ACT.32 何でも聞いてみよう (1999.08.21)

 ローカルな話題なのだが、とある専門学校が体験入学の募集をしきりとCMで流している。その体験入学は何でも聞けるらしい。ナレーションで連呼されているので間違いないのであろう。しかしそれ以前に、体験入学というものは入学をする前にどういった学校なのか事前に調べたり、質問をしたりする場ではないのだろうか。私は行ったことが全くないので真相のほどは闇の中だが、わざわざ何でも聞けると明言しているぐらいなのだから普通の体験入学では質問をする場はあまり与えられていないのかもしれない。あくまでかもしれないという話である。
 しかし本当になんでも聞けるのだろうか。授業内容はどういったものですか?構内設備はどのぐらい整っていますか?資格などは取得できるのですか?卒業生の進路はどのようになっていますか?などといった定番の質問などはどうでもいい。そんなことはわざわざ何でも聞けると明言しなくても向こうから教えてくれるであろう。となれば、結果的にそういうものとは少々趣の違う質問をしてもいいということになるのではないだろうか。
 例えば、我々の払う入学金の使い道を詳細に説明して下さい。とか、講師の初任給はいかほどなのですか?といった金に関する実に現実味の高い質問をしてもいいということであろう。当然学校側は嘘偽りなく答えていただきたいものだ。いや待てよ、何でも聞けるということはわざわざ学校に関する質問でなくても構わないということかもしれない。となれば、今の政治の流れについてどうお考えですか?とか、PHSと携帯どっちが便利なんですか?とか、JAROのCMでわざわざ大物タレントを使ったりする方がよっぽど大袈裟なのではないですか?とか、子供はどうやって作るのですか?とか、○○大学へはどう行けばいいのですか?などといった質問でもかまわないに違いない。おお、なんという立派な学校であろうか。ここまで広い心を持って接してくれる学校など私は見たことがない。おまけに上記の質問に事細かに答えてくれるのだ。さらに驚くべきことにそれが体験入学だというのだから実際に入学したらもっと細かいことでも答えてくれるかもしれない。
 ものすごくむかつくやつがいるので殺してやりたいのですが薬を使うのと包丁を使うのではどちらがいいですか?なんて質問しても、どっちも足がつきやすいから朝のラッシュ時に電車のホームから突き落としちゃいなさいなんて答えてくれたりするのだ。銀行強盗をして2億ほど手に入れたんだけど、使ったらバレそうで恐いんです。なんていう悩みにも、台湾にいる知り合いに金の洗濯をしてくれる者がいるからとりあえず私に渡しなさいなんて助けてくれたりするのだ。素晴らしい学校である。私の心は既に9割がた入学意志が固まりつつある。
 さっそく連絡をして体験入学を受けてみた。構内の案内や授業風景などをしたあと、質問の時間となった。私はさっそくさきほど書いたような質問を学長に向けて言ってみた。本当になんでも聞ける体験入学であった。ただ、何でも聞けるだけであってその質問には答えてくれなかったが。って、受けてないって。

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