第十四話  Iron Maiden

あぐおさん:作


ネルフ本部
チルドレンの3人はシンクロテストを受けている。その様子を注意深くミサトとリツコが見ている。
「最近アスカ調子がいいわね。シンクロ率も自己最高記録を更新してるわ」
「そうね、シンジ君のおかげかしら?」
「リツコもそう思う?あの子最近素直になってきているのよね~」
「あら、いい傾向じゃない」
ミサトはマイクを取った。
「アスカ~すごいじゃない。記録更新よ」
「そう」
「あら?あまり嬉しそうじゃないわね?」
「別に、いくらシンクロ率が高くてもそれが実戦でフィードバックされなければ意味ないからよ。もっと強くならないとダメだって思うだけよ」
「そ、そう・・・」
ミサトは驚きを隠せない。今までのアスカはシンクロ率に一喜一憂していた。それがまるで興味を示さず、先のことを考えるようになったのだ。
(あの子も成長しているということね)
ミサトは妹のような彼女の成長を喜んだ。
帰り道、シンジとアスカは並んで帰宅している。シンジが話しかける。
「アスカ、どうだった?」
「・・・あの話、本当みたいね。正直・・・複雑だわ」
彼らが言っているのは以前聞いたバビンスキーの話だ。そこで彼らはエヴァが何で出来ているのか、そしてコアに魂があることを初めて知った。アスカは以来、シンクロテストで母親に甘えるように弐号機に身をゆだねるようにした。結果が最高記録だったのだ。
「ママ・・・エヴァの中にいたのね・・・」
その呟きはエントリープラグの中に消えていった。



深夜、アスカは遠くで響いた爆音で目が覚めた。ベッドから飛び降りてベランダに出る。遠くで爆発があり、炎が深夜の第三新東京市を赤く染める。頭上には何機ものVTOLが通り過ぎていった。
「まさか・・・使徒!?」
アスカはシンジの部屋に入り彼を叩き起す。
「起きろ!バカシンジ!」
「いてっ!何するんだよアスカ!」
「いいから起きろ!こっち来なさい!」
シンジの手を引いて無理矢理ベランダに連れ出すと街の様子を見せる。シンジの眠気も吹き飛んだ。
「なんだよ!まさか使徒!?」
「知らないわよ!ミサトのところに電話するのよ!」
「僕を起こす前に電話してよ!」
シンジは電話を取るとミサトの所にかける。しばらく話すとシンジは電話をきった。
「ミサトなんだって?」
「うん、どうも使徒じゃないらしいんだ」
「じゃああれはなんなのよ!」
「知らないよ!ネルフの方でも情報収集しているところみたいだよ」
シンジとアスカはベランダから炎で染まる街を苦虫をつぶしたような顔で睨んでいる。なにかとてつもないことが起こる予兆ではないかと考えていた。



