m@stervision pinkarchives 2002

★ ★ ★ ★ ★ =すばらしい
★ ★ ★ ★ =とてもおもしろい
★ ★ ★ =おもしろい
★ ★ =つまらない
=どうしようもない



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三十路色情飼育 し・た・た・り(加藤文彦)

監督・脚本が「団鬼六 少女木馬責め」「ロリコン・ハウス おしめりジュンコ」「レイプハンター 通り魔」の加藤文彦、主演が「箱の中の女」の木築沙絵子…って、にっかつロマンポルノの旧作再映?と勘違いしてしまうそうな顔合わせによるエクセスの新作。これも1980年代リバイバル・ブームの一端なのか?(たぶん違います) 加藤文彦は1990年代もH系Vシネマなどを撮りつづけていたようだが、木築沙絵子にいたっては十数年ぶりのカムバックである。おそらく小沼勝のドキュメンタリー「サディスティック&マゾヒスティック」にコメント出演したことで再発見された…すなわち日活/エクセス関係者に「まだイケるじゃん」と思われたってことなんだろうが、日活/エクセス関係者はイケると思ったかしらんが、おれにはちょっとキツかった。もともと小顔で可愛らしさがウリだった女優さんだが、寄る年波には勝てず顔の筋肉が弛んでしまい、なんかカムバック後の小川真実みたいな顔になっちゃってるのだ。 ● ヒロインは三十すぎの地味な事務系OL。彼女が人との接触を避けて目立たぬように生きているのにはわけがある。じつは巫女の血筋をひいている彼女には他人の性的欲望が〈ヴィジョン〉として見えてしまうのだ。折りしも、性的に奔放な隣人が「ヘンタイ男から匿って」と彼女の部屋に強引に上がり込んで来て以来、ヒロインは自分が主人公となった性夢を頻繁に見るようになり、だんだんと夢と現実の境目が曖昧になっていく…。 ● つまり「地味な/清楚なヒロインが性的に目覚めることによって妖艶に変貌していく様を魅せる」ことを眼目としたストーリーのバリエーションである。普通のポルノ女優さんだと序盤の「地味なヒロイン」のほうに無理があって、その黒縁メガネは変でしょうってなケースがほとんどなのだが、本篇の木築沙絵子の場合「魅力に乏しい地味な三十路OL」のほうが似合っちゃってるってのはどーなのよ!? 加藤文彦の意図するところは判らんではないが、肝心のヒロインの変貌が描かれないのでは意欲も空回り。 ● 奔放な隣人に、ゆき。同僚のキャピキャピ巨乳OLに中渡実果。劇中の妄想シーンにOLをコピー機に座らせてコピーを取る場面があり「女性器のかなり鮮明なモノクロ・コピー」が大写しになるのだが、最近の映倫はコピーならOKなのか?[エクセス]

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義母の秘密 息子愛撫(渡辺護)

周知のようにピンク映画というのは1本たかだか300万だか350万だかで作られているのだが、そのわずかな金額にしたって、この世知辛い世の中にエクセス(新日本映像)なり大蔵映画なりが、前金で監督にポンとくれるはずもなく、おそらくはキャッシュ・オン・デリバリー、すなわち完成した作品を納品して初めて翌々月5日払いとかになるのだと思われる。エクセスや大蔵映画の作品にかならず「製作会社」がクレジットされているのは、つまりそういう意味だろう(新東宝だけは会社持ちかもしれない) ● なんでこんな話から始めたかと言うと、じつは本作には「製作:ENKプロモーション・渡辺護 後援会・樫原辰郎」とクレジットされるのである。ENKというのは大阪でピンク映画館/ホモ映画館を経営している会社で、前からホモ映画の製作を行っている。樫原辰郎は関西人の脚本家。だが「渡辺護 後援会」って何だ? いやじつはこの人たちは、ぷがじゃが ぴあ関西版に潰されて以来、ピンク映画の情報ソースが無くなってしまった大阪で「ぴんくりんく」という、ピンク映画の上映案内を中心としたフリーペーパーを出しているピンク映画ファンの有志の人たちなのである。つまり一般の映画ファンが「渡辺護の新作が観たい」と350万円(の一部)を用意したわけだ。ピンク映画40年の歴史の中でもファン製作の映画ってのは初めてじゃないか? なんとも画期的な出来事ではないか(…いや、おれは入場料金以上は出しませんよビタ一文。言ってきても無駄ですからね) ● さて、そのような事情で製作された本作。2001年の秋に新東宝「若妻快楽レッスン 虜」で華麗なる復活を遂げた渡辺護だが、1年ぶりとなる本作では、その古色蒼然たる芸風が裏目に出てしまったようだ。この人のドラマツルギーは完全に過去のものなので、それを今日の映画として成立させるためには(山田洋次の「たそがれ清兵衛」がそうであったように)完全に今日性を消し去って「時代劇」として撮る必要があり、しかしながら「時代劇」を撮るためには時代劇のスキルを持ったスタッフと、そうした演技のできる役者を揃えることが不可欠なのだ。 ● そこにおいて今回、(エクセス封切館を経営するENKが出資している絡みか)エクセス配給となってしまったことが結果的に頸を締めた。エクセスでは(愛染恭子や小林ひとみクラスの例外を除いては)「主演女優はエクセス映画初出演に限る」というシバリがあるのだ。ヒロインに起用された新人・相沢ひろみ は、これが新田栄 作品なら充分に合格点だが、渡辺護の「時代劇」にはいかんせんスキルが低すぎた。 ● 脇を固めるべき水原香菜恵と山咲小春も「渡辺護の考える若い女」として(前作の佐々木ユメカのセーラー服の衝撃度をはるかに上まわる)おそるべきヘアメイク&衣裳&言動を振り付けられてしまっている。だれか「監督、それ変ですよ」って言ってやれよ。それが「敬意」ってもんだろが。てゆーか、いっそ山咲小春を主演にすれば良かったのに。結局、この世界に違和感なくハマっていたのはベテラン、野上正義だけだった。次回作に期待する。[エクセス]

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不倫する人妻 眩暈(田尻裕司)

夫がリストラされて、妻が元の職場に再就職。そこにはかつての不倫相手が。ヒロインの心が揺らぐ・・・という、佐々木ユメカ主演のラブ・ストーリー。撮影・飯岡聖英がここしばらく研究していた手持ち中心の新しいスタイルを完成させ、佐々木ユメカの最高にキレイな瞬間をフィルムに焼き付けている。1時間のあいだ、ひたすら佐々木ユメカだけを追いかけていられる至福の時間(ただ、演技はクサくなる一歩手前なので要注意だ>ユメカさん) 田尻裕司はいつもながらピンク映画的誇張を周到に避け、登場人物の心情をリアルに描写していく。…なんだけど、濡れ場だけがリアルじゃないのはなぜ? セックスシーンで下半身を絶対に映さないのは何故だ。まるでR-15作品のよう。まさか最初っからWOWOWに売ることを考えてるんじゃあるめえな? ● 星4つに限りなく近いのだが、なぜ3つどまりかと言うと、ラストのヒロインの「選択」が理解できないから。…いや、同感できないとかそーゆー話じゃなくて、ヒロインが「何を」選択したのかが画面から理解不能なのだ。だれかおれに「あれはこういうことなんですよ」と解説してくれ。まあ、これは脚本家(西田直子)の罪ではなく、おそらく演出がへたくそなんだろうと思う。あと、キメに音楽ネタを使うんなら、もっと観客の心に残るように「前フリ」を強調しとかないとダメでしょ。 ● 元の職場の先輩/かつての不倫相手に、松原正隆。 その、今の不倫相手/ヒロインの後輩に、ちょっと林由美香 似の佐倉麻美。 ヒロインの年の離れた夫に、佐野和宏(!) その、別れた前の奥さんに、あきのなぎさ。←佐野和宏と年齢/雰囲気的に釣り合いのとれた新人を見つけてきたのは偉い。[国映=新東宝]

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人妻淫交(深町章)

深町章が自分で脚本も書いて、いつもの貸し一軒家スタジオで撮った、いつもの「妻を上手いこと出し抜いたつもりが、騙されていたのは…」という艶笑コメディ。ちゃんと劇伴を付ければもう少し間が持つと思うんだが…。 ● 夫に かわさきひろゆき。 妻に「作家と妻とその愛人」に続いて深町組2作目の(金井悦子 改め)福永悦子。 愛人1号に里見瑤子。 愛人2号(…いや愛人はみんな2号ですが)に風間今日子。 美大生の若いツバメに(岡輝男こと)丘尚輝…って、なにもクサレ脚本家なんぞ使わずとも深町章ご贔屓の岡田智宏を使えばいいじゃないの。てゆーか、あの演技の幅が極端に狭い岡田智宏を、この役に使わなくてどこに使うっちゅうの。[新東宝]

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夢野まりあ 超・淫乱女の私性活(山内大輔)

山内大輔のピンク映画デビュー作(脚本も) プロフィールを見るとまだ30歳だが、企画・脚本・監督を手掛けた幾多の鬼畜系Vシネマの監督としてその筋では有名のようだ。 ● 田舎者の被害妄想男が、女教師やキャバ嬢やソープ姫の何気ないひと言や営業トークを「自分に優しくしてくれた」と勘違いしてフラれては逆ギレして拉致監禁暴行を重ねるという話。タイトルロールの贋乳AVクイーン 夢野まりあ が3人目の被害者のソープ姫で、彼女を拉致した被害妄想男(柳東史)が、最初の2人=女教師(山咲小春)とキャバ嬢(ゆき)との「悲しい想い出」を語る…という構成。ほとんどドラマらしいドラマはなく、個々の描写のエゲつなさで(本来なら)観せていくシャシンである。つまりかつての佐藤寿保+渡剛敏コンビの系譜だ。ところが、どうも会社から厳しい描写規制がかかったようで、得意技の血みどろ鬼畜描写を封じられて、それらしい雰囲気だけの、ただの「退屈なピンク映画」になってしまった。残念でした。国映に行きなさい国映に。[エクセス]

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美人スチュワーデス 制服を汚さないで…(下元哲)[キネコ作品]

「スチュワーデスもの」のポルノには機内セックスが必須なわけだが、ピンク映画に飛行機を貸してくれる航空会社などあろうはずもなく、したがってすべてのピンク映画の(てゆーか、もっぱらエクセス作品の)機内シーンは同一の、それ専用に設置された機内後部数列分のセットで撮影されている。ところが本作では本物の「機内実景」が巧みにセット撮影部分と組み合わされていて、これはおそらく下元哲が、北沢幸雄 監督のオール韓国ロケ作品「韓国の人妻たち 激しく、淫らに」(同じエクセス系で前週公開済)にカメラマンとして同行した際の隠し撮り映像と思われる(画調を合わせるために、わざわざ本篇もビデオ撮りにしている) いやサスガ。金のない分、アタマを使えってこってすな。感服した。 …え、中身? まあ中身は特記するほどのもんじゃないっスよ(<おい) 桜田由加里、風間今日子、佐々木基子、しのざきさとみ の出演。[エクセス]

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ノーパン若妻 おもちゃで失神(国沢実)

それぞれの単独作を挟んでおよそ1年ぶりとなる国沢実+樫原辰郎(脚本)コンビの新作。 ● 貧血症の若妻が近所の主婦の勧めで訪れた有機野菜専門の八百屋はじつは性の魔道士で、ヒロインはずぶずぶと性の魔悦に堕ちていく。あんたに足りないのは野菜だけじゃない。カゴメ野菜性活100・・・という話。 ● 脚本はこれでいいんだけど、国沢実という監督はねちっこい演出が出来ない人なので、ポルノ映画としてはいまひとつもふたつも物足りない。野菜を使ってのあんなことこんなことも、もっとフェティッシュにねっとりと撮らなきゃ。撮影の岩崎智之は果敢に変わったフレーミングを試みて、無残に実力不足を露呈した。八百屋が伊藤猛、ヒロインを禁断の世界に誘い込む女に葉月螢というキャスティングなので、この2人がカラんでるとなんか国映の映画を観てるみたいだし。ここはやっぱり八百屋に中村和彦、女に風間今日子でキマリでしょ。…あ、それじゃまるきり山崎邦紀か。 ● ヒロインのAV女優の中河原椿は(いろいろ好みもあるにせよ)ほぼブスの側で、そのうえ演技が壮絶に下手。「貧血でよろける演技」には観てるこっちがクラッと来たぜ。[オーピー/大蔵映画]

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いんらん夫人 覗かれた情事(加藤義一)

今年(2002年)のデビューなのに早くもこれで4本目となる頼もしき新人監督=加藤義一の最新作。脚本はデビュー以来コンビを組んでいる(田吾作こと)岡輝男。昭和20年の敗戦直前から物語が始まる時代もの。深町章が新東宝で連作している「鍵穴」シリーズの一篇として今年、岡輝男が提供した「赤い長襦袢 人妻乱れ床」と同系統の贋作・江戸川乱歩である。中国・日本の怪談の一典型としてある「男が人里はなれた屋敷で絶世の美女に会い、恋仲となるが彼女はじつは…」というパターンに、八百比丘尼伝説と乱歩の「芋虫」を巧みに組み合わせて、ヒロインの愛情の強さと裏腹の執念深さを描き出した脚本は今回、かなりのセンまで行っている。もう少し話を整理すれば「傑作」と呼んでもいいかもしれない。加藤義一にとっての不幸は、2作目「京女、今宵も濡らして」、3作目「スチュワーデス 腰振り逆噴射」とヒロインを好演してきた(和服の似合う)沢木まゆみ が本作の撮影を前に女優引退してしまったことだ。代わりに起用された(当サイト推測)新人・水沢百花は、見た目は悪くないのだが「鬼気迫るファム・ファタル」を演じるには力量不足であった。まあ、とりあえず乱歩の雰囲気はよく出ているので、おれは楽しめた。 ● 主人公に竹本泰志。ヒロインの夫に、なかみつせいじ。他に、佐倉萌・相沢知美・吉田祐健・坂入正三の出演。最後に田吾ちゃんに、ひとつツッコんどくと「敵兵になど殺されてなるものか」じゃなくて「殺さて」だろ。[オーピー/大蔵映画]

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にっぽん淫欲伝 姫狩り(藤原健一)

新東宝がビデオ会社と組んで始めた新企画「ピンクX(エックス)」の最新作。今度は時代劇である。戦国時代。峠を越えて隣国に逃れんとする「鈴鹿の国」の姫と、姫の命を狙う敵国の刺客たち。セットを作る費用がないので舞台はほとんど山中。見た目としては「羅生門」あたりに近い。監督&脚本はVシネ中心に活躍し、ピンクは傑作「痴漢ストーカー 狙われた美人モデル」に続いて2本目となる藤原健一。殺陣も「まさか殺陣師を雇ってる?」ってほどマトモだし、限られた予算でなんとか時代劇らしさを醸し出そうと苦心してるのは判るが、でも、そもそもピンク映画で真面目に時代劇やってどーするよ。「戦国の世の無情」を嘆かれたり「運命の残酷さ」を呪ったりされてもなあ。そのわりには、なぜか濡れ場だけ「現代のAVタッチ」の激しいもので「姫」というからには処女だろにいきなり男に馬乗りかい! なんともチグハグな印象なのである。あと、チープな劇伴が映画全体を2割安にしている。 ● ヒロインのAV女優・西村萌は、林由美香をさらに可愛くした感じ。助演:風間今日子、美咲レイラ。愛染恭子が脱ぎなしの特別出演。[新東宝=ジャパンホームビデオ]

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高校教師 異常な性癖(坂本太)

坂本太 監督としては、昨年(2001年)の草凪純 主演「高校美教師 ふしだらに調教」に続くフランス書院文庫もの。ただ今回は脚本が有馬仟世から田吾作に代わったので、出来のほうもそれにつれて2ランク、ダウン。こうした話では「女教師がよんどころない事情で〈魔少年〉に逆らえず言われるままに犯される」件りが、いちばんの山場なのに、そこにポルノとしてのリアリティがないのだ。その後の展開もぐずぐず。岡輝男はフランス書院文庫とかSM小説誌とか読んだことないのか? …あ、いや、おれもよく知りませんけど。 ● ヒロインの被虐女教師に、つかもと友希。魔少年に、しらとまさひさ。他に、なかみつせいじ・ゆき・相沢知美・吉田祐健の出演。[エクセス]


人妻不純交際 奥の奥まで(新田栄)

ポスターを見たときからいやーな予感はあったのだが。ドッカーン!またもや新田組のどブス主演映画である。勘弁してくださいよ、ほんと。いくらエクセスは「ピンク映画初出演のコを主演にする」のが会社の方針だからってこんなんじゃ集客効果はゼロどころかマイナスだろうに。タイトルが終わる前に退出したので中身は不詳。林由美香と風間今日子が共演(らしい)[エクセス]

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若妻 敏感な茂み(小川欽也)

老害監督・小川欽也の作品なので封切時は一度は見送ったんだが、「美女濡れ酒場」のヒロインと「痴漢バス2 三十路の火照り」の少年役で今年の女優賞確実な山咲小春の主演作とあって(BBSで諭されたこともあり)思い直して飯田橋くららで落穂拾い。どんなに場内が汚くても椅子が壊れてても場内をハッテン目的のホモの皆さんがうろうろしてても構わんから、とりあえず音が割れるのだけは修理してくれ>くらら。スピーカー・コーンが破れてるんじゃないか? ● ま、話は「夫婦仲の危機と修復」をテーマとしたよくある話で、とりたててどーこー言うような代物ではないが、山咲小春の白い裸身はたっぷりと楽しめるように作られているので「商品」としては国映の若手監督の作品よりなんぼかマトモである。共演:南星良・清水佐知子・竹本泰志・なかみつせいじ。[オーピー/大蔵映画]

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川奈まり子 桜貝の甘い水(小林悟)

ピンク映画の第1号といわれる「肉体市場」(1962)の監督であり、おそらく世界でいちばん沢山の映画を監督している超・大ベテラン 小林悟は本作の撮影中に亡くなった(仕上げは助監督が行った由) 文字どおりの「遺作」である。タイトルから察せられるように内容は今村昌平「赤い橋の下の甘い水」の変奏。まあ、いまさら死者に鞭打つのもアレなので出来についてはノー・コメントとする。[オーピー/大蔵映画]



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ロスト・ヴァージン やみつき援助交際(サトウトシキ)

脚本:今岡信治 撮影:広中康人 音楽:山田勳生

10年前の夏、彼女は18歳の女子高生。はやくヴァージンを捨てたくってテレクラに電話した。あやうく手錠変態男の餌食になるところを逃げ出して、たまたま出くわした同級生のタカシに手錠の鎖を切ってもらった。よし、と思ってタカシにヴァージンをあげたけど、タカシにはカノジョがいたので、それはそれきりだった。 5年前の夏、彼女は23歳の事務系OL。カレシと同棲してても、テレクラ援交は続けてる。べつに悪いこととか思わないし罪の意識なんて感じない。そうすることはもう生活の一部だから。彼女はタカシと再会する。カノジョとデキちゃった結婚をして、バーテンをやってた。なんだかショボくれてた。酔ったイキオイでヤッちゃったけど、それはそれきりだった。 そして今年の夏、彼女は28歳の牛丼屋バイト。いろいろあってOLは辞めてしまった。いまでもエンジョは続けてて、だけどもはやお金のためとかでもなくて、だからお金のない大学生にはタダでもヤらせてあげてて…あれ? それってカレシ? タカシと再会した。離婚してた。今度こそ2人は一緒になるかもしれない。ならないかもしれない。だって5年後や10年後のことなんて誰がわかる? でも、そうして続いていく。続けていく。人生を。 ● 総くずれだった2002年の国映勢のなかで孤軍奮闘のサトウトシキ。盟友の脚本家・小林政広のピンク映画からの離脱にともなって後輩の今岡信治を座付き脚本家に指定。ここしばらく試行錯誤してきた成果がついに結実した。ぐずぐずだらだら不定形の魅力の今岡節が、かっちりと作りこむ構成のはっきりしたトシキ調と融合して生まれた2002年の日本映画を代表する青春映画の傑作。 ● 小林政広が描いてきたのは夏の終わり、あるいはすでに秋を生きている人々だった。今岡信治が描くのは終わらない夏である。「夏」といっても「日差しギラギラ青春まっさかり」な夏じゃない。あぢー、なーもする気になんねーよぉ…な夏だ。いつか終わらせなきゃいけない、いいかげんキリをつけなきゃいけないと判っちゃいるが、終わらせ方がわかんない。今岡は青春の終わりを描かない。青春はスパッと終わったりはしないから。それはただ、うだうだと続いていくのだ。 ● 不定形なストーリーとならぶ今岡のもうひとつの特技がダイアローグの絶妙さで、たとえば友だちと2人で3P援交して、そしたら男が妙に絶倫へとへとで帰る池袋の陸橋の上「…始発 動いてるかな?」「タクシー拾おうよ。…あ、いまの空車だった」「マジぃ!?」「あー眠い」「ねえ、デニーズ行く?」「帰ろうよ」「あー、デニーズ行ってグラスビール飲みてえ」「何者だよおまえ」…とか、実際、劇中に「…会話、はずまねえなあ」という台詞もあるのだが、弾まないダイアローグの上手さは余人の追随を許さない。 ● さて、ここまで演出がどーの脚本がどーのと書いてきたが、じつは本作の魅力の大半はヒロインを演じた新人・佐々木日記に負っている。とりたて美人じゃないけど、そこそこ可愛くて「もうぼろぼろっス」とか、すぐ語尾にが付いて「うっせーよ」が口癖で、適度にだらしなくて適度に間が抜けてて、でもなんだか健気な感じがたまらなく愛おしい。このコ、なんとピンク映画界のクール・ビューティ 佐々木ユメカの妹さんだそうで、なるほど雰囲気が似てて声とかそっくり(最初、佐々木ユメカがアテレコしてんのかと思った) きっと広島からお姉ちゃんを訪ねて上京してきて「ねえお姉ちゃん、女優なんでしょ。ギョーカイの人、紹介してよ!」とか言われて「ギョーカイってもねえ…」とか思いながらもしょーがないからセッティングして、でも瀬々さんだと妹に何するか判ったもんじゃないからトシキさんで…ってことでサトウトシキと一緒に食事をして、ところがサトウトシキもさるもの、お姉ちゃんがトイレに立った隙に妹を口説き落としてスカウトしちゃったんだろうなあ(当サイト推測) まさに映画監督の鑑。なんとも鬼畜な 素晴らしい心がけである。 お姉ちゃんより微乳だけど、演技力ではどうしてどうして互角に張り合えるのではないか。佐々木ユメカさんにおかれてはぜひとも妹さん&サトウトシキ監督と仲直りして(当サイト推測)いっぺんでいいから姉妹共演作をお願いしたいところである。 ● タカシに長身の(=佐々木日記と並ぶと彼女が肩までしかない)松永大司(「ウォーターボーイズ」の望月役) タカシの彼女にちょっと林由美香 似の新人・佐倉麻美。 ヒロインの親友に新人・斉藤知香。 手錠変態男に(羅門ナカこと)今岡信治。 なお、カラオケ場面には今回もちゃんとオリジナル曲(「プール」詩:今岡信治/曲:山田勳生)が用意されている。[国映=新東宝]

