INTECバインディング破壊

 このページでバインディングの話を書きましたが、INTECについてのその後の話をお届けしようかと思います。というのも、私の使っているINTECが破壊したからです。別にメーカーさんに損害請求をしようとかいうのではなくて、いいものを作って欲しいし、使っている皆さんへ注意して欲しいと啓蒙したい気持ちからです。
本文中、辛辣な言い回しがでてくるかと思いますが、もしメーカーの方が読まれて不快になったとしたら、それは謝罪します。が、そうなった原因は何?とも考えていただき、よりよいモノを提供して下さるよう、深くお願いするものです。

さて、私のINTECに何が起こったか?ということなんですが、二つありました。
一つはブーツヒールピースの固定用ピンの折損。もう一つはチタンベースプレートの変形です。

まず、一つ目の固定用ピン(以下ピン)折れの説明から。
状況
 ザウスで滑っていて休憩しようと思い、前足のリリースをしようとワイヤーを引っ張ったところがリリースできない。はて???INTECの場合、ワイヤー切れが一番多いので疑いましたが、ワイヤーには手応えがあるので切れていない。よくよくバインディングをみてみると、どうやらブーツ外側のピンが動いていない模様というのが確認できました。
しょうがないので、友人にドライバーでピンを押し込んでもらい、リリースしました。ゲレンデの外にでて、確認しようとブーツの外側をみると、な、なんとピンが無くなっているではありませんか!!!!ここでピンが折れたことが判明。この日は友人に前足のバインディングだけ借りて滑りました。
この様子の写真(ヒールピースがブーツに装着されている状態)

自宅に戻り、ヒールピースを外して、調査しました。
ヒールピース全体写真

ここで判ったことは、ピンが見事に折れているということです。
写真をみると判りますが、INTECのリンクとピンの接合部分から折れています。
どうやら、このピンは段付きのスチールのピンにリンクがモールド成形されているようです。ピンの段付き部の根本からポッキリ折れています。しかも、破断面を観察するとブーツ上下方向の荷重による単純曲げ応力による金属疲労であることが判りました。
リンク&ピンの写真です。下に置いてあるのが正常なモノ。上に乗っているのが折れたものでブーツの写真と同じ方向から撮影しています。
ここで判るのは、正常なモノのピンとリンクの接合部からポッキリいっちゃっていることです。














ここで、私の頭の中は????でいっぱいになりました。というのもINTECシステムのピンにかかる荷重はリンクとの接合部には掛からないはずというのが頭にあった為です。

ちょっとここでINTECシステムの荷重の伝わりかたを整理してみましょう。

荷重の伝達経路としては
ボード−バインディング−バインディングの穴−INTECのピン−ヒールピースの穴−ブーツ本体−自分の足なんですが、ここで注目するのはINTECのピンとヒールピースの関係です。
ピンに入力された荷重はリンク部品に伝わることなく、ヒールピースに伝達するはずです。
これはリジットサス(トラックが多い)のアクスルハウジングとアクスルシャフトの関係に良く似ています。(興味のある方は雑誌をじっくり見て下さい)
アクスルシャフトは回転動力を伝えるだけ。INTECで言えばリンク部品になります。リリースの動きを伝えるだけ。
アクスルハウジングは車の重さを支えるだけ。INTECのピン、ヒールピースがこれに当たります。
とすると、今回のピン折損は起こらない設計であるはず。いや起きてはいけない事故なんですね。自動車に例えたら、リコールものの不具合でしょう。ちょっと話がそれますが、スポーツ用品それもスキーとかボードとか自転車等の乗り物系はかなり危険をはらんでいると思いますね。リコール制度みたいなものがあってもおかしくないのではないか???

