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夕暮れの世界
鳥はいつも何の前触れもなく目覚め、
男の子を別世界に誘った。「今日あな
たが行くところは、私が最も好きな夕
暮れの世界です。」
着いたところは、夕日が沈み残光が
明るく空に残っている、おだやかな風
景が広がる世界だった。
「ここは昼でもなく夜でもないその狭
間、永遠を感じさせてくれる世界です。」
草の上から植物の精が気持ち良さそう
に声をかけた。
ルネッサンスの天才画家が、デッサ
ンをするのに最も適した光は夕方の光
だと絵画論に書いていたのを男の子は
思い出した。明る過ぎもせず暗過ぎも
しない光は、物の陰影を最も美しく浮
かび上がらせる。夕暮れの淡い光のな
かでなら、どんなものも調和と幻想に
彩られた魅惑的な姿に映るのではない
だろうかと思われた。