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女スパイ 太股エロ仕掛け(渡邊元嗣)

渡邊元嗣が不調である。せっかくテレビ「あいのり」出身のデヴィ(日本人)という西藤尚 系統の笑顔一発キャラを主演女優に迎えてるというのに、そしてまた「秘密裏に日本に潜入した某国の偉大なる首領さまが装着しておられる悪魔のセックス兵器〈ゴールドペニス〉の争奪をめぐるスパイ・アクション」という荒唐無稽な題材を得ながら、いっこうに画面がハジけてこないのだ。これはたぶん脚本(山崎浩治)の責が大きくて、中野貴雄と違って渡邊元嗣の場合、あくまで中心にヒロインのラブ・ストーリーが無いと、たぶん脚本のどこに感情移入すればいいか判らなくって、途方に暮れてしまうのだ、きっとあの男は。基本的に守備範囲のすごーく狭い監督なのである。まあ、プロの監督になんでそこまで気を遣わなにゃならんのかという話もあるが、それをおいといても山崎浩治の脚本は頭のてっぺんから尻尾の先まで、ただただバカバカしいだけで、どこにもがない。たとえバカバカしさが売りもののギャグ映画であっても登場人物の行動に一片の真情がなければ、観客の心には届かない(たしかに世の中には「徹頭徹尾ナンセンスなだけの傑作」というものも存在するが、それを作れるのは真の天才だけだ) ● 日本の風俗大好き!な偉大なる首領さま、金玉男(キン・ギョクナン)に、ささきまこと(時節柄あんましそのまんまじゃヤバいと思ったのか、なぜかターバン姿) その配下の、鋼鉄のブラジャー・ブーメランを使う凄腕ボディガード「豹の牙」に、ゆき。じつは本作でのいちばんの収穫はこの人で、スラッとしたプロポーションがコスプレものにハマるのだ。濡れ場もいちばん(渡邊元嗣の)気合いが入ってたし。次はいっそ ゆき主演でどうよ?>ナベちゃん(だから馴れ馴れしいってば) 風俗嬢に化けた潜入スパイにわれらが林由美香。 そしてヒロインとコンビを組む高名なスパイ「ジェームズ板東」──字面で見ると判んないかな。若山弦蔵の声で読んでみそ>わたしの名は坂東。ジェームズ板東。──に、十日市秀悦あらため、秀。どーも難しい台詞はしゃべり慣れてないらしく「近年、脅威を増す某国に対する決定的な外交カドーとなるのだ」って、外交カドーってなんですかカドーって? てゆーか、録り直せよアフレコなんだから。[オーピー/大蔵映画]

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紅姉妹(団鬼六)[キネコ作品]

原作・脚本:団鬼六

もっと、どーしよーもないVシネみたいなのを覚悟してったんだが、意外にまあまあちゃんとした映画だった。もっとも団鬼六 本人がインタビューで言ってるとおり、実際には「脚本・監督補」としてクレジットされている亀井亨なる新人が執行導演を務めたようだが。 ● 新東宝「ピンクX(ピンク・エックス)」の第4弾。なんと前後篇あわせて110分という大作で、新東宝チェーンでの封切りに先立って銀座シネパトスで先行レイトショーされた。ライン・プロデューサーに藤原健一が入っており、出演者の顔ぶれにはピンクX第3弾だった藤原の「にっぽん淫欲伝 姫狩り」や、ピンクXの1作目で やはり藤原がライン・プロデューサーだった「愛染恭子の 痴漢病棟」とのダブリが多い(おお、また端役で中川真緒が出てる!) てことは、つまり「紅姉妹 製作委員会」の正体はジャパンホームビデオってことですね。 ● ストーリーは「老舗料亭の美人姉妹が悪徳高利貸しの魔手に落ちる」とわずか23文字で要約されてしまうもので、かつての「団鬼六 原作」と銘打った数々の作品を見慣れた目には目新しいものはない。というか、団鬼六の世界においてはヒロインは絶対的に「貴婦人」でなくてはならず、あくまで「貴婦人が辱めを受ける」からイイのである。イマドキの「ウッソー!? オヤジと寝るだけで借金チャラにしてくれんの!? それって超ラッキー(はあと)」というコじゃ話が成立せんのだ。大先生としては敢えて大時代的な話をじっくりと演出して「これぞ鬼六SMの神髄なり」と示したかったようだが、いかんせん今のピンク映画界には(女中とか仲居はいても)「貴婦人」を演じられる女優がいない。本作のヒロイン、小川美那子は1985年、にっかつロマンポルノでデビュー。ロマンポルノ消滅後も途切れることなくH系Vシネマに出続けている大ベテランで、しかも(JMDbによれば)フィルモグラフィーに団鬼六 作品が8本もあるという、現状では比較的ベストに近い選択だとは思うが、この人はSM映画のヒロインとしては肉体が貧弱なのだ。 ● 団鬼六 自身は過去の映画化作品を「描写がハードすぎる。裸を見せればいいというものではない」と批判しているが、だがしかし団鬼六 小説のクライマックスはつねに「逡巡の末に帯を解いた貴婦人の神々しいまでの裸身」であったり「結局のところ男どもを圧倒してしまうヒロインの貪欲な性(せい)」ではなかったか。本作では脱ぐまでのどーたらこーたらを延々とやってるが、脱いだ後のヒロインの屈辱から解放へといたるべき心境と肉体の変化の描写をなおざりにしている。それでは本末転倒だろう。…ま、SMものに関しちゃ結論はつねに谷ナオミは偉大だったってことなんスけどね。 ● チラシに律儀に「キネコ作品」と記載する新東宝の正直さは評価するものの、やはり女のハダカを魅せる映画をビデオで撮るのは間違っている。肌がほんのり赤らんだりするさまや、縄で絞り出された乳房に光る玉の汗の「美しさ」を魅せるのがSM映画というものでしょう。 ● さて、そんななかで唯一の「本物」が、悪徳高利貸しを演じる、ピンク映画界の大ベテラン=港雄一の存在感である。なにしろあーたこの映画は港雄一の凶悪な面構えの眉顎アップから始まるのだ。思わず避けたよ椅子の上で、おれは。犯罪が露呈して取調室で螢雪次朗 演じる刑事にあらましを語る…という体裁ゆえ、全篇に彼のナレーションが入り、もはや実質的な主役と言っていいだろう。まあ、だけどピンク映画を男優目当てでは見ないものなあ。 ● 意外な好演が、ヒロインのろくでなしの婿養子亭主の「邪悪な愛人」役の愛染恭子。団鬼六の小説では定番の「淑やかで高貴なヒロインを逆恨みする下品で下賤な女」というポジションで、べつに演技が巧いわけじゃなし台詞もいつもの訛りまる出しなのだが、妙に柄が合ってるんだな、これが。愛染恭子がいるおかげで小川美那子が相対的に上品に見えるという(火暴) この人はほんとに脱がないほうがいい(いや、脱いでるんだけどさやっぱり) 他に、空手をたしなむ美人の妹に(どうやらすでにピンク映画を引退済の)沢木まゆみ。料亭の番頭にベテラン、野上正義。[新東宝]

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貪る年増たち サセ頃・シ盛り・ゴザ掻き(佐倉萌)

脚本:佐倉萌 撮影:長谷川卓也 照明:ガッツ

「監督」佐倉萌が初日を出した。オムニバスの1篇、意図不明だった長篇デビュー作「いじめる熟女たち 淫乱調教」に続いての3作目。「撮影:長谷川卓也+照明:ガッツ」という2002年のピンク映画ベストワン「美女濡れ酒場」コンビの起用によって、ようやく彼女の目指しているものが明らかになった。つまりこの人はピンク映画なのだからすべては濡れ場によって表現すべきだと考えているようなのだ。自分で脚本も書いているわりにはストーリーに文学少女的/映画マニア的な青臭さがまったく感じられないのも珍しい。アーティストというよりアルチザンのタイプの人なのだろう。それは(姿勢としては)素晴らしい。ピンク映画監督の鑑だ。前作の説明不足もそれで納得がいく。 ● 本作でもその事情は変わらないのだが、「夫の浮気を調べるうちに自らも出会い系サイトで出会った男とのSM不倫にずぶずぶとハマっていく三十路妻」というシンプルなストーリーラインゆえ、説明場面の不足が枷とはなっておらず、またなにより、豊富な濡れ場によってヒロインの変容がきっちりと描かれているので、観ていてもどかしい思いをせずにすむ。濡れ場から濡れ場へと「絵つながり」で繋ぐ手際など達者なものだし、ときおり挿入される心象風景も効果的。しかもエロ度 ★ ★ ★ ★ ★ なのだから、ピンク映画としてはすでに充分に合格ラインなのだが、映画としてはやはりドラマの空虚さが気になる。監督をするというテーマだけがあって、何を描きたいかというモチベーションが希薄な感じがするのだ。だからいつか本当に描きたいものを見つけたとき、佐倉萌は佐野和宏「若妻 しとやかな卑猥」のような傑作を撮るだろう。そのときを刮目して待ちたい。 ● 脇を佐々木基子&小川真実というベテラン2人でかためて、ヒロインにはアンジェリーナ・ジョリー系のクチビルがエロい新人・松川怜未。不実な夫に千葉誠樹。ヒロインを調教する怪しい漁色家に森羅万像。 ● 念のために補足しておくと、タイトルの「サセ頃・シ盛り・ゴザ掻き」とは昔からある「三十サセ頃、四十シ盛り、五十のゴザ掻き」という年増女とのおまんこの良さを語った成句(くれぐれも「よんじゅう」と読まないよーにね。シジュウシザカリで語呂合わせになってるんだから) ちなみに「ゴザ掻き」とは「茣蓙を掻きむしるほどイイ」という意味だそうで、茣蓙って…(夜鷹?)[エクセス]

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和服妻凌辱 奥の淫(松岡邦彦)

「電波少年」打切り決定で、あの元祖・電波子がポルノ映画出演!・・・と昨年12月12日付の東スポの一面を飾ったのが本作。「あの」っつったって元祖・電波子こと滝島あずさ(本作ではAZUSA名義)が電波子をやってたのは(いまググッたら)もう10年も前である。2年前にはめでたくヌード写真集も出して、H系Vシネマの次はピンク映画。彼女のケースだとギャラ的にそんなに美味しいコースとも思えないが、ゲイノー活動ってのはそれほど魅力的なもんなのかねえ? ● 夫の借金で夜逃げした人妻が親切なお百姓さんの家に売り飛ばされて慰みものにされる。ヒロインがある日突然、事情もわからぬまま隔離された状況に投げ込まれて試練に耐える…という、まさしく「電波少年」的設定だな<ちょっと違います。じつはおれ「動いてる滝島あずさ」を見るの初めてで、ちょっと水野真紀 似のマスクで肌が白くておっぱいもキレイだし「ピンク映画女優」としては、じつに優れた素材だと思うのだが、いかんせん芝居が水野真紀より下手というのはどうにかならんものか。松岡邦彦は例によって丁寧に状況を演出していくのだが、彼女の芝居ですべて台なしである。なまじ中途半端に有名なだけに台詞をアテレコで差し替えるという常套手段が使えなかったのも痛い。 ● 「親切なお百姓さん」に吉田祐健。 うじうじ亭主(←こいつがいちばん悪いのに!)に岡田智宏。 お百姓さんの家に同居してる「牛乳好きの少女」に河村栞。この人、2001年から2002年の前半にあれほど出まくっていたのに、後半になってパッタリ出演作が途切れて、たまに見かけても育ての親の池島組に脱ぎ無しのゲスト出演だったりして、ひょっとして親バレ!?と心配していたら、本作ではひさびさのちゃんとした役付きで濡れ場も披露。女子高生/女子大生に扮して無理がない貴重な戦力なんだからピンク映画関係者はもっと栞ちゃんを使うよーに。 後半にヒロインを助ける「親切な隣人」に、これまた久々の出演が嬉しい工藤翔子。ああ、滝島あずさに工藤翔子の半分の演技力でもあったらなあ…。 ちなみに、松岡邦彦はこのところ音楽担当に戎一郎という人を起用していて、この人の書く劇伴がテクノ/ラウンジ/エレクトロ系(すいませんよく解ってません)でちょっと変わってて面白い。[エクセス]

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淫乱病棟 巨乳で看護(小川欽也)

警察に自首してきたひとりの女。彼女は看護婦で、2年前に家庭内暴力に耐えかねて夫を殺したものの、それまでは親切な相談相手/レズ相手だった婦長に脅迫され泥沼にはまり、思いあまって自首してきたのだ、…って、あんたバカですか。自分で最初に刑事に言ってるように、静脈に空気を注射して心筋梗塞を装い、医師による死亡診断書があり、遺体は火葬され、注射器は処分済…なら自白しないかぎり物的証拠はないじゃんか。つまりこのケースで脅迫は成立しないのだ。ヒロインはただ黙って街を出ればいい。この女がいかにバカかという証拠に、自分が上に乗って腰ふっときながら「中はダメ。外へ出して!」って、テメーが退けって話だろ。まあ、でもバカ脚本(池袋高介)バカ演出(小川欽也)にもかかわらずマトモな撮影(図書紀芳)のおかげで、いちおうピンク映画の要件は満たしている。 ● ヒロインに昨年のエクセス「美人家庭教師 半熟いじり」でデビューした加藤由香…って、あれ!? このコ、乳 入れなおした? いままでこうだったのが、こ〜んなになってるぞ。スゲー。ヨコ乳の付け根の皮がよじれちゃってるほどの典型的なガイジン型 人工乳で、なんか乳を揉むってより縁日で取ってきた水の詰まったヨーヨーぐにゅぐにゅしてる感じ。<そのままやん! ● 邪悪な婦長にベテラン・小川真実(なんか最近の小川真実って杉佳代子に似てきてねえか?) 邪悪な医者に、なかみつせいじ。 毒牙にかかる新人看護婦に新人・奥菜千春。[オーピー/大蔵映画]


スワッピング・ナイト 危険な戯れ(女池充)

始まっていきなり黒画面が延々と3分ほども続き、そこに青くさい詩だかなんだかの朗読がかぶさる。画面の右下に小さな文字で「製作:国映株式会社」と出る。まさに場内が心をひとつにした瞬間だ。このとき全員が同じ気持ちだった──勘弁してくれよ。 ● ま、普通はここで観客の半分がロビーにタバコを吸いに出て行くのだが、おれを含めた残りの奇特な/哀れな観客が目にさせられたものは、撮影ミスか(東映化工 改め)東映ラボ・テックの現像ミスか知らんが、照明不足を不自然な現像で補ったかのような白っちゃけて寝惚けた画面で描かれるクソつまらない辛気くさいドラマだけではなくワザと現像液をこぼして醜くただれさせた画面とか、ネガを直接クギで引っ掻いて書かれた「孤独。逃れられないのか」という文字とか、なのだった(しかも67分もある) とうぜん興奮できる類の濡れ場はなくAV女優・風吹晏名にいたっては乳すら見せない。 ● まあ、おおかた こないだのスタン・ブラッケージを観て、にわかカブレしたかなんかだろうが、おれがピンク映画館の支配人だったら不良プリントとして新東宝に送り返すね。てゆーか冗談じゃなく、実験映画なんか観たことのない地方のピンク映画館の支配人は確実に現像ミスだと思って新東宝にクレーム付けて来るはずだし、平身低頭してなんとか支配人には納得してもらったとしても「なんでお前んとこは溶けたフィルムを上映してんだ!」という怒り心頭の お客さんにはなんと説明するつもりだろう。それともあれか? 女池が手弁当で全国各地の映画館にお詫び行脚でもするか? 何度でも言うぞ。女池よ、自主映画を撮りたいんならテメエの金で撮ってくれ。商品として失格なので星はゼロ。 ● 脚本:西田直子+女池充。撮影:伊藤寛。出演:葉月螢、伊藤猛、ゆき。[国映=新東宝]

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痴漢の影 奪われた人妻(橋口卓明)

今の夫と結婚する前のこと、カレシとクルマでデート中、対向車線を越えて突っ込んできたトラックと正面衝突。自分だけが助かり恋人を失って以来、事故の記憶がトラウマとなり不眠症に悩まされている人妻。同情が愛情に変わり、いまの夫と結ばれたものの、いつしか冷え切った夫婦仲。帰らぬ夫を1人 待つ淋しさを埋め合わせるために、出会い系サイトで知り合った男とホテルに行くが、今度はその男がストーカーと化し、彼女に付きまとうようになる…。 ● ひさしぶりの佐々木基子 主演によるニューロティック・サスペンス。まともに演技が出来る女優を主演に迎えてドラマを作ろうとする姿勢は評価するが、肝心の中身はいまひとつ。脚本・演出ともに巧さが感じられない。橋口卓明は自分で脚本を書かないほうがいいと思うが。夫に本多菊次朗。その不倫相手に佐々木ユメカ。[新東宝]

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年上の女 ひと 博多美人の恥じらい(荒木太郎)

ホモ映画「ポリス」での静岡・静活劇場ロケを皮切りに、昨年末の長野ニュー商工&善光寺にロケした「初恋不倫 乳首から愛して」で本格的にスタートした荒木太郎+吉行由実・脚本コンビによる「出前ピンク」シリーズの最新作。今回の舞台は福岡オークラ劇場。さすがに九州は遠すぎて一座を東京から連れて行く予算がないので、監督とカメラマン以外の全スタッフと出演者を地元で公募。だから台詞はぜんぶ博多弁。なんと山笠祭りロケまであるという「男はつらいよ」にも負けない立派な観光映画を作ってしまった。 ● かつて中蔵映画の人気女優で今は引退した桜木レイナ。その唯一の現存プリントが今週、福岡オークラ劇場でかかったので、高校卒業間近のコータは、モギリをしてる中野貴雄そっくりの従兄にこっそり入れてもらって、連日かよいつめている。そんなときコータは博多の街で偶然、いまは平凡な団地の主婦となった桜木レイナの姿を見かける。そして彼女が不幸せな結婚に甘んじていることを知ってしまう…。 ● たいていは1、2年の短いあいだ銀幕を美しい裸身で飾り、そしてピンク映画を辞めていった女優たちへの、これは自身、女優でもある吉行由実からのエール。引退後に皆が皆、順風満帆な人生を送っているわけではないだろうけれど、でもフィルムに焼き付けられたあなたたちの姿は(プリントがあるかぎり)永遠だし、たとえプリントが無くたって あなたのことを決して忘れない人たちがいるのだよ…と。傑作になる可能性のあったネタだと思うが、いかんせんヒロインの富士川真林(ふじかわ・まりん)に「かつての人気女優」の輝きが感じられないので、話が成立していない。いや、映画出演経験のない新人さんとしては頑張っていると思うし、わずか4、5日の撮影でちゃんと最後には「映画女優」の顔にしてみせる荒木太郎の演出も大したものではあるのだが。予算の都合とはいえ、やはりここは(本作にもワンシーン特別出演している)葉月螢あたりに演らせるべきだった。あるいはたしか一昨年に結婚引退した(荒木組とは因縁浅からぬ)篠原さゆりさんが九州在住じゃなかったっけか? 彼女に出てもらえれば題材にピッタリだったのにねえ。 ● 主人公の後輩女子高生のGFに(地元劇団のコらしい)新人・汐音。腰のうしろの羽根のタトゥーがキュート。このコは東京に出てくればピンク映画女優としてやっていけるかも。 桜木レイナの夫の不倫相手にやはり新人の新郷美奈。[オーピー/大蔵映画]

