ACT.62 年賀状入門 (1999.12.26)

 さて、今年も終わりに近づいてまいりました。
 皆さんも年賀状は出し終わりましたか?
 え?まだ出していない?
 それはいけません。年賀状は日本に古くから伝わる大切な風習です。
 家族、親戚、友人、同僚、にいたるまで、来年も変わらぬお付き合いを出来るよう必ず年賀状は出さなくてはなりません。
 え?年賀状の書き方がよく分からない、ですって。
 それでは、今回は正しい年賀状の書き方をご一緒に勉強致しましょう。

 まず年賀状を用意して下さい。
 ここで注意しなければいけないのは、来年の年賀状を用意するということです。今年が平成11年だからといって、平成11年版の年賀状を使ってはいけないのです。なぜなら、実際に相手に年賀状が届くのは来年にあたる平成12年なのです。意外とここは盲点ですから注意しましょう。ですが、最近はそのような間違いを少なくするためにこの時期に今年の年賀状を手に入れるのは難しくなっているようです。郵政省も考えているようです。
 もし年賀状が手元になくても、他のはがきで代用は可能です。ですがその際には必ず赤字で「年賀」と書き添えるようにしましょう。そうしないと、年賀状とは認識されず、通常郵便として配達されてしまい、今年もあと二日なのに「今年もよろしく」とはどういうことだ!とトラブルの元にもなりかねません。そのようなことを防止する上でも「来年もよろしく」と書き加えておいた方が無難です。
 次に筆を準備しましょう。筆がない方は筆ペンでも構いません。筆ペンもないという方はサインペンでもいいでしょう。サインペンもないという方はボールペンでもいいことにします。ボールペンすらないという貴方は、思わぬ出会いがあるかも。ラッキーカラーは緑です。
 さっそく年賀状を書き始めることとしましょう。まず書く相手を決めましょう。この相手選びは重要です。初心者であるあなたは、とりあえずは家族や仲のいい友人等から始めましょう。いきなり芸能人や総理大臣、宇宙人などに送るのは辞めておきましょう。慣れてきたら別にいいです。書きたきゃ、どうぞ。
 相手が決まったら、まずは表の宛て名書きから始めましょう。
 まず、一番上にある7つの長方形ですが、ここには郵便番号というものを書きます。郵便番号は平成10年から今までの5桁から7桁へと増えました。これは今まで手作業で行っていた郵便番号での仕分作業を機械化するために行われたもので、この結果全国で約3万人が解雇されました。解雇された者たちが起こした郵便の乱はまだ記憶に新しいことでしょう。『いちきゅうきゅうはち郵便の乱』と覚えておきましょう。
 ここで、知っておくと便利な裏技を教えましょう。実はこの郵便番号、書かなくても相手の家に届くんです。ついつい書かなければいけないという使命感に追われることがありますが、書かなくても届くのであれば、それに越したことはありません。ただし、だからといって多用していると郵便局のブラックリストに載り、ペナルティを科せられるので注意しましょう。ペナルティを科せられたくない時は、同じ内容で5人の人に年賀状を送ることです。僕の友達はこれをしなかったせいで死んでしまいました、と前に使ったネタを何度も使うのも辞めておいた方が賢明でしょう。
 郵便番号が書けたら、次は住所です。住所は事前に調べておいた方がいいのですが、中には急なことで分からないという方もいらっしゃることでしょう。そのような場合には、直接聞いてみる、共通の友人に聞いてみる、探偵を雇う、ストーキングをして郵便物を盗む、本人に拷問をかけて尋問する、悪魔と契約をするなどの方法で調べましょう。
 次は宛て名です。ここで一番重要なのはどういった敬称を付ければいいのかということです。通常でしたら「様」や「殿」を使用しますが、相手によっては以下のような物を付けた方が好ましい場合もありますので覚えておきましょう。
・企業向け→「御中」・多人数宛→「各位」・特に親しい人→「さん」・子供→「ちゃん」・教師→「先生」・医師→「先生」・学者→「先生」・作家→「先生」・画家→「先生」・詩人→「先生」・弁護士→「先生」・議員→「先生」・俳人→「先生」・茶人→「先生」・私→「先生」