話を戻します。では、何故ピンが折れたのか?を考えてみます。
前述の通り、設計的にはピン−リンク接合部には荷重が掛からないはずです。しかし、長期に渡って使われた場合は”摩耗”とか”ヘタリ”という現象が発生します。INTECの場合は、ピンとヒールピースの穴がそれに該当します。穴−ピンの関係は必ず隙間がありますね。当たり前ですが、隙間がないとリリースはおろか、製品として組み立てられないです。隙間があると言うことはピンが穴に対して動ける(ガタがある)ということで、滑っている間常に上下に少しの量動いていることになります。
隙間があるところで動くと、ヒールピースの穴の上下ともに荷重がかかったり、抜けたりしますので、繰り返しで負荷がかかります。これはピンが完全に穴に固定されて使われる条件に対し、非常に厳しく、ヒールピースの穴が摩耗(ヘタリ)する大きな原因です。
ちなみに私がザウス、冬通して2年使ったヤツは結構ピン−穴のガタが大きかった。

摩耗が進展すると(穴が大きくなると)ピンは穴の中でより大きく動けます。ただし、これだけでは折れないはず。ピンに接合されているリンクもピンと一緒に動ければね...
実際のモノはというとリンクはヒールピースの中で上下には動けないようにふたで固定されています。
ということは、ピンが上下に大きく動いても、それに接合されているリンクはほとんど動いていないということになる。それが繰り返されると、一番弱いであろう、ピンの段差付け根部が一番先に折れてしまうのではないか?????

以上が私の原因推定です。
まぁ、製品の寸法バラツキも結構ありそうなので、どれほどこんな事例があるか判りませんが、ピンのガタが増えたら要注意。ピンが曲がっているように見えたら即交換でしょうね。私はINTECに関しては便利で使っていますが、あのヒールピースに関してはあまり信用していないので、予備を2−3セット持っています。

じゃぁ対策は??ということなんですが、私の推測が正しいという前提で考えてみました。
・ヒールピースの材料をもっと硬くて摩耗しにくいモノにする。(ガタ増加防止)
・もしくは穴の部分に別材料をモールドし、摩耗、ヘタリに強くする。(コストアップだな)
・リンクがピンと一緒に動ければいいので、リンクの上下方向の自由度を大きくする。
 (ただし、リンクの構成を見直さないと上手く動かせないかな??)

以上が一つ目の話です。
次に二つ目の話としてチタンベースの変形についてです。これはINTECに限った話ではなくバインディングそのものの話ではあると思いますが....
11月のある日、いつものように板を弄くろうと思い、バインディングを外したところ、前足のベースプレートが捻れるように変形していました。このバインディングも丸2年使ったものなんですけど。床に置くと机がゆがんでいるようにカタカタと動きます。
実はこのメーカーのモノは、友人のジュラルミンベースのモノが同じ様な酷い変形を起こしていた。ゲゲッ、ついに俺のもかぁ と思いました。

まぁ、丸2年使っているし、私自身の体重が80kg以上あって、激ワイドスタンスで乗っていたからしょうがないやという感じです。(ちなみに今年のザウスでは53cm位で乗ってました)
スタンスを広くして無理矢理乗っいると、低い姿勢をとったときに後ろ足は問題ないのですが、(お尻は後ろに落ちますからね)前足はお尻から遠くなっていくので、バインディングのつま先側を引き上げるような感じになってしまいますね。身体の大きい男の人は脚力もそれなりに大きいので、板を自分で撓ませてしまう状態で滑ってしまうと....
バインディングにとっては悲鳴が上がるような使い方です。普通のクリップ式バインディングなら、ベイル、クリップがかなり変形するので、ベースの変形は小さいのでしょうが、INTECでは部品の剛性が大きいので、もろにベースに力がかかるという感じでしょう。

こんな顛末でした。私のはチタンのプレートにINTECの部品が乗っているものだったのですが、他のメーカーのINTECや、同じメーカーの新しい樹脂ベースのものをみると、とにかくベースがごついです。ライケルのX−BORNとかBLAXのSTEALTHとか....やはりそれなりにゴツクしないといかんのかなぁと思ったのでした。

私はこのベース変形事件の後、変形したままでも乗れそうではあったのですが、気持ち悪いので、BLAXのカーボンベースのINTECを購入しました。これがまた凄い硬いんだ。いままでのチタンと比べても、全然違いますね。セッティングも見直すはめになりました。

皆さんも安全で快適に滑るために道具のチェックはこまめにやりましょう。
バインディングだけではないですよ。全部です。全部!!

KEEP FUN RIDE!!

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