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お灸快楽 若草いぶり(山崎邦紀)

脚本:山崎邦紀 撮影:小山田勝治 音楽:中空龍

クサを燃やしてフィーリン・グ〜ッド! 日本がほこるドラッグ・カルチャー、それがお灸! サイケなボディにお灸を据えて、あなたもわたしもアップ・イン・スモーク!・・・というわけでお灸である。ピンク映画界のデビッド・リンチ=山崎邦紀の新作。ピンク映画タイトル大賞を差し上げたいような傑作タイトルだが、コメディではない。 ● 代々つづく灸治療院「やいと屋」をいとなむお灸大好き!なヒロインが、不感症の風俗嬢とか不幸に不幸を重ねた牛乳好きの年増ストリッパーとか心因性の勃起不全に悩むヒモとかを治療するうちに艾(もぐさ)でトリップして悪夢のようなヴィジョンを見るようになる。自分が怖くなったヒロインはパリに転勤するフィアンセと共に日本を脱出しようとするが、追いかけて来た自分の中に巣食う魔にとり殺される、という話。…突飛だ。あまりに突飛。突飛の極北。♪ご覧あれが突飛岬 北の外れと ああああ〜♪<それは龍飛。…えーと、皆さん付いて来てますか? 上野オークラ劇場の観客はまったく付いて来てませんでした。 ● ヒロインにオバQ系のマスクとボイスの川瀬有希子@「恋のから騒ぎ」出身。不感症風俗嬢に風間今日子。不幸ストリッパーに佐々木基子。インポなヒモに平川直大。フィアンセに柳東史。[オーピー/大蔵映画]

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デリヘル嬢 絹肌のうるおい(池島ゆたか)

脚本:五代暁子 撮影:清水正二 音楽:大場一魅

デリヘル嬢というのはすなわち「デリバリー方式による無店舗型ファッション・ヘルスの従業員」の略称なのだが、本篇によると、どうもファッション・ヘルス流サービスすなわち「陰茎の膣への挿入行為を伴わない手もしくは口腔または大腿部あるいは肛門および直腸を用いる射精促進サービス」だけでなく、ちゃんとヤルことはヤルらしく、それってつまりホテトル嬢じゃん。おれ最近 新聞読まないからあれだけど、あれかねやっぱトルコ大使館から抗議が来て改名したのかね? ● というわけで(ホテトル嬢 改メ)デリヘル嬢3人の日常と勤務時の姿を綴ったよくあるジャンルのピンク映画なのだが、本作の特異な点は全篇に渡って死の気配が漂っている点にある。冒頭、出勤途中のヒロインは神田川に自分の死体が浮いているのを目にする。黒画面に白文字のテロップ「ある朝、自分の死体を見た」。いやべつにテラヤマだのゴダールだのと比す気はない。ちっとも陰気な映画じゃないし、池島ゆたからしいサービス満点の濡れ場たっぷりのピンク映画である。だが、彼女たちは言う「この仕事はじめてから、知り合いが死んだのこれで7人目だよ」「お互いに本名 知らないから記事になっても気付かないんだよね」。外の場面をほとんどビデオ撮りにしたことによって、その粗い粒子がヒロインに付きまとう不吉な影を感じさせる。もちろんホラーじゃないから幽霊が出て来たりはしない。やや特殊な職業に従事してるということを除けば、どこにでもいるごくフツーの女のコたちだけど、それでも彼女たちの日常は修羅場と地続きだし、たぶん家庭の主婦よりは死を身近に感じて生きている。ひょいと次の角を曲がったところで壁にもたれてニカッと笑う「死」と出くわすかもしれない。高円寺の汚いスナックであなたの後ろのカウンターに座って酒を飲んでいる佐野和宏によく似た男の正体は死神かもしれないのだ。ある意味で瀬々敬久+井土紀州の世界にとても近いところにありながらこの2人には決して作り得ない不確かな生の記録。池島ゆたか+五代暁子コンビのみごとな新境地である。 ● ヒロインに池島の「猥褻ストーカー 暗闇で抱いて!」でデビューした真咲紀子。あまり「芝居」を必要としない作り方がプラスに作用して大変にフォトジェニックに撮れている。 ヒモ男に貯金を騙し取られるステレオタイプなデリヘル嬢に新人・北条湖都。 そしてそして「新人さん…といっても三十三だけど。離婚したんだ。小さい子がいるからって他はみんな断られちゃって」と紹介されて登場する子連れデリヘル嬢に、1980年代を代表するピンク映画の華…ウェルカム・バック>橋本杏子! 監督の笠井雅裕と結婚引退した彼女だが、乳飲み子を抱えて離婚。6年ぶりのピンク映画復帰作がこの設定って…ひょっとしてドキュメントですか? 「子どもできるまでスーパーでレジのバイトしてたの」とか「旦那の借金がもとで離婚したんだあ」とか、なんかシャレにならない感じの台詞も連発。以前は、顔もスタイルも南野陽子 系だったのに、赤ちゃんがいるもんだからえらい巨乳になっちゃってまあ。しかも「ビジターQ」の内田春菊に続いて母乳トバシSEXはあるし、我が子への授乳シーンまであるし。なんちゅうか、プロですなあ。でも杏子さん、おっぱいあげてるときにタバコ吸っちゃダメよ。 男性誌の取材記者に河村栞(脱ぎは無し) 客のひとりに、川瀬陽太に続いて池島組初出演の本多菊雄。 デリヘルのマネージャー役・石動三六が好演。[オーピー/大蔵映画]


わいせつ女獣(関良平)

アメリカの田舎とかに それまでセールスマンをやってたおっさんが、映画史的/映画学校的知識とはまったく無縁のまま突如としてビキニ女と着ぐるみ怪獣のC級以下のZ級映画とかを撮り始めたりする「映画監督」がいたりしますわなあ。関良平の映画はそうしたものにいちばん近い。「下手」とか「やる気がない」といった状態を超越して、もはや「シュール」の領域に足を踏み入れている。観ていてマジで軽い眩暈をおぼえること二度三度。だーから変だろ!! その話の運びは!/意図不明の演出は!/フィルムの繋ぎは!/1970年代メイクは!…とツッコむこと数知れず。あまりに変なので1時間のあいだ目が離せない。だいたい「桜散るころ」の撮影なら、大蔵映画の通常スケジュールからすると7月封切りのはずなのに、9月公開ってことは、おそらく大蔵映画も出来上がりに唖然として2ヶ月あまり、店ざらしになっていたと思われる。それが証拠に、当週の大蔵チェーンの新作枠は(タイムテーブルから判断すると)↓の「小川みゆき おしゃぶり上手」のほうで、本作は最初っから添えもの旧作扱いなのだ。恐るべし関良平。まさしくピンク映画界のエド・ウッドと呼ぶに相応しい存在である。「死霊の盆踊り」とかを好き好んで観たりするモンドなあなたにお勧めする。 ● 話はいちおう「ストリッパーと殺し屋のスタイリッシュな都会的ラブ・ストーリー」を目指してるらしい。ヒロインは高田聖子を20キロ太らせて谷ナオミをまぶしたみたいな麻倉エミリ@なぜか関西弁。たぶん前作「三十路兄嫁 夜這い狂い」の鈴木エリカと同一人物だと思うんだけど、あれかね、関良平のカミさんかね?[オーピー/大蔵映画]

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小川みゆき おしゃぶり上手(森山茂雄)

今年「淫乱堕天使 桜井風花」で監督デビューした森山茂雄の第2作。なんと佐野和宏・脚本である。なんでも本作のプロデューサー 池島ゆたかの取り持ちで新人監督に未発表脚本を提供することになったらしい。何をやっても要領の悪い三十路独身サラリーマンが、寂れた海岸で入水自殺未遂のリストカット常習女を拾う。男の家に住み着くリスカ。にわかに甘い新婚家庭のような「幸せごっこ」がはじまるが…という、いかにも佐野和宏らしい通俗的なメロドラマである(←褒め言葉です) 処女作で池島ゆたかの助監督とは思えぬ(失礼!)ドラマ志向をみせた森山茂雄は、前作の致命的欠点だった脚本の若さ/青さが佐野和宏のホンによって埋め合わされ、意気込みだけは伝わる演出を見せる。音楽の大場一魅と撮影&照明の飯岡聖英も好サポート。本多菊雄に佐野和宏という男優陣のせいもあってまるで国映作品のよう(ただ、やっぱり濡れ場になると脂フィルター が使われるのが可笑しい:) ● 欠点は2つ。このドラマは中盤に佐野和宏が登場して大きく転調するのだが、それ以降の主人公とヒロインそれぞれの心の流れが追い切れてない。ここをきっちりとやっておかないと、およそ「健全娯楽の大蔵映画」らしくない悲痛なラストが効いてこないのだ。もうひとつは言うまでもなくAV女優・小川みゆきの演技力の問題である。およそAV女優らしくない地味な芸名に見合った、なんとも華のない女優さんで、まあこの役はたしかにプロの女優だって難しい役なんだが、それにしてもせめて前半の「幸福感」だけでも観客に伝えてくれないと。そして何より「いいな」と思うたびに「なぜ佐野和宏 自身が撮らなかったのか」と悔やまれるのだ。いろいろと事情はあるんだろうけどホンがあるんなら撮りなさいよ。大蔵だってエクセスだっていいじゃないか。営業活動に行きなって>佐野和宏。 ● 主人公の妄想の対象になったりする同僚OLに(最近は「演技者」としてもとてもイイ)風間今日子。[オーピー/大蔵映画]

脂フィルター:おれの造語。実際に現場で何と呼ばれてるのかは知らん。「レンズに脂を塗りたくった虫眼鏡」といったものを想像してくれ。濡れ場になると、撮影中のカメラマンがファインダーを覗きながら、片手で器用に画面の「結合部分」あるいは「尺八中の男根」──往々にしてそれは画面中央下部である──の位置にあわせて、レンズの前にサッと件の「脂フィルター」を差し出すのだ。こうすれば最初から円形のボカシがかかった状態で撮影でき、金のかかるオプチカル処理が不要になる。発案者はたぶん飯岡聖英の師匠の清水正二(=志賀葉一) 1円でも経費を節約したいピンク映画ならではの技法である。

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小悪魔デヴィ とろけ湯穴覗き(渡邊元嗣)

テレビ「あいのり」からAVの世界に転身したデヴィ(日本人)のピンク映画初出演作。彼女が扮するのはテンガロン・ハットにフリンジ・ジャケット&ウエスタン・ブーツに身を包んだ流れ者の風俗嬢。母親譲りの名器に加えて たゆまぬ鍛錬の賜物で5年間でイカせた男が7,000人。ひと呼んで「昇天の昇子」の異名を取る、夜の巷じゃちったあ知られた名前。本編はそんな渡り鳥、故郷に帰るの巻。母親の墓参りを済ませたところで、初恋の相手だった幼なじみの青年に再会するが、青年は寂れた温泉旅館・水上荘と借金を抱えて四苦八苦。さて、この設定ならば100人の脚本家のうち98人までは「ヒロインが特技を活かして借金取りを籠絡&特別サービスで温泉旅館も大繁盛」という展開にすると思うのだが、本作の脚本家・五代暁子は最後の2人のうちの1人(もちろんあとの1人はご存知のあの男)なので、そうはせず物語は、植物マニアの青年の調合する「セクシー湯の元」なる媚薬効果のある入浴剤の開発をめぐるドタバタとして進行するのである。「超絶テクの風俗嬢」という設定はわずかに、ヒロインにフェラされた青年が「なんて巧いんだ!」「だってアタシ風俗嬢だもん」という台詞に使われるのみ。意味な〜いじゃん! 最後は成功を手にした青年を置いて、ヒロインは「流れ者にゃ男はいらない」と呟いて軽トラの荷台に乗って去っていくのであった。 ● ま、それでも「主演女優が可愛いとやる気を出す」という渡邊元嗣の法則は健在で、てんぱいぽんちん体操の水島裕子おねいさんにちょい似のデヴィは、なかなかキュートに撮られている。演技と呼べるレベルではないが、基本的に渡邊元嗣の映画は「アイドル映画」なので主演女優の演技の巧拙はあまり問題にならんのだ。 青年に今野元志。 巨根だけどインポの借金取りに(十日市秀悦あらため)秀。巨乳だけどゆるマンの傷心旅行客に風間今日子(この2人がどうなるかなんて訊かないでくれ) 不倫清算旅行のカップルに山咲小春と ささきまこと。[オーピー/大蔵映画]

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人妻出会い系サイト 夫の知らない妻の性癖(榎本敏郎)

昨年の当サイトのピンク映画ベストワン作品「痴漢電車 さわってビックリ!」の〈監督:榎本敏郎+脚本:河本晃+主演:麻田真夕&川瀬陽太〉のチームによる、あれからピッタリ1年ぶりの新作。前作のラブコメから一転して、今度はO・ヘンリー調の泣けるラブ・ストーリーである。身勝手さゆえに同棲中のカノジョに捨てられたその日に、交通事故で2週間のにわか盲となった男と、夫との愛が消えた淋しさを出会い系サイトの行きずりセックスで紛らわせている人妻が、ふとしたきっかけで出会い、親密になる。目の見えない男と、素性を隠した女。やがて男の眼の包帯を外す日がやって来るが…。 ● 小手先の作家性とやらに気を取られることなくスタンダードな娯楽映画を作ろうとする新人脚本家・河本晃の方向性は(おれの目には)たいへん好ましく写る。それだけに今作では起承転結の「転」と「結」のパートの練りが足りなかったのが惜しまれる。作者は はっきりとベタな泣かせを意図しており、観客は「さあ、泣かせてくれ」と待ち構えているのに、終盤の作り込みが不足していて「泣ける」ところまでいかないのだ。 ● 前作での佐野和宏・小林節彦・葉月螢といった強力な助演陣を欠いたのもデカい。60分という本来は中篇の尺ですべてを語らなければならないピンク映画においては、寸描でキャラクターの全体像や人間関係を表現できる上手い助演俳優の存在が不可欠である。本作で言えば新人・秦来うさが演じた「主人公のカノジョ」や松原正隆 演ずる「ヒロインの夫」のポジションにそうしたベテランを配すべきだった。 ● それに加えて、前作ではなりを潜めていた榎本敏郎の持病がまたもや再発しているように見受けられる。それはすなわち「脚本の撮りきれない部分を自分で勝手にアレンジしてしまう」という病で、たとえば本作での主役2人の出会いは、にわか盲となった男が苛ついて[104]に電話して[オペレータ嬢に自分の名前と住所を告げて「盲になって生活できない。金は出すから助けてくれ」と頼むが、当然オペレータ嬢は困惑。すると「わかったよ。そうやって一日中スカした声で喋ってろ」と毒づいて]電話を切る。切れた電話を前に呆然とする[オペレータ嬢]すなわちヒロインの顔という凝ったものなのだが、そのカットで彼女は公園のベンチに座ってケータイ電話を手にしているのである! ちょと待てコラ榎本! なんで[NTTのオペレータ嬢]が公園でケータイ電話で仕事してんだよ! それらしいオフィスが見つけられなくて どーしても公園でロケせざるを得ないんなら、それが不自然にならないように脚本を直せ脚本を!(てゆーか、その「受けのカット」は無くても成立するだろ?) 「出会い」のシーンといえばラブ・ストーリーの成否を決めるほど重要なシーンではないか。そこでなんでそんな手抜きをする!? 一事が万事で、ひょっとすると前述した終盤の詰めの甘さも、脚本に描かれたものを演出家が撮りきれていないってことかもしれない。 ● ヒロインの麻田真夕は、前作では終盤に1回だけだった濡れ場も今回はたっぷりでおれは大満足である。月蝕歌劇団も辞めちゃったみたいだし、ピンク映画を続けるのなら次はぜひ池島ゆたかや渡邊元嗣の娯楽系に出演してくれい。 他に濡れ場要員で新人・愛葉ゆうき。[新東宝]

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恋愛ピアノ教師 月光の戯れ(常本琢招)

[ビデオ観賞]麻田真夕 小特集その2。2001年リリースのH系Vシネマ。麻田真夕が対照的な性格の姉妹を一人二役で演じわける。ヒロインは奔放な妹・陽子。内気で淑やかな姉・温子に夫を寝取られて、そのことを責めたら、苦にした姉が自殺未遂。以来、自分の夫と姉が公然と夫婦のように暮らす家で、居所を失った陽子は、ピアノ教室の生徒の大学生・音哉(佐藤幹雄)と恋に落ちる。東京に出てきてから失っていた自信を取り戻す音哉と、ふたたび自分の存在価値を見出す陽子。だが、温子と陽子の姉妹にはおぞましい秘密が隠されていた…。 ● これを書いちゃうとややネタバレなんだけど[サイコ・スリラー]風味の切ないラブ・ストーリーである。ま、伝統的なネタなので大概の視聴者は序盤で「はは〜ん」と見当がつくと思うが、三池崇史「新宿黒社会 チャイナマフィア戦争」の藤田一朗による脚本はひとヒネリを加えて、最後まで飽きさせない。演出は(廣木隆一・石川欣らの)雄プロ出身の常本琢招。78分という充分な尺もあって、主役2人の愛情の深まり(つまり濡れ場のことだが)を丁寧に描写する。ヒロインの不安定な心象を風景に写し取る見事な撮影は、ピンク映画のベテラン 清水正二。 ● 麻田真夕は発声を変えて二役演じわけを健闘しつつ、姉を自殺に追い込んだことで自責の念に縛られているヒロイン・陽子の、乱暴にしたら すぐ心が壊れてしまいそうなキャラをリアルに造形している。ピンク映画と違って濡れ場があるのは彼女のみなのでそっちもたっぷりと堪能できますハイ。他に「ピアノ教室を経営する音哉の叔母」の役で小川真実が出演(脱ぎは無し) ● ちなみに画面上では監督のクレジットは「監督:野村浩介」と出る。なんらかの事情があって変名にしてるのだと思うが、メーカーの公式頁まで「常本琢招 監督作品」になってたら意味ないじゃん。[TMC]

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コレクター 囚われの女(永岡久明)

[ビデオ観賞]麻田真夕 小特集その3。2000年リリースのH系Vシネマ。ま、タイトルどおりの「監禁飼育もの」である。「若き天才」と将来を嘱望されながらも、芽が出ず挫折した画家が、身寄りのないOLを攫って山小屋に監禁してヌードモデルにする…という話。日本のポルノ映画におけるこのジャンルは一様に「強要→支配→融和→逆転」というストーリーラインを持っているのだが、本作ではなんと「融和パート」において「支配者」たるべき監禁者の更なる支配者…すなわち「監禁者の妻」が登場してダメ亭主(=金持ちの女房に食わせてもらってる売れない画家)を徹底的にイビりたおし、すると「被支配者」だったヒロインが突如として画家の味方になって、虐げられた2人の純愛ストーリーに転じてしまうのだ。おいおいアナタは拉致されて来たんだぞ。いつから「愛し合ってる恋人たち」になっちゃったんだよ!? 途中から呆気に取られたまんまで終わってしまった。 ● 画家に堀崎太郎。鬼妻に佐倉萌@適役。脚本・演出はVシネマ監督の永岡久明。ちなみにこのビデオ映画は「R-15指定」なんだけど、観た印象としては濡れ場の回数/激しさともに「R-18指定」のピンク映画とまったく遜色ない。具体的にどこがどう違うんですか?>映倫。[ミュージアム/マーメイド]


OL発情 奪う!(後藤大輔)

