せい文庫 本文へジャンプ


桃太郎の生まれの秘密                   作:せい

 みなさんは、桃太郎と聞けばすぐにだれのことだかわかりますよね。ええ、そうです。あの、鬼退治をした桃太郎です。では、桃太郎がどこからどうやって、だれから生まれたか知っている人はいますか?やっぱり、あまりいないでしょう。だから今、わたしはこのお話を書こうと思ったのです。でも、さいしょに少し、言っておかなくてはなりません。これを見つけたのはわたしではなく、知り合いの探棲(サガス)模羽(モワ)博士なのです。
 昔、あるところに貧しい夫婦がおりました。一人分のお米を二人で分け合って食べなくてはならないほど、貧しかったのですから本当は子どもを育てる余裕などありませんでした。けれども運の悪いことに、ある日子どもが生まれてしまったのです。
「どうしましょう。」
「おお、かわいそうに。とても家では育てられない。」
「でも・・・・・・捨てることなどできませんよ。」
二人はすっかり途方にくれてしまいました。知り合いも身内もいませんし、二人が住んでいるのは遠い山奥でしたからおとなりさんもいませんでした。そうやって苦しい日が何日か続いておりました。
 けれどもある日、一人の天使がその貧しい二人を見つけ、かわいそうに思って神様に知らせたのです。神様もたいへんかわいそうに思い、天使たちに言いました。
「すぐに殿様の夢に出て、あの二人を救ってやりなさい。」
 あくる日、国中の博士や物創り師たちに大きな桃のいれものを作るよう、おふれが出ました。いちばん早く作ったものにはたくさんのごほうびが出る、というのです。
 それからしばらくして、一人の博士がその、桃の入れ物をもって殿様に会いにきました。その数日後、二人の夫婦はお城によばれ、桃のいれものをわたされました。はじめは、なにがなにやらさっぱり、だった二人も、何日か後にはその意味がわかり、さっそく桃の入れ物に子どもを入れ、ふもとの川までおりていきました。運よくそこにはおばあさんがいたので、二人は泣く泣く子どもを流しました。・・・・・・それからどうなったか、みなさんはわかりますよね?

(おまけの話)
かわいそうに、しばらくして桃太郎の両親は亡くなってしまいました。けれども、やさしい神様は、二人をさると犬にして、桃太郎のおともにつかせたのです。そして、二人は幸せに暮らしましたとさ・・・・・・えっ、じゃあ、きじは何なのかって?ふふふ、それはね、桃太郎調査に行ったモワ博士なんですよ!