***As I grew up***
大澤は会場で来客者名簿を見ながらため息をついていた。
嫌な予感というものは大抵当たる。しかも嫌な度合いが高ければ高いほど、よく当たるのだ。
今まで『マー○ィーの法則』とやらを馬鹿にしていた大澤も、今ばかりは「ごめんなさい」という気分だった。
とりあえずカナメに連絡をしたので、あとはなるようになるのだろうけど、それにしたって・・・・。
いつになく弱気な大澤。控え室の中で煙草の煙と同時に深いため息をつく。と、胸に入れていた携帯がブルブルと震えた。
「はい」
「あ、ヨッさん?一ノ蔵です」
「あぁ、珠ちゃん」
電話の向こうから聞こえて来る幸せオーラの声。あぁ、そういえば『お済み』なんだったっけ?と声の中に見え隠れする「ラ〜ヴ」の文字に、大澤は、つい微笑。
「今日の一八さんのパーティって、忍さん来るんですか?」
そんなの本人に聞けばいいのに・・・と思わず首を傾げる。イチイチ大澤に電話して来るのは、片想い時代の名残りか?
「あぁ、来るって・・・さっきカナメにも確認したから間違い無いと思うけど。珠ちゃんは?」
すると、特にウキウキという過剰反応も見せずに、一ノ蔵は返した。
「なんか上司のお供で行く事になりそうです。ヨッさんは、もちろん来るんですよね?」
「おかげさまで、もう会場に居るよ。いらん仕事まで押し付けられてな」
今晩のことを考えると、既にちょっとげんなり。仕事とプライベートと。どう考えても荒れる。
苛立ちという名のマウスピースを咥えているような大澤に、一ノ蔵の中の疑問が首をもたげる。聞くべきか、否か?
「あの〜・・・ヨッさん・・・・?」
「ん?なんだ?」
明らかに声のトーンが変わる一ノ蔵に、流石の大澤も雰囲気を察する。
なんだなんだ?やって翌日に忍とケンカでもしたか?それとも、三こすり半で情けない思いでもしたか?・・・・・そういう話なら、ちょっと聞いてみたい(←悪魔)。
「その・・・・最近うちの西川と連絡って取ってますか?ぶっちゃけた話、続いてるっていうか・・・・」
なんじゃそりゃ?と、大澤の胸に浮かぶ疑問符。どうして・・・そんな?
「いいや、あれ限りだけど。どうして?」
あれ限り・・・。なんていさぎの良い台詞と、一ノ蔵は思う。その言い方に、そういうことが初めてではないんだなぁと暗黙の了解で察した。
「いえ、それがね。変な話を聞いたので」
「変な話?」
なかなか本題を切り出そうとしない一ノ蔵に、大澤が焦れる。言い出しにくい話だということは分かるけど、今の状況的にはさっさと話して欲しい。
「彼が、どうかしたの?」
くわえ煙草を揺らしながら、片手でコップに水を入れる。元の席に戻ってコップを置くと、短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
「それが・・・・忍さんのことを気に入ってしまったらしく・・・・」
話している一ノ蔵自身、確信の無い話なのか、どこか頼りない声。が、口に運んだ水をゴックンと音がするほど慌てて飲み込むと、大澤が目を丸くして言った。
「なんだってぇ?」
「ちょっと前に、忍さん・・・俺の会社まで来たことがあって、その時にうちの西川とばったりあったらしいんですよ。で、その時にどういう経過か、忍さんが西川をひっぱたき、それで西川が忍さんに惚れたとかなんとか・・・・」
「叩かれて惚れるっつーのも、かなり古典的だなぁ」
脚を組んで細かく肯く大澤。電話の一方では、そういえば、なんで宮坂が西川をひっぱたいたのか、今も理由を知らないなと一ノ蔵が思っていた。
「はぁ。だもんで、ヨッさんと続いててそういうこと言ってるのかな・・・と」
「ふぅ〜ん、なるほど。でも俺は今、試乗キャンペーン中だから。誰とも続けてないんだよね」
試乗キャンペーン。どういう意味かよく分かるだけに、大澤ってばやっぱりすごいと思う。一ノ蔵は小さくため息をつくと、納得して返した。