プロデューサー:池島ゆたか

なぁに言ってんだかワカんねんだよ! 台詞も音楽もちっとも聞こえないんだよ。同時上映の深町章作品はちゃんと聞き取れるんだから、新宿国際名画座の安物のスピーカーとエアコンの騒音のせいだけじゃなく、台詞の喋らせ方(=演出)と録音レベルの問題だろう。後藤大輔と池島ゆたかは今すぐ映画館へ行って自分の耳で確かめてみろ。欠陥商品。ゆえに星1つ。 ● とつじょ襲った大地震により、オフィス・ビルの地階にある新東宝株式会社の事務所に閉じ籠められた6人の男女の、色と欲とバイオレンス。つまりサトウトシキ&小林政広コンビの「不倫妻の性 快楽あさり」(1993/DVDタイトル「単純な話」)みたいな話である。監督自身による脚本はよく書けていると思うし、美術班はピンク映画の枠を越えた奮闘をみせている。だからこそ後藤大輔はキャラクターたちの心境(の変化)を楷書で演出すべきだった。話がパンクだから演出もパンクであるべきとは限らないのだ。 ● 新東宝の金庫にしまわれた1千万円めあてで空き巣に入る無軌道カップルに奈賀毬子と平山久能。奈賀毬子ってのはどっちかっつうと変な顔なんだけど、後藤大輔はその「変な顔」を「変な顔」のまま魅力的に見せている。これに成功したのは初めてと言ってよいのではないか。てゆーか、言っちゃ悪いが新東宝の事務所に1千万円はないと思うね。 たまたま居合わせてしまった新東宝の課長とOLの不倫カップルに新納敏正と酒井あずさ。 そこに乱入してくる、公金横領がバレそうでテンパってるエリート官僚に(「したがる兄嫁」シリーズのバカ弟こと)江端英久。 ワケありで自殺志願の女子高生に坂本ちえ。[新東宝]

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赤い長襦袢 人妻乱れ床(深町章)

深町章が(脚本家を変えつつも)連作している贋作・江戸川乱歩もの「鍵穴」シリーズの最新作。昭和22年。東京・山の手の良家の未亡人であるヒロインのもとへ1通の手紙が届く。曰く、その差出人はヒロインに焦がれており、かねてより密かにヒロインを観察してきたと。そして「奥さまが稀代の完全犯罪者であられることも存じあげているのでございます」 今回の脚本は多作だけが取り得の「田吾作」こと岡輝男。まるで「屋根裏の散歩者」だが、本篇の「観察者」は屋根裏の覗き穴からではなく高台の屋敷の藏の2階から望遠鏡でヒロインの家庭を覗き見ている。聾唖の叔母をもつおかげで読唇術を心得ており、ヒロインがこちらに顔を向けて居さえすれば何を言ってるかも解することが出来る。 ● さて、こうした設定なら100人の脚本家のうち99人までは(「観察者」同様に)望遠鏡と読唇術によって「すべてを理解している」と観客に思わせておいて「見えなかった側」と「背中を向けて語られた台詞」によってミステリを組み立てるのだろうが、なんと田吾作は最後の1人なので、それをしない。「見えること」と「見えていないこと」のズレがサスペンスを生むと思うのだが、田吾作は田吾作なのでちっとも興味がない様子。うーむ。計り知れない男である>岡輝男。 ● 前3作の葉月螢を継いでの2代目ヒロインに若宮弥咲。まあ、スタジオ経験のない素人劇団の女優にそれを求めるのは酷かもしらんが、和装の着付け&所作事が壊滅的に駄目で、女中にすら見えない。それに、そもそもこのひと、稲森いずみとかとおなじ貧乏人顔なので「良家の奥さま」には見えんのだよ。 「観察者」に岡田智宏。かれの読む「手紙の文面」が全篇にわたって物語を進めるのだが、岡田智宏はモノローグが際立って下手な役者なのだ。見た目はまあまあハマってるんだから、声だけ今泉浩一あたりにアテレコさせれば良かったのに。 復員してくる「夫」に、なかみつせいじ。 家屋敷を狙う「夫の妹」に水原香菜恵。 そして数年ぶりにピンク映画に復帰したにもかかわらずやっぱり「深町組」で「水上荘」で「女中」な、相沢知美。その乳首はひょっとして出産でもしたのか?[新東宝]

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赤襦袢レズ 熟女こすり合い(新田栄)

おい、新東宝の深町組とタイトルがバッティングしてんぞ。脚本はどちらも岡輝男。こちらは新田栄との元祖・田吾作コンビによる新作。仕事ばかりで朴念仁の夫に構ってもらえぬ人妻が、寂しさからした浮気がやがて本気になって…という古典的メロドラマ。人妻の相手が「女」だってのがヒネリと言えばヒネリだが、基本的には古臭いストーリーである。逆に、筋立てが古臭いぶんだけ大きな破綻がなく、田吾作コンビとしてはマシな仕上がりか。普通の退屈なピンク映画。 ● ヒロインの新人・京野まどかは周りから「とても33歳には見えないわあ」とチヤホヤされるんだけど(実年齢いくつの女優さんか知らんが)その崩れた体型は逆の意味でとても33歳には見えんぞ。 ヒロインと恋に落ちる元・同級生のレズ写真家に、風間今日子。 ベッドでも数式のことを考えてる大学教授の夫に、柳東史。 単位欲しさに教授を誘惑する女子大生に、ピンク映画に復帰した相沢知美。さすがに女子大生役はちょとキツいか。[エクセス]

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三十五才喪服妻 通夜の暴行(勝利一)

勝利一 監督がひさびさに本領を発揮した下町人情ドラマ。お好み焼き屋を営む主人公夫婦の描写がイイ。亭主は仕事も女房もそっちのけで荒川通いの太公望。女房は香典袋に中身を入れ忘れたり、いつまで経っても塩と砂糖の容器の区別がつかない粗忽者。口を開けば必ず口喧嘩を始めるほどに仲の良い2人である。なにしろこの夫婦、口喧嘩のあとは興奮して必ずセックスに雪崩れ込むので、ほとんどベッドでまぐわったことがない(!)のだ。亭主を演じる前川勝典の、ガタイが良くて不器用で「さぶ」の表紙イラスト(「薔薇族」だった?)のような男臭さと、女房を演じる(グラビアモデル→H系Vシネマ出身の新人)亜崎晶の、演技はまだまだだけどちょっとつっけんどんで憎めなくて、いかにも元ヤンっぽい風情のバランスも絶妙。2人の喧嘩をいつまでもスクリーンで眺めていたいと思わせるだけの魅力がある。 ● ストーリーのほうは、たまの休日に渓流釣りに行くという亭主に女房が腹を立て、ほんの悪戯心でワークブーツを隠してしまう。寝たフリをして起きてこない女房に亭主は「もういいよ」と代わりの運動靴を履いて足場の悪い渓流に出かけてしまい…というドラマが用意されてて、さてどうなることかと期待してたら、のこされた女房の心情などそっちのけでシュールな展開となり、まるで起承転結の「転」を欠いたみたいな話になってしまったが、これは脚本の国見岳志の責任。 ● ヒロインの巨乳ぷるんぷるんな妹に(望月ねね改め)中渡実果。その亭主に千葉誠樹。お好み焼き屋のパート主婦に佐々木基子。彼女とデキてる三河屋の配達バイトに銀治。脇のキャラに至るまでリアリティの行き届いた佳作。次回作もこのセンでよろしく。[エクセス]


人妻陰悶責め(国沢実)

国沢実が、ほかの監督の作品に「俳優」として出演するときは「サイコ国沢」もしくは単に「サイコ」とクレジットされる。どういうつもりで そう名乗ってるかは知らんが、たしかに国沢実の中には「けっして充たされる事が無く、他人には容易に理解し得ない、鬱屈したどろどろした感情」が渦まいているらしい。それは座付き作家・樫原辰郎の監督デビューにより数年ぶりに自筆脚本を余儀なくされた本作を見れば瞭然である。 ● この映画に登場するキャラクターは全員が精神を病んでいる。それが言い過ぎならば、精神分裂症一歩手前、情緒不安定、境界例といった人たちである。ヒロインは夫の愛を確かめるためにビルの屋上に上っては、夫のケータイに居場所を送信して柵の外側に立ち、迎えに来てくれるのを待つ狂言自殺常習者。夫は、妻を愛する自信が持てず、代わりにスナックの女を抱いて「ぶってくれ! ぼくを強く叩いてくれ」といい気なことを言う。ヒロインの義兄は、亡き妻の面影を(妻の妹である)ヒロインに託して強姦同然に抱き、そのくせ「おれが抱いたのはお前じゃない。亡くなった妻だ」とかホザく。義兄が主宰する格闘技道場に通ってくる娘は、幼い頃に死んだ父親を道場主に重ねて「パパ、あたしを愛して!」と絶叫する。舞台となるのは新宿百人町の路地裏、六畳一間のアパート、雑居ビルの一室にしつらえた粗末な道場、場末のスナックなど。誰もが(観客には伝わらない何らかの理由によって)苦悩しており、愛情の対象に向かい合おうとせず、他者と自分を際限なく傷つける。セックスをしても、誰一人 幸せそうじゃない。ヒリヒリとした修羅場は1時間のあいだ続く…。国沢実よ、勘弁してくれよ、ほんと。こんなものを「娯楽映画でござい」と差し出されても困る。なんでピンク映画を観に来て救われない気分にならにゃあかんのだ。本作の場合、観客にネガティブな作用を及ぼすという意味で、小川欽也や関根和美の「やる気のないルーティンワーク」よりタチが悪い。おれはこの映画と、その作り手に憎悪を覚える。今年のピンク映画ワースト1は確定だな。 ● 情緒不安定なヒロインに、昨年末の「三十路女の濡れ床屋」の脇でデビューしておれの大注目を集めたカワイコちゃん(死語)橘瑠璃。このコちょっと、本作で共演している里見瑤子に似てるのだ(ね、似てるでしょ?) だけど顔はひとまわり小さくて手足がスラッとしてて、里見瑤子と並ぶとマジンガーZとグレート・マジンガーみたい。「キューティ・ハニー」とか「キャッツ・アイ」とか「綾波レイ」のコスプレとか似合いそうだ。←それはあれですね身体にぴっちりフィットしたジャンプスーツを着てほしいってことですね(火暴) ヒロインの夫に内藤剛志のパチもんみたいな久保隆。 義兄に城春樹。この役が佐野和宏とかならぜんぜん印象が違ったのに。 ファイトグラブ姿もキュートな格闘娘に里見瑤子。 スナックの女に酒井あずさ。 なお今回、フィルム上での監督名は「国沢卍実」とクレジットされている。 ● 最後にえー、業務連絡、業務連絡。中野貴雄+渡邊元嗣のチームは工藤翔子&里見瑤子&橘瑠璃という「3姉妹」主演で、早急にピンク映画版「キャッツ・アイ」の製作を開始するよーに。「チャーリーズ・エンジェル」でも可。但し、3人ともかならずピチピチのジャンプスーツ着用のこと。 ● [追記]BBSに樫原辰郎ご本人が書いてくれたところによると>[国沢監督が、久しぶりに自分で脚本を書いたのは、俺が自作の監督でホンを書く暇がなかったわけではなく、今回の作品は自分で書きたいと彼が言ったから]だそうだ。[オーピー/大蔵映画]

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不倫妻 ねっとり乱れる(深町章)

主人公は墓地のセールスマン。年下の上司からは責められ、女房・娘にゃ馬鹿にされてる、うだつの上がらぬ53歳。ある日、女房の浮気を目撃して家を飛び出し無我夢中でクルマを走らせると、山中の、人がやっと通れるほどのトンネルの前に出る。そのトンネルを抜けると「圏外」と表示されてるケータイ電話が鳴る。電話の向こうから聞こえてきたのは学生運動をしていた頃の恋人マリコの若々しい声だった。そう、その電話は30年前の「あの日」に繋がっていたのだ。「フジタ君、わたしと一緒に逃げてくれるっていう約束、忘れてないよね?」 男の胸に30年前の果たせなかった約束が去来する…。脚本は田吾作こと岡輝男。いい話だなあ…ってコラ!こりゃ、大林宣彦のハイビジョン・ドラマ「告別」のパクリじゃないか! いやパクリがいかんとは言わん。池島ゆたかだって荒木太郎だってやってる。だけどお前、その「告別」のビデオひょっとして丸山尚輝なる筆名で書きとばしてる「キネマ旬報」のDVD/ビデオ欄のレビュウ用に編集部から借りたサンプルビデオで観ただろ? いいのかそんなんで? 最低限の職業倫理ってもんは無いのか、おい>田吾。 ● まあ、パクリであっても鮮やかな換骨奪胎であるならば何も言わんが、田吾作の場合、大林版では峰岸徹の口から語られるキーとなる台詞「こんなはずじゃない。わたしの人生はこんなはずじゃなかった」をそのままバクッてるんだなこれが。「過去の出来事」に学生運動ネタを持って来たのは大林版にはない要素だが、主人公の親友である革命闘士を演じてるのが「光の雨」でもその役をやってた川瀬陽太…って、元ネタわかりやす過ぎ。 ● で、また演出の深町章が、主役に池島ゆたかぐらい使やあいいのに、岡田智宏じゃどうひっくり返したって「53歳」には見えんでしょーが。ゆっくり台詞を喋りゃいいってもんじゃねーよ。古女房役も新人の若宮弥咲だし(←申し訳ていどに鬢をグレーに塗ってる) アンタらひょっとして客をナメてる? かつての恋人マリコに意外とヘルメット&タオル姿が似合う里見瑤子。 主人公の「高校生の娘」役に岩下由里香。 田吾作も「女房の浮気相手」役で出演している(芸名:丘尚輝)[新東宝]

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美人家庭教師 欲しがる下半身(工藤雅典)[キネコ作品]

バイト先のデザイン会社社長に捨てられた愛人女子大生が、社長の家庭に家庭教師として入り込み、家族を籠絡して復讐する…という話。脚本はいつもの橘満八・工藤雅典コンビ。不実な社長に、なかみつせいじ。ヒロインの上村ひな を始め、速水今日子、永井真希といった見慣れぬAV女優の出演で、濡れ場も中途半端。ビデオ撮りという時点でおれの評価にバイアスがかかってるのはたしかだが、それを差し引いてもクソつまらんVシネを見せられた気分。なんか次回予告にもキネコ作品が1本 混じってたが、フィルム代すら出せないのなら いっそのこと新作の製作なんかやめちまえ>[エクセス]


続・愛染恭子Gの快感 究極編(愛染恭子)

セックスお悩み相談ラジオ「愛染塾」のDJ・愛染恭子(役名:愛染恭子)がセックスの不一致が原因で倦怠期に陥っている夫婦の危機を救う一席。脚本は新東宝「愛染恭子の痴漢病棟」ではラインプロデューサーを務めていた藤原健一。沢木まゆみ・千葉誠樹・高橋りな・里見瑤子らの出演。内容はコメントに値せず。[エクセス]

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スチュワーデス 腰振り逆噴射(加藤義一)

今年のデビューなのに早くもこれで3本目となる頼もしき新人監督=加藤義一の最新作。玉の輿ねらいのマテリアル・ガールなスッチーが合コンで知り合った医者は、じつは町工場の工員だった・・・という話だと思ってたら、途中からなんとこれ、ジョン・ヒューズ製作・脚本&ハワード・ドゥイッチ監督「恋しくて」(1987)の翻案になってしまうのだ(!) すなわちヒロインの高慢スッチー(沢木まゆみ)がリー・トンプソン、内気な自動車修理工(岡田智宏)がエリック・ストルツ、そして ひそかにかれに想いを寄せている同僚の修理工(林由美香)がメアリー・スチュアート・マスターソンというわけ。おれ ツボなんだよ>この設定。で、また、この林由美香が絶品なのだ。ベタなコメディ演技ではピンク映画界で右に出る者のない彼女だが、本作ではオイル染みだらけのツナギにキャップをかぶり、化粧っ気のない顔の汗を手の甲で拭うもんだから顔もまっ黒。好きな相手にわざとつっけんどに男言葉でしゃべる切ない女心が泣けて泣けて。主人公がなんとかスッチーとのデートに漕ぎつけて(医者だと嘘をついてるので)客のメルセデスを無断借用しての待ち合わせに、彼女が男装でショウファーを買って出たり、スッチーのための誕生日プレゼントを一緒に選んであげたりする展開はまんま「恋しくて」。2人の場面にはご丁寧にパンクロック風のBGMまでかかる。脚本は田吾作=岡輝男。撮影は小山田勝治。正直いって、この映画に感動してんのか、「恋しくて」の記憶が脳内で二重写しになってんだかよくわかんないけど、汚い業務用バンの後部座席でようやく2人が結ばれるラブシーンには胸がジーンとなるし、林由美香が運転席でひとり、カレを思ってウィンドウォッシャーをピュッとする名場面など、加藤義一は初めて演出らしい演出をしたと言えるだろう。 ● (いちおう)ヒロインの沢木まゆみ は、前半の白鳥麗子チックな演技は苦手のようだが、後半の泣かせになると途端に地力を発揮する。 ヒロインの同僚のイケイケ・スッチーに風間今日子。先輩の嫁き遅れスッチーに佐々木基子(女優4人体制なのだ) 最初と最後に出てきて久保新二 級のベタ演技で場をさらう「映画スター・杉本まこと」役に なかみつせいじ(えーと、これの何処が面白いかというとですね。「なかみつせいじ」という役者は現在は本名を平仮名表記してるんだけど、こないだまでは「杉本まこと」という芸名で長いことやってたのだ)[オーピー/大蔵映画]

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薄毛の色情女(池島ゆたか)

併映されていた1998年の旧作があまりに素晴らしかったので書き留めておく。この映画には他のピンク映画に類を見ない特色が2つある。1つは、ベテラン女優・田口あゆみが自分の実の娘と共演してること。それも主演は娘の「田口あい」ちゃんのほう。そう、なんと本作は13歳の中学2年生が主演するピンク映画なのだ(!) いや、もちろん13歳だから脱ぎもカラミもありませんけど、久々に自作に主演したミスター・ピンク映画=池島ゆたかを向こうにまわして、存在感では少しも負けてない。 ● 主人公は骨董屋の店番をして糧を得ている四十男。それなりに人付き合いはするし、夜ともなれば骨董屋のオーナーがやってるスナックに飲みに行ったりもするのだが、決して最後までは胸襟を開かない。自分のフィールドから1歩も踏み出さず、生活のリズムを乱されることを何より厭がる。性欲処理も馴染みのホテトル嬢で済まし、結婚する気は毛頭ない。そんな中年男の前に13歳の姪っ子が現れる。実家を継いだ弟が急死、母親は若い男と出奔して行方知れず。とりあえず「母親が見つかるまで」という条件で渋々、夏休みのあいだの同居を了承する主人公だったが、生の活力に満ちた少女との生活は、じょじょに男の胸に積み固まった氷を溶かしていく…。 ● もともとは「レオン」のピンク映画版として構想されたそうだが、池島ゆたかの人物像はジャン・レノというよりは「日の名残り」のアンソニー・ホプキンスを彷彿とさせる(←褒めすぎ) ひと夏の、中年男と少女のラブ・ストーリー。…って、それ単にあんたの願望やないの?(走召木亥火暴) ● 田口あゆみはもちろん少女の母親の役。 いかにも中央線沿線的スナックのマスターに「33 1/3 r.p.m.」の監督・木澤雅博。そうか、これが翌年の「宿 月夜野村 山姥伝説」へと繋がるのか。 池島に想いを寄せる「マスターの妹」に塚越レイナ。 ホテトル嬢に工藤有希子。 脚本:五代暁子。撮影:下元哲。 ● さて、この田口あいちゃんだけど、撮影時の、1997年の夏休みに13歳だったってことは、5年後の今はもう18歳じゃないの! ぜひまた老けても美しい(はずの)あゆみママと一緒に「薄毛の色情女2」を撮ってほしいなあ。今度は脱いでもカラんでもノー・プロブレムだし。とりあえず1本だけでもいいからさ。すっかり「小市民的な幸福」になじんでしまった池島ゆたかの前に「オトナの女」になった彼女が現れる…って設定でどうよ?>池島ゆたか&五代暁子。[大蔵映画]

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美女濡れ酒場(樫原辰郎)

