露出シンドローム
4 交換条件


次の日、あたしはバイトにつくと真弓さんに、後で話があると伝えました。
 バイトが終わる時間が少しずれたので、あたしは先に店を出て近くの公園のベン
チで待ってました。
 改造セーラー服のミニスカートからむっちりした足をこれ見よがしに露出した三
人が、そこに現れたのは西の空が少し暗くなりかけて、公園の街灯が点き始めるこ
ろでした。
 人影もまばらな公園です。犬を散歩させてる男の人があたし達の横を通り過ぎた
後は近くに誰もいなくなりました。

「何よ、話って」
 横柄な口調がこれほど似合う女子高生もいないだろうななんて、つい思ってしま
うほど高圧的な態度の真弓さんが、あたしを見下ろして言いました。
 あたしはベンチから立ち上がって彼女たちに向き合います。
「昨日見たの。――香取さんを脅してる所」
 それだけ言って黙り込むあたしを、三人は面白そうに眺めていました。
「覗いてたんだ。それで、興奮してしまって、自分も仲間に入れてほしいってーの?」
 川原さんが茶化しました。
「香取さんを許してほしいの。これ以上彼をいじめないで」
 思い切ってあたしは言いました。
 予想通り三人は笑い出して、しばらくして真弓さんが言いました。
「あんた、香取が好きなの?」
 あたしが黙ってると、さらにきつく言ってきました。
「黙ってないで答えなさいよ。その答えによっては聞いてあげなくも無いから」
 仕方なくあたしは、はいと小さく答えました。
 
 少し離れた場所で、ひそひそ声で三人は相談した後、彼女らは近づいてきました。
「わかった。香取をいじめるのは勘弁してあげてもいいよ。その代わりあんたが言
う事を聞くと約束するならね」
 真弓さんの言葉は以外ではありませんでした。
 どうせ何かやらされることは間違いないと思っていたから。
「一ヶ月あたし達の命令をきいたら、香取の秘密は守ってやるよ」
 真弓さんが勝ち誇るように言いました。
「あんなむさい男をいじめるより、美人ですました女をいじめる方が面白いもんね」
 遠藤さんは一歩あたしに近づくと、右手であたしのスカートを大きく捲り上げま
した。
「今日はピンクのレースですか」
 押さえるひまも無く三人の前にあたしの薄いレースの下着がさらされました。
 声を上げる事も出来ずにしゃがむあたしを、遠藤さんは突き飛ばしました。
 レンガを並べた通路の上に、あたしは転ばされてしまいました。
「やめてください」
 やっとそれだけ言いましたが、三人は鼻で笑ってます。
「何言ってんのよ。今、言う事きくって言ったでしょ」
 川原さんが横からあたしのスカートのすそを引っ張ったからまたもあたしの下着
は丸見えになってしまいました。
「ちょっと、いつまで寝転んでるのよ。さっさと立ちなさい」
 真弓さんは靴の先であたしの太腿を蹴りました。

「じゃあ、自分でスカートを持ち上げてパンツ丸出しにしたままあそこのベンチの
所まで歩きなさい」
 あたしが立ち上がると、真弓さんは30メートルくらい離れた、通路の脇のベン
チコーナーを指差して言いました。
 近くには誰もいませんが、街灯の灯りでしっかり照らされた場所です。
 もし誰かが来たら、そう思うと手が震えてどうしても出来ません。
「なにやってるのよ。さっさとしなさいよ」
 遠藤さんがあたしの肩を小突きました。
 あたしは誰もこない事を祈って、膝丈のスカートを持ち上げました。
 太腿から下半身に涼しい風があたり、三人の視線にさらされてるのを痛いほど感
じました。早くしないと。誰かがくるかもしれません。
 あたしは必死の思いで一歩一歩歩きました。
 変な体制での歩行だから足取りがぎこちなくて、自分でも危なっかしく思いまし
た。
 もし誰かが来たら、あたしのパンツ丸出しの格好を見られてしまう。
 自分の恥ずかしい姿を、無防備な姿を見られる、そう思うと体全体がかっと熱く
なり、しゃがみこんでしまいそうでした。

「いいわよ。いい格好。お尻丸出しだね。裸でいるよりその方がずっとスケベだよ」
 後ろの方で真弓さんが声をかけてきます。
 他の二人も、恥知らずとか変態とか、自分達が命令した事なのに、それを実行す
るあたしを非難するんです。
 やっと、命令された場所まで歩いてきました。
 どうやら誰にもみられずに来る事が出来た、そう思ってほっとしていた所に 、 そ
の男の人が突然現れました。
 犬の散歩のようでした。茂みの影から白い犬がぬっと出てきたかと思うと、鎖を
持った彼が現れたんです。
 両手でスカートを上げて下半身をさらしてるあたしを彼は見つけて、唖然として
いました。そしてすいませんと小声で謝って彼はさっさと横を通り抜けていきまし
た。真っ赤に焼けた鉄板みたいに顔が熱くなり、いまさら遅いけどあたしはスカー
トを下ろしてその場にしゃがみこみました。
 涙が知らないうちにあふれていて、街灯の灯りで青白くなった地面がゆがんで見
えました。

 そんないきさつであたしは三人の女子高生に一ヶ月の間香取さんの代わりに責め
られることになったんです。
 女相手だから犯したりは出来ないはずと、軽く考えていたのはかなり浅はかでし
た。女を責めるのは男よりも女の方が何倍も執拗で狡猾で的を射てるのでした。




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