一絃琴(いちげんきん)はその名のとおり、細長い一枚の板に一本の糸を

  張っただけの、大変単純で素朴な楽器である。その要素は上の写真から分

  かるように、桐の板、糸巻、駒(琴柱)、そして絹糸から成る。板には勘どころ

  ( ポジション )の位置に、珊瑚や象牙の小片などを飾りのように配している。

  音を出すにはまず左手中指に差し込んだ筒状の芦管( ろかん )で、絃を軽く

  押さえて絃を必要な長さに区切る。次に、右手人差し指に差し込んだ芦管で

  駒(琴柱)近くの絃を弾く。その様子はハワイアンギターに似ている。

    能楽が、余分な要素をすべて取り去った芸術として完成されているように、

  一絃琴も楽器としての最小限の要素しか持ち合わせず、これから取り去れ

  るものは何もない。一本の絹糸と一枚の桐板は、琵琶にも似たしぶい音色

  を作り出す。 箏でもなく、ギターでもない不思議な音は、魅力的なものであ

  る。 単純な姿ゆえに、一絃琴は単純な音楽しか演奏できないように思われ

  るかもしれない。しかし、一絃琴はかなり芸術的な表現ができる楽器であり、

  その奥深い音楽は人の心を捕らえるものがある。

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