露出シンドローム
放射朗

 3 香取勇治の性癖


 ここまで読んだ人は不思議に思ってるかもしれません。
 たかがアルバイトなのに、そこまで職場でいじめられて、どうしてあたしがその
バイトを止めないのかと。
 止めたいのは山々です。年下の女子高生にいじめられるなんて、屈辱的ですから。
 でも止めないのにはそれなりの理由があるんです。
 いじめられるのを快感に思ってるんだろう? まさか!それ、はずれです。
 確かに痛みを伴いながらも気持ちいいこともありますが、年下の同性にいたぶら
れるのが好き、というような趣味はあたしは持ってません。

 理由というのは、香取勇治さんというバイトの人の事なんです。
 なんだ、その男を好きだからか、と思った人……半分あたりです。
 でも好きな人が職場にいても、バイト以外でも会えるんだから、屈辱に耐えてバ
イトを続ける理由にはなりませんよね。
 実は二週間前の事です。
 彼女らが控え室で話してるのを聞いたんです。

「やっぱり香取のやつ変態だよ。女子トイレの汚物入れあさってるのを見たもん」
 川原さんが得意げに言ってました。
「汚物入れなんてあさってどうすんのさ」
 真弓さんのもう一人の子分、遠藤祐子さんは不思議そうにしてます。
「馬鹿だね!生理用品をパクルためだよ。使用済みのね」
 真弓さんは食べかけのシェークのストローを引き抜いて、遠藤さんに吹きかけま
した。シェークがとんで遠藤さんのほっぺたにベッチャリつきました。
 この頃は、この遠藤さんが、二人のいじめ、といっても軽いものですが、の標的
になってるみたいでした。もちろんあたしはこの3人とはまだ何の関係もない他人
でした。ただ同じところでバイトしてるだけの……。
 
「ぎゃー汚いの。使用済みタンポンとか集めて何するんだろ」
 河原さんはわりと純情なのかな?あたしから見ればその程度はたいした変態だと
は思えないんだけど……。女性に対する関心が大きくなりすぎて、女性特有の、た
とえば下着とか、に興味が行くのはそれほど珍しいことではありません。
 あたしも、理解は出来ないけど、まあ許せると思います。
 でもその時の川原さんはゴキブリでも見つけたみたいな顔をしてました。
「何するのかなんて知らないけどお……まあ、匂いを嗅いだりはするだろうね」
 真弓さんがそう言って、また遠藤さんにシェークを吹きかけました。
 遠藤さんは、止めてようなんていいながらも、それほど嫌そうなそぶりは見せま
せん。へらへら笑いを顔にこびりつかせたまま、ハンカチでその度にふき取ってま
した。
「それで、どうする? 店長に言いつけるの?」
 川原さんがリーダーにお伺いを立てるかのように真弓さんに聞きました。
「それであいつをクビにするだけってのもツマンナイよね」
 真弓さんはくわえたストローを上下に揺らしながら考えてます。
「まあ、今日のバイトが終わるまで考えておくよ」
 ひとつうなづくと真弓さんはそう言って立ち上がりました。
 あたしは立ち聞きしていたのを気づかれないように、さりげなくその場を離れま
した。

 その日の夕暮れ時です。
 ちょうどバイトの入れ替わり時期で、女子控え室はがら空きになる時間帯でした。
 それとなく注意していると、香取さんが三人組に声をかけられて、奥の方に引っ
立てられていくのが見えました。
 あたしも決心して、こっそり後について行きました。
 薄く開いたドアから、真弓さんの声が微かに聞こえました。