次の日、学校では昨日の爆発についての話題で会話が溢れている。ワイドショーなのではガス爆発ではないのかということも言っていたが定かではない。ネルフもこの事件に関しては関与を一切否定している。朝まで何が起こっているのかずっと見ていたシンジとアスカは寝不足だ。シンジの元にケンスケが現れた。
「おはよう!シンジ、昨日はすごかったな!って、ひどい顔してるな」
「・・・おはよう。もうそれはいいよ・・・おかげで寝不足だよ」
「ほうほう、そんな碇君にいい情報を教えてあげよう!」
「なんだよ・・・」
「今日、転校生が来るらしい」
「・・・マジで?」
「しかも、超かわいいらしい」
「ケンスケ・・・流石だよ・・・僕達親友だよね?」
「俺は見てないぞ。あくまでも噂だ」
「可愛いかどうか確認はしてないのか・・・残念だ・・・」
「な~にが残念よエロシンジ!」
「げっ!惣流!」
後ろを振り向くと同じく寝不足でくまができたアスカが仁王立ちしていた。
「まったくアンタって男は本当にスケベね!いやらしい!」
「男子たるものそういうものなんだよ・・・」
クラスメートは白い目で二人を見ている。また夫婦喧嘩かと思うだけだった。夫婦喧嘩は先生が入ってきたところで中断した。先生は出席を取ると生徒を見回した。
「え~今日、転校生が来ました。みんな仲良くするように。入りなさい」
「はい!」
可愛らしい声がすると少女が入ってきた。ショートカットの可愛い子だ。
「霧島マナです。よろしくお願いします」
「おおおおおおお!」
男子の歓声がする。
「じゃあ、空いている席に座ってください」
先生がそう言うとマナはクラスを見渡し、視線がシンジの前に止まった。シンジと視線が交わる。
(霧島マナ、霧島マナ、聞いたことある名前だな。それに・・・どこかで見たことがある・・・)
シンジは漠然とした思いで彼女を見る。マナはシンジに近づいてきた。
「シンジ君、久しぶりね」
「・・・・誰?」
「覚えてないの?私よ。小学校のとき一緒だったでしょ?」
シンジに緊張が走った。シンジはまともな小学校には行っていない。つまり彼女も同じ場所にいたということだ。
「・・・ごめん。覚えてないや」
「そっか、残念だな~でも、また一緒になれたね」
マナは眩しい笑顔を振りまく。シンジも笑うが心中は穏やかではない。ふと殺気の篭った視線を感じる。後ろを向くとアスカが般若のような顔をしていた。
(やばい・・・僕、殺されるかも・・・)
原因など当然シンジにわかるはずもない。当然のようにシンジの隣に座るマナ、アスカは物凄い殺気を込めて睨みつけている。シンジはクラスの男子の恨みを込めた視線を一身に受けていた。
休み時間、マナはクラスの男子に囲まれて質問をされている。シンジはケンスケのところに逃げてきた。
「ま~たセンセか。嫁が増えるの~」
「羨ましいかぎりだよ」
「僕はとばっちりにしか思えないよ・・・」
「でも本当に覚えてないのか?あんな可愛い子を」
「小学校の頃だろ?覚えているわけないよ」
「センセ、いい加減にせんと、あそこでこわ~い嫁さんが睨んどるで」
トウジはそう言ってアスカを指差す。それが尺に触ったのかアスカはズカズカと音を立てて近づいてきた。
「す~ず~は~ら~今のはどういう意味かしら~」
「べ、別に深い意味はないで。な!シンジ」
「僕に振らないでよ!」
「シンジ~可愛い子と知り合いなのね~仲良くしてあげるのよ~後でた~~~~~っぷり言い訳を聞いてあげるから~~~」
まるで浮気現場を抑えた妻の顔だ。どう足掻いてもろくなことにはならない。シンジは頭を抱えた。
放課後、シンジが帰り支度をしているとレイが近づいてきた。
「碇君、今日、シンクロテストだから」
「ああ、わかったよ。アスカー行こう」
「わかってるわよ!少し待ちなさいよ」
アスカの席の近くで待っているとマナが声をかける。
「シンジ君、これからどこか行くの?私も行きたいな~」
上目使いに話しかけるマナ、アスカはマナを睨んだあとシンジの前に割り込んだ。
「あのね、アタシ達は大事な用事があるの。アンタみたいな尻軽女に構ってる暇なんかないの。シンジ、レイ、行くわよ」
アスカはシンジの後ろ襟を掴むと引きずるように教室を出ていった。レイもあとに続く。
「あ~あ、残念だな~」
余裕の表情を見せるマナ、シンジのうらやまけしからん今後の展開に誰もが嫉妬をした。



夜、葛城家ではアスカがマナの話をしている。説教にも似たその内容は些かシンジを悩ませる。ミサトはいいツマミができた程度でしかない。
「とにかく!あの霧島マナって女には近づかないこと!いい!?バカシンジ!」
「こっちから来なくても向こうから来るんじゃ、避けようがないじゃないか。露骨に避けても怪しまれるだけだし」
「十分あの女は怪しいっての!昨日の原因不明の爆発事件の次の日に転校よ?ありえないわよ!」
「要するに、アスカはその霧島マナって子がシンちゃんにイチャイチャしてくるのが気に食わないってことね」
「ちっがーーーーーーーーう!!!!」
顔を真っ赤にして大声で否定するアスカ、ミサトは内心バレバレよと毒づいた。これ以上からかっても火に油なのでミサトは強引に会話を打ち切りにした。
「はいはい、それより二人とも、今日は大事な話があるの。聞いてくれる」
「なんですか?ミサトさん」
「実はね・・・私婚約したの」
ミサトは嬉しそうに左の薬指にはめた指輪を二人に見せた。
「えーーーーーー!誰と結婚するのよ!っていうかできるの!?」
「アンタね・・・毒舌もいい加減にしないと殴るわよ?」
「相手は誰です?」
「うふふ~~~加持君」
「加持さんと!?うわ~加持さん苦労するわ~とりあえずおめでとう」
「おめでとうございます。ミサトさん」
「ありがとう。やっぱあなたたちに言われるのが一番嬉しいわ。でもアスカ本当にいいの?あなた加持君のこと好きだったんじゃないの?」
「今更いいわよ。アタシ加持さんのこと本気じゃなかったし」
「そう?ならいいけど」
やけにあっけらかんと答えるアスカにミサトは安心した。最近シンジに熱を上げているのはわかっていたが、いざこの時になるとどうなるかわからなかったからだ。
ミサトはビールを一口飲むとシンジに気になっていたことを聞いた。
「そういえばシンジ君、あなたの育ての親のこと私全然知らないんだけど、どういう人なの?」
ミサトはキョウシロウと会ったことを伏せて聞いた。
「名前は廻キョウシロウさんって言う人で、大戦中は軍にいたそうです。終戦後すぐに除隊して警察みたいな仕事についていたみたいですけど、奥さんのシノさんと結婚を機に退職して今は自給自足の生活をしていますよ」
「へ~もったいないことしたわね~公務員なら生活は安定しているでしょうに」
「気楽に生きたかったんじゃないですか?あの人そういう人ですから」
シンジの話に一応は納得してみせたミサト、だが事実とは違う気がする。単にシンジがそれを知らないだけかもしれない。ミサトはこれ以上追求すると藪蛇をつつくと判断し何も言わなかった。



