ACT.60 ボーナスな日 (1999.12.15)

 待ちに待ったボーナスが支給された。今年は我が社も御多分に漏れず不景気で、ボーナスが本当に支給されるのか半信半疑であったが、無事出てくれて何よりだ。
 得にこの時のためだけに仕事をしているといっても過言でない私には夢のような日である。このような方は結構多く居られるのではないだろうか。それほどボーナスは我々サラリーマンにとって素晴らしいものなのである。
 毎度毎度、分かりきった事柄から書き始める私であるが、他に枕詞が見つからないのだからいちいち気にしてはいけない。
 ところで、ボーナスの由来とは何なのだろう。
 普段何気に使っている言葉だからこそ、その語源についても知っておく必要があるのではないだろうか。そこで、今回はボーナスの語源について説明してみることとしよう。

 ボーナスという言葉で真っ先に思い付くギャグが棒に刺さったナスであろう。いまだにマンガ、得に4コマ物などではこのシーズンになると必ず使われるネタだ。もう、ある意味古典と言ってもいい物だと思う。これだけ長く使われてきたことだ、きっと語源はここに関係しているに違いない。

 時は安土桃山時代。太閤秀吉が全国統一を成し遂げ、検地、刀狩りといった教科書でもおなじみの政策を行った後、民には平和的な時代が訪れた。しかし、今まで合戦にばかり駆り出されていた農民たちの中には、体と体がぶつかりあい、血がほとばしる戦場に想いを馳せる者も少なくなかった。つまり、平和な世の中には刺激が足りなかったのだ。その為なかなか農作業にも身が入らない。そして遂には、殺人を犯す者まで現れてしまったのである。この現状に困り果てたある農村の村長が一つのアイディアを思い付いた。その農村ではナスの栽培が盛んで、日本最大のナスを生産することで有名であった。その大きさは最大の物で約四尺八寸というから、今の単位で約1.5m。大人の女性ぐらいの大きさがあったわけだ。しかし、その大きさから調理が難しく、また大味であるという噂がたち、なかなか人気は出なかった。前々からこの巨大ナスを何とか全国で流行らせたいと考えていた村長はこのナスを利用することにした。それは収穫した巨大ナスに鎧を着せ、人に見立て、それをストレスの溜まった農民に槍の代わりの棒で突かせるというものだった。その大きさから料理しづらかったナスも棒で突かれることにより取り分けやすくなり、調理時にはその穴から味がよく染みておいしさも増したというから、まさに一石二鳥の素晴らしいアイディアだった。これが噂に噂を呼び、巨大ナスは一気に全国へと広がることとなった。しかし、その噂を聞きつけた秀吉はこれを良しと考えなかった。農民の一揆などを抑えるために刀狩りまで行ったのに、戦闘意欲をわざわざ増大させるようなことが広まっているというのだから仕方ない。急ぎ秀吉はナスを棒で突くという行いを辞めさせ、巨大ナスの栽培も中止、さらに発案者である村長を処刑するという行動に出た。これにより巨大ナスは二度と日の目を見ることとなく絶滅種となってしまったのであった。しかし、今でもこの村長の偉大な功績は彼岸の時にナスに棒を刺す風習で垣間見ることができる。やがて、巨大ナスの取れた冬に会社が従業員のストレス解消の手段として特別にお金や物を支給することを「棒ナス」転じて、「ボーナス」と呼ぶようになったのは明治に入ってのことである。

 このような深い事情が隠されていたのだ。私達はこの素晴らしい制度の元となった案を考えた村長に感謝をして、大事にこのボーナスを使わなければいけないわけだ。それこそがこの村長の何よりの供養となるのだから。
 しかし、中には夏や秋の内にボーナス一括払いという裏技を使って前借りしている輩もいるであろう。これはいけない。ボーナスはこの季節にもらえるからこそありがたみがあるのだ。それを前もって使ってしまうとはボーナスに対して失礼と言ってもいいくらいだ。なんて偉そうなことを言っても最後には使ってしまうのだから、結果的にはいっ賞与。

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