家のセットが片付けられ、変わりに左手に団子屋さん、右手に小物屋さん。
お団子を食べているおつるちゃん。 お蝶さんは、小物屋でかんざしを物色中。 もう一皿注文して待っているところへ、若いお侍さん(正吾さん)登場。
江戸の賑わいに興味を持ちつつも、 自分は上意討ちのために来ているんだ、と自分を戒める。 笠を脱いで、腰につけていた水を飲んで休憩。
おつるちゃんに団子が運ばれてくる。不審そうに正吾さんを見るお店の人。 お団子を食べようとするおつるちゃんを、物欲しそうに眺める正吾さん。 おつるちゃんが視線に気づいて振り返ると、視線を逸らす。 おつるちゃん、椅子の端に移動。
おつるちゃんの傍に来て、団子を柿の種と交換してくれた頼むが、 猿蟹合戦じゃない、と断られる正吾さん。 正吾「お腰に付けたきびだんご、一つ私にくださいな、ワン!」 おつる「桃太郎でもない!」 ワンっと正吾さんを威嚇するおつるちゃん。
おつる「自分で買えば良いじゃないさ。変なお侍」
そこへ、舞台の後方の右側から日向の旦那登場。
一本下駄で、桶(?)を担いだ棒手振りの格好。
(袴を履かずに、着物をたくし上げて、ズボンみたいのを履いている)
冷や水を売っている日向の旦那、おつるちゃんに気づいて「よおっ!」と手を上げる。
手を振るおつるちゃん。
お客の声がかかり、舞台の左側から退場。
江戸では水を売っているのか、とおつるちゃんに聞く正吾さん。
水に砂糖と団子が入ったお水だと答えるおつるちゃん。
おつるちゃん、江戸に明らかに慣れていない正吾さんに、何処から来たか聞くと、
美濃の高垣藩の侍だと答える。
そこに、東海道五十三次の浮世絵を売る絵草紙屋さんが通りかかる。
走りよる正吾さん。
嬉しそうに見つめるが、我に返り「煩悩退散!」と絵をぐしゃぐしゃに丸めてしまう。
「帰す」と渡そうとすると「嫌ですよ」といわれる。
しわをのばして渡そうとするが、穴が開いているといわれ、
つばを指につけてくっつけようとする正吾さんの袖を引っ張るおつるちゃん。
おつる「お金持ってないんですか?」
慌てて、袂を探ってお金を出そうとするが、なく。
後ろを向いて、袴の中に手を突っ込む正吾さん。
股座にお金を隠していたらしい。
(千秋楽だけは、間違ってそこに入ってしまったみたいな話していたような?)
正吾「いくらですか?」
絵草紙屋「30文」
正吾「高っ」
絵草紙屋「広重ですから」
しぶしぶ30文を渡す正吾さん。
入っていた場所が場所なので、お金を受け取るのを嫌がる絵草紙屋さん。
しわしわになってしまった浮世絵をみつめる正吾さんに、
おつる「訳ありだね? 私で良かったら聞いてあげるよ」
何しにきた、といわれ、素直に「上意討ち」と答えそうになって、慌てて止める。
おつる「言いかけて止めるなんて、田舎もんのすることだ。江戸っこは気が短いんでぃ」
人払いを、という正吾さんを「無理!」と断り、去ろうとするおつるちゃん。
着物の首の部分を持って止める正午さん。
上意討ちのために江戸にきた、という正吾さん。
おつる「言うのかよ!」
上意討ちとは何かと聞かれ、
正吾「人を・・・ずばっと」
おつる「ずばっと?」
正吾「ばさっと」
おつる「・・・人斬り! お侍さん、人斬りにきたの!」
正吾「声が大きい!」
おつる「いけないよ。人斬るなんて。命は大事にしなきゃ」
正吾「・・・それは、そうだ」
おつる「ね? このまま美濃に帰りなよ。新しい浮世絵買ってあげるから!」
一瞬、浮世絵に気を惹かれそうになるものの、
上意討ちが果たせなければ、家は存亡に関わるし、腹を切るしかないと答える正吾さん。
深川の六間堀町(ろっけんぼりちょう)の耳そうじ屋の弟子だと名乗り、
師匠に耳をかいてもらえば、浮世の悩みが晴れる、と言うが相手にされない。
そこに、お蝶さんが小物屋さんから出てくる。
お蝶「お待たせ〜」
二つのカンザシ、どちらにしようか迷って両方買っちゃった、とおつるちゃんに見せる。