深夜、寝静まった時間にシンジはバビンスキーに今日の出来事の話をした。
「今日、昔の仲間だと思う人に会ったよ。女の子だけど」
「昔の仲間っていうと・・・施設でのか?」
「うん」
「気をつけろよ。多分そいつは・・・」
「ハニートラップでしょ?わかるよそれくらいは、僕も奴らのやり方は嫌というほどわかってるから」
「そうか、ならいいが・・・このことはアスカには話をしたか?」
「いや、してないよ」
「したほうがいいぞ。彼女なら力になってくれるはずだ」
「ダメだよ!アスカは巻き込みたくない」
「・・・大切な人だからこそ、遠ざけたいか・・・」
関わればシンジの過去を知ることになるだろう。そうなるとアスカが今までどおりの関係を望まないだろう。シンジはそう考えた。バビンスキーはシンジが決めた以上梃子でも動かないことは重々承知しているため何も言わなかった。



同時刻
マナは通信器を前に話をしている。
「霧島です。今日、目標と接触しました」
『どうだ?うまくいきそうか?』
「はい、大丈夫かと思われます」
『そうか、なんとしてでもサードチルドレンを懐柔し情報を引き出すんだ』
「了解しました」
『お前は男を転がすのは得意だから大丈夫だろ』
下品な笑いが通信器から聞こえる。マナは奥歯を噛んだ。通信が終わるとマナは姿見の鏡の前に立ち服を脱いだ。鏡には一糸纏わぬ姿が写る。
(上層部もマヌケね。目標はあの碇シンジ、戦自の汚いやり口を散々経験した亡霊よ?彼のことを知らないということは・・・彼のいた部隊が備品扱いされて情報が出てこないという話は本当みたいね・・・でも、ごめんねシンジ、あなたのこと利用させてもらうわ)
マナは邪悪な笑みを浮かべる。
「私達が幸せになるには、悪魔に魂を売るしかないのよ・・・」



あれから数日が経過した。マナのシンジへの攻勢は緩むことなく、シンジは困り果て、アスカのストレスは順調に右肩上がりだ。一度だけアスカがマナに文句と言ったことがあるが、彼女でもなんでもない人に言われる筋合いはないと反論されて次の一手が打てないでいる。打ってしまえば自分の気持ちを大々的に宣伝するようなものだからアスカは何もできない。しかし、アスカがシンジのことを好きなのは女子の間では公然の秘密となっている事実は知らない。ある日の休み時間、マナがシンジに予定を聞いてきた。
「ねえシンジ君、今日の放課後予定ある?」
「予定?えっと・・・特には」
咄嗟に嘘がつけない自分がこれほど憎いと思った瞬間はなかった。
「そっか~」
マナは笑ってシンジとすれ違いどこかへ行った。その瞬間、シンジの胸ポケットにメモが入れられる。シンジはそれを読むとすぐにゴミ箱に捨てた。
放課後、授業が終わるとアスカがシンジに声をかける。
「シンジ~ちょっと・・・」
「シンジ君!これからちょっと付き合ってもらえる?」
マナが会話に割り込んだ。
「ちょっとアンタ!何人の会話に割り込んできて」
「うん、いいよ」
「やった!じゃあ行こう!」
アスカの会話も無視して二人は教室を後にする。
「1、 アスカ・・・」
ヒカリがアスカを慰めようとしたその時、アスカの首が180°回転した。目が真っ赤に光っている。
「ヒカリ?ちょっと付き合ってくれるわよねええええ?親友だもんねええええ。バカ二人も来なさいぃぃぃ?拒否権はないわよぉぉぉぉ」
ヒカリ、トウジ、ケンスケは何か見てはいけないものを見てしまったのかもしれない。壊れたように首を縦に振った。



