ACT.54 エレキテルな季節 (1999.10.31)

 嫌な季節が近づいて来た。
 まあ、そんなに嫌なわけではないんだけども。
 ていうか、どちらかと言えば好きな季節なんだけども。
 のっけから、どないやねん!という感じで恐縮である。
 ここで言っている季節とは「冬」である。
 ようやく10月も終わったというこの時期にはまだ早いとおっしゃる方もおられよう。
 まあ、それはそうなのであるが、11月なんて冬に入れてもいいような時期とは思いませぬか?寒いし。そう大差ないでしょ、冬と。
 というわけで、冬なのであるが、基本的には好きな季節なのである。僕の数少ない健全な趣味であるスキーが存分に楽しめる季節であることがまず最初の理由。あと、暑いのよりは寒い方が得意というのもある。なにより、食べ物がおいしく感じられる季節だと思うのだ。食べ物は冷たいものよりは温かいものの方が好きなわけである。
 とまあ、色々な理由で冬が好きな私であるが、ただ一つどうしても好きになれないことがあるのだ。それは「静電気」である。

 空気が乾燥し始める10月の末ぐらいから前兆が始まり、来年の3月頃まで私の静電気タイムが続く。
 私はどうやらものすごく電気が溜まりやすい体のようである。もう、すぐに電気が溜まって、金属に触れれば放電される。まさしく人間発電所、B・サンマルチノ状態である。分かりづらいとは思うが、ここ笑うとこ。
 しかし、このように静電気と慣れ親しんだ生活をしていても、ビリッとくる衝撃には一向に慣れない。というよりも、年々苦手になっている気さえする。痛いのは嫌いだし。何よりも、ドキッとさせられるのが嫌だ。
 ああ、この金属の取ってに触ったらビリッってくるんだろうなぁ〜、くるんだろうなぁ〜、絶対にくるんだよなぁ〜、分かってるんだけどなぁ〜、ああ嫌だなぁ〜、このまま帰っちゃおうかなぁ〜、でもこれ仕事場の入口だしなぁ〜、欠勤はまずいよなぁ〜、静電気が恐くて休みますなんて言えないしなぁ〜、やっぱり触らなきゃなぁ〜、でもそうしたら静電気来るしなぁ〜、ああどうしようかなぁ〜、こんなこと考えている内に遅刻したらばかだよなぁ〜、って本当に遅刻しそうだなぁ〜、ああ触りたくないなぁ〜、ええい触ってやるぅ!!ビリリッ!!はう!!やっぱり来たよぉ〜(バクバクバクバクバクバクバク……←心臓の音)
 毎日こんな状態だ。にしても、文章にすると駄目加減が一気にアップするな。
 こんな状態であるから、HDDやメモリの増設などという時は、まさしくスリルの連続である。下手な仕事よりも精神的に答える作業だ。だから、私は増設作業があま好きではない。
 しかし、いつまでもこんなダメダメン状態ではまずい。私だっていい大人なのだ。そこで、ない知恵絞って打開策を考えたのである。それが「放電しちゃえばビリッって来ないじゃん作戦」である。作戦名はかなり駄目だが、内容は非常に有効なものであるので馬鹿にしてはいけない。
 なんのことはない。文字どおり先に放電をさせてしまおうというものだ。
 私のズボンのポケットには必ず車の鍵が入れてある。つまり、どんな時も一緒にいるわけだ。まさに一心同体、少女隊である。ここも分かりにくいが笑うところだ。私は笑えないが。
 いつも持っているということは、静電気が体に蓄えられている時も鍵にも同様に静電気が流れている状態になっているということである。だからこの鍵だけは、どんなに私が帯電状態であろうと触れることによって放電は起きない。ようは、ビリッと衝撃が走ることはないということだ。だが、これでは完全な放電とは言えない。あくまで、体内の静電気の一部が鍵に移っただけのことである。
 ここからが、私の作戦の本番である。この車の鍵には絶縁体部分がある。ここを握り、鍵を別の金属部分へと触れさせるわけだ。つまり、鍵を経由させて体内の静電気を放電させようと言うわけなのだ。って、そんなことをわざわざ書かなくても読者諸君が分かっておられることは重々承知である。何せ、単なる字数稼ぎなのだから。
 ともかく、このようにして私の静電気は放電されることになる。
 鍵からの放電時は結構な光を発する。ミニ雷といってもいいぐらいだ。
 これを有効活用出来ないものであろうかといつも考えるのであるが、しょせん私の頭では実現不可能な無茶なプランしか出てこないので、時間の無駄である。
 それはさておき、私の考えた「放電し(中略)じゃん作戦」は非常に有効な作戦なのであるが、私の体内にと潜伏している静電気たちもただ黙って放電させられているわけではないのだ。そう、中には必死の抵抗で体内へと留まり続けている輩が存在するのだ。上記の作戦で静電気を放電しきったと安心している私に突如襲いかかる電気ショック。これは、通常の1.7倍の精神ダメージを私に与えてくれる。敵もさる者である。よって、上記の「放(中略)戦」は再三にわたって行わなければいけない。油断すると奴等からの報復が待っているのだから。
 だからといっていつでもこのようなことが出来るわけではない。例えば、コンビニ。ビールを買おうと冷蔵庫へと手を伸ばすが、周知の通りコンビニの冷蔵庫の取ってはもろに金属である。もう、感電は必死の状況である。ここで鍵を取出し、金属部分に放電させるという行為は想像以上に恥ずかしいのだ。やはり放電はこれから触る予定である金属部に向かって行うのが一番効果的である。想像して見て欲しい。ジュースを買おうかとコンビニの冷蔵庫に近づくと、怪しげな男がズボンのポケットから鍵を取出し、冷蔵庫の取って部分に鍵を差し込もうとしていた。ここでの答えは3通りある。変な男だ、関わらずにいよう。なんでやねん!そこはお前んちの玄関か!。いつからコンビニの冷蔵庫には鍵がかけられたんだろう、ああ僕は鍵を持ってないよぉ、シクシクシク。のいずれかである。
 まあ、最後の目で見られることは非常に希であろうから、他人の目からは変な人、もしくはボケ好きな人として見られることになる。あら?どちらも大してはずしてはいないなぁ。じゃあ、別にいいのか。

 とにもかくにも静電気は大敵なのである。
 もう少し私が電気に対しての耐性を持ち合わせていたのなら、もう少しいい付き合いも出来ただろうに。もしかしたら人間ピカチュウとして人気者になれていたのかもしれないのだ。いや、なれてないって。

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