未成年の主張−第三部恋のからまり編第三話

                                    乙姫 静香

 「え?俺も・・ですか?」
 いつもながらの生徒会室。意気揚々と出演依頼をするトモキに、ユキヤがきょとんとした顔で答えた。
「そう、どうしてもユキヤに出てもらいたいんだよね。そうじゃないと、弱冠一名ほどダダをこねまくって大変なバカがいるから」
 カオルはただいま部活中である。トモキはユキヤとサシで話すために、仮病をつかってサボっていた。
「それって、カオル先輩のことですか?」
 ちょっと心配そうなユキヤ。カオルが日々憔悴していく様は、ユキヤにも見て取れた。
「そうそう。ほら、撮影で最近こっちにも前ほどこれないだろ。ユキヤに会えないのが、もんのすっっっっごくツライらしくて、毎日泣き暮らしてるんだぜ、カオルの奴。本当に、ユキヤのこと好きなんだな〜」
 瞬間、ポっと頬を赤らめるユキヤ。トモキはそんなユキヤの姿を目の端で確認しつつ続けた。
「どうだろう、こっちは映画だからユキヤの白雪姫の上演ともかぶらないし、もしこっちに出てくれたら、ユキヤが白雪姫のセリフを覚えるの、俺が手伝ってもいいけど・・・」
 すると、ユキヤの顔色がパッと変る。どうしたものかとトモキがユキヤを見つめると、ユキヤが嬉しそうに言った。
「本当ですか!?セリフ合わせ、やってもらえますか?」
「え・・・?あぁ、そんくらい、なんでもないけど・・・。どうした?」
 あまりにも真剣なユキヤの顔に、今度は少し、トモキが驚く。言っちゃ悪いが、たかが白雪姫。何がそんなに難しいというのだろう。
「なんか・・・みんな変なんです!セリフ合わせを二人づつでしかしようとしないんですよ!」
「へ?・・・・どういうこと、それ?」
「俺が、教室に一人でいて、俺と会話の絡みがある人が、かわるがわる教室に入ってきて練習するんですけど、テンポはつかめないし、流れも分からないし、カオル先輩は怒るし」
 そこまで聞いて、トモキはなんとなく状況がつかめてきた。要は、この機会にユキヤと親交を深めようという輩がたんまりいて、それがみんなユキヤとの絡みのある役に配されているのだ。・・・というか、それらの役はきっと争奪戦で勝ち取られたものなのだろうが・・・。にしたって、狼少女ジェーンの北島マ○のような扱いだな・・・とトモキは思う。ちなみに、『ガ○スの仮面』はトモキの愛読書であった。
「だから、誰かに通しで読み合せを手伝って貰いたかったんですけど、カオル先輩は映画があるし、変に他の人とずっといるとカオル先輩がまた・・・」
「やきもちを焼く・・・と、そういう訳か」
 トモキの言葉に、ユキヤが深く肯く。確かに、もてる恋人を持つのも苦労が多いんだなぁと、トモキはカオルに少し同情した。
「まぁ、俺なら安心っていうのはあるだろうな、カオルにしても。俺も寮生だから、寮に戻ってからも練習できるし」
「ですよね!もし本当にお願いできるんだったら、俺、カオル先輩の映画にでます!俺も、カオル先輩と一緒・・に・・・・い・・た・・・・」
 言葉を紡ぎながら自分の言ってることの大胆さに気付いたのか、徐々にユキヤの声が小さくなっていく。トモキがそんなユキヤを微笑ましく見ていると、ユキヤが恥ずかしさまぎれに言った。
「ところで、先輩ってどんな役なんですか?俺は何を?」
 するとトモキ、傍らに持っていた脚本をしゃきーんと取り出し、パラリとめくった。
「カオルはズバリ、カオルなんだ」
「え?どういうことですか?」
「この映画、主人公がカオルっていうんだ。だから、カオルの役はカオル」
 ほぉ〜っと、納得したようにユキヤが肯く。
「ユキヤの役は、まだ内緒。今度脚本渡すから、それを読んでもらって、全体のイメージを掴んでもらってから教える。その方が先入観無く役を感じることが出来ると思うから」
 これまた、ユキヤが感心したように肯く。トモキはユキヤの素直な反応に満足げに肯き返し、そして言った。
「そういえば、他にも出てくれそうな人って知らないか?とにかく頭数が足りなくってな。エキストラみたいなのも必要だし」
「どんな人がいいんですかね?それによっては、俺もクラスメートとか、部活の先輩に聞いてみますけど」
「そうかぁ?なんかこう、現代的じゃない感じのとか、ベルサイ○のバラみたいなのとか、いないかなぁ?」
「それって、どんな映画になるんですか?」
 難しそうな顔をしてユキヤが首を傾げる。ミウという姉を持っている所為か、ベルバラを読んだことのあるユキヤ。当然トモキは自分で持っている。ストレートではあるが、トモキは大のマンガ好きであった。飾子に対する理解の深さも、そこら辺から来ているのであろう。
「ふっふっふ。楽しみにしてなって、今年の学園祭はひと嵐起こすからな」
 早くも監督魂に目覚めているトモキは、今にもメガホンを買いそうな勢いである。ユキヤはそんなトモキをじっと見つめながら、ある事に気付きポンっと手を打った。
「あ、ベルバラさんは分かりませんけど、現代的じゃない人って・・・」
「え?誰かいるのか?」
 ユキヤの言葉に身を乗り出すトモキ。ユキヤはトモキを見上げて言った。
「学年は問わないんですか?」
「あぁ、できたら若い方がいいかな。中等部の方が望ましい」
「でも、背は高いですよ」
「構わない。むしろウェルカム」
「ちょっと変わってるというか・・・」
「個性はあった方がいいな」
「ただ、障害がひとつあるんです」
 ユキヤが人差し指を立てて、天を仰ぐ。トモキが首を傾げると、ユキヤがポソリと呟いた。
「先輩が、どうやらその人のことを嫌っているんですけど・・・・」
 瞬間、ふつりと何かがトモキの胸の中で芽生える。次の瞬間ニヤリと悪魔の笑みを見せて、トモキがユキヤに言った。
「作品の為なら、あいつも涙を飲むでしょう」
「なんか、トモキ先輩・・・・嬉しそうですけど・・・」
「そんなことはないぞ!なんといっても親友のカオルのため!あいつは今役者としての岐路に立っているんだ。この作品が認められなければ、あいつの役者人生は・・・・」
 カオルの役者人生。はなからそんなものはない。が、なんとなくトモキの熱弁(?)に動かされ、ユキヤも大きく肯いた。
「そうですよね。カオル先輩も、きっといい作品にしたがってますよね!」
 そうそう・・・と言いたげに深くトモキが肯き返す。ユキヤはトモキを窓辺に呼ぶと、グラウンドで練習をしている一部に指を差して言った。
「野球部の一年生、タナカミソノくんです。カオル先輩のこと好きみたいですから、きっと協力してくれるんじゃないでしょうか?」
 だからその好きは普通の好きじゃないんだってと言っても、きっとユキヤには分からない。そして、その好きの意味を明確に理解しているトモキは、緩む口端を押さえつつ、グラウンドで練習をしている丸刈りを見下ろして言った。
「へぇ〜。そうなんだ〜」


 さぁてどうなる、撮影絶好調!?