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  輝くような明るさの中で、まわりの物は鮮明
 に目に映ってきた。葉の一枚一枚、葉脈の細い線、
 さらにはその上の雫に映った白い雲まで、およそ
 目に入る物は、限りなく細部まで男の子の目をい
 ざなった。その鮮やかさは目に痛いほどだった。
 曖昧なものは何一つなかった。
  その時突然、目の前にバッタが飛びだし、その
 まま青空に吸い込まれるように消えていった。こ
 こは成長のエネルギーに満ち溢れていたが、休息
 はなかった。しまいに男の子は何処か薄暗がりを
 捜している自分に気がついた。
 「ここには闇というものがありません。闇は光と
 同じくらい大切なものです。つぎにあなたは夜の
 世界につれて行ってもらうことになるでしよう。」
 言い終わると、植物の精は光に溶けて行くように
 つま先から消えていった。鳥がそれに合わせるよ
 うに飛び立ち、同時に男の子の身体もまた消えて
 いた。

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