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北と南の物語(1)         作:みれ

第1話

これは、北の北海道と南の沖縄で起きた物語です。
『菜城高校』2年A組の所属する、御藤 結海。あたしは、決して裕福な家庭ではないが、『普通の家以上、裕福な家未満』という家柄だ。
そして、『菜城高校』の王子様といわれる彼は御藤 結海と同じく、2年A組所属、南田 翔。家柄は世に言う、大金持ち。そして、『Hotel MINAMIDA』という有名高級ホテルの御曹司なのだ。
なので、『菜城高校』でのファンは数えられないほどいる。
あたしはファンでは、ないが...。
そんな訳で、彼が通れば王子様のお通り状態。どんなチンピラでも、彼が通れば廊下の隅に移動する。
ある意味、最強なお方だ。
こう話しているうちに、学校中に歓声が響き渡った。
「キャー!南田君が登校してきたわっ!」
「しかも、ここの廊下を渡るよ!感激です!」
南田が登校したからってなんだ。こっちに得はないだろう。
しかも、ここの廊下を渡るだけで騒ぐな。こんな事で、騒いで感激する暇があったら勉強しろ。
それからあたしは、このうるさい歓声から逃れようと屋上に行く事にした。もちろん、こんな中歩いてなんていられない。走るしかないだろう。
あたしは、とてつもないスピードで廊下を走っていった。
すると、誰かにぶつかった。
「すみません。」
「おい、これ落ち…」その人はあたしになにか言おうとしたが、一刻もこの状況から早く抜け出したかった為、あたしはその人の声を無視していった。
顔も見てない。見る暇がなかったから。
ただ、謝っただけ。まあ、いいか。別に、知らない人だったし。
屋上に着くと、とても静かだ。
あたしは、チョコ牛乳を片手に平和なひと時を体感していた。
「ああ、平和だ。学校内も、これくらい静かなら良いのにーっ!」
「こんなに静かなら、逆に不気味だろ。」
はっ!あたしはびっくりした。ここは、あたし一人のはず。なのに何故、もう一人の声が聞こえるのか。
あたしが顔を上げると...。
あの人が居た。