〜*〜寄生虫フォトアルバム(その4)〜*〜

   




Cercaria simplex
(扁形動物門吸虫綱二生亜綱プラギオルキス目・中性赤染色生体)
カワザンショウガイに寄生します。生活環はまったく解っていませんが、第二中間宿主は節足動物だろうと予測されます。
体の真ん中辺りで染色されずに透けて見えるのは侵入腺細胞と呼ばれ、第二中間宿主の表皮や組織をうがつための酵素が分泌され ます。しかし、このセルカリア は表面がかなり頑丈なクチクラで固められており、体前端には穿刺棘と、妙に筋肉の発達した口吸盤があります。なんだかミサイ ルのようです。
Isoparorchis eurytremusのセルカリア (photo by Y. Makita)
プラギオルキス目・生体・偏光顕微鏡写真)
カワニナ類の中腸腺に寄生します。このセルカリアの生活環はロシアで解明されましたが、日本でも同じであると考えられます (成虫の写真は6ページ)。第二 中間宿主は甲殻類か水生昆虫であると予想されます。寄生虫が宿主を乗り換えるときに、 宿主の行動を操作するなどの「技」を使うことは有名ですが、こいつは球形の胞から出ているたくさんの繊維を使って水中に胞子のごとく漂うだけで、自力で泳 ぐことさえしません。しかし,ロシアでの研究によると,この繊維が次の宿主である節足動物に触れると,射出管(右側に伸びて いるチューブのようなもの)が 発射されて宿主の体に突き刺さり,それを通って寄生虫の体が宿主に「注射」されるということです。見事と言えば見事な感染方法ですが,相当えぐいです。愛 称は単純に「蛸入道」。
Genarchopsis chubuensisのセルカリア
(扁形動物門吸虫綱二生亜綱プラギオルキス目ヘミウルス上科・鉄ヘマトキシリン染色標本・ノマルスキー顕微鏡写真)
やっと載せられました、カワニナではもっとも普通に見られるGenarchopsis属のセルカリアで、中国 地方以西の種はG. goppo、近畿〜関東の種はG. chubuenesis、琵琶湖固有 種はG. gigiとして区別されます(Urabe et al. 2012)。丸い体部にひらひらした突起、尾っぽの 先にはオールのような透明の 板…一体どうしてこんな格好なんでしょうか。第二中間宿主はケンミジンコ、終宿主はヨシノボリなどのハゼ科魚類です。分布はきわめて広く、ほんの小さな細 流にも大きな湖にもいますが、東日本には比較的少ないようです。サンプルが欲しいので、東日本在住で近くで淡水ハゼが入手出 来る人はご連絡ください。