シンジはマナに連れられてファミリーレストランで会話をしている。その様子を遠くで監視する4人の姿があった。
「なんか・・・えらい楽しそうやな・・・」
「アスカ・・・・ほら・・・昔の同級生なんだし、気にしない方が・・・」
「いや~んな感じ・・・こっちはいや~な感じだけどな・・・」
シンジとマナの様子を見て呟く3人、アスカは何も言わずにじっと睨んでいる。シンジは笑顔で対応はしているが、警戒レベルは最高の状態だ。その理由はメモにある。
「あんなメモ渡されたら断るわけにはいかないじゃないか」
「そうね、それを狙ったんだもん」
メモには乱数表でメッセージが書かれてあった。


『放課後付き合わないとあなたの大切な人を失う』


シンジは戦自の汚いやり方を心得ている。周囲を巻き込みたくないというシンジの思惑を読んだマナが誘い出したのだ。冷静に務めてはいるものの、シンジの腹の中は煮えくり返っている。シンジは早々に本題を切り出した。
「それで、何が目的なの?」
「大体予想はつくんじゃない?」
「ネルフの内部情報だろ?戦自の一部とネルフは決して仲良くはないからね」
「半分正解ね。シンジ君は元同僚だから話しちゃうけど、エヴァのことも聞くように言われているわ」
「僕がまともに答えると思う?」
「無理ね。だから偽情報でしばらくは誤魔化すわ。本題は個人的なことよ」
「個人的なこと?」
マナは紅茶を飲むと一言だけ言った。
「ムサシを助けて欲しいの」



「ただいま~」
シンジが帰宅するといい匂いがする。
(誰か帰ってきたのかな?)
シンジがダイニングに入るとアスカがキッチンで料理を作っていた。シンジとマナがファミリーレストランを出る前にアスカは家に帰り夕食を作ろうとしたのだ。最近はシンジに料理を教わっているためレパートリーは少ないもののできないわけではない。
「あ、おかえりシンジ。もう少しでご飯できるわ」
「え?あ、ああ、うん」
アスカは部屋着にエプロンを巻いている。思わず見とれた。
「?どうしたの?ボーッとして」
「え?あ、ごめん・・・つい見とれちゃって・・・」
「!!ば、バカ!なんてこと言うのよ!」
「ご、ごめん、なんかアスカがさ・・・」
「アタシがなによ?」
「お母さんみたいで・・・」
「ア、アンタバカァ!?変なこと言ってないで着替えてきなさい!」
「は、はいい!」
慌てて部屋に入るシンジ、アスカの顔は緩みっぱなしだ。
「もう・・・普通は奥さんか恋人でしょ・・・でも・・・わ、悪い気はしないわね・・・」



夕飯は肉じゃが、シンジから初めて教わった思い入れのある料理だ。煮物の元を使えば比較的簡単にできる料理で、作る過程がアスカが唯一できると言うカレーとそれほど変わらないためシンジがチョイスした。出来上がったばかりの肉じゃがを口に入れるシンジ、アスカはその様子をじっと見ている。
「・・・どう?」
「うん、おいしいよ!流石アスカだね」
「本当?」
アスカも一口食べてみる。思い通りの出来に思わず顔が緩んだ。
「うん!美味しい!さっすがアタシ!」
シンジはニコニコしながらアスカを見た。夕食後、お茶を飲みながらくつろぐ二人、シンジが話しかける。
「アスカは本当になんでも出来ちゃうんだね。すごいや」
「ふふーん、でもアンタの教え方もうまいのよ」
「そうかな?よくわからないや」
「やっぱ、アタシが一番でしょ?」
「うん、アスカからそう言われるのが一番嬉しいや」
シンジはアスカの真意を読み取ることができない。アスカは少しだけ微妙な顔をするが、一番嬉しいという言葉には嘘はない。アスカは素直にその言葉を受け入れた。
「ねえ・・・今日霧島さんと・・・何話をしていたの?」
アスカは思い切って今日の放課後の出来事を聞いてみる。
「別に、大した話じゃないよ」
「教えなさいよ!」
「な!?なんだよいきなり・・・驚くじゃないか」
「なに・・・話してたのよ」
「・・・昔話さ」
「嘘・・・・」
「本当だよ。信じてよ」
「・・・・・・・」
アスカは俯く、シンジのことを信じたい。しかしどうも喉に骨が刺さったような違和感が抜けきれない。このまま追求したところでシンジは話さないだろうとアスカは思った。
「あの霧島マナって子、気を付けなさいよ。あの子スパイかもしれないわ」
(ドンピシャリだよ・・・アスカ)
「わかった。気をつけるよ」
シンジは素直にアスカの言葉を受け取った。アスカは顔を赤くする。
「あ、明日もアタシが作ってあげるわ!カレーでいい?」
「カレー・・・」
シンジの表情が暗くなる。
「なによ・・・もしかして嫌いなの?」
「そうじゃないよ・・・苦手なんだ。カレー」



