第二十話 Reincarnation

あぐおさん:作


「どおおおりゃああああああああ!」
その使徒はなんの活躍もなくアスカに殲滅された。
宇宙空間に浮かんだ羽を広げた翼を持つような使徒、凍結から解除された弐号機が迎撃にあたったのだが、力を開放しATフィールドの羽を広げた弐号機は跳躍し、一気にその距離を詰めて一刀のもと切り伏せられた。そのあっけなさすぎる結末にはいくつもの要素がある。まずはアスカが弐号機の力を開放することができるという事実。そして以前ミサトが提案した“精神攻撃をする使徒”用の対策としていくつもの精神防御のシステムを組み込んでいたおかげでなんの支障もないまま終わったのだった。仕事を終えたアスカは帰りを待っていたシンジと合流した。
「ただいま!シンジ!」
「おかえり、アスカ」←出番がなかった主人公
「そういえばシンジ、初号機の修理まだ終わってないって?」
「そうなんだよ。だから今回は発令所で見ていただけだよ」
「あなたが傷つくところなんか見たくないから、アタシとしてはよかったけど」
「でも・・・待っているっていうのは結構辛いや」
アスカは嬉しそうに笑いかけるとシンジの腕を組み歩き始めた。
あの日以来、アスカは随分と丸くなった。言葉の節々に優しさが滲むようになり、笑顔が増えた。シンジ以外の男性にはキツい口調は相変わらずだが、その調子もだいぶ落ち着いたと言ってもいいだろう。そして気がしれた人物の前ではシンジにベッタリと甘えるようになった。その変わりようにミサトを始めリツコも最初は目を丸くしたが、シンジと心と体を重ねた結果、彼女の心の隙間が埋まり、本来の彼女の性格が表にでてきたのであろうという結論に達し、シンジとの付き合い方に多少の苦言は呈したが必要以上に言うことはなかった。それ以上にシンジがいることによって与えられたもののほうが遥かに大きいし、非日常的な生活をする彼らに一般的な倫理を求めることが無意味に思えたからだ。勿論エヴァの操縦に支障がないようにリツコからサポートを受けているのは言うまでもない。ミサトは家で自制が効かなくなることを恐れたが、家にはバビンスキーがいるため節度を持った交際が続けられたのだ。
彼らはこの先何があろうとも幸せな未来が待っているに違いない。そう信じて疑わなかった。



リツコの部屋にミサトがコーヒーを飲みにきている。普段は二人の日常をツマミにするのだが今は違う。リツコの言葉にミサトは困惑した。
「初号機の修復作業を遅らせる?司令が?」
「そう、前は初号機よりS2機関を持った弐号機の修復とバージョンアップを最優先だったけど、ここにきて零号機のバージョンアップと今度来る伍号機の受け入れ準備を整えるようにですって」
「伍号機が来るの?いつ?」
「さあ?近いうちにらしいけど、正確な予定はまだみたいよ」
「初号機の修復を優先させないなんて・・・司令は何考えているのよ?」
いくら考えても答えは出てこない。そのとき内線が鳴った。
「はい・・・はい、わかりました」
リツコは厳しい顔をして内線を置いた。
「誰から?」
「司令からよ。すぐに司令室に来るようにですって。この前完成したダミープラグの件かしらね?」
リツコは部屋を出て司令室に向かった。ミサトも一緒に部屋を出ると自分の部屋へと戻っていく。リツコがその日、自分の部屋に戻ってくることはなかった。



次の日、ミサトはネルフに着くと廊下で泣き崩れているマヤを見かけた。
「どうしたの・・・?マヤ」
マヤは泣きじゃくりながらその理由をミサトに話した。


司令室
「作戦部長として納得ができる説明をお願いします」
ミサトは厳しい顔でゲンドウを睨む。リツコが居ない理由。ミサトと別れた後リツコは拘束され自宅にて軟禁状態にあるというのだ。E計画の責任者であるリツコはネルフの実質ナンバー3と言ってよい。それが拘束されるなどというのは余程のことだ。ミサトはゲンドウを問いただした。しかし、ゲンドウはいつものポーズを取り微動だにしない。
「説明する必要はない。葛城三佐」
「しかし!」
「話は以上だ」
ミサトは踵を返すとすぐに司令室から出た。これ以上あの男の顔を見ていると殺したくなるから。ミサトはその足でリツコの住む独身寮へと向かったが、保安部より固くその扉は閉ざされており入ることができなかった。保安部のひとりが申し訳なさそうに答える。
「申し訳ありません。葛城三佐。司令から“誰も通すな”とキツク言われているものですから・・・」
「話をすることもできないの?」
「・・・はい・・・できれば融通を利かせてあげたいのは山々ですが・・・申し訳ありません」
リツコの身に一体なにが起こったのか?ミサトは加持に電話をした。加地は夜いつものところで落ち合おうと言って電話を切った。



