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 ヨウ素は普通の温度では濃い紫色の固体です。2個のヨウ素原子が結合したヨウ分子(I2)の集まりです。温度を上げていくと113.6℃で液体になり、184.4℃以上では気体です。固体状態では、ヨウ素分子(I2)が写真のように規則正しく並んでいます。ヨウ素の固体も結晶です。


 

ヨウ素の結晶構造

 ヨウ素分子の中心をつなぐと、縦・横・高さが1億分の4.79、9.79、7.27cmの直方体が積み重なった構造をしています。ヨウ素分子(I2)は、この直方体の8つの頂点と6つの面の中心に配列しています。

 ヨウ素分子(I2)の向きは、左の図のように左右の1列ごとに違っています。

 1段目と2段目では、前後に半列ずれて積み重なっています。3段目は1段目と、4段目は2段目と同じ位置で重なっています。全体的に、分子どうしの作る窪みに他の分子がすっぽりと収まり、すき間なく配列しています。ヨウ素分子は形が楕円であるために、結晶模型は一見複雑そうに見えますが、結晶模型を1段づつ重ねていくと、意外に単純であることがわかります。

 ヨウ素分子は分子間に働く非常に弱い結合力(ファン・デル・ワールス力)で互いに結ばれています。(分子が接する部分では浅い電子雲の重なりがあるので、分子の一部をカットしてある。)

 横から写した右側の写真では、ヨウ素原子が長方形の4つの頂点とその中心に並んでいるのが見えます。

 ヨウ素原子の原子半径(ファン・デル・ワールス半径)は、1億分の2.0cmです。写真の結晶模型は実物を1億倍にしたものです。ヨウ素原子として、半径が2cmの発泡スチロール球を使っています。

 参考論文;発泡スチロール球を用いた結晶の実体積模型(1億倍)の作り方.(大石篤・榊原郁子)
      『年報いわみざわ』第10号、pp.48〜57(1989)

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