ACT.46 睡眠は万病の長 (1999.10.02)

 見事に風邪をひいてしまった。会社を病欠したのはこれが3度目だ。
 体の異変は前からあった。喉の痛みは少なからずあったし、咳もした。何より前日の頭痛は尋常じゃなかった。といっても、もともと偏頭痛持ちだったので、あまり気にしてもいなかった。
 明け方、頭痛で目が覚めた。こんなのは久しぶりだ。時計を見ると5時前である。こめかみをさすりながら薬箱の中の頭痛薬を飲む。再び寝ようとするが、頭痛のせいでなかなか寝付けない。これでは仕事に支障をきたしてしまう、とあせってしまい、ますます眠れなくなる。そんなことをしているうちに熱が出ていることに気づく。
 再び布団から出て体温計を探し、脇に刺す。おいおい、刺したら痛いではないか。頭がきちんと働かないようだ。体温計を脇にはさんだ。
 頭痛は依然止まず。心臓の鼓動にあわせて痛みが走る。
 38度5分。いかん、完全に熱が出ている。普通の風邪でもそれほど熱を出さないのに。こりゃ、ヤバイかもしれないと思いつつ、再び床に入る。
 いつの間にやら寝ていたらしく、目が覚めると時計は8時を指していた。普段なら起きて仕事へ行く準備をしなければいけない。しかし、体が起き上がらない。おかしいと頭をひねっているうちに再び頭痛が襲ってきた。さっきと変わらない強い痛み。熱もあるようだ。こんなんじゃ仕事なんか無理だ。ギブアップします。カンカンカンカン……頭の中でゴングが乱打されていた。
 会社へと電話をし、再び眠ることに。長年の経験でこういう時には体を温かくして寝るのが一番だということを私は知っている。

 そういえば、その前の病欠の時も風邪であった。ただ、その時の風邪は今回のように頭に来るものではなく、腹に来た。直腸と喉の調節機能が失われてしまったのかと思うぐらいの下痢と嘔吐に苦しめられた。食中りの時でもあれほど辛い目にはあわなかった。嫌な思い出だ。
 さらに前、初めての病欠は店舗勤務の頃だった。私が務めていた店舗はアルバイトの応募が来ないことで社内的にはかなり有名な店舗であった。よって、社員にかかる負担が尋常ではなく、公休が取れないなんてこともざらであった。はっきり言って労働基準法を無視した仕事場であったわけだ。当然、病欠など出来るわけもなく、多少の風邪などは無視して仕事に励んでいた。我ながらよくやっていたものだ。その日も、3日前からひいていた風邪をおして仕事をしていたのだが、熱が上がっていたのかかなり頭はボーッとしていた。その様子を見ていたバイトの子が、しきりに大丈夫かと気にかけてくれ一度病院に行くべきだと言ってくれた。幸いにも店はそれほど忙しくなかったため、私は昼の休憩時間を利用して病院へ行くこととした。医者の言葉に私は耳を疑った。入院しなさいというのだ。どうやら、私の風邪はそこまでひどくなっていたらしい。しかしどういう訳だか当時の私はそれを頑なに拒否した。一体なぜなのかは自分のことながらさっぱり覚えていない。風邪のウィルスが脳にまで何かしら影響を与えていたのかもしれない。なんて書くと恐いので、寝ぼけていたことにしよう。
 私の無理な提案を受け入れてくれた寛容な医者は点滴と自宅での絶対安静を私に言い渡した。点滴後、仕事場へと電話をしてその旨を話すと、心配してくれていたバイトが、だから言ったんですよ!と声を荒げている。何を言っていたのかさっぱり覚えていないのも風邪のウィルスのせいなのだろうか。いや、だから寝ぼけていたんだって。

 翌日、頭痛は治まっていた。やはり、寝るのが一番である。時計を見ると夜の8時であった。おい、いくらなんでも寝過ぎだろ。

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