「いや、それは誤解だよ」
 香取さんの声も聞こえました。
「何が誤解だよ。ほら、これ見てみなよ。あんたが女子トイレから出てくるところ
がばっちり写ってるジャン」
 川原さんの声です。テーブルに写真を投げ出す様子が見えました。
 香取さんは返す言葉も無いようでした。そのままうつむいてしまいました。
「店長に言ったらどうなると思う?まあクビは当然だよね」
 真弓さんはタバコの煙を吐きながら言いました。
「どうすればいいんだ。金がほしいのか」
 香取さんの言葉に三人は笑い転げました。
「バッカじゃないの、金なんてゆすったってたいして持ってないだろあんた。それ
よっか面白い事思いついたんだよね」
 真弓さんはそう言うと、突っ立っている香取さんの前に進み、右手をすっと伸ば
して香取さんの股間のものを握りしめました。
 うっくと言って香取さんは前かがみになります。
「おっと、逃げるなよな。あんたこれからあたし達の犬になってもらうよ。言って
みれば性の奴隷かな。言う事なんでも聞くだけのおもちゃ。わかった?」
 真弓さんの言葉にしばらく唖然としていた香取さんですが、すぐに頬を紅潮させ
て、ふざけるなと怒り出しました。
 でも立場の弱い彼は結局真弓さんたちの奴隷になると納得させられました。

「よし。じゃあ最初にここでパンツ下げてオナニーして見せなさいよ。三人の奴隷
になることを誓う意味で盛大に発射するのよ」
 まさかと思ったけど、香取さんは本当にズボンとパンツを膝まで下げました。
 案外Mの気があったのかもしれません。
「うわあ、結構毛深いねあんた。太腿はもじゃもじゃジャン」
「ちっこいの。早く大きくしなさいよ」
「そうそう、自分でこすって立たせるのよ」
 真弓さんと他の二人にはやし立てられながらも、背後から見る彼の右手はリズ
ミカルに動き出しました。
 
 あたしはこれ以上見てられなくなって帰ろうかと思いましたが、これからどうな
るのか好奇心もあって、のぞきつづけました。
「ふふふ、大きくなってきたね。紫色で汚いわね」
 遠藤さんが目を細めて言ってます。
 今までずっと自分がいじめられる立場だったのに、香取さんが加わったことで、
いじめられることも少なくなるだろうと、すっかり喜んでる様子でした。
「もういきそうだよ。ティッシュ貸してくれよ」
 荒い息をしながら香取さんが言います。
「駄目よ、このテーブルに出してしまいなさい」
 無情にも真弓さんはそういってテーブルをたたきました。
 三人の高校生に観察されながらオナニーをすることは、香取さんにとって生まれ
て始めてのシチュエーションだったでしょう。
 その興奮が覗いてるあたしにも伝わってくるようでした。
 覗きながらあたしの股間もジンワリ濡れてるのがわかったからです。
「うう、いくよ!」
 香取さんは思い切り背伸びすると背中を震わせていってしまいました。
 彼の後ろから覗いてるあたしには背中しか見えませんでしたが、真弓さんたちの
言葉でその様子が目に浮かびました。
「どくん!って出たね。うわーテーブルの上は白い海だよ」
「なんかすごくべとべとしてるね」
「だいぶん溜まってたみたいね。でも、まだ終わりじゃないからね」
 遠藤さん、川原さん、真弓さんの順で言葉が発せられるうちに、香取さんは力を
使い果たしたマラソン選手みたいに前かがみにしゃがみこんでしまいました。

「終わりにしてくれよ。そろそろ遅出の子たちが来る頃じゃないか」
 香取さんの声はかすれていてやっと聞き取れるくらいにか細い声でした。
「そうだね。時間が無いよ。遅出の子達が来る前に、自分の陰毛全部剃ってしまい
なさい」真弓さんは女性の無駄毛剃り用のシェーバーをバッグから取り出して言い
ました。
「そんな……」
 香取さんは抵抗しようにも出来ない状況に、言葉を飲み込んでしまいました。
「早くしないと、みんな来るよ。それともこのままあんたを縛り上げてこのテーブ
ルに固定しておいてやろうか。遅出の子達はそのほうが喜ぶかもしれないね」
 他の二人が笑う中、香取さんの手が動き、ジーという電動音とチリチリという毛
を剃る不快な音が、狭い控え室のロッカーに反響し始めました。

 あたしはその時はどうしていいのかわからなくて、そっとその場を離れました。
 香取さんを助けてあげたいけど、どうやって助けたらいいのかわからなくて……。
 家に帰って散々考えて、やはり直接真弓さんにぶつかるしかないって思ったんで
す。頼んでみて、交換条件を持ちかけられたら何とかして期待にこたえるしかない
って。




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