制作:国沢☆実 脚本:樫原辰郎 撮影:長谷川卓也 照明:ガッツ 音楽:黒澤祐一郎

ビルから飛び降り自殺した男。気がつくとそこは見知らぬ地下のバー。オーナーらしき初老の男と連れの美女に介抱されて。頭には包帯。するとおれは助かってしまったのか。オーナーに、バーテンダーだったことを見抜かれて、いきなり「おれたちはしばらく旅に出る。そのあいだ店を頼む」と拒否する暇もなくバーを任されてしまう。そして始まるバー「Memory Motel」での日々。さまざまな人との出会いと別れ…。 ● ここ数年、監督・国沢実とのコンビでさまざまな意欲作を発表してきた脚本家・樫原辰郎の劇場用35ミリ初監督作。昨年、監督デビューしたH系Vシネマ「妖怪令嬢 淫辱」(脚本:井川耕一郎)がロクな出来じゃなかったので、あまり期待してなかったんだが、なるほどあれは「監督」という職種に慣れるための小手調べであったか。これは「異人たちとの夏」や「居酒屋ゆうれい」に連なる和風人情ファンタジーの傑作である。およそピンク映画らしくないタイトルからは内田吐夢の「たそがれ酒場」が想起されよう。こちらはひと晩の出来事ではないが、考えようによっては一夜の夢と言えなくもないし(上映時間60分という制約上)ミニマムなグランドホテル形式になっている。途中、ワンシーンだけ入る清順カットバックは「ツィゴイネルワイゼン」へのオマージュか。 ● 主役のバーテンダーに竹本泰志。ピンク映画出演歴もかなりのものになる男優だが、その中でも過去最高の名演。 ふらりと現れて酒代の代わりに歌をうたい、店の呼びものとなる「自称・歌手」の娘に山咲小春。…美しい。この女優が素晴らしいのはカラミの上気した顔がいちばん美しいからだ。 だめんずな亭主を愛してしまった哀しい女に、市川実和子系の深海魚顔の若宮弥咲。虚構的想像力をあまり必要としない役が幸いして「映画女優」としてやっと初日が出た。 関西人のだめ亭主に大出勉。 オーナーに名優・野上正義。デビュー作に野上正義をキャスティングしたって時点で樫原辰郎に好意を持っちゃうね おれは。 連れのミステリアスな美女に間宮結。 ● 主舞台となる地下のバーと、居室として設定された(おそらく)画廊の一室の非凡な造形がすばらしい。ピンク映画の定番スタジオをいっさい使わず、こうした場所を探し出してきたロケハンの努力が報われている。 カメラマン:長谷川卓也+照明:ガッツのコンビによる、グリーンを基調に微妙なトーンを使い分けた撮影も見事。 そして酒場の映画にふさわしく、劇中に登場するさまざまなカクテルのレシピが、単なる薀蓄に終わらず物語をゆたかに膨らませている。 ピンク映画では今年初の5つ星である。このままデビュー作で年間ベストワンに輝くか!?>樫原辰郎。 それにしても公開をあと1週ズラせばお盆だったのに。気が利かないねえ>[オーピー/大蔵映画]

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人妻ブティック 不倫生下着(佐藤吏)

深町組系の助監督・佐藤吏の監督昇進第1作(脚本も自筆) 今週の新東宝は深町作品との組み合わせなので、同一人物の監督作と助監督作の2本立てという珍しいケースとなった。 ● デパガと怪獣ショーの気ぐるみバイトの恋。結婚後まもなくカレシの心臓病が発覚して、夫は自宅療養、妻はブティック店員に。何もしないでブラブラしてりゃだんだん心が腐ってくるし、そんなカレシを見てるのが辛いからカノジョは外に男を作る。妻の浮気に、夫もうすうす気付いちゃいるが…。「愛してる」という気持ちに自信が持てなくなってるプチ倦怠期夫婦のラブ・ストーリー。 ● 面白くなる芽はあった…と思うのだ。ちゃんと怪獣の着ぐるみをどっかから借りてきた努力は買うし、ヒロインが浮気相手に今さら「どんな男性が好みですか?」と訊かれて「空とべる人」なんて洒落た台詞もいくつかある。夫がほんとうに「空をとぶ」クライマックスも悪くない。だけど、それまでの過程における2人のエモーションの育て方が中途半端だから、ラストで大輪の花が咲かず、こじんまりとしてしまうのだ。主人公夫婦の対比として置かれる、2組のカップルのエピソードにオチが付かないのは片手落ちだし、ヒロインの浮気相手と夫の対面シーンが無言なのは、佐藤吏に相応しい台詞を書く力量がないだけ。ここを書かなきゃ、ヒロインが夫を選ぶことに説得力が生まれないでしょうが。素人脚本家の限界だな。 ● ヒロインに沢木まゆみ。 夫に松田信行。 妙に気持ち悪い礼儀正しさが「役作り」なんだか「演技設計ミス」なんだかよくわからない「ヒロインの浮気相手」に岡田智宏。 年下の愛人と奔放なセックスを続けるバツイチのブティック店長に、ゆき。 夫を送り出した後で自宅に愛人を引き込んで愛欲に溺れる隣家の妻に佐々木基子。 それを知りつつ家に踏み込む勇気がない情けない夫に、なかみつせいじ。 デビュー作ということで、しのざきさとみ・里見瑤子・風間今日子・水原香菜恵らが脱ぎ無しの御祝儀出演。おれもキモチ御祝儀込みで星3つ付けておく。[新東宝]

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作家と妻とその愛人(深町章)

脚本:岡輝男 助監督:佐藤吏

「先生、あたしマンションが欲しい」「私はきみのマンチョンが欲しいぃぃ!」・・・田吾作のしょーもないダジャレも久保新二の口から聞くとつい笑っちゃうんだよなあこれが(てゆーか、久保チンのアドリブかも) ● 深町組 定番の「水上荘ロケ」もの。時代は明示されていないが昭和初期とかかな。流行作家の鳩胸富造は、愛人を家に連れ込んでたところを鬼女房に見つかり、財布を取り上げられて仕事部屋に軟禁状態。遊びの軍資金を調達するために金貸しの鮫肌吾郎に会いに行き、逆に一風変わった契約を申し込まれる。金貸しの愛人を「書生」として匿ってくれれば、月々の返済を免除してくれるというのだ。但し、愛人に手を出したら倍返し。渡りに船とばかりにサインする作家だったが、あくる日、金貸しに伴われてやって来た無邪気な若い娘=富士額広子にひと目惚れしてしまう…。 ● 最後まで岡輝男 脚本とは思えぬほど良く書けていて、ちょっと驚いた。欲望が思わぬ結果を引き起こし、ストーリーが思いもよらない方向へと転がっていく悲喜劇。つまり本作は「コーエン兄弟もの」なのである。んなバカな!というツッコミが各方面から入りそうだけど、実際そうなんだからしょうがない。マジで星もう1つ増やそうかと考えたほど。 ● 好色作家の久保新二を筆頭にキャストも適材適所。コワ〜い女房に佐倉萌。純真で大喰いな「金貸しの愛人」に里見瑤子。ぬめーっとした存在感が出色の、金貸しに かわさきひろゆき。濡れ場要員に(地味ぃな「姉妹OL 抱きしめたい」の時とは別人の)金井悦子。 カメラの飯岡聖英も今回は立派に「清水正二の代役」を果たしていた。 なお、タイトルが類似してるからといってカンニバリズムとかは出てこないので念の為。[新東宝]

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プレイガール7 最も淫らな遊戯(中野貴雄)[キネコ作品]

日本の誇るモンド監督・中野貴雄のいつものクッダラない女闘美アクション・コメディ。マリアの鐘・ゼウスの鐘・サタンの鐘と3つの鐘が合わさると「黄金の山」の在り処がわかるという。国立秘宝博物館から盗まれた古代バビロニアの秘宝をめぐって、ピチピチの女のコばかり7人の探偵事務所「プレイガール7」と、黒蜥蜴のような女盗賊パール・ハーバー(またの名を真珠夫人)が対決する!(脚本:中野貴雄) チープ&キッチュなビデオ撮りのビデオ特撮で、よーするに「オースティン・パワーズ」「チャーリーズ・エンジェル」を足して1,000分の1の予算で割って、濡れ場を足したよーなもんである。内容的には自主制作の宴会ビデオなんだが、これをやって寒々しくならないのは「才能」である。永遠にメインストリームへは進出できない人だが(←断定)中野貴雄にはこれからもクッダらなくて楽しいだけの映画を作り続けていただきたい。 ● メンバーは桜井風花・零忍・奈々瀬あい・片平美里・柏木留華・宝来みゆき・朝倉まりあの7人(黄色い名前までが濡れ場あり) まあ、キャラ紹介とストーリーを60分で片付けるのはしょせん無理で(キネコの汚い画質もあって)顔が判別できるのは濡れ場のある4人だけ。「パソヲタのメガネっ娘@アメコミ・ブリーフ着用」を演じる奈々瀬あいってコが完全なアニメ声で、あの声でアエがれると頭が痛くなってくるな。 パール・ハーバーに秋川典子。この人もAV女優のようだが、ドラッグ・クイーン衣裳&メイクで台詞の半分が高笑いというスンゴイ役。 ヒロイン的な役まわりの「国立秘宝博物館 主任学芸員」に(本番OKの男優という理由で選ばれたとおぼしき)真央はじめ。 中野貴雄も「202号室の住人」役で一瞬だけ出てくる。 ● 下手すっと知らない人のほうが多いような気がするので書いておくが、昔、1969年から1974年までの長きに渡って東京12チャンネル(現・テレビ東京)で放映された「プレイガール」っていう東映 製作のテレビシリーズがあったのよ。沢たまき の「オネエ」を所長とする女性保険調査員チームの活躍とパンチラを描くお色気アクションで、本作はそれを下敷きにしている。女のコたちの衣裳や視覚効果が1970年代サイケ調だったり音楽がズージャだったりすんのはそのため。15分おきぐらいに「CM前の番組ロゴ」みたいな画面に、低い声で「プレイガ〜ル」とジングルやってんのも当時を模している。もっともおれはそのころ小学生だったから(「キイハンター」は毎週かかさず観てたけど)「プレイガール」はオトナの番組だから駄目って言われて、あんまり観たことないんだけどさ。 ● さて本作は、新東宝がビデオ会社と組んで始めた新企画「ピンクX(ピンク・エックス)」の第2弾にあたる。通常のピンク映画の3倍の製作費を投じた「豪華版」ピンク映画というのがウリで、たしかに(ピンク映画よりギャラが高いはずの)AV女優を大挙7人も出演させるのは通常枠のピンク映画では不可能なことで「豪華」には違いないが、そもそも公開初日の5/31には劇場版よりも長い完全版が「プレイガール7 秘密の鐘が鳴る」というタイトルでビデオレンタルされ、2週間後の6/14にはメイキング映像つきのDVDも発売済なのである。それを60分に無理やりカットして、汚い画質のキネコに落としたものが劇場版なのだ。観るならぜひビデオでご覧なさい。[トライハート=新東宝]

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プレイガール7 秘密の鐘ベルが鳴る(中野貴雄)

[ビデオ観賞]・・・というわけでビデオを借りてきた(なぜそこまでして…) 「バビロンの鐘を追え!」というエピソード・タイトルが出るビデオ版の尺は87分。てことは劇場公開版は27分もカットしてたのか! てゆーか、それって3分の1切ったってことじゃん。ムチャクチャだな。カットした分量の半分は濡れ場を切り詰めたものなので大勢に影響はないのだが、残る半分が問題で、重要な伏線をバッサリとシーン抜きしたり、カット尻の捨てギャグを切り捨てたりと、ディテイルの積み重ねから世界を構築するタイプの中野貴雄にとって、劇場公開版は致命的とも言える改変になっている。 ● ビデオ版のほうは中野貴雄の最高傑作!…と言い切れるほどこの人の作品を観ているわけではないが、普通の映画で目にしたならば怒り心頭必至のAV嬢たちのヘタレ演技さえ「武器」にしてしまう特殊な作風は誰にも真似できるものではない。フィルム至上主義の当サイトではあるが、こうした「ビデオ撮り作品」についてはビデオ/DVD鑑賞を推奨。だって桜井風花ちゃんのピンク色の乳首を確認できるのはビデオ/DVDだけなんだもん(火暴)

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変態催眠 恥唇いじめ(寺嶋亮)

プロデュース:関根和美

万斗流 催眠術の柳家小さん会長はいまわの際に、実力はいまひとつだが人柄が良く誠実な柳家花禄を後継者として指名、随一の実力を誇りながらも人間の業(=欲望)に忠実に生きるエゴイスト・立川談志を破門する。勝手に家元を名乗った談志は、花禄を逆恨みして復讐を誓う…。 ● 新人・寺嶋亮の第1作(監督・脚本) 催眠術により女が「自由意志」で躯を開いてくれる様を面白おかしく見せることが眼目のバカバカしいコメディだが、きちんと起承転結のついた脚本が用意されており楽しめる。予算が無いなりに細かいギャグを工夫している点にも好感が持てる。今後もこの熱意が持続されるならばピンク映画の「量」を支える信頼できる担い手となるだろう。 ● そしてプログラム・ピクチャーとしての「質」を保証するのが林由美香・風間今日子・里見瑤子という3女優の揃い踏み。特にM女役の風間今日子は「ボールギャグされたままのカラミ」という珍しいものを見せてくれるのでマニアな方は必見。 花禄師匠にゾッコンの女講談師…じゃなかった看護婦のヒロインに、新田組「介護SEX お義父さん、やめて!」でデビューした安西なるみ。杉田かおる を若くしたみたいなリス系の笑顔ほわわんとしてて、この女優さんはコメディ向きですね。 主人公の「花禄」に中村拓。あんまり見ない顔だけどなかなかの二枚目演技。 憎まれ役の「談志」に竹本泰志。 冒頭で死んじゃってからも写真の中で小ネタを続ける「小さん」に町田政則。 患者に なかみつせいじ。 往年のピンク映画女優・亜希いずみ がチラッと友情出演。[オーピー/大蔵映画]

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三十路浴衣妻 からみつく(佐々木乃武良)

ピンク映画40周年を記念して40年前の脚本を映画化!・・・と言われても納得できちゃうであろう古色蒼然たる怪作(脚本:奥渉) 亭主の会社が倒産、逃げるように田舎の実家に戻ってきたヒロイン。「職探しもせず不貞腐れてる亭主」と「高校時代の憧れの剣道部の先輩」の間で揺れ動く女心…というメロドラマ。「先輩」は今ではヒロインの親友と結婚してて、でもその「親友」はパート先の主任と浮気してて、それをヒロインが見てしまって…とか。ま、手垢の付いた話でも普通に撮れば普通はここまで破壊的な代物にはならんのだが、「ひがみ亭主」役の坂入正三のどこで憶えたんだ そのメソッドは!という恐るべき演技と、どこか三条まゆみを思わせさえするヒロイン 結城マリアの昼メロ演技が、映画を過去の時空へと引き戻す。いや凄かった。誰も喜ばない「凄さ」だけど。 ● ゆき・葉月螢・なかみつせいじ・千葉誠樹らの出演。[エクセス]

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したがる先生 濡れて教えて(今岡信治)

俳優に対する演出には3種類ある。すなわち、A:既成の俳優のイメージをそのまま使う。B:演出家の中にあるイメージに俳優を嵌めこむ。C:俳優の中に眠っている「別の貌」が目覚めるまで追い詰める・・・である。リハーサル時間すらままならないピンク映画は基本的にAで、俳優の力量に応じて適度にCが混じることが望ましい。ただしピンク映画の宿命として、俳優としての基礎訓練が出来ていない素人同然の女のコを「主役」として使わざるをえない場合が往々にしてあり、その場合は手取り足とりでBをやるしかない。 ● 今岡信治は一貫してCの演出家だ。俳優にとことん付き合って隠し抽斗を開けてきた。だが、今回は時間が足りなかったか、最初から俳優が抽斗を持ってなかったか、演出家と俳優の間の化学反応がまったく起きないままに終わってしまった。今岡信治の映画は「奇抜な筋」と「不定形な役者の魅力」でみせる映画だから、今回のように「高校の女教師とそのカレシの付いた離れた」みたいな普通の話を、魅力のカケラもない俳優(予備軍)たちでだらだらと見せられても退屈なだけ。 ● ヒロインにはAV嬢の高野まりえ。声だけ聞いてると吉行由実が腹に力を入れないで喋ってるように聞こえなくもないんだが、まあ今岡信治は別人アテレコは やらんだろうし。 同僚の女教師にH系Vシネから、小倉あずさ。 本来だったら「もうひとりのヒロイン」になるべき「カレシの新しいカノジョ」に米倉あや。Googleで検索すると、同姓同名のそこそこ名の売れた声優さんがいるが、どうやらコレ、その御本人のようなのでアニヲタ君は必見。 脚本は今岡信治と星川運送(←なんちゅう名前じゃ) この「話の持ってき方」にするんなら、唯一エキセントリックなキャラクターである「黒ブチ眼鏡&スキンヘッドの生徒」の分量をもっと増やして、ヒロインと対等ぐらいにしないと駄目でしょ。あと、高校教師があんなミニスカ穿いてたら犯されちゃうぞ。 ● さて本作には重大な疑惑があって、画面に写っているものから判断すると本作は今年の正月に伊勢原にロケして撮影されたようなのだが、「撮影の翌月には公開」という新東宝の標準的スケジュールからすると、撮影から公開まで半年も間が空くというのは何かトラブルが有ったとしか考えられないほど異例なのである。おれの「読み」はズバリこうだ > この作品、じつは昨年の「高校牝教師 汚された性」に続く女教師ものとしてエクセスから発注されて(エクセスの通例としてピンク映画初出演のAV嬢を主演に据えて)製作したものの「ピンク映画になってない」としてエクセスから受け取りを拒否。国映の朝倉大介に泣きついて買い取ってもらい、再編集してようやく新東宝で公開する次第となった。…どうよ?>関係者。 ● エクセスが嫌ったのは(…って、すっかり既成事実にしちゃってるけど)話の暗さより、むしろ「画の暗さ」じゃないかと思う。撮影の鈴木一博はロクに照明を使わず、やたら画面が暗い。あんたがよく撮ってる自主映画ならそれでもいいか知らんけど、ピンク映画という「商品」としてはそれじゃ失格だ。「高校牝教師 汚された性」で組んだプロのカメラマン下元哲にしとけばこんなことにはならなかったのねえ>今岡クン。[国映=新東宝]

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欲情牝 乱れしぶき(池島ゆたか)

素人にゃ出てこない語彙だよな> 乱れしぶき。 ● すでに今年4本目。快調にトバす池島ゆたか+五代暁子(脚本)コンビの最新作は、無謀にも「欲望という名の電車」のピンク版である。ビビアン・リーが畢竟の演技をスクリーンに焼き付けたブランチ、杉村春子が生涯の持ち役として演じつづけたブランチ、そしてつい先月には大竹しのぶがそれをも凌ぐほどの凄みを見せつけたブランチだ(これについてはキネマ旬報6月下旬号に川本三郎が素晴らしい一文を寄せている) この難役をこなせる「女優」がピンク映画の現戦力にいるだろうか? 伊藤清美ではエキセントリックに過ぎる。葉月螢や佐々木基子は「柄」じゃない。里見瑤子じゃ若すぎる。おれはたぶん吉行由実ならブランチになれるのじゃないかと思うが、池島ゆたか が選んだのは かわさきひろゆき が主宰する劇団 星座(ほしざ)の看板女優・手塚美南子(映画出演時は若宮弥咲 名義)だった。 ● 初めての本格主演となる若宮弥咲は、まだ舞台と映画の演技の違いが──ひょっとしたら主役とワキの違いすら──判ってない状態で、舞台調の「熱演」をそのままスクリーンに持ち込んで映画をブチ壊しにした。いや勘違いしないでくれ。オーバーアクトがイカンと言ってるのではない。ブランチというのはオーバーアクトを観客に受け容れさせるだけの説得力が必要な役なのだ。ブランチを演るなんざ(文字どおり)10年はやい。 ● 池島の演出もブランチのキャラクターに一貫性が感じられない。この話では、カメラは基本的にヒロインだけを写していればよいのだ。他のキャラクターを描く合間にもヒロインの捨てカット(と言うのかな、台詞の無いキャラ描写カット。例えばデパートで目を輝かせて買い物をする様子とか、台所で一心不乱に自分の買ってきた食器類をレイアウトしてる姿とか、あるいは新宿南口前に人待ち顔で立っているロングとか)を挟み込むべきなのだ。一方、五代暁子の脚本は独自のアレンジを施して健闘してる。 ● 元AV女優で、いまは夫と生まれたばかりの赤ちゃんと幸せな3人暮らしをしてる「妹」ステラに(実際にAV女優でこれがピンク映画初出演の)倉沢七海。まだ台詞まわしなど素人同然だが、時おり良い表情を見せるし、やる気は伝わるのでそのうち化けるかも。ちなみにこの赤ちゃん、なんと1980年代のピンク映画の女王・橋本杏子の娘さん(!)だそうだ。 エロ本編集者をしてる、気性の荒い「妹の夫」スタンリーに文学座の佐藤広義。 区役所の戸籍係をしてる「スタンリーの親友」で、ヒロインに恋心を抱く(なぜかこの人だけ原作どおりの役名の)ミッチに なかみつせいじ。 もう1人の「スタンリーの親友」で、ヒロインが居候してるマンションで「ハメ撮り撮影」をしちゃうAV監督に(著書「純愛戦記」で友松直之と穴兄弟であることを実名暴露された)樹かず。 AVギャルに新人・渋谷千夏。このお嬢さん、ピアスが趣味のようでフェラチオされたら痛そうな舌ピアスのみならず、なんと剃りあげた大陰唇にまでリングピアスをしてるのだ。清水正二のカメラは「リングピアスがパンティーの脇からハミ出してるところ」だけじゃなく、超アップで「リングが躯を突き抜けている部分」まで写すんだけどえーとそこってつまりあれですかおま…。 終盤に登場する2人組に特別出演の池島ゆたか&河村栞。ここで池島が台詞を喋るとものすごくホッとするんだけど、それってつまり他の出演者のレベルがあまりに低すぎるってこと? ● 話は変わるが、池島ゆたかのWEB日記によると、本作と「猥褻ストーカー 暗闇で抱いて!(暗くなるまで待って)」はどちらも、佐々木麻由子のピンク映画引退作として企画されたそうだが、結果的に「OL性告白 燃えつきた情事(スウィート・ノベンバー)」になった。それで正解だったと思う。こうして出来上がった3本の映画を観較べてみても佐々木麻由子にとっては「OL性告白 燃えつきた情事」が最良の手向けだったと思うよ>池島さん。[オーピー/大蔵映画]

