ACT.34 とどのつまりカレー (1999.08.24)

 私は讃岐出身ということもあり、たまにネット上の友人に讃岐うどんを送ることが多々あるのだ。その際にお金を絡めるのも何なので、毎回何かしら物を送り返してもらっているのである。まあ、平たい話が物々交換である。ブツブツ交換と書くと何か途端に嫌な交換になるが今回は全く関係ない。
 千葉に在住している友人から先日何かが送られて来た。かなり厳重にテープで梱包された段ボールと格闘すること数分、包装紙に包まれた2つの物が顔を出した。包装紙の柄から想像するに北海道の物であるらしい。確か旅行に行くなんてことを言っていたような気もするので、多分間違いないであろう。まず、大きい直方体の物体の包装紙を破く。もしかしたら何かの時に使うかもしれないという意識をこれっぽっちも持ち合わせていないので包装紙を丁寧にはがすなどということは行わない。中身は地酒であった。純米酒である。そういえば、今日は鰹のタタキなんぞを準備していたはずだ。ありがたいことだ。あとで頂くとしよう。さて、もうひとつの包みへと目を移す。缶詰ほどの大きさの物体の中身はそのものズバリ缶詰であった。北海道の北部の地図が描かれた缶のデザイン紙に燦然と輝く「トドカレー」の文字。あと一歩で手が届いたのか?それは「届かねぇー」である。第二次大戦時の首相って誰だっけ?それは「東郷かね」である。うわ、この唐辛子きついわぁ!それは「そうとう辛ぇー」である。
 トドである。海馬と書いてトドである。き脚目アシカ科のトドである。主に北北海道沿岸で冬に見ることの出来るトドである。漁の網にかかった魚を獲るので別名「海のギャング」と恐れられているトドである。海馬で検索すると脳の海馬やマンガ「遊戯王」のキャラクター海馬なんかばかりがヒットするトドである。とどのつまりトドである。
 トドの肉を食べることが出来るとは知らなかった。これを送り付けてきた友人も多分知らなかったのであろう。私を実験体に任命しやがったのだから。しかし、それでも友人を責めないのは私が広い心を持ち合わせていたこととカレーという形で送付してきたことだ。これが大和煮という形であったならば少々手強かったかもしれない。しかし、カレーである。私はこれでも昔カレー屋「CoCo一番屋」の全メニューを制覇した男である。あれは辛かった。最初はいいのだが徐々にキワモノが残って行くメニューにどれだけ挑戦を辞めようとしたことか。しかしそのおかげで納豆カレーのおいしさを知り、バナナカレーの醜悪さを知ったのであるから。まあそれはいいとして、このようにカレーという物に対しては非常に探求心をくすぐられるのである。もう、笑っちゃうくらいに。
 ………(食事中)
 う〜ん、なんと言うのだろうか。カレー自体はうまかった。辛口であったのだが、さほど辛さも感じずちょうどいい感じだ。して、トドの肉なのだがやはり癖があるのは否めないといった感じか。筋の部分はなかなか噛み切れず。カレーを食しながら顎が鍛えられるとはなかなかしゃれたことをしてくれる。カレーに煮込まれていたため本来の味を楽しめたとは言いがたいであろうが、まあまずいものではない。かといってうまいのかと聞かれると即答はしかねるといったところだ。まあ、かなり個人によって好き嫌いが出そうな食材であるといえよう。まあ、そうやたらめったに食えるもの物ではないだろうから、記念に食するのに問題は一切ないと思われる。う〜ん、実に中途半端な味だと文章にも面白さが出せないじゃないか。もう少し時間を置いて書けばよかったのだろうか……まあよい。お腹は一杯になった。とどのつまり、そういうことだ。3回も使うのはちとずるいか。

ACT.33←  TOP  → ACT.35