ちょうど良かった、と正吾さんをお蝶さんに紹介しようとすると、
(その隙に、おつるちゃんのお団子を食べ始める正吾さん)
お蝶さん、素敵な人だと一目ぼれ。
それを見た正吾さんも、団子を飛ばしながら(^^;
正吾「浮世絵が喋った!」
お蝶「でもきっと年下だわ。こんなに頬があつい」
正吾「浮世絵が恥らってる!」
おつるちゃん、正吾さんに「何の蓄えもない年増ですよ?」
お蝶さんに、「田舎者のガキですよ?」
お蝶「一目あったその日から!」
正吾「恋の花咲くこともある!」
しっかりと抱き合う二人。
極楽一座の人たちが出てきて、歌「恋夢中」へ。
タンゴのリズムで、正吾さんとお蝶さんの踊りも少し社交ダンスっぽい。
いちゃいちゃと二人が踊っていると、お蝶さんにもらった着物に黒い袴をつけて
日向の旦那登場。一本下駄ではなく、草履を履いている。
着物を見せようとするが、全然気づいてもらえない。
すると、おつるちゃんが置いてあった正吾さんの刀を持って舞台から退場。
慌てて追いかける正吾さん。
正吾さんと入れ替わって、お蝶さんの手をとる日向の旦那。社交ダンスの構え。
途端に、音楽が本当のタンゴに変わる。客席から笑いと拍手。
少しタンゴを踊ってから、音楽が元に戻る。
座った日向の旦那の両肩にお蝶さんの袖が置かれて、触ろうとしたらすり抜けたり。
座ったお蝶さんの膝を枕にしようとするが、動かれてしまって頭が落ちたり。
すれ違ったまま踊る二人。
最後、顔が近づいて、くっつきそうになって慌てて離れる。
歌が終わり、我に返るお蝶さん。やっと日向の旦那に気づく。
そこへ、刀を取り返した正吾さんが戻ってくて日向の旦那に気づく。
正吾「ヒゲはあるが、日向翔之進高成!」
正吾の上意討ちの相手は日向の旦那だったと判明。
騒ぎを聞きつけて、町の人が集まってくる。
五木念流一子相伝の秘剣を使うという日向の旦那に、自分の脇差を渡す正吾さん。
訳が判らないながらも、二人を止めようとするお蝶さん。
お蝶「どちらかが死んでしまうんでしょう? そんな勿体無い!」
勿体ない、勿体ない、と騒ぐお蝶さん。
これは武士の領分だと聞き入れない正吾さん。
正吾さんの刀を、踊るような動きでよける日向の旦那。
背を向けて、受け取った脇差を眺めて、良い刀で、手入れも行き届いていると褒める。
また刀を振りかぶった正吾さんの顔の前に、
後ろ向きのまま脇差を突きつける日向の旦那。
そのまま正吾さんの方をみて脇差をゆっくりと回しつつ、謎の呪文を唱え始める。
ふらふらする正吾さん、「これが秘剣、五木の子守歌」と呟くが、
既に体の自由がきかない。
後ろの野次馬たちやお蝶さんたちが倒れていく。
正吾さんも、力尽きて倒れる。
(少し調べた感じ、原作でも出てくるこの呪文、「五木の子守唄」の歌詞のようです)
それを見届けて、脇差を鞘に戻して、倒れた正吾さんの前に置く日向の旦那。
「にょほっ、にょほほっ」と謎の言葉を口にしながら、両手を広げてふらふらと振り、
鳥のような仕草をしながら、舞台の後方へ。
中央で「お休みでござる」と頭をさげて、また手をふらふらさせながら退場。
目が覚める正吾さん。他の人たちも起き上がる。
刀を持ったまま、辺りを見渡すが日向の旦那の姿がない。
置いてあった脇差に気づいて拾う。
このまま江戸から逃げられてしまうかも、と置いていた笠をとって去ろうとする。
お蝶「正吾さま!」
正吾「あなたに会えてよかった」
そのまま走り去る正吾さん。
おつる「短かったっすねぇ」
お蝶さん、正吾が何処の藩の人かとおつるちゃんに聞く。
おつる「確か美濃の高垣藩だと」
着物の袖をたくし上げ、「ついてらっしゃい!」と気合いれて歩き出すお蝶さん。
おつるちゃんも真似しようとするが、袖の長さが足りない。
幕が下りて、極楽一座が再び登場。
おかしなことになった、と話している間に舞台転換。。
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