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小林ひとみ 抱きたい女、抱かれたい女(下元哲)

いやあ映画ってのは観てみるまで判らんもんだねえ。今週のエクセスは、期待大だった女優・佐倉萌の長篇監督デビュー作が褒めるところのない酷い出来で、正直 言って「今さら小林ひとみ じゃねえだろう」と期待値ゼロだった本作が不意の傑作だったりするのだから。 ● 3ヶ月前に突如 失踪した夫を必死で捜し求める妻。夫には会社の金を使い込んだ疑惑がかかっていて、人妻に恋心を抱いている夫の部下が捜索行を手助けする・・・というミステリの定番ストーリー。いわゆる「デスペレート・シーキング」ものってやつである。新たな人物の登場とともに謎が1つずつ解けていき、そして最後にはもちろん「残酷な真実」に辿り着く。まるで日活ロマンポルノの1本として宮下順子・宮井えりな・鹿沼えりというキャスティングで撮られていても違和感がないような古いタイプの映画であるが、だが紛れもなくこれは「映画」である。小山田勝治のアシストを得て自らファインダーを覗く下元哲は古いタイプのカメラマンだし、ドラマ演出もオーソドックス。アップになったヒロインの背景に白い波頭がくだける…などという「絵」を久し振りに見た。また、そういう絵作りが似合う映画なのである。小林ひとみ の古風な美貌も「いまどきクラブの女だってそんなにクルクルしてねえだろう」ってぐらいカールしてる年代不明なヘアスタイルも物語に合っている。最後まで演出のトーンに乱れが無いのは立派。エクセスにしては少なめの濡れ場はひとつひとつねっとりとイヤらしく撮られており「ピンク映画としての要件」も十二分に充たしている。下元哲は女優の下着ひとつにも凝り、室内でもヒール着用という徹底ぶり。アーティスティック・センスよりも専らクラフツマンシップの発露によって作られたプログラム・ピクチャー。脚本の「王孫子」とは誰の筆名だろう?(このところコンビを組んでる石川均かな?) ● 小林ひとみ はもう30代後半だと思うが、マスクもボディも充分に観賞に足る美しさ。 助演の今井恭子と池谷紗恵も、それぞれの柄に合ったベストキャスティング。 「失踪した夫」に二枚目モードのなかみつせいじ。 「ヒロインを慕う青年」を演じた(ちょっと筒井道隆 似の)柳之内たくま も好印象。[エクセス]


いじめる熟女たち 淫乱調教(佐倉萌)

昨年、公開された3人の主演女優が監督も兼ねるという3話オムニバス「人妻不倫痴態 義母・未亡人・不倫妻」の1篇で監督デビューした女優・佐倉萌が、今度はみずから脚本も書いて初の長篇作品(といっても60分だけど)を発表した。佐倉萌という女優さんは、前々から裏方の制作の仕事や、着付けとか料理担当などのスタッフとしてもピンク映画に係わっていて、じつに聡明そうな人なので監督進出は必然とも思われたのだが、うーん…。 ● 夫や恋人に浮気されてた女たちが男どもに復讐する…という、まるで浜野佐知の映画のような話で、演出に関しては褒めるところがひとつも無い。彼女がなにゆえ監督になりたかったのか、この映画で何をしたかったのか、演出家として何を志向してるのかが、本作からはまったく伝わってこない。リアリティのあるポルノを目指してるなら、この脚本はまったく不向きだし、トラディショナルな商業ピンクを意図してたのなら、もっとメリハリを付けた演出をしなくちゃダメだ。映画の輪郭線がなんとも曖昧なのである。そもそもPGのサイトに載ってる本作のストーリーを、映画を観ただけで理解できた客は1人もいないと思うぞ。説明場面が足りなすぎるのだ。 ● さらに致命的なのが濡れ場演出のやる気の無さ。なにしろ本作ではセックスが1度として完遂されないのだ。上の下元哲と較べるとよくわかるが、佐倉萌は濡れ場に興味が無いのだろう。そーゆー人はピンク映画撮っちゃいかん。あと、加藤孝信のカメラも良くない。 ● 佐倉萌の演出に輪をかけて酷いのが主演女優の質。この鷲亮子なる新人、中島みゆき を100倍ブスにしたような愛嬌のカケラもない女で、乳が萎んだ風船のように小さく しかも垂れているという、いわゆるババ乳なのである。アップになんかなったりした日にゃ地獄だ…観客が。小川欽也の映画かと思ったぜ。この脚本なら佐倉萌・林由美香の主演(鈴木敦子と風間今日子はイキ)で浜野佐知監督で観たかった。 [エクセス]


レイプ痴女 撫でくり廻す(小川欽也)

小林悟 去りしあと「老害監督」のタイトルを独占的に保持するベテラン・小川欽也の新作。本来なら観賞リストから外れている作品なのだが、ピンク映画でいちばんイヤらしい躯つきの「女優」佐倉萌ひさびさの主演作でもあり「やっぱピンク映画は女優で観ないと」とか自分に檄を入れつつ観に行ったんだが…。まあ、佐倉萌さんの圧倒的な肉体に敬意(と欲情)を表して星1つ付けておく。[オーピー/大蔵映画]

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淫乱堕天使 桜井風花(森山茂雄)

プロデュース:池島ゆたか

池島組の助監督・森山茂雄の監督デビュー作(脚本も自筆) 地方から出てきた言語障碍の(扇風機に長く当たりすぎた人みたいなアウアウっていう喋り方をする)女のコが、大都会・新宿でたった独りの人捜し。路銀稼ぎに路上で踊るけなげな姿に、早大4年のモラトリアム君が一目惚れ…って、いまどき学生でも作んないよーな気恥ずかしい青春映画。念願の監督昇進なのだろうから多少のイタさは目をつぶるとして、ポルノよりドラマ志向なのも(現時点では)いいとして・・・かれが彼女を部屋に泊めてあげて、その夜2人は結ばれて、だけど翌朝、彼女の姿は消えていて、ふむふむそれで?…と思ったらエンドロール。おいおいそこで終わりかい!そこから先がドラマだろーが!) まあ、ロケハンをきちんとやってる熱意は認める。森山茂雄は まず映画1,000本観るか、女100人にフラれてから出直すよーに。 ● 主演のAVギャル・桜井風花は、初音映莉子 系の顔立ちで初音映莉子よりもずっと可愛い。タイトルに名前を冠されるぐらいだから、かなりの人気なんだろうけど、なにもAVに出なくたってやってけんじゃないの? 脇に河村栞&水原香菜恵。[オーピー/大蔵映画]

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不純な和服妻 覗かれた情事(坂本太)

今週のエクセスは定番のストーリーを手を抜かずに演出した水準のピンク映画が2本 並んだ。まず坂本組は「貞淑な和服妻が、信じて尽くしていた夫の裏切りをきっかけに淫蕩な本性をあらわす」という話。ラストカットは騎上位で腰を振りながらCCDカメラをしかと見据えるヒロインのアップ。有馬仟世の脚本は次から次へと「出来事」を起こして60分を無駄なく使い切る。ヒロインの孵化にいたる触媒として「和服妻に岡惚れしたストーカー青年」が設定される。和服妻の夫(千葉誠樹)は、本店の営業部長に出世が決まったエリート銀行マン。ストーカー青年(竹本泰志)は会社にリストラされたダメ・サラリーマン。この対比はあまり深く描かれないが、ここはヒロインに焦点を絞って正解だろう。 ● 主演はちょっと衛藤利恵 似のロシア系が入ってそうな美貌のAV嬢・星沢レナ。まだ「演技」と呼べる段階ではないが、ときおり良い表情を見せている。 夫の浮気相手に ゆき。 青年のカノジョに中渡実果。あれ?この巨乳はどっかで見たことあるぞ…と思ったら望月ねね から改名したんだね。[エクセス]

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介護SEX お義父さん、やめて!(新田栄)

余所のBBSでどなたか(キルゴア二等兵さんだった?)も書いてらしたが、たしかにこのタイトルで義父が久須美欣一じゃないのは間違ってる!(しかも久須美さんは新田組レギュラーなのに!) いまや「一般映画の俳優」の螢雪次朗が義父を演じるのは豪華っちゃ豪華なんだが、逆に言うと久須美欣一の役に螢雪次朗では勿体なさ過ぎるのだ(こらこらアンタどっちの味方なんだよ。いやどちらの役者さんもファンですよ) いやマジな話、螢雪次朗では、息子の嫁に介護されて入浴するのに裸になっても逞しすぎて、どー見ても「リュウマチで半身不随の老人」には見えんのだ。てゆーか螢さん、ピンク映画に出る時間があるんなら他の組に出てくださいよ。 ● ジャンルとしては「楽観的でプラス思考(うすらバカともいう)のヒロインがトラブルをすべてセックスで解決していく」という宇能鴻一郎ものである。監督+脚本は、新田栄+岡輝男の田吾作コンビ。今回 感心したのは、田吾作の脚本にしてはめずらしく、一貫した感情の流れが最後まで持続してること(褒めるレベルが低すぎる気もしますが…) 義父の介護のため郊外に引越 → 通勤が遠くなって夫の都内泊が増える → ヒロインの孤独/義父との心の触れ合い → 夫の浮気を妻が知る → 義父が慰める → ヒロインと義父が結ばれる。そしてヒロインの絶頂でエンドマーク。螢雪次朗の演技力もあるとはいえ、若妻が義父とセックスすることが(それほど)不自然に見えないってのは、田吾作コンビの映画としては画期的だろう。あと、低予算のピンク映画にもかかわらず、ちゃんと車椅子、介護用ベッド、入浴用チェアといった本物の介護用具を揃えてるのも偉い。 ● 主演は杉田かおる を若くしたみたいなAVギャル・安西なるみ。台詞まわしもたどたどしくいかにもアタマ悪そうなんだけど、宇能鴻一郎もののヒロインには、かえってそのぐらいのほうが似合ってるのだ。 夫になかみつせいじ。 夫の浮気相手に林由美香。 最初にヒロインに「介護の基本」とレズ・セックスを教える介護士に風間今日子。 往診に来てヒロインまで触診治療してっちゃう医者に柳東史。[エクセス]

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痴漢電車 秘芯まさぐる(荒木太郎)

2000年末の「飯場で感じる女の性」以来、1年半ぶりとなるピンク映画版の「男はつらいよ」こと、荒木太郎 自作自演による「キャラバン野郎」シリーズ第8作。同一のキャラで8作も続いてるのって(かつての「未亡人下宿」シリーズの久保新二を別にすれば)たぶんピンク映画史上最長のシリーズなんじゃないだろうか。 ● 今回のマドンナは空の鳥籠を持ち歩く少女ナナ。電車で痴漢されてる少女に一目惚れした主人公シンジが白黒ショーの相手役にスカウト。場慣れしてない初々しさがお客にも大評判で、美少女と2人、ひとときの幸せを味わうシンジ君であったが、オカリナを持った中年男の出現と時を同じくして、少女はふつりと消えてしまう…。 ● ナナという名のヒロインといえばエミール・ゾラの「女優ナナ」 今回はその緩やかな翻案といえるのだが、いまひとつ話が膨らまないのが物足りない(脚本:内藤忠司) ただロケ地の選定はあいかわらず素晴らしく、氷の張った富士五湖から、白雪に包まれた長野・善光寺境内、年末の 丸の内の 光の通路(ミレナリオ)、そしてもちろん走ってる電車の中といったフォトジェニック(?)な背景がドラマをゆたかに彩る(撮影:前井一作) 特記すべきは、冒頭のコマ落とし撮影によって語られる「2人の出会い」の、従来ならば8ミリ・カメラで撮影していた場面に、本作ではビデオカメラが初めて使用されたこと。ビデオ撮りといっても完成した本篇では画像処理されて使用されるので、そこに含まれる詩情は8ミリに決して劣ってはいないのだが、やっぱりちょっと寂しいかなあ…。 ● プチ=ファム・ファタルな少女ナナに、ミステリアスな魅力を発散する、美貌の山咲小春。 シリーズのもう1人の主人公=めめしいシンジ君を叱りつけ、力づける元カノジョのハナエちゃんに林由美香。本作ではテキヤのおっさんとくっついて中古AVを売ってるのだった。 そのテキヤのおっさんに劇団MODEの小嶋尚樹。 オカリナを持つ中年男に縄文人。 MなAV女優に篠塚あやみ。[オーピー/大蔵映画]

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愛染恭子の 痴漢病棟(愛染恭子)

新東宝がジャパン・ホーム・ビデオと組んで始めた新企画「ピンクX(ピンク・エックス)」の第1弾。なんでも製作費が1,000万円という…つまり通常のピンク映画の3倍の予算を投じた豪華版ピンク映画なんだそうだが、なにゆえその1発目が愛染恭子!? だってあなた見たいか今さら愛染恭子の裸を? だいたい「X」ってのはゲンの悪い名で、かつて「にっかつロマンポルノ」がAVに対抗して「ロマンX」を始めたときにゃロマンポルノそのものが3年持たずに消滅しちまったんだが、大丈夫か!?>新東宝。 ● フィルム上のタイトルは「痴漢病棟」。愛染恭子が理事長を務める大病院で、毎週 金曜の夜にナースだけを狙う連続レイプ事件が発生。犯人は、襲った女に必ず潮を吹かせるゴールドフィンガーの持ち主だった。体面と外聞をおもんばかった愛染理事長は警察に届けず、知り合いの女弁護士・小室友里に犯人捜査を依頼。小室弁護士はカウンセラーに変装して潜入捜査を開始する…というサスペンス・ミステリ(脚本:山口伸明)なのだが・・・なぜ弁護士!?それも女!?) その前にガードマン増員しろよ!と思ったのはおれだけ? ● 監督デビュー作「愛染恭子vs小林ひとみ 発情くらべ」は10分で出ちゃったので、実質、初観賞となる"監督"愛染恭子は、以外に古風でしっかりした演出を見せるが、これはもしかしたらラインプロデューサーとしてクレジットされている藤原健一(「痴漢ストーカー 狙われた美人モデル」)の腕かもしれない。あと、やたら画面手前のナメや、下からのアオリの構図を多用すんのは監督の好み?カメラマンの趣味? いまどき誰も使わん万華鏡フィルター(=画面に赤青緑のキラキラを散らせる)なんか使ってて、それも使い方が下手なんで、ひょっとして?…と思ってたら、エンドクレジットでほんとに「撮影:飯岡聖英」と出たので笑っちゃったぜ。 ● 大作だけあって濡れ場のある女優だけで5人も出ている。冒頭にレイプ被害者となる看護師に沢木まゆみ。そう、新時代に適応してはやくも本作でのナースの呼称は「看護師」になっているのだ。イヤだねえ。カンゴシだって。色気もへったくれもありゃしない(まあ「色気を感じるほうが間違ってる」という正論も御座いましょうが) 愛染はあいかわらずの訛り丸出しの台詞棒読み。 小室友里は中途半端に「自分は上手い」と勘違いした小芝居が目障り耳障り。 あと濡れ場こそ無かったけど中川真緒が出てたぞ。休業中じゃなかったのか!?(先日のピンク大賞授賞式の欠席理由が「女優休業中のため」だったんだけど…)[新東宝=ジャパン・ホーム・ビデオ]

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美人姉妹の愛液(渡邊元嗣)

渡邊元嗣という人は根っからジュブナイルな人で、もう絶対に「ハリー・ポッターと賢者の石」とか大好きに違いないのだ。製作時期から勘案すると、たぶん映画館で観て「ハーマイオニーちゃん可愛いっ!」という勢いで作ってしまったと思われるハリ・ポタ+「プラクティカル・マジック」+日本の魔女っ子アニメメルヘンチック・ギャグポルノ。 ● 魔法学校に通うブレザー制服姿の女子高生メグ(つまり、魔女っ子メグちゃんですな)が森の中を長ぼうきを手に歩いていくと、昼間っから満月の絵ばかりを描いている売れない絵描きに出会う。互いに一目惚れしてしまう2人だが、じつはこの男女(の遠い先祖)には、その昔、2人に嫉妬した悪魔によって、メグには「セックスした相手が死んでしまう」呪いが、絵描きには「24才の誕生日に死んでしまう」呪いが かけられていたのだった…。 ● いや、これが例えば かとうあい主演なら ★ ★ ★ ★ ★ を付けたかもしれないが、なにせ前作「女痴漢捜査官4 とろける下半身」に続いてヒロインを務めるのが、磯野貴理子をさらに2まわりブスにした美波輝海なので「萌え」どころか「萎え」度100%(泣) てゆーか、ピンク映画界にはこの手の天然キャラを演らせたらピカイチの里見瑤子という逸材がおるではないか。ほんと頼むよ ナベちゃん(>馴れ馴れしい) ● 絵描きの青年に今野元志。 魔女っ子3姉妹の長姉に葉月螢。次姉に林由美香←この人ほんとにマンガチックなアクションが上手いなあ。 頭にゴールドの角を付けた「人の善い悪魔」にナベ組レギュラーの十日市秀悦。 脚本の山崎浩治に質問だけど、そもそも惚れた魔女と結婚する前に死んじゃった人間の男に、なんで子孫がいるんでしょーか?[オーピー/大蔵映画]

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義母尻 息子がしたい夜(松岡邦彦)

これなんて読むの?(ぎぼじり?) なんかすげえタイトルだなあ。話は、もうそのまんま。後妻に来た若い義母と大学生の息子がセックスするまで…という定番もの。松岡邦彦は、川奈まり子「玲子の秘密 多淫症の人妻」に続いて、ねっとりと、丁寧に、ラストのカラミに向けて外堀を埋めていく(脚本:松岡邦彦&黒川幸則) 女優はキレイに撮られており(撮影:村石直人)、いやらしい濡れ場もたっぷり。決して「こんなもんで良かんべイズム」(c)椎名誠 に陥ることなく、かといって国映作品のように過大な野心がピンク映画としての商品価値を下げることもないスタンダードなプログラム・ピクチャー。3本立てが みんなこのレベルなら、おれも苦労しないんだが(苦労って…) ● ヒロインを演じる新人・岡崎美女(おかざき・みお)が、パッチリした目の、鼻筋の通ったなかなかの別嬪さんやなあ…と思ったら、この方、けっこう有名なAV嬢なんだな。カラミになると突如として淫乱系に変身するのはその所為か(いや、ピンク映画はホンバンしてませんよ念の為) 義理の息子に園部貴一。そのカノジョに風間今日子。義母の連れ子に ゆき。[エクセス]


尼寺の艶ごと 観音開き(新田栄)

いつもの岡輝男・脚本+新田栄・演出の田吾作コンビによる大根ブス女主演のバチあたり尼寺もの。見どころは助演の佐倉萌&河村栞のカラミのみ。こんなもんのレビュウを書くために おれの貴重な時間を費やすのは勿体ないので以下略。[エクセス]

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ハレンチ・ファミリー 寝ワザで一発(女池充)

このところ「不倫妻 情炎」「多淫OL 朝まで抜かないで」と娯楽ポルノ映画としてはサイテーの代物ばかりを作っている女池充の最新作。今度はブス百貫でぶオバサンの出てくるポルノ映画である(火暴) でもって百貫でぶがハゲ中年の助けで処女喪失するとこがクライマックス(木亥火暴) またも問答無用で星1つかというと今回これがじつに面白いのである。新人脚本家・西田直子は初めてキャラクターの活きた、独り善がりではないエンタテインメントを書いたと思う。ちゃんと濡れ場も規定量が入ってるし(でぶの裸はちょっとアレだけど)、これであと水原香菜恵の終盤の心変わりに際して、観客に いやな女と感じさせないだけの「演出力」と、せっかくスイミング・プールを借りてのロケなのだから、紙のように薄い競泳用水着の濡れて肌に貼りついたエロティシズムを追求するだけの「エロ魂」が女池充にあれば完璧だった。 ● キャストではなんといってもハゲ中年=佐野和宏が素晴らしい。経営がド下手で生徒が自分の息子だけになっちゃった学習塾の情けない経営者。女房には逃げられ、借金はかさむし。意を決してビルの空き巣狙いに(しかもコブ付きで)入ったはいいが百貫でぶの女警備員にいとも簡単に取り押さえられ…という、もちろん佐野和宏なら難なくこなして当たり前の役ではあるが、それでもやっぱり「なんとかならない男の情けなさ」を演じさせたら絶品なのだ。で、また小学校6年生ぐらいの男の子が仕種から何から佐野和宏そっくりで、おれはてっきり佐野和宏の本当の息子かと思ってたら今野順貴クンという子役だそうで、ということはこれもまた女池充の演出の成果ということになろうし、またピンク映画に子役を出演させる交渉の困難は想像するに余りある。「自転車泥棒」といっては褒めすぎだが、大変に良かった。 女友だちにまで「ぶーやん」と通称されてる処女の女警備員に絹田良美。演技は好ましかったよ。演技は。うん。 普通のピンク映画だったら、そっちのモテないほうの役をやりそうな水原香菜恵が、美人でダイナマイト・ボディのスイミング・インストラクター役。とても良かったとは思うが、ここはやはり佐々木ユメカの役でしょう。 佐野和宏を捨てて若い男とくっついてる女房に佐々木基子。疲れたオバサンぶりがこれまた絶品(←褒め言葉です) そして、おお、本多菊次朗と江端英久の「バカ兄弟」の共演が! あと今岡信治はエキストラにゃ目立ちすぎだ。サラリーマンぜんぜん似合わねえし。[国映=新東宝]