ショットバー
個室で飲んでいると加持と一緒にキョウシロウも着た。
「廻さんも?」
「ああ、是非彼にも聞かせたほうがいいと思ってね」
「やあ、葛城さん。うちの子は元気にしてるかい?」
「元気よ~アスカとラブラブな生活をしてるわ。まるで新婚さんね!帰りづらいわ」
思わず笑い合う3人、軽い身内ネタをさらけ出したところで本題に入る。
「加持君、リツコなんだけど・・・」
「ああ、軟禁されているって話だろ?そのことなんだが、リッちゃんそうなることを前もって予測していたみたいなんだ。こうなる前に彼女は俺に色々教えてくれたよ」
「なんなの?」
ミサトは身を乗り出す。
「リッちゃんが手がけていた“ダミープラグ”なんだが、あれが完成したみたいで司令に渡した後に拘束されたみたいだ」
「そのダミープラグってなんなのよ?」
加持はタバコに火をつけると一息ついてから話し始める。
「リッちゃんが言うにはそのダミープラグってのは人格のデジタル化したものらしい。実はこの構想は既に前大戦時の時にデザインヒューマンの兵士の量産化が目的で出た案なんだ。ただ、当時は今ほど技術もなく、資金だって自由に使えるほどない。だからこの企画は暗礁に乗り上げたままだったんだ。そしてその企画はネルフの前身“ゲヒルン研究所”で研究されていた。そしてその責任者が」
「碇ユイ?」
「ご名答」
「リッちゃんはその研究の継続をしていて、基礎構築は既に出来上がっていたらしく、それに改良を加えるだけだったんだが・・・シンジ君の退行催眠をやったあとに気が変わった。そして完成を遅らせた」
「リツコはその責任を取らされて?完成して司令に渡したんでしょ?ノルマは達成しているのだから軟禁する意味がないわ!」
興奮するミサト、加持はタバコに火を消すと天井を仰いだ。
「どうも最近司令の動きがおかしい。初号機の修復を後回しにするのだってそうさ。理由は資金不足と弐号機、零号機のバージョンアップと伍号機の受け入れ準備って話だが・・・どうも違う気がする。まるで初号機を破棄するみたいな動きじゃないか」
「となると・・・シンジ君は伍号機に乗ることになる?」
「それなんだが・・・これは噂でしかないが、ドイツでフィフスチルドレンが見つかったらしい。まだ確認は取れていないが」
「このタイミングで?出来過ぎだわ!」
「俺もそう思う。また何かしらの動きがあると思う。十分注意を払ってくれ」
キョウシロウが割り込む。
「待ってくれ。そのチルドレンという奴が新しく来たとして、それじゃシンジが解雇される可能性は?」
「それは有り得ないわ。シンジ君はエヴァを動かせる才能を持った貴重な人材よ。フィフスチルドレンが来たところで予備としてシンジ君を囲い込むと思う。戦績で言えばシンジ君はダントツのトップだから」
「流石俺の息子だ。鼻が高いよ」
キョウシロウは雰囲気を変えるように明るく笑った。しかし、そこにいる誰もが近々何かが起こるという予見をしていた。



次の日、ゲンドウからの司令はミサトをより混乱させた。
「はああああああ!?弐号機をもう一度凍結するって!?」
「ええ・・・」
ゲンドウから一方的に弐号機の再度凍結を通達されたのだ。ミサトは当然の如く反対したが、覆ることはなかった。その報告をアスカにしている。
「なんで・・・今頃になって!」
「バチカン条約だそうよ・・・弐号機の所有権はユーロにあるから・・・ごめんなさい」
「弐号機が凍結されるのは納得はできないけどわかったわ。でも!今使徒が来たらレイ一人で戦うことになるのよ!?何考えているのよ!」
「それだけど、近々伍号機が来るらしいの。それで間に合わせるみたい」
「なによそれ!話にならないわ!」
エヴァに乗れないことよりも、いつ来るかわからない危機に対してあまりにも杜撰なやり方にアスカは怒りすら覚える。これではまるで攻撃してくださいと言っているようなものだ。ミサトも疑問を抱く。
(初号機の修理の遅延、エヴァ伍号機、バチカン条約、そしてフィフスチルドレンの噂、まるで良く出来た物語のように流れているわね。リツコならわかるかしら?)
隣に頼れる相棒が居ないことを痛感させられる。疑惑がミサトの頭の中を走っていった。



