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 夜の世界
 
「昼の世界」から帰ってから七日目の夜、鳥は
 再び目覚め、男の子を夜の世界へとつれ出した。
 今度はトンネルの先も暗かった。そこは月の光
 にぼんやりと浮かび上がる深い森の中。植物の
 精が出迎えてくれたが、顔色が少し青ざめてい
 た。
  まわりは木々が鬱蒼と生い茂り、闇と静寂に
 つつまれていた。風はほとんど吹いておらず、
 空気は少し湿り気を帯びている。
 「ここは限り無く夜の続く世界、休息と熟成と
 回帰の世界です。総てのものが、元々は一つの
 ものから別れていったということを教えてくれ
 る所です。」
  木の枝に腰掛け、闇のなかにじっとしている
 と、男の子の胸にやすらぎと懐かしさが伝わっ
 てきた。遠くに視線を移すに従って、葉や枝が
 少しずつ闇に溶け込んで行き、最後はなにも区
 別のつかない空間に消えていった。目をつぶる
 と、まるで自分もその木の一部になっていくよ
 うな気がした。

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