 以上の様に、とりあえず「先生」とつけておけば問題なしです。
 いよいよ表面の最後は自分の宛名書きであります。さすがに自分の名前や住所を書けない方はおられないことでしょう。万が一書けないという方は、お父さんお母さんに助けてもらいましょう。ていうかそれぐらい自分でやれよ。
 ようやく、表は完成しました。どうってことないですね。
 ではいよいよ本番ともいえる裏面の制作へと取り掛かりましょう。
 裏面を構成する物は大きく分けて、見出し文、イラスト、本文の3つとなります。
 まずは見出し文です。見出しも2種類に分けることができます。日本語と英語です。中にはフランス語やドイツ語や中国語やスワヒリ語などで書きたいという方もおられるでしょう。勝手にして下さい。ここでは無視させて頂きます。
 日本語の場合は「謹賀新年」「迎春」「賀正」などの言葉がよく使われます。漢字ばかりでよく分かりません。取り敢えずこのような言葉を書いておけば大丈夫なようです。難しい字が多いですが、よく見て書けば何とかなります。「檎餓蓁撚」とか書くと何やら難しそうな感じがするのでいいかもしれません。
 英語の場合は大体「Happy New Year」でOKです。直訳すると「幸福新年」ですから、そのように書いても多分いいでしょう。上記の文は別に英語で書く必要はありません。難しいと思ったらひらがなやカタカナでも大丈夫です。逆に可愛さが増す場合もありますのでうまく活用してみて下さい。来年は辰年ですから、語尾に「りゅぅ〜」などとつけてもいいでしょう。これだけで貴方は女性にモテモテです。ちなみに私が女なら破いて捨てます。
 見出し文において注意しなければいけないのは、あまり笑いを狙わないということです。例えば「賀正」を「がちょ〜ん」などと書いたり、「ハッピーニューイヤ〜ン」などと書くようなことは死んでもやめましょう。辞めない人は私が殺します。何が悲しくて元旦早々から寒い気持ちにされなければいけないのでしょうか。
 見出しが書けましたら、次はイラストや写真で年賀状に彩りを添えましょう。
 最近はパソコンの普及により、昔以上にイラストや写真を印刷するのが簡単になりました。昔でしたら、どことなく古臭いイラストか、富士山などのどうでもいい風景写真がメインでした。まあ、それぐらいなら構わないのですが、結婚式や子供の写真などを送られてきたところでどうすることも出来ず、途方にくれた経験などはありませんか。多分あるはずです。ですから、そういう人に不快感を与えるような写真やイラストは避けた方が賢明です。ていうか、避けて下さい。お願いします。それ以外だったらなんでもいいです。本当にお願いします。
 さて長かった年賀状書きも最後の工程へとやってきました。最後は簡単な一文を書き加えて仕上げましょう。ここでの文は簡単なもので大丈夫です。「拝啓 いかがお過ごしでしょうか。こちらではチラチラと雪も舞い降り、冬の寒さに凍える日々を過ごしております。つきましては先日お送り致しました手紙をお読み頂けましたでしょうか。何度もこのようなことを書くのは差し出がましいことと思いますが、明日の米を買うことすら出来ぬような有り様です。もう、貴方だけが私の最後の望みなのです。どうか、どうか、壱萬円でも構いません。送って……」などと書いたら、書いている私もかなりブルーな気分になるのでやめましょう。洒落になりません。せいぜい「今年もよろしく」「モチ食い過ぎるなよ」「宿題やれよ」「歯磨けよ」「また来週」ぐらいにしておきましょう。ネタを考えるのも大変なのです。
 こうして年賀状が無事出来上がりました。今までのことをよく踏まえた上で、楽しい年賀状作りライフをお過ごし下さい。次回は第2ステップとして、年賀状の出し方について一緒にお勉強していきましょう。それではさようなら。

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