???
「どういうことだ。他のメンバーと繋がらないとは・・・」
「キール議長、お迎えにあがりましたよ」
「ダブリスか、ここで何をしている。日本に向かったんじゃなかったのか」
「行きましたよ。そこで新しい可能性を見出すことができました」
「・・・何を言っている?」
「ふふふっ・・・わからなくてもいいよ。僕は僕の意思で僕のシナリオを進めるだけだから・・・」
「貴様!私達を裏切るのか!」
「裏切るも何も、最初からあなたたちに加担をしたつもりはないよ。シンジ君が幸せになるためには君たちは邪魔なんだ。老人たちには退場してもらうよ」
「貴様あああああああああああ!!!!」

パシャッ

「キール議長あなたの望み通り、LCLの液体に変えさせてもらったよ。僕は・・・」
「シンジ君を幸せにするために生まれてきたのさ。さあ、会いにいくよ」
「シンジ君」



司令室
「碇、フィフスチルドレンを送るという連絡以降、老人どもから何も連絡がきていないがどうなっている?」
「こちらのシナリオには問題ない。寧ろ好都合だ」
「だが、フィフスはゼーレの肝入りだ。どうする?」
「奴らには何もできんよ。我々の手で時計の針を動かすことにしよう」
緊急を伝える内線が入る。冬月はハンドフリーで内線に出た。
「冬月だ。どうした?」
『大変です!ドイツ第2、アメリカ第1、ロシア第1、イギリス第1、フランス第2、各地のネルフ支部が消滅しました!』
「なんだと!?どういうことだ!」
『わかりません!』
ゲンドウが回線に割り込む。
「伍号機は無事なのか?」
『はい、海路を使ってこちらに既に向かっているようです』
「なら問題ない」
「碇!」
「冬月、あとは頼む」
ゲンドウはエレベーターを使ってセントラルドグマへと一人向かっていった。冬月は発令所へと向かう。
「碇、これもシナリオの内だというのか?」
発令所へと向かう途中、けたたましくサイレンが鳴り響く。
「使徒・・・こんな時に!」
冬月は苛立ちを抑えながら発令所へと向かって行った。



発令所では先程の混乱を引きずりながらもオペレーター達が対応に追われている。ミサトはじっと使徒をモニター越しに睨む。その隣にはシンジとアスカもいる。
「もう!言わんこっちゃない!」
アスカの言ったことが現実に起こってしまった。レイは既にエヴァに乗り込んで迎撃態勢に入っている。エヴァは現状一体しか稼働できない.、限られた手段の中で結果を出さなくてはならないため、ミサトは慎重に慎重を重ねた。
「ATフィールドの発生は確認できてない。でも自走砲の攻撃は効いてないか・・・私の予測したパターンの中にも該当していないようじゃ出たとこ勝負にしかならないじゃない」
リツコがいればアドバイスの一つや二つもらえただろう。しかし彼女はいない。代わりに実戦経験を持つシンジとアスカに隣にいてもらっている。
「どう?シンジ君、アスカ、何か気が付いたこととかある?」
「そうね・・・あの使徒何かに似ているのよね・・・」
「・・・螺旋を描いているね。それに輪を作っている」
アスカは思いついたように大きな声を出す。
「そうよ!DNAの構造に似ているわ!人のDNAよ!」
「流石アスカね。私も見落としていたわ。でも、それに何か意味があると思う?」
「それは・・・」
思いつかない。3人は頭を抱えた。
「すいませんミサトさん。役に立てなくて・・・」
「そんなことないわ。シンジ君もアスカもありがとう。リツコが居ないから、誰かが居てくれるだけで安心出来るのよね」
ミサトはレイに指示を出す。
「レイ、ポジトロンライフルで長距離射撃で攻撃してみて、そのあとはあなたの判断に任せるわ。でも、慎重に行動して」
「了解」
レイはポジトロンライフルを構えて狙いを定める。


