神保町 昼食ニュース

2004年2月号

2004年2月1日記
2月3日補訂

五十通り

五十稲荷神社(上)とその由緒(下)
(写真をクリックすると大きい写真へジャンプ)

 千代田通りのドトールとアムールエーパンの間から東へ向かう道は,小川町と錦町の境界となっている。私はこの道を,勝手にエーパン通りと言っていたが,正しくは「五十(ごとお)通り」ということを,「五十通り名店会」というパンフレットで知った。名称は,その北側の路地にある五十稲荷神社にちなむ。
 なぜ,その通りに面していない裏道の小さな神社の名前がつくのかと思ったら,神社の前に立つ由緒書きによれば,震災以前は200坪以上の大きな敷地を持っていたのだという。安産の稲荷だということなので,出産を控えた職場の女性にさっそく知らせた。
 この通りは東へずっと行くと本郷通りへ出るが,五十通りというのは,小川町・錦町の各三丁目の部分,つまりミナミスポーツ脇の通りとの交点までを指すらしい。

 さて,その名店会のパンフレットに載っている店・会社のうち,昼食に関係のある店は次の11である。

<小料理> 弓ヶ浜 <カレー> ボンディ <ラーメン> 山頭火
すし昌 <美食酒> いずみ 神田餃子屋
<天ぷら> 魚ふじ 萬楽飯店 <蕎麦> 錦町更科
天鴻餃子房<錦町店> デニーロ

 萬楽飯店は,向いのビルの壁の案内表示に「創業明治45年」とある。やや濃厚な味の庶民的な中華で,元気のいいおねえさん2人がおじさんの客に「おにいさん,今日は何しましょ?」と声をかける。ここでは男はすべておにいさんである。
 お茶の水インペリアルビル半地下の神田餃子屋は,神保町三井ビル建設で本店が消えた神田餃子屋の流れを汲むものだと思うが,グループとは独立しているらしい。みそ野菜炒めなど,昔の本店を思わせるメニューもある。
 創業45年になるというその神田餃子屋グループの今のブランドが天鴻餃子房である(神田餃子屋という店名は人生劇場脇の駿河台下店にのみ残っている)。私はこの錦町店には,本店がなくなってからよく行くようになった。本店に昔からいたメガネのおばさんが「三十年一日」でがんばっている。

 錦町更科は創業130年,布屋太兵衛が麻布永坂に興した更科布屋の直系の店で,正確には「神田錦町麻布永坂更科分店」という。麻布十番にある更科堀井(この店は後から「再興」された)が総本家で,この錦町更科の主人も堀井さんである。[詳しくは岩崎信也『蕎麦屋の系図』(光文社新書)など参照]
 池波正太郎も愛した淡路町の名店「まつや」の先代も,ここで蕎麦打ちの修行をしたという。漫才の内海みどりは,子どものころここで奉公をしていたということで,店内にその著書が置いてある。
 老舗だが,近所の勤め人にとってはいたって気軽な「町のソバ屋」で,腰の曲がった大おかみと長身の若おかみが「旦那さん,今日はいつもので?」と共に抜群の記憶力で注文をさばいていく。この店では,男はみな旦那さん,女はみなお嬢さんである。
 調理場の中心はやや口うるさい若旦那だが,大旦那もいて,文字通り黙々と仕事をしている。昼に行く限りでは大旦那の声を聞くことはほとんどないが,ある時,午後の半端な時間に行ったら,大旦那がテーブルでなじみ客と話をしていて,意外と愛想がよかった。
 ただし,この店はご飯ものなし,酒なしという本当に「純粋なソバ屋」である(うどんはある)。しかも夜はやらないし,土日休みである。したがって,更科直系の他の店のようにグルメ本に載ったりすることもなく,もっぱら近所の人のための店である。先月書いたように,私は昨年この店に20回行ったけれど,年100回以上行っている人はかなりいるのではないかと思う。

◆ 開 店

 神保町の交差点を水道橋方向にほんの少し行った左側に,「黒田武士」という博多ラーメンの店ができたのは,昨年9月ごろだった(昨年12月号参照)。それが,1月のある日,久しぶりにその方面へ足を向けたところ,「柿岡屋」という尾道ラーメンの店に変身していた。ラーメンの激戦区となった神保町には博多ラーメンの店はかなりあるが,尾道ラーメンは初めてだと思う。
 基本的なラーメン(\650)は魚のだしにしょうゆ味で,このごろのラーメンとしては濃厚な方だ。広島高菜飯とのセット(\750)もある。

 三井住友海上の南側の路地の「かっぽうぎ」という店をたまたま見つけて入ってみた(駿河台3-7)。充実した弁当の「円居」,カレーうどんの「アツマル」のはす向かいである。
 昼はいろいろ選べる「三品定食」\700のみ。食券を買ってお盆をとり,まずメインディッシュの「大鉢」を1つ選び,次いで「小鉢」を2つ選び,ごはんとみそ汁をもらう,というシステムである。行った日の大鉢は,さば塩焼き,鮭,さばみそ煮,豆腐ハンバーグなど,小鉢は小松菜のおひたし,卵焼き,じゃこおろしなど。靖国通り南側,小川町2-3あたりの地下にある「大番」と似ているが,こちらはセルフサービスで,おかずを見てとっていくようになっている。バランスのよい食事ができそうだ。

◆ その他の動き

 テレビ東京土曜夜の「アド街ック天国」,1月24日は神田神保町の巻だった。「ベスト30」は同番組のホームページに出ている。「さぶちゃん」の3兄弟,ランチョンの親父さんと2人の息子,さぼうるの主人などが登場した。


previous
to lunch sampoto lunch mokujito cover