発色剤・静菌剤の実際 その1

硝酸塩、亜硝酸塩の使用条件を
検討してみました


追試される方は自己責任でおこなってください


薬品購入

硝酸K、亜硝酸Naはともに食品添加物として認可されたものが販売されています。しかし後記の「硝精S」で述べるように一般人がこのような食品添加を購入することはできません。そのため一般試薬として販売している物を使用します。
一般試薬と食品添加物の違いはありますが自家消費するのであれば問題はありません。

硝酸K、亜硝酸Naともに25g包装または500g包装で買えます。500gで2000円以下です。薬局に頼めば取り寄せてもらえます。亜硝酸Naは劇物指定ですから受取りには印鑑が必要です。爆薬製造にも使えますから、使用目的を聞かれたらはっきりと「趣味で作っているハムに入れます」と答えましょう。それでOKです。
亜硝酸Naは鍵の掛かる金属性の戸棚などに保管しましょう。
亜硝酸塩のメモも参考にしてください。


希釈塩

最初から亜硝酸Na単独で使用してきましたが加熱ベーコンには十分な効果が得られるにもかかわらず、生ハムやサラミでは発色が良かったり悪かったりとムラがみられました。悩みつつある中、 幕別町の藤田 恵さんから亜硝酸に関する詳細なメールを頂きました。 
お教えいただいたことを要約すると、作成直後に効く亜硝酸とその後の成熟・保存中に効く硝酸の両方がなければ長期の静菌・発色の持続は望めないことが分かりました。両方を混合したものとしては、下記の処方で作られた商品名「硝精S」(第一化成製造)があるようですが、食肉加工の免許がないと購入できないとのことでした。

亜硝酸Na 5%
硝酸K 10%
食塩 85%
ネットで探すとパンチェッタの作り方に10倍希釈塩として同様の組成表がのっていました。この方は肉1kgに対して10倍希釈塩を7g使用しています。

法規では最終製品に亜硝酸根として70mg/Kgの残留を許していますが、使用量についての基準はありません。 たとえば塩蔵して作るベーコンなどは添加した亜硝酸塩が100%染みこむわけではなく、染みこんだ亜硝酸塩も塩抜き時に流出する分があります。サラミのようなものは添加した物が100%肉に混合されてしまいます。そして成熟の長短や加熱によって分解してしまう量や保存中に硝酸塩から分解生成される亜硝酸塩もそれぞれ違うので残留量は規定できても使用量を規定するのは無理があるからです。

亜硝酸根は亜硝酸Naの重量の46/69ですので上記のバンチェッタの例で計算すると、7g*0.05(5%)*46/69=230mg/Kgとなります。おおよそ残留上限の3倍の使用量となっていますが、これも浸透量・分解量を考慮した、いわば結果オーライの添加量ということができます。

上記の「硝精S」の構成比とパンチェッタの例にある添加量を参照にして試行錯誤して確認することにしました。

濃度と使用量を決定

7gではなく5gが計算しやすいので肉1Kgに5g計量添加することにして、上記のパンチェッタより少ない亜硝酸・硝酸の量を添加することにしました。そのため希釈塩の組成を以下のように定めました。
混合物の安定性につていは確認できませんでした。
亜硝酸Na 4g
硝酸K 8g
食塩 88g
肉1Kgに5g使用すると、5g*0.04(4%)*46/69=130mg/Kgとなって残留上限の1.9倍となります。この処方で各燻製への亜硝酸Na添加量を計算すると以下のようになります。
生ハム
従来式:
使用塩分の0.3%の亜硝酸Naを使用しているので、
40.5g(Nacl)*0.003(0.3%)/1.5Kg=81mg亜硝酸Na
81mg*46/69=54mg(亜硝酸根)/Kg

新方式:
5g*0.04(4%)*46/69=130mg(亜硝酸根)/Kg
従来法に比較して1.6倍の亜硝酸根を添加することなる。
サラミ
従来式:
使用塩分の0.3%の亜硝酸Naを使用しているので、
22g(Nacl)*0.003(0.3%)=66mg亜硝酸Na
66mg*46/69=44mg(亜硝酸根)/Kg

新方式:
5g*0.04(4%)*46/69=130mg(亜硝酸根)/Kg
従来法に比較して2.0倍の亜硝酸根を添加することなる。
冷ベーコン
従来式:
使用塩分の0.3%の亜硝酸Naを使用しているので、
35g(Nacl)*0.003(0.3%)=105mg亜硝酸Na
105mg*46/69=70mg(亜硝酸根)/Kg

新方式:
5g*0.04(4%)*46/69=130mg(亜硝酸根)/Kg
従来法に比較して1.9倍の亜硝酸根を添加することなる。

以上3種類の燻製を2002年の末に作ってみた。

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