深夜、シンジは白鳥に電話をかけた。夜遅くにも関わらず白鳥は電話にすぐ出てくれた。
「夜分、申し訳ございません。白鳥さん」
『やあ、どうしたんだい?こんな時間に』
「実は、聞きたいことがありまして、前に第三新東京市で爆発事件があったじゃないですか。その真相、何か聞いてませんか?」
『あ~~~あれか~~~もしかして何か変なことでも起きたのかい?』
「元同僚と接触しました。霧島マナって子です。彼女は戦自のスパイです。エヴァの情報を仕入れようと僕に接触してきたみたいですが、タイミングが良すぎるので」
『なるほど、そういうことか・・・シンジ君なら話をしてもいいだろう。実は戦自のほうで独自に対使徒用に極秘裏に開発された機体がある。陸上軽巡洋艦プロトタイプ“震電”それが演習場から逃げ出したという話だ。こいつの性能に関してはまだ不明だが、相当すごいらしいというのは話で聞いた。パイロットの名前は“ムサシ・リー・ストラスバーグ”彼は・・・トライデントという部隊に所属している』
「トライデントですって!?まだ残っていたのですか!?」
『ああ、元々トライデントはそのピーキーな機体を乗りこなすために生まれた部隊だからな。そこで施設での優秀な人材を登用していたということだろう。だが・・・シンジ君は・・・』
「はい、僕は・・・ゲシュペンスト(亡霊)です」
『消耗品扱いの非正規部隊、やってられないな・・・ところでネズミ(スパイ)は他になにか言っているか?』
「助けて欲しいと言われました」
『助けてか・・・ひょっとしたら彼女が言うのは・・・』
「はい、ムサシのことです。彼を助けてほしいと言われましたが、そういうことだったのですか」
『そうだよな、捕まったら問答無用で銃殺刑だからな。どうするつもりだい?シンジ君』
「僕は・・・助けたいです。ムサシは・・・僕の恩人ですから・・・彼が居なかったら僕は生きていません」
『わかった。それならうってつけの場所があるの知っているだろ?そこに移住してもらうしかないな』
「“理想郷”・・・ですね?」
『そうだ、向こうと連絡を取ってみよう。しばらくは大人しくしてくれ。いいな?』
「わかりました。お手数おかけします」
シンジは電話を切った。
(ムサシ・・・必ず助けるからね・・・)
シンジは決意を新たにした。














『今日みんなカレー食べてもいいのか!?』
『ああ、いっぱい食べろ。遠慮はするな』
『よかったね!ケイタ!』
『お代わりもあるみたいだからな!今のうちに食っとけよ!』
『うん、うん!』
『・・・・これより毒ガス訓練を抜き打ちで行う!濃度は薄いため死ぬことはないが、たくさん食べた卑しいものはその分長く苦しむことになる!』
『・・・・・・・・』
『・・・・・・・・』
『うぅ・・・くぅぅ・・・ケイタ・・・・』
『ケイタ!ケイタァァァァ!』
『まさか死ぬとはな・・・』
『仕方ないさ。どうせ落ちこぼれだ』








????コックピット
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・」
「くそ!嫌な夢を見たぜ・・・・うん?マナから通信が・・・」
「!!!シンジと接触できたのか・・・そうか・・・マナ・・・もうお前にこんなことはさせない!必ず助け出してやる!そして・・・ずっと一緒に暮らそう」



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あぐおさんからの連載いただきもの、鋼鉄編のはじまりです。
最後の回想……よくネタにされるアレですね。ケイタは犠牲になったのだ……。
次話も期待して待ちましょう。

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