「そうですか。・・・どうなんだろう。マジかな?」
「さぁな、そればっかりは本人のみぞ知るっつーことだし。向こうも試乗キャンペーン中なら、とりあえず試したいとか思うかもしれないしな」
とりあえず試したい。なんとまぁ直接的な・・・と一ノ蔵はなんとなく恥ずかしくなってしまう。いや、身に覚えが無い訳ではないけれど、宮坂がいる今となっては考えも及ばない。
「そうっすよねぇ・・・。じゃあ、俺の方ももうすぐ出ると思いますんで。係長と一緒に後程伺います」
「あぁ、噂のせまり係長?」
くくっと笑いながら言う大澤に、一ノ蔵が苦笑い。
「いや、マジで勘弁して下さいよー」
「でもカタついてんだろ?良かったな」
そう。言われてみれば、その係長がいなかったら宮坂とは出会ってなかったのだ。そう考えると、実は係長のおかげ?・・・・う〜む、やっぱり苦笑い。
「じゃあ、今日はよろしく」
「はい。じゃあ」
プツッ。携帯を切って新しい煙草に手を伸ばす大澤。しかし、火を点けない煙草を綺麗なクロスのかけられたテーブルの上で転がすと、名簿から顔をあげて息をついた。
西川が宮坂に懸想した・・・となると?
どう出て来るかな?と大澤は考える。まぁ、どうするにせよ今晩だけは勘弁してくれよ・・・と祈るような気持ちで煙草に火を点けると、ため息と共に白い息を吐き出した。
***As I grew up***
「子規くん。あっちじゃないかな?」
ホテルのロビー。大学生らしき青年が小走りに前を行く少年を引き止める。くりっとした大きな瞳の茶髪の少年は、立ち止まり振り返ると自分の方向とは逆の方向を指して返した。
「え?あっち?」
「うん。バンケットホールはあっちみたいだし。ほら、あそこに表示があるよ」
後ろからマイペースで歩く青年の方は、全く焦る様子もなく、微笑すら浮かべながら(←というか天然笑顔?)周囲を眺めている。
「尚也、ここに来たことあるの?」
立ち止まった少年は、方向転換しながら結局青年の隣りに並ぶ。尚也と呼ばれた青年は、何気なく少年を促しながら宴会場の方へと脚を動かした。
「うん。ちょっとね」
***As I grew up***
優雅にドレスの裾を翻し、汚れひとつ無い絨毯の上をハイヒールで進む。
演技派の大女優として知らぬもののいない菱川黎子は、今日も翳りのない笑顔でパーティ会場に現れた。彼女の傍らに仕えるのは、彼女のエスコート役の愛人・竜神利人。パーティの質を考えてか、今日のいでたちは二人ともシンプル。豪華さよりも知的さを重んじた服装は、決して奇抜なものではないのに、何故か周囲の目を引いた。
「黎子さん、どうします?今日はフル出場?」
利人は時計にちらりと目をやって囁く。映画の撮影が終わったばかりでちょうど一息つきたかった黎子は、う〜んと小さく悩んで短く返した。
「出てから考える」
「かしこまりました」
気が向いているのかいないのか、一八出版にはデビュー当時に随分とよくしてもらった恩がある。社長とも妙に馬が合うというか、それだけに本当はパーティ会場でなくバーかなにかに行きたい気分だった。
「社長ともちょっとご無沙汰だったからねぇ。話せるようなら長居してもいいけど、どうだろうなぁ・・・・」
菱川黎子ともなると、一目一言交わしたいという人間も少なくない。それだけに、本人にとって本当に話したい人間とは話せないこともしばしば。そこのバランスを取ってつまらない話を中断させるのも利人の役割であった。
「どっちにしてもまだ時間があるみたいだけど、上で一服?それとも・・・」
「そうねぇ。いっそのこと部屋取ってみる?スイート空いてるかな?」
立ち止まり、あまりにもあっさりと言う黎子。利人はそんな女王様の気まぐれにも慣れているのか、黎子をロビーのソファに座らせると余裕の笑顔で言った。
「じゃあ、しばしお待ちを、女王様」
