6つの面の中心に配列しています。

 塩素分子(Cl2)の向きは、左側の写真が示しているように1列ごとに違っています。

 1段目と2段目では、前後に半列ずれて積み重なっています。3段目は1段目と、4段目は2段目と同じ位置で重なっています。全体的に、分子どうしの作る窪みに他の分子がすっぽりと収まり、すき間なく配列しています。塩素分子は形が楕円であるために、結晶模型は一見複雑そうに見えますが、結晶模型を1段づつ重ねていくと、意外に単純であることがわかります。

 塩素分子は分子間に働く非常に弱い結合力(ファン・デル・ワールス力)で互いに結ばれています。(分子が接する部分では浅い電子雲の重なりがあるので、分子の一部をカットしてあります。)

 横から写した写真(右側)では、塩素原子が長方形の4つの頂点とその中心に並んでいるのが見えます。

 塩素原子の原子半径(ファン・デル・ワールス半径)は、1億分の1.75cmです。写真の結晶模型は実物を1億倍にしたものです。塩素素原子として、半径が1.75cmの発泡スチロール球を使っています。
  参考論文;発泡スチロール球を用いた結晶の実体積模型(1億倍)の作り方.(大石篤・榊原郁子)
        『年報いわみざわ』第10号、pp.48〜57(1989)

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