「何をグズグズしている。葛城三佐」
低い声がする。ゲンドウが発令所に入ってきた。
「はっ!しかし司令、稼働できるエヴァは零号機しかありません。ここは慎重に・・・」
「ダミープラグを使え」
発令所が凍った。
「しかし!司令!」
「命令だ。葛城三佐」
「くっ・・・了解しました」


「え・・・?」
突然零号機の電源が落ち操作が効かなくなる。すると目の前に赤いコードがいくつもの浮かび上がりレイの意思とは無関係にエヴァが動き出した。
「・・・どういう、こと?」
猪武者のようにライフルを捨てて使徒に向かっていく零号機、使徒は零号機に気がつくと、蛇のように身を低くし距離を詰めて一気に下から襲いかかった。使徒の攻撃は零号機の腹部に命中し、そのまま侵食をし始めた。
「・・・・くっ・・・・あ・・・・」



「使徒!零号機と接触!腹部より侵蝕し始めました!」
「侵蝕タイプか!碇、どうするつもりだ」
ゲンドウの指示に注目が集まる。ゲンドウはいつものポーズを作ったまま言い放った。
「現時点で零号機を破棄、自爆させろ」
誰もが耳を疑った。
「しかし!レイはまだ脱出出来ていません!」
「葛城三佐、命令だ」
「しかし!」
ゲンドウは何も言わない。ミサトはエントリープラグの強制排出を指示、しかしそれはキャンセルされた。オペレーター達は必死でレイを助け出そうと何度も信号を送るが拒否される。侵蝕はどんどん広がっていく。
「し、れい・・・くぅ・・・」
苦しそうに呻くレイの声。
「綾波!」
「レイ!」
そこにいる誰もがレイに声をかけた。
「しれ、い・・・どう、して・・・」
ゲンドウにレイの弱々しい声が届く。レイは欲した。ゲンドウとの絆を。ゲンドウの優しい言葉と笑顔を。もしこの場で彼が優しい声をかければレイは自ら自爆のスイッチを押したであろう。しかしゲンドウの答えは違った。躊躇するオペレーターを退かして自ら零号機の自爆コードを作動させたのだ。
自爆コードの信号は受理され、零号機は使徒を道連れに爆発した。ミサトは膝をつく、アスカは震えて動くことが出来ない。ゲンドウは使徒殲滅を確認すると踵を返した。
「待てよ・・・・」
シンジの低い声が発令所に静かに響く。
「なんだ」
「これがあんたのやり方、なのか?」
「使徒殲滅は我々の使命だ」
「貴様アアアアアアアア!!」
シンジはゲンドウに殴りかかろうとするが、すぐに動きを止める。シンジの眉間、心臓の所にレーザーが当たったためだ。発令所内にスナイパーがシンジに向けて銃を向けている。シンジは動けなかった。ゲンドウが発令所から姿を消すとレーザーも消えた。発令所に重苦しい空気がその場を包んだ。
「碇!どういうつもりだ!」
冬月は激しい怒りをゲンドウにぶつける。ゲンドウはニヤリと笑った。
「全てシナリオ通りだ」
「子供の命を犠牲にすることがか!」
「レイはユイの遺伝子とリリスの遺伝子を合わせたクローンに過ぎない。ヒトではないよ」
それは冬月も分かっている。しかしレイはユイではなく違う人間という認識が冬月にはあった。
「貴様のやり方にはついていけん!」
「・・・好きにしろ」
ゲンドウはセントラルドグマへともう一度向かった。冬月はゲンドウと別れるとネルフ本部から出ていこうとする。その様子をじっと見つめる目がある。
「司令と副司令の決別か。今の副司令なら、全てを話してくれるかもしれないな」
冬月がネルフ本部を後にした直後、彼の消息は消えた。