***As I grew up***
カナメの運転する車の中から、宮坂はぼーっと街並みを眺める。道の向こうを歩いて行く学ラン姿の中学生を見つけると、なんとはなしに目で追った。
カナメが中学時代の話を一ノ蔵にしたことは聞いている。
「でも、アタシ達の出会いの話とかはしてないわよ。アタシとヨシの話だけね」
カナメはそう言って笑ったが、宮坂は返事代りの微笑みを見せるだけでそれ以上は笑えなかった。
時に、自分の過去を説明しなくても分かってくれている友人がいるということは、幸せなことかもしれない。説明したくないけれど話す必要があるかもしれないと思うことが、一ノ蔵に対してあるだけに、特にそう思う。別に大澤やカナメに代りに言ってもらおうという訳ではないけれど、誤魔化したくなってしまう弱い自分を振り切れるのも、この二人が居るからだと思った。
生きてるその瞬間を、すべてだと感じていた。だからこそ、無鉄砲だったと思う。今の自分がその場にいたら「ばかだなぁ」と言ってしまえることも、その時はすごく真剣に悩んだし、傷ついた。それがあってこその、今の自分だとも言えるほどに・・・・。
ただ、後悔してないとも言えないし、この年になってもまだ、分からないことだらけ。あれは、一体何だったのかと。
『俺がいなけりゃ、生きていけねぇんだろ?』
もう顔も良く思い出せないのに、彼の声や台詞のひとつひとつは今も鮮やかに思い出せる。
『本当に危なっかしいな、お前は』
煙草の煙を吐き出しながら笑う癖。決して紳士ではなかったし、決して落ち着かせてはくれなかった。
皮肉ばかり言って、誰彼構わず傷つけようとしていた。そう、宮坂さえも。
なのに、嫌えなかったのは何故だろう。
あの頃、宮坂の世界には、そんな彼しかいなかった。
***As I grew up***
滝口は流れる汗を拭いもせずに、人込みを掻き分けて相手の肩を掴んだ。
乱反射するライトの中、足元暗いダンスフロアで大澤は振り返る。そこに滝口の姿を見て取ると、なんだ?という顔で首を傾げた。
耳に痛いほどの音楽が鳴り響く。
滝口は口を開くこともせずに首だけで大澤を促すと、人の波を抜けて行く。大澤もそれに続くと、音楽が遠のいたカウンター脇で滝口が振り返った。
「なんだよ。不干渉条約だろ?」
例の一件以来、大澤と滝口は、お互いには一切干渉しないという協定を組んでいた。それというのも、二年生になっても同じクラスになり、席は隣り。これでクラブに来ても一緒だなんて洒落にならない。おまけに、二人ともがお互いに知られたくない秘密があったから・・・。
「アタシだってそんなこと分かってるわよ。でも、ちょっとマズイ」
「なにが?」
腕を組んでため息をつく滝口を、大澤はまっすぐに見返す。そういえば、こいつがオトコと居るところって見たことが無いな・・・と大澤は思っていた。
「さっき、VIPルームに入って行ったの」
「誰が?」
さっさと話せと言わんばかりの大澤。滝口は大澤の苛立ちを感じながらも、どう話していいのか分からずに、再び小さなため息をついた。
「宮坂・・・だっけ?あの子。ほら、あんたの斜め後ろの席にいる」
「はぁ?宮坂?嘘だろ?」
大澤は耳に届いた名前に目を丸くする。宮坂というと、クラスの中でもおとなしいというか・・・物静かな方である。だが決して、目立たないとは言えなかったけど・・・。
「あの顔、見間違える訳ないでしょ?おんなじ学ラン着てたって目立つんだから、こんなとこで私服着てたら嫌でも目立つわよ」
滝口の言うことももっともだ。宮坂忍は、変な意味で妙に目立つ。黙っていても視線が行くというか、存在感があった。その理由の半分以上を、その整った容姿が占めていることは言うまでもなかったが。
「マジであいつが?VIPルームに?」
大澤はまだ信じられないといった顔で滝口を見返す。滝口は、すぐに信じない大澤をひと睨みすると、吐き捨てるように言った。
「オーナーに確認させてもらったんだから、間違いないわよ」
と、