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探偵物語 甘く淫らな罠(橋口卓明)

「はい、信頼と実績の愛情調査、園部興信事務所です」・・・伊藤猛 演じる浮気調査専門の探偵を主人公にした「人妻家政婦 情事のあえぎ」「人妻浮気調査 主人では満足できない」に続く私立探偵 園部亜門シリーズの第3弾。福俵満、武田浩介に続いて脚本に起用されたのは五代暁子。3作目ともなるとシリーズらしさが出てきて、前2作では冒頭と終幕にだけ出てきた「探偵と憎からぬ仲のキャバクラ嬢」(工藤翔子)は いつのまにかホステスに転身して、すっかり女房きどりで探偵に「一緒に店やらない?」とか言ってるし、2本続けて調査対象の人妻に恋してしまった惚れっぽい探偵は、今回は「5年前、まだヒラ警官だった頃に付き合ってた喫茶店の女のコ」(ゆき)から亭主(警官時代の同僚である)の浮気調査を依頼され、たちまち焼けぼっくいに火をつけようとして、それにホステスが嫉妬したり…といったプログラム・ピクチャーならではの「キャラいじり」が愉しめる。 ● 元・同僚に ささきまこと。もう1人の世間知らずの研究者肌の友人に なかみつせいじ。この2人は逆のほうが良かったのでは? ささきまことの「浮気相手」の若い女にうっすら腋毛がエロチックな奈賀毬子。 撮影は田宮健彦。 次はぜひ工藤翔子をメインにした話を希望。危機に陥った翔子ちゃんを探偵が命がけで救い出す…ってなハード・アクションを片岡修二 脚本でどうよ?[新東宝]

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猥褻ストーカー 暗闇で抱いて!(池島ゆたか)

もともとはピンク映画版「暗くなるまで待って」として企画された作品だが、出来上がったものは「ミュート・ウィットネス」の盲版といったほうが的確かもしれない。めくらのヒロインがストーカー殺人の現場に遭遇、犯人と30センチの距離ですれ違ってしまったことから巻き込まれる恐怖。脚本は池島組 座付作家の五代暁子。きちんとひとつずつ犯人の謎解きをしつつ、犯人が徐々にヒロインに迫る脅威を描いていくウェルメイドな構成に感心した。「暗くなるまで待って」ではヒロインの部屋だったクライマックス・シーンを、ヒロインの勤め先の杉並リハビリ・センター(という設定の東映化工)に変更したのも効果的で深夜のガランとした無人のビルを逃げ惑うめくらのヒロインを猫が鼠をいたぶるように犯人が追いまわす件りの迫真は、愚直な演出家・池島ゆたか がついに殻を破った瞬間だと思う。いまどき誰でも携帯電話を持っている(めくらならなおさら)…という事実を忘れずフォローしたのも偉い(それが当然だけど) いつもながらに(弟子の飯岡聖英と違って)フィルターワークも完璧な清水正二のカメラも素晴らしい。サスペンス映画の傑作。 ● 主演は「不幸でちょっとなげやり」なヒロインを演らせたらお手のものの、葉月螢。 マザコン・ストーカーに入江浩治@好演。 ヒロインと心を通わせる新人刑事に石川雄也。 他に美麗と新人・真咲紀子が出演。 関係ないけど、新東宝マークって色が変わった? ● [以下、ネタバレ] ひとつ難を言えば、本作のラストでもお約束どおりヒロインがビルの照明を落として暗闇で犯人に反撃するのだが、ヒロインが電気室の場所を知っているのが不自然だし、ヒロインが直接、手を下して白いステッキで犯人の目を潰すのはやりすぎ。それまでヒロインに感情移入していた観客を引かせてしまいかねない。ここは例えば【駆けつけた刑事が機転を利かせて電気室に行き照明を落とす → 突然の暗闇に犯人がヒロインを見失う → 階段の脇に隠れて息を殺すヒロイン → ふらふらと階段に近寄る犯人 → 暗闇に横一文字に突き出される白いステッキ → 犯人が足をとられて階段から転落 → フラッシュライトを手に現場に駆けつけた刑事がケータイで部下に「照明を点けろ」と指示 → 照明が点く → 階段下の踊り場に不自然な姿勢で横たわり絶命している犯人。カメラ手前側には しゃがみこんだまま泣きながら震えているヒロイン → 固く抱きあう刑事とヒロイン】…という流れにしたほうが自然だったのではないか。[新東宝]

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痴漢レイプ魔 淫らな訪問者(深町章)

眼球移植で視力を得ためくらのヒロインの眼には、会ったこともない男の姿が映っていた・・・というストーリーからお判りのように手塚治虫「ブラック・ジャック/春一番」ネタである。つまり今週の新東宝はめくらポルノ2本立てなのだ! ネタが被ってるのはとうぜん企画段階から判っていることで、意欲的というか冒険的というか無謀というか…>福俵満@新東宝プロデューサー。タイトルを付けた福俵満の頭に(「春一番」の映画化である)大林宣彦「瞳の中の訪問者」があったことは間違いないが、脚本の岡輝男が元ネタにしたのは去年の秋に出版された乙一「暗黒神話」のほうかもしれない(なぜなら「春一番」が扱っているのは〈角膜移植〉で、これは現在でも普通に行われている。ブラック・ジャックほどの腕を持ってしても不可能な〈眼球移植〉を扱っているのは「暗黒神話」のほうなので) ● もっとも出来上がったのは哀しいラブ・ストーリーでもグロテスク・ファンタジーでもなく、いつもの「田吾作が脚本を書いた映画」である。サスペンスってものがまったく判ってないだろ?>田吾作。ヒロインの瞳に映ったのは連続5人レイプ殺人魔の顔で、普通の脚本家なら(それが犯人の意図的なものか偶然かはともかく)「瞳の中の男」がヒロインの日常生活にさりげなく登場して来る。ヒロインが「会ったことがある」と主張しても周りは信じない。そして犯人は徐々に仮面の下の素顔を…というサスペンスを設定すると思うんだが、本作では最後の最後までそうしたサスペンスは設けられず、ラストで突然、犯人がヒロインの自宅に(それも顔が隠れたスキー・マスクをして!)押し入って来て(もともとめくらのヒロインなので)「暗くなるまで待って」の1億倍ぐらいショボいクライマックスが展開されるのであった。おれ、それまで「カレシと2人の同棲生活なのになんで住んでるのが2階建ての一軒屋なのだ?」と思ってたのだが、よーするにここで階段が使いたかったのね。なんだかなあ。せっかくの河村栞の好演もヘボ脚本のせいで台なしである(星3つは彼女に対して) しかもそれまで「迫り来る犯人」のサスペンスを無視してまでヒロイン中心で話を進めておいて、いちばん大事な(ピンク映画におけるハッピーエンドの表現である)最後のカラミが彼女じゃないのだ。馬鹿か?>田ぁ吾。 ● 鏡の中に(自画像として)見える「瞳と記憶の提供者(ドナー)」に山咲小春。 その悲しみにくれる夫に岡田智宏。 ヒロインの恋人に平川直大。 濡れ場要員に池谷紗恵。 ● 清水正二の撮影は基本的には素晴らしいのだが、ポスタリゼーション風の映像をレイプの記憶にのみ使うのは論理的一貫性に欠ける(かつての恋人や住居や自画像はなぜ通常の映像なのか?) てゆーか、そもそも自分がレイプされてるのを上から見てちゃイカンでしょ。あと、田吾作としては精一杯シャレたつもりのラストも、あともう1カットないと成立せんでしょうが。[以下、ネタバレ]犯人の死にざまの際に「犯人の財布から飛び出したドナー・カード」を描写しておいて、最後に再び眼科の診察室で「眼球手術を受けた患者が頭部の包帯をほどくシーン」がリフレインされる。今度の患者は、とある男性。包帯がほどかれる。固く閉じられた男性の眼が開く。その瞳のアップ。←ここで映画は終わっちゃうのだが、最後に「移植された犯人の眼球に映った、恐怖に顔をゆがめた(加虐願望をあおらずにはおかない)ヒロインの顔」のカットが絶対に必要。[新東宝]

★ ★ ★
熟女レズ 急所舐め(下元哲)

昨年の「馬を飼う人妻」に続いての脚本・石川欣とのコンビ作。今度もやっぱり「変な映画」である。プロットはよくある「人妻淪落もの」なのだが、最後まで男女のセックスが1度も描写されない(正確にはヒロインの妄想として1度あるが) 歳の離れた夫を演じる飯島大介に至ってはインターネットのSMサイトを見てオナニーするだけでカラミなし。じゃ、退屈かといえば さにあらず。レズSMテレクラの強要恥辱。エアロビ・スタジオでの妄想レズ/3P。S女子高生とM女教師のカラミ。秘密クラブでのレズ3P…と、随一のエロ派・下元哲によるねっちりねっとりメニュー演出で、ピンク度は十二分に ★ ★ ★ ★ ★ 。そして、その背後には「家族の中の孤独」のようなものがきっちりと描写されている。「現代」を描いた映画なのである。 ● ヒロインの新人・高橋奈津美はニューハーフ顔の人工乳で、どうしようもない大根なのだが(たぶん間違いなく)佐々木基子のアテレコによる卓越した声の演技が、それらの欠点を補って余りある成果。 義母と女教師を性の快楽に誘いこむ女子高生ドミナに河村栞。 レズ牝 女教師に今井恭子。[エクセス]

★ ★
四十路女将 赤襦袢をまくれ(勝利一)

なんか最近は(AV/ピンク映画の世界では)熟女ブームだそうで、諸賢も最近やたらと「三十路なんたら」というタイトルが多いことにお気付きだろう。でもって、ついに「四十路」に突入である。ま、ピンク映画の場合はタイトルに「三十路」とついてても実際には20代の女優によって演じられる場合が多いのだが、本作のヒロインを務める松山ももか は本物の人妻AV女優なのだそうで、たしかにその崩れきった死体 肢体はどーみても40代…。顔は菅井きんの若い頃にそっくり。もちろん演技が出来るわけじゃなし。せめて誰かにアテレコさせてくれ。里見瑤子ちゃんのカラミまで観て、20分で途中退出。[エクセス]

★ ★
京女、今宵も濡らして(加藤義一)

新人監督の第2作。想像するに大蔵映画からのリクエストは「加藤ちゃん今度はピンク版『陰陽師』でひとつ頼むよ。脚本は田吾ちゃんに発注しといたからさ」ってとこだったんじゃないか。だけど田吾作(岡輝男)はしょせん田吾作なので、出来上がったものは「陰陽師」とは似ても似つかないトンデモ映画になってしまった。京都に代々続く口寄せ(←恐山のイタコみたいな人ね)の家に生まれたヒロインが、因習の家/街から脱出しようともがく悲劇…なのだが、だいたい口寄せと陰陽師じゃぜんぜん違うだろうが。人を呪い殺したり出来るものなのか?>口寄せ。 ● せっかくの京都ロケ&せっかくの沢木まゆみ もしどころなし。ヒロインが着物デザイナーという設定なのに着付けが酷いのも何とかしてほしい。最初に登場したときなんか銭湯帰りの下町のオバチャンかと思ったぜ。 ヒロインと恋仲になる、呉服メーカーの御曹司に なかみつせいじ。娘に口寄せを継がせようとする母に小川真実。長男の嫁に佐倉萌。妻の呪いで寝たきりにされた「死にそうな年寄り」はもちろん久須美欽一。[オーピー/大蔵映画]

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人妻痴女 変態男漁り(北沢幸雄)

ふとしたきっかけで出会ってしまった女と男が性に溺れ堕ちていく・・・およそポルノ映画があつかうなかで、もっともジャンルの根源的なストーリーである。例えば、さまざまな意匠を凝らしながら「性」を描いてきた日活ロマンポルノを代表する傑作である神代辰巳の「赫い髪の女」や田中登の「実録安部定」。いやそればかりか、おれが日本愛欲映画史上の最高傑作だと思ってる成瀬巳喜男の「浮雲」がまさにそういう話だ。だけどこれ、シンプルであるがゆえにじつはいちばん難しい。極論すれば、主役の2人が会ってヤルだけの話だからストーリーに変化が付けにくいし、主演の男女優と演出家によほど力がないと1本の長篇として成立させるのは難しい。その意味で演出家としての北沢幸雄と、相手役の なかみつせいじ には何の不足もない。映画一本を愛欲描写だけで魅せきる力を持った演出家であり役者である。問題はヒロインだ。明石家さんま司会のTV「恋のから騒ぎ」(2000年度)に出演していた元・保母さんの川瀬有希子(←これは芸名)は本作が映画デビュー。ちょっとアンニュイな感じもあるし、魅力的でないことはないのだが、やはり新人さんには荷が重かった。このテの話が撮りたいんなら佐々木麻由子クラスを連れて来なきゃ。 ● 人妻のヒロインと、妻と別れたやもめ男がグループ・セラピーで出逢う…というのが本作のオリジナリティで、ヒロインには精神失調症の病歴が、男には暴力癖がある。だがそれらは回想として語られるだけで、2人の関係のなかでヒロインが別れの不安に駆られて自分を見失ったり、男が激情に駆られてヒロインを殴ってしまったりはしないのである。それじゃあ「何のための設定か!?」ということでしょ(脚本も北沢幸雄の自筆) いい題材だと思うが傑作にしそこねたな。 ヒロインの夫に岡田謙一郎。男の元・妻に佐々木基子。撮影は千葉幸男。[エクセス]

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芸能(裏)情事 熟肉の感触(池島ゆたか)

中国人女優をヒロインに据えた大ヒット映画シリーズの監督が、ビルの屋上から飛び降りて死んだ。監督の妻でもある中国人女優と、所属する芸能プロの社長が会見して、精神的な重圧に耐えかねての自殺だろうと述べる・・・ま、誰が考えてもこの2人が怪しいと思うわな。このあと、事件を取材するフリーの雑誌記者や、監督の愛人でもある新人女優などが絡んでは来るのだが、結局のところ犯人はやっぱりこの2人。新人女優は「サイコ」そのままにシャワーで殺され、ラストは意味のない「キャリー」の脅かしで終わる。ミステリにもサスペンスにもホラーにもなってないハチャメチャ作。いったい何がやりたかったんだ?>池島ゆたか&五代暁子(脚本) ● ま、裏読みすればこれは「いくら才能があってもスタッフに迷惑をかける自分勝手な監督は死ぬべし」という映画である。我儘な映画監督を演じる佐野和宏は言うまでもなく国映のイコン。ひょっとして観客無視のオナニー映画を作る国映の若手監督たちにケンカ売ってる?>池島ゆたか。ま、無責任な一観客としては、監督が人格破綻してようがスタッフが死ぬほど酷い目に遭おうが、出来上がった映画が面白けりゃそれでいいんだが。てゆーか、さして演出力があるわけでもない監督と、書くのが速いのだけが取り得の脚本家と、まともに台詞すら喋れない女優に言われたかないと思うぞ(ねえ女池クン?) ● 「氷の微笑」ばりの疑惑の悪女を演じる(はずだった)のは、実生活では池島監督のカノジョでもある中国人女優・美麗。この人は、日本語がカタコト(=台詞が力を持たない)なだけでなく、表情を作れないという恐ろしい「女優」である。そんなのを「ドラマ」の主役に起用しちゃいけんでしょ。やっぱ劇中そのままに「ワダシヲアイシテルナラ、ナゼ、ワダシヲツカワナイノォ?」とか責められたんだろうなあ。 新人女優に松島めぐり。ブスで(いまはまだ)大根だけど日本人には珍しいメロン級巨乳なので許す。いやあ「乳のデカいは七難隠す」ですなあ、ご同輩。 その若い愛人に河村栞。 雑誌記者になかみつせいじ。 芸能プロ社長は池島ゆたか自演。 ● ちなみに従来でも着替えやシャワー/入浴など、濡れ場ではないシーンにおいてはヘアヌードもOKだったわけだが、本作では「シャワーを浴びながらのオナニー」で、はっきりと陰毛が写っている(また一歩前進?)[オーピー/大蔵映画]

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痴漢バス2 三十路の火照り(荒木太郎)

遅れてきた昭和の匂いがするピンク映画女優=佐々木麻由子の、これまた遅すぎた荒木組 初出演は、彼女の最後から2番目のピンク映画である(最終作の池島組はすでに公開済) 荒木太郎と、撮影の前井一作(=佐久間栄一)は去りゆく名花を綺麗に撮ることに全力を傾ける。唇を、瞳を、乳房を、指を、超アップで舐めるように撮っていく。大人の女をエスコートするに相応しい大人の男優=螢雪次朗を相手役に招いて、最後には情感ゆたかな「暖炉の前での全裸のラブシーン」を用意する。「きみは特別なひとだ。いまやっとそれがわかったよ。ぼくはきみがいないとダメみたいだ。ぼくはきみを…」螢さんの口説きは全ピンク映画ファンの気持ちだ。愛ある手向け。さらば佐々木麻由子。一般映画での再会を楽しみに。 ● 人権派の弁護士とバツイチ同士で「大人の関係」を続けてきたものの、確たるもののない生活にいささか疲れを感じている三十路のインテリア・デザイナーが、ふと出逢った18才のガキと汲めども尽きせぬ性愛遊戯に溺れていく…(脚本:内藤忠司) 演出の荒木太郎は、この定番ともいえるストーリーに大胆な試みを持ちこむ。なんと相手役の少年を女優に演じさせるのである。難役に挑むのは山咲小春。ジャージの上にオーバーオール。ニットキャップを目深にかぶって、一言も喋らずに特徴的な大きな瞳で大人の女を見つめ、熟れた躯を愛撫する。しぜん台詞の量は減り、フォトジェニックな官能描写はまるでイタリア映画のよう。まさに絶好調の荒木太郎、何をやっても巧いことハマってしまう点では、現在の日本映画界で三池崇史と双璧かも。 ● 佐々木麻由子と螢雪次朗は文句なし。 山咲小春も(走り方がどうしても女の子になってしまう点を除けば)役になりきって、想いの強い、けれどどこか非現実的な、天使のような、あるいはヒロインの想像の産物かもと思わせる不思議な存在をみごとにこなしている(少年の役だから当然ヌードはなし) 弁護士の若い浮気相手に(「フェリーの女 生撮り覗き」に続いてブッ飛んだキャラの)佐倉萌。 痴漢される女子高生に鈴木ぬりえ。[オーピー/大蔵映画]

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愛人秘書 美尻蜜まみれ(山崎邦紀)