暗い夜道、シンジとアスカは肩を並べて帰っている。二人は何も言わずにただ歩いている。
「やあ、こんばんは」
二人が帰り道にある公園に差し掛かると二人に声をかけてきた少年がいる。少年は銀髪で赤い目をした少年だ。シンジは自然に警戒する。アスカの前に立って彼女を守ろうとする。
「君は?」
「僕かい?僕は渚カヲル。初めまして・・・かな?碇シンジ君」
「どうしてシンジの名前を知ってるの?」
「彼は有名だからね。君のこともよく知っているよ。惣流アスカ・ラングレーさん」
「アンタ誰よ!なんでアタシ達のこと知っているのよ!」
シンジとアスカは警戒モードを最大限に上げた。不測の事態に備えて即座に動けるように体が備わる。カヲルは笑顔を向け、ポケットに手をいれたままだ。
「僕も君達と同じ仕組まれた子供さ。フィフスチルドレンだよ」
「そういうこと、随分と趣味の悪い登場の仕方ね」
「ふふふっひどいな君は、僕はね君達をずっと見てきた。君達は似た者同士、とても繊細だ。好意に値するよ」
「カヲル君は二刀流ってことかい?僕にそんな趣味はないよ」
「アタシもよ。アンタなんかに興味もないわ」
「わかってるさ。シンジ君と惣流さん。君達は二人で一つだ。僕は君達に会うために産まれてきたのさ。君達を幸せにするためにね」
カヲルの台詞にアスカはカチンときた。アスカはシンジと腕を組むとここは私の居場所だと主張するように威嚇する。
「アタシは自分の幸せは自分で手に入れるわ。誰の手も借りない。そして、渡さない」
「そうだね、それでこそ惣流アスカ・ラングレーだよ。さて、今日は君達に話があるから来んだ。この世界は既に他の世界に比べて大きくズレたシナリオに沿って流れている。それが何を意味するのか、僕にはわからないし興味もない。僕は君たちが幸せになってくれればそれでいい。この世界を動かそうとした老人達にはご退場してもらったよ。だけど、まだ何か裏がある。それをこれから調べにいくよ」
「・・・僕には君が何を言っているのかわからないよ」
「今はわからなくていいよ。だけど、いずれ分かる時が来る。その時は・・・君達に僕の命を託すよ。それじゃあね」
カヲルは言いたいことだけ言うとその場から去っていった。シンジとアスカは取り残される。
「シンジ・・・あれ・・・なに?」
「分からない・・・分からないけど・・・・僕のお尻の危機ってことはわかった」
「ナニソレ怖イ・・・・」



????
ゲンドウはひとりパネルを操作して何かを始めている。彼の視線の先には初号機がコアを剥き出しにしたままの状態でいる。慎重に操作をし、モニターを注意深く見る。ゆっくりと引き上げられたモノを見てゲンドウは涙を流しながら歓喜に包まれた。
「やった・・・遂にやったぞ・・・・長かった・・・・」
「何が長かったんだい?」
声がする。ゲンドウが振り向くとそこにはカヲルが微笑を浮かべて立っていた。
「・・・どこから入ってきた」
「どこからって・・・扉からですよ」
ゲンドウはゆっくりと銃を構える。銃口はカヲルの眉間に向けられてた。
「質問に答えろ。どこから入ってきた。フィフスチルドレン」
「せっかちだな・・・どこからでも入れる事ぐらい分かっているでしょ?碇司令」
「老人どもからの差し金か、もう貴様にやってもらうことなど何もない。死んでもらう」
ゲンドウは引き金を引いた。弾丸はカヲルのATフィールドによって弾かれてどこかへと消えた。
「・・・やはり使徒か、所詮、人の敵は人か」
「ええ、僕は使徒です。ゼーレによって作られた仕組まれた子供。僕は自由意思を持つ最後の使者。僕は僕の意思でここに来ている」
「なんの用だ」
ゲンドウはもう一度銃を構える。
「司令が何をしているのか僕には分からないけど、僕のやろうとしていることの障害になることには変わりはない。できれば大人しく手を引いて欲しいけど」
「断る。貴様は俺のシナリオには不要だ」
カヲルはやれやれとため息をついた。
「交渉は決裂、か・・・シンジ君の幸せのために、死んでもらうよ」
カヲルはゆっくりと足を踏み出した。その時
「死ぬのは、あなたよ」
「えっ?」



夜の公園、カヲルは横腹を手で抑えてヨロヨロと歩いている。額には脂汗が滲み、手で抑えた患部からはおびただしい量の血が流れ落ちている。
「シンジ君・・・シンジ君のところに行かなくては・・・」
「このことを・・・伝えなくては・・・」
カヲルはひとりシンジのいるマンションに向けて歩いている。



ゲンドウは歓喜に溢れた顔で裸の少女にしがみついている。その横には大きな血だまりができていた。
「逃げられたけど、まあいいわ」



「遂に、ここまで来たわね。さあ・・・始めましょう」



「真の人類補完計画を」



「ああ・・・分かったよ」



「ユイ」



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あぐおさんから「EVA2015」第二十話をいただきました。
急展開回でしょうか。アスカがあっさりラミエルを倒すしカヲル登場にユイさん登……場……?

つづきも刮目して待ちましょう。

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