TOLKIEN'S WORLD Paintings of Middle-earth

2002.5記(最終更新日: 2003.8/10)

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書名 TOLKIEN'S WORLD Paintings of Middle-earth
画家
  • Alan Lee (10)
  • Carol Emery Phenix (2)
  • Inger Edelfeldt (7)
  • John Howe (10)
  • Michael Hague (7)
  • Robert Goldsmith (2)
  • Roger Garland (10)
  • Ted Nasmith (10)
  • Tony Galuidi (2)
()内の数字は収録作品数
出版 Harper Collins
ISBN0-261-10307-5
価格(U.K.)£14.99
エディションペーパーバック
書影 TOLKIEN'S WORLD
関連リンク

(本書の入手日: 2002.4/25)

この本は、「中つ国」を舞台にした複数の作品 〜 ホビットの冒険 ( The Hobbit )、 指輪物語 ( The Lord of the Rings ... 以下 LotRと略記 )、 シルマリルの物語 ( The Silmarillion )、 The History of Middle-earth ( 以下 HoMe と略記 ) 〜 から選ばれたシーンを題材にして、 「中つ国」を愛する海外の9人の画家が描いた60枚の絵を収録した画集です。

トールキン関連書のカバー・アートや挿絵などで、 多数の質の高い仕事をして多くのトールキンファンを唸らせ、 ピーター・ジャクソン(Peter Jackson)監督にも請われて映画版 The Lord of the Rings では、 コンセプチュアル・アートを担当した、アラン・リー(Alan Lee)とジョン・ハウ(John Howe)、 中つ国作品の風景画を書かせると天下一品のテド・ネイスミス(Ted Nasmith)、 色彩と造型に強烈な才気と個性を感じさせるロジャー・ガーランド(Roger Garland)らが描く絵の、 (見開きで)隣のページには、 その場面の原文からの引用が添えられており、 トールキンの「中つ国」作品の名文、名場面とともに、 各画家が文章からイマジネーションを膨らませてビジュアル化した力作の数々を楽しめる趣向になっています。

また、巻末には、"ABOUT THE ARTIST"として、各画家が、自分自身のこと、 トールキン作品との関わりや思い入れ、作品を描く際の気構えや苦労話などについて書いた、 興味深い内容のコメントが1ページずつあります。 尚、"Realms of Tolkien"という、 本書と同様の趣向の続編も出版されています。

本書は、評論社から邦訳 「トールキンズワールド―中つ国を描く」が出ており、 既存邦訳のある中つ国作品からの引用には瀬田貞二さんと田中明子さんによる名訳が使用されていて、 未邦訳作品からの引用もこの邦訳用に新たに訳出されていますから、 原文に拘らない日本語で読みたい方はこちらを買った方がいいかもしれません。 実は、僕は最初、邦訳を買おうとしたのですが、2002.4月の時点では、邦訳は出版社で在庫切れで入手が難しくなっていたこともあり、いつになるか、あるかどうかも分からない重版が出まわるのを待ちきれず、 原書で購入することにしました。 原書のハードカバー版も在庫切れだったので、本書ペーパーバック版を購入。カバー表絵は、 中にも収録されている、Ted Nasmithの"THE ANGER OF THE MOUNTAIN"が使われています。 本書は、ソフトカバーのペーパーバックですが、中の紙質などの品質は良質で、 一般的なハードカバーの画集と比べて遜色ないように思います。

邦訳の替わりとして買ったこの原書でしたが、 買ってみると、思いの外、品質の良いものが、邦訳に比べて随分安い値段で買えましたし、 トールキンの美しい原文とともに、絵を楽しむのもいいものですから、 良い買い物だったと思っています。 本書が引用している中つ国作品を原書で全部買おうとは思わないが、 原文を一部でも読んでみたい方などにも、この原書はいいかもしれません。

本書は、様々な画家の絵を、楽しめる点がいいところですね。 これまでも、Alan Lee、John Howe、Ted Nasmithなどは、何枚か見る機会があったのですが、 未見の彼らの絵のみならず、彼ら以外のこれまで見る機会のなかった画家達のイラストを、 たくさん楽しむことができました。 例えば、Roger Garland の絵は、僕は、この本ではじめて見たのですが、 その、これぞ真の個性的と言うべきであろう、独特で強烈な、色使いと生物の造形に、 目を見張らされました。"THE LORD OF THE NAZUGUL"は、必見ですぞ。

逆に、一人あたり2枚〜10枚だから、もっとこの人の絵を見たい・・・ という贅沢な欲求不満も出てきて、 Alan Leeの50枚の挿絵入りのLotR(本書にもその挿絵の一部が収録されている)や (現在、邦訳だと「全三巻の愛蔵版」、原書だと、 「挿絵入り3冊本(米国版)」、 「挿絵入り3冊本(英国版)」、 「挿絵入り1冊本(米国版)」、 「挿絵入り1冊本(英国版)」等で、Alan Leeの挿絵が楽しめるようです)、 John Howe の画集「Myth & Magic」などが欲しくなりました。

僕は、英語はかなり苦手なのですが、文章のほとんどを占める引用部分は、HoMeからの引用を除けば、 邦訳が存在しますから、分らないときはそちらを参照できますし、 残る文章部分(裏表紙に描かれた本書の紹介文、トールキンの略歴、 "ABOUT THE ARTIST")は、僕の非常に乏しい英語力でも辞書を引きながらですが、ほとんどが、 概ねの意味を読み取ることができました(英語が少しでも出きる人から見たら、 読めたうちに入っていないと思われる程度かもしれませんが)。ただ、HoMeからの引用部分には、 どうしても僕の拙い英語力では意味がつかめないところがあったので(英語きちんと勉強しなくっちゃいけないなぁ)、 評論社から出ている邦訳の文章も見てみたくなりました。

上記したように、引用に該当する邦訳も随時照らし合わせながら本書を読んだのですが、 各絵と、引用の邦訳書における該当部分のある頁との対応表を作ってみました (当然、僕の持っている版の範囲でですが)。 同じように、本書を読まれる方が、必要であれば、参考にしてみてください。 参考までに、手持ちの原書での該当ページと、 備考欄に、タイトルの一部に対応する、瀬田貞二さん、田中明子さんによる訳語を書いておきました。 本書自身の訳書「トールキンズワールド―中つ国を描く」における訳は見ていないので、 そちらとは多少異なるものもあるかもしれません。

(2003 1/31追記) 図書館で、訳書「トールキンズワールド―中つ国を描く」(1994.8/30発行 初版)を借りることが出来たので、 同訳書でのタイトルを対応表の"訳書タイトル"欄に記載しました。 これに伴い備考欄の訳語記述は削除しました。 ついでに、ハードカバー版の「ホビットの冒険」(1987.7/20発行 第14刷)も借りてきたので、同邦訳ページも記載しました。

(2003 2/1追記) この下に記述していた、表部分を切り出し、独立したページに移動しました。

引用部分出典の邦訳・原書対応表へ


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