脚本:山崎邦紀 撮影:小山田勝治 音楽:中空龍 編集:フィルム・クラフト

とてつもなく奇妙な欲望にとり憑かれた人々を描きつづけるピンク映画界のデビッド・リンチ (c) m@stervision こと、山崎邦紀 脚本・監督による奇想ファンタジー。今回とりあげた「奇妙な欲望」はアナル・バース。つまり、いまいちど女の肛門から生まれなおしたいという欲望である。ま、子宮回帰願望の一種なんだろうけど、それにしても奇怪なことを考えつくものである。 ● メインの登場人物は2人の兄弟と1人の女。兄はプチ・ヒトラー・タイプの、強欲で Winner Takes all な会社再建屋。弟は無能でめそめそ泣き虫なプー太郎。そして兄の愛人秘書である女はチャイナドレスのカンフー使いで、ボディガードを兼ねている。しかしてその正体は、またたく星空と交信して、故郷の星からの迎えを待っている孤独な異星人。つまり「地球に落ちてきた男」のデビッド・ボウイなのである(付いて来てますか?>皆さん) ● 構成としては5種類の場面が交互に描かれる。すなわち1.兄と女のカラミ。それも通常のセックスではなく、相手の肛門に茹で玉子を挿入して、その玉子に弦を結んで体外にピンと張り、弓で弾く。すると体内の玉子が微妙に共鳴して快感を呼ぶというアナル・バイオリンの描写を中心に。 2.再建先のダメ社員を叱りつけ、怒鳴り捨て、激を飛ばす兄のアジテーション。 3.かつて兄に会社を潰されたかなんかの恨みで兄に襲いかかってくるくノ一と、防戦する愛人秘書の格闘シーン(後半になると、くノ一からウェディングドレスに衣裳替えして長棍を使って襲ってくる) 4.弟とその恋人の、尻フェチで女性上位中心のカラミ。ここで弟は兄の愛人への憧れとアナル・バースへの渇望をせつせつと訴える。 そして5.異星人女の母星との交信のモノローグ。使われる一人称は「ぼく」。ときどきなぜか「白鳥の湖」のオデットの扮装になったりする。 エンドクレジットに流れるのはホルストの「惑星」組曲より「木星 快楽の神(おれのクラシック耳は脆弱なので間違ってるかも)…えーと、付いて来てます? ● いちおう盛者必衰の理にもとづくストーリー・ラインはあるのだが山崎邦紀の意図はそこにはない。これは何よりもフォルム(もののかたち)についての映画であり、画面のフレーミングと編集と、音楽とサウンド編集の映画なのである。ぷりんとした茹で玉子の質感。ぷりんとしたお尻のカーヴ。主演女優の玉子を思わせる顔だち。ぷっくりとした唇。丸みをおびた顎と鼻。目の下のたるみ。そしてもっとも玉子に似た部分である眼球への舌による愛撫。フォルムの連なり。あるいは揺れる黒髪の束。全身網タイツの肉体。かたまりとしての「もののかたち」の美しさ。山崎邦紀はそうしたものを愛でている。小山田勝治の的確なフレーミングがそれらのフォルムを絶妙なバランスで画面に収める。物語至上主義の当サイトとしてはこの手の映画は滅多に褒めないのだが、どうやら山崎邦紀の奇妙さにすっかりハマってしまったようだ。なお、誤解の無いよう申し添えておくが、山崎邦紀はこうした試みをあくまでも、まんぐり返しでがちょっとハミでてるよーな、エロ度 ★ ★ ★ ★ ★ のピンク映画の枠内で行っているのである。 ● ヒロインの愛人秘書異星人に岩下由里香。観客を捉えて離さない比類なき眼力を持った大根女優なのだが、山崎邦紀はなんと映画の前半部分でその「眼力」を封じてしまう。つねに下目遣いか薄目にさせて瞳を写さず、格闘シーンのときにだけ目を開けさせてグッと相手を睨む。後半、人間性に目覚めてからは(←異星人だけど)その「瞳の力」を思うぞんぶん発揮させる。単純だが鮮やかな演出。 弟の彼女に巨乳・風間今日子。ゆたかなカーヴが美しいフォルム映画に貢献している。 くノ一にベテラン・佐々木基子。これはいくらなんでも もっとスポーティな体型の女優がいたでしょうに。 兄に柳東史、弟に平川直大。[オーピー/大蔵映画]

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OL性告白 燃えつきた情事(池島ゆたか)

デビューからほどなくして売れっ子となり、ここ3年は人気・実力ともに「ピンク映画クイーン」にふさわしい活躍をみせてきた佐々木麻由子が、昨年かぎりでピンク映画からの卒業を表明、本作は「佐々木麻由子 ピンク映画引退 記念作」として製作された(公開順は1本前に撮影した大蔵映画「痴漢バス2 三十路の火照り」のほうが後になるのだが) 相手役には国映のイコン 川瀬陽太が池島組 初見参。このキャスティングは各社の監督・俳優が一堂に会したP1グランプリの副産物のようだ。 ● 生来の内気さゆえ言いたいことが言えず、営業トークが苦手な20代後半の税理士。1年ぶりに訪れた得意先の中小企業で、いままで気にも留めなかった勤続10年の地味OLが、別人のようにイキイキと輝いているのに惹かれる。カノジョの浮気で落ちこんでたところへ、意外な場所でOLと再会し意気投合。彼女の部屋で躯を重ねると、いくつか年上のOLは青年を見つめて微笑み、こうつぶやく「今月はあなたに決めたわ…」 ● ということでお判りのように「スウィート・ノベンバー」の翻案(以下「SN」と表記)であるが、これがなんとオリジナルより出来が良いのだ。もちろん五代暁子の脚本なので「言わねーよ、そんな台詞」というような言葉遣いも散見されるが、6時間で書いたにしちゃ上出来だろう。あくまでキアヌ・リーブスの物語だった「SN」と違って、本作はちゃんとヒロインの物語になっているし、「傲慢な男が優しさに目覚める」というプロットを「勇気のない男が積極性に目覚める」話に変えたことによって佐々木麻由子が川瀬陽太を「2月の恋人」に選ぶ理由が納得できるし、その改変によって男の「変身」がヒロインの「変身」とリンクしてくるのが秀逸。終盤の「部屋いっぱいの[2月のカレンダー]」から、男の顔を女がマフラーで目隠しして…という展開はまったく一緒なのだが、ラストをガラリと変えたことによって見事に「泣かせるラブ・ストーリー」として成立している。 ● ま、正直いって池島ゆたか の演出がパット・オコナーより巧い…などということは無いし、チャチなとこは思いっきりチャチなのだが、「SN」より明らかに本作が優っているのは、キアヌ・リーブスのようなハンサムにはほど遠い川瀬陽太と、シャーリーズ・セロンほど若くも美人でもない佐々木麻由子の2人がもたらす「ラブ・ストーリーとしてのリアリティ」だ。そして何よりのアドバンテージは2人のセックスをきちんと描けること。「ひと月だけの恋人」の想い出として「セックス」は欠かすことのできない要素だ。フラッシュバックにセックスの想い出が混じるのと混じらないのでは、想い出の重みがぜんぜん違う。 ● 撮影は清水正二、音楽は大場一魅。 ヒロインの無二の親友の「オカマのみっちゃん」に(なかみっちゃんこと)なかみつせいじ。 主人公を裏切るカノジョに河村栞。 先輩税理士のフィアンセに水原香菜恵(←今回に限って彼女の濡れ場は不要。本筋に関係ないの濡れ場に費やす時間があったならば、もっと主役の2人の「想い出となるエピソード」を積み重ねるべきだった)[新東宝]

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イヴの寝室 和服妻は床上手(剣崎譲)

すっかり定番となった大阪制作のイヴ主演作。三十路の着付けのセンセイが初めて手にしたケータイ電話。出会い系サイトで19才の浪人生と知り合いになり、相手の若さにとまどいながらも躯を重ね、ひとときの恋人気分に浸るが、ひとまわり以上も歳の離れた子と駆け落ちできるはずもなく・・・という、なんてことない平凡な話を、主演女優の魅力に寄り添いながら丁寧に撮ったごく普通のピンク映画。プログラム・ピクチャーの水準にも達しない酷い代物が横行するなかではこういうのを観るとホッとするね。イヴはけっこう顔に皺が目立つようになってきたけど、まだまだちゃんと観賞に値するルックスと裸体を保持してるのは立派。ただ知り合った19才の浪人生に歳をサバよむのに「29才」ってのはいくらなんでも無理があるよーな…。 センセイを出会い系サイトに誘惑する、着付け教室のお弟子さんに鈴木敦子。SMホテルでの拘束姿の、乳房と胸筋の美しいつらなりが映える構成主義的ヌードがすばらしくエロティック。[エクセス]


昇天寺 後家しゃぶり(坂本太)

ブスなヒロインにクソ脚本とヌルい演出。まるで新田栄の映画のようだ。屋外シーンが妙にフォトジェニックなのが坂本太+創優和(撮影)コンビの特徴だが、絵に凝るより先にやることあるだろーが。 夫の遺した借金に苦しむ未亡人に不細工・無愛想・大根と三重苦の新人・星李沙。アップになると思わず「うわっ」と声をあげそうになるほど。脱ぐなら誰でもいいのか! 「町内の婦人会 会長」に美里流季。月蝕歌劇団の男役女優で、おれ じつは前夜に月蝕歌劇団の公演を観たばかりだったんだが、舞台で生で見た女優がスクリーンで脱いでても美里流季じゃ少しも嬉しくない。…いや、長崎萠なら嬉しいけど(火暴) そんな状態だから「浪費癖のある酒屋の新妻」役でベテラン・林由美香が出てきたときにゃ地獄に仏という気がしたね。[エクセス]

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牝監房 汚された人妻(加藤義一)

新人監督の第1作。協力クレジットにサカエ企画(=新田栄+岡輝男)と旦々舎(=浜野佐知+山崎邦紀)の名があって、脚本が岡輝男、撮影が(旦々舎作品を多く手がける)小山田勝治。新田組や浜野組の助監督さんなのかな? でもなぜか(両監督のホームグラウンドである)エクセスではなく大蔵映画からのデビュー。ついでに主演女優の岩下由里香もエクセスから連れてきている。 ● デビュー作の素材に選んだのは「ケツの穴まで調べられる屈辱的な全裸身体検査」から始まって「暴動→脱獄」で終わるという、ピンク映画では絶えて久しいトラディショナルな女囚もの。なんで〈絶えて久しい〉のかと言うと「女優は3人」という制約下でそれをやるのは不可能だからだ。今回は新人監督への御祝儀出演ということで台詞&脱ぎのある女優だけで5人、ほかにも数人がエキストラ出演することでなんとか成立している。もちろんセットを組む予算なんて無いから「刑務所内部」はいつもの東映化工なんだが、ちゃんと「亜成女子刑務所」(←「アナル女子刑務所」と読むらしい)という木の看板や「社章」を作ったり、背に囚人番号がプリントされた揃いの衣裳を用意している点は好ましい。だがいかんせん田吾作の脚本はステレオタイプだし、演出&演技は稚拙なだんどり芝居でどうしようもない。ええと相手がこう動いたらこう動いてここに手をついてこう台詞を言って。こう動いたらこうですね? そうそうそんな感じ──って、そのレベルでカメラを回してる。それはまだ「演出」と呼べる段階ではない。濡れ場の描写も平々凡々。新人ならではの情熱は感じられなかった。 ● ヒロインの岩下由里香は、目に力のある、女囚ものには打ってつけの女優のはずなんだが、そのふてぶてしい魅力がまったく活かされてない。 極悪な女所長に小川真実、「701号」という由緒ある囚人番号の牢名主に佐々木基子、牢名主のナンバー2&レズ相手に風間今日子という布陣。これはやっぱ風間今日子が所長役でしょう。やっぱ「女所長」といえば「巨乳にピチピチの男ものシャツ&乗馬パンツ&ブーツ&鞭」じゃなくちゃ(←なんか間違った刷り込みされてます) 苛められ役の女囚に林由美香。 台詞のないエキストラで(贅沢にも)佐倉萌。 法務省の汚職役人に なかみつせいじ。 田吾作も看守役で出演。 ● いまさら田吾作に何を言っても無駄だとは思うが、冒頭にナレーションされる「21世紀前半、刑務所は民営化され、囚人獲得のため法務省と癒着した汚職の温床となった」という〈近未来SFアクション的〉な設定が劇中でまったく意味を成してないぞ。これなら現代の現状の刑務所となんら変わらんではないか。あと「ロボトミー」と「洗脳」はまったく別のものだ。[オーピー/大蔵映画]


ノーパン医院 お脱がし治療(国沢実)

東京都 杉並区 頑健町。ここの住民はみな異常に健康で風邪をひくのも3年に1人。そんなことだから町で1軒の病院は開店休業。院長である主人公にとっては喜ぶべきか悲しむべきか。だが、ひょんなことからこの病院にノーパン看護婦が居着いてしまったから、病院は仮病の男どもで大繁盛…という宇能鴻一郎 調コメディの前半。それが後半は一転して、男性が永続バイアグラ状態になってしまうHBOウィルスの蔓延をめぐる騒動を描いた、まるで山崎邦紀の映画のような世界になる。脚本の樫原辰郎は、単独で60分を費やすに足るネタを2つ繋げて、それぞれ話を膨らませることなく放置してしまっており、国沢実にはナンセンス・コメディをスマートに捌くスピードもセンスも、不条理SFをじっくり観せる演出力もえげつなさも無い。まあ「似合わんことはするな」ってこったな。おれなんか、観ながら「こりゃなんかのパロディなのか?」と真剣に考えちまったよ。てゆーか、このツマラナさ(と脇の女優2人のブサイクさ加減)はひょっとして小林悟 追悼?(火暴) ブッ飛んだ性格のノーパン看護婦・池谷紗恵は適役…なのに、演出が不発でちょっと可哀想かも。院長は寺西徹。 あと「本番性・勃起・症候群(シンドローム)」の略語って設定なら(HBOじゃなくて)HBSウィルスじゃないのか?[オーピー/大蔵映画]

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川奈まり子 牝猫義母(浜野佐知)

旧家の当主の自伝ライターをするうち、請われて後妻に入ったヒロインだったが、ふとした事故で当主が昏睡状態になってしまい、財産目当ての一族郎党の醜い争いに巻き込まれ…(脚本・山崎邦紀)と、今回、途中までは「らしからぬ」重いタッチで進行するのだが、そこは過激なフェミニスト・浜野佐知のこと(たとえそれによって物語が破綻しようとお構いなしに)最後に主導権を握るのはやはり女たちなのだった。ただ一般映画に進出したことが矛先を鈍らせたか、中途半端な「ドラマを描こう」という意志が本来のパワーを奪ってしまった気がするのは残念。当主に久須美欽一、息子夫婦になかみつせいじ&佐々木基子、柳東史&風間今日子。[エクセス]

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痴漢電車 魅せます巨乳(渡邊元嗣)

「美咲レイラ 巨乳FUCK」に続く、庶民的な顔立ちと外人的巨乳の持ち主=元・プレイメイトジャパンの美咲レイラ主演作。どこぞのバーで「小金持ちの爺い」と「流行作家」が去っていった女に悲嘆して飲んだくれている。爺いは満員電車の中で出会った原節子のような淑やかな女性を、作家は やはり満員電車で知り合ったセクシーな小悪魔を忘れられずにいる。どちらも大金の通帳を渡した途端に女の消息が途絶えたのだが、2人とも結婚詐欺に遭ったとは露ほども考えていない…。 ● もちろん2人を騙したのは同じ女で、この映画は(2人の男の回想で描かれる)ヒロインのガラッと違う2つの役柄を見せることを眼目としているわけだが、おいおい、前作「巨乳FUCK」も二重人格の話だったじゃないの。いくら前作は山崎浩治、本作は五代暁子と脚本家が違うとはいえ、同じ会社で同じ監督で同じ主演女優で2本続けて同じ話ってのはプロとしてどうよ?>渡邊元嗣。 ● 爺いに、渡邊組レギュラーの十日市秀悦。流行作家に、同じく渡邊組レギュラーの山崎信。バーの女に、ピンク映画の誇る巨乳女優・風間今日子。作家の担当編集者に林由美香。[オーピー/大蔵映画]

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未亡人旅館3 女将の濡れたしげみ(深町章)

田吾作コンビの片割れ=岡輝男の脚本だが、演出がベテラン・深町章なので、まだいくらか観ていられる。斜陽の温泉旅館が、仲居に雇ったランパブ嬢のピンク・サービスで商売繁盛めでたしめでたしの一席。老舗旅館がピンク旅館として生き延びることが果たしてハッピーエンドなのか?…という根源的なツッコミはさて置くとしても、たとえばこの仲居が浅はかなものだから自称「テレビドラマのディレクター」に寸借詐欺に遭ってしまうのだが、彼女が板場に行くと たまたま俎板立てに札束の入った銀行の封筒が挿してある…って、そりゃ不自然だろ! なんでそんなとこに現金入りの封筒が置きっぱなしになってるんだよ。せめて「仏壇の上」とかにできんか? おなじみのロケ先・水上荘には仏壇のある帳場部屋があるでしょーが(<やけに詳しい) ● 未亡人女将に葉月螢。 元気ハツラツなランパブ仲居に元祖・映画女中、里見瑤子。 愛人を探しに乗り込んでくる元・神楽坂芸者の二号さんに、佐々木麻由子。 この映画、男優陣がオール・ミスキャストで、まずコメディのトーンをまったく読めてない大根役者=岡田智宏は即刻クビ。 で、岡田が演ってた「板長」役に なかみつせいじ、なかみつ が演ってる「旅行代理店のすけべ社長」に赤鼻メイクの池島ゆたか、池島が演ってる「昔馴染の老人客」に野上正義…というのが正しいキャスティングってもんでしょう。[新東宝 2001年12/28公開]

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女痴漢捜査官4 とろける下半身(渡邊元嗣)

渡邊元嗣ってのは典型的な恋愛体質の演出家で、好みのヒロインがいれば演出も好調だが、逆もまた真であって、西藤尚・黒田詩織といった主演女優が引退してしまった現在は絶不調ということになる。2002年一発目のヒロインに抜擢された新人・美波輝海は磯野貴理子をさらに2ランク・ダウンさせたような代物で、当然のごとく渡邊元嗣のやる気はミニマム。映画の出来も推して知るべし。 ● 女痴漢捜査官クリコは、車内で捜査中に「謎の器具」を局部に挿入されて電撃的なオルガスムスを味わって以来、不感症になってしまった。それから数ヵ月後、次期総理と噂される大物政治家の愛人のストーカー事件を追っていたクリコは、間一髪で愛人をストーカーから救うが、現場に残されたのはあのときの「謎の器具」だった。このような精巧な電子器具を作れるのは日本に数人しかいない。クリコは上司の勧めに従って、保釈中の天才科学者にして外科医 ネクター博士を訪ねる。…って、ああ「羊たちの沈黙」かい。長いよ前フリが。久しぶり出演の螢雪次朗さんが白衣に黒眼帯&虹色のかつら被って出てくるまでに15分以上あるんだもん。そういや痴漢捜査課長の田嶋謙一はスコット・グレンに風貌がそっくりかも。それならクラリス役には山咲小春とか使えばよかったのに>渡邊元嗣。 ● 大物政治家に渡邊組レギュラー、十日市秀悦。 その愛人に風間今日子。 「謎の人物」に林由美香。てゆーか、コラ、波路遥@脚本家! あの器具を作れるのは「日本で数人しかいない」んじゃなかったのかよ。あと教えちゃるけど、要人警護の「SP」ってのは「シークレット・ポリス」の略じゃなくて「セキュリティ・ポリス」だ。[新東宝 2001年12/28公開]

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三十路女の濡れ床屋(木村純)

商店街の寂れた床屋に「幸福の天使」の女理容師がやって来て…。デビュー作「喪服未亡人 いやらしいわき毛」でエロスの表現に意欲的なところを見せた木村純だったが、2作目となる本作では「何をやりたかったのか」が中途半端だったように思う(脚本も自筆) サトウトシキの「団地妻」シリーズのようなキャラの葉月螢のおかみさんと、典型的な「髪結いの亭主」の千葉誠樹が、客の来ないボヤキから、流れ者の女美容師の登場でにわかに忙しくなってのテンヤワンヤは、典型的なドタバタ・コメディとして撮られるべき部分で、葉月・千葉のご両人はそれぞれに達者なのだが、演出のタイミングが合わず一向に笑いがハジけない。でまた、そのお色気目当てで床屋に客が押し寄せるわけだから本来ならいちばん魅力的でなくてはならない女美容師を演じる新人・黒沢良美が、ただの猫背のおばさんなのだ。それじゃ駄目だろ。だいたい人智を超えた存在の「幸福の天使」といえばピンク映画では林由美香の役と決まっておるではないか。 ● それでも本作が一見に値するのは「ホスト(?)のカレシの子どもを堕ろした風俗嬢」のメロドラマが本筋とほとんど絡まない形で進行していて、その風俗嬢を演じる橘瑠璃という、いかにもヤンキー名前のクレジット順3番目の女のコがえらい可愛いのだ。でまた、木村純も自身のメロドラマ資質を自覚してるもんだから、アップの撮り方(撮影:鷹野聖一郎)とか明らかにこのコにいちばん肩入れしてて、それでこの脇筋の比重が膨らんで、結果として脚本がぐじゃぐじゃになってしまったんではないかと…。カレシ役は竹本泰志。[エクセス 2001年12/28公開]


熟女温泉女将 うまのり(新田栄)

監督・新田栄+脚本・岡輝男の田吾作コンビとしてのアベレージ作。秩父の温泉旅館の女将をヒロインに据えた3つのエピソードの寄せ集め。ヒロインはストリッパーの15年選手、仁科夕希。当然、女優としては台詞まわしがまったく出来てないし(ステージではそれなりに映えるのだろうが)洗濯板に苺のような巨大乳首というのはちょっと。支配人になかみつせいじ、仲居に林由美香、泊り客に佐倉萌という共演人は悪くないのだが…。[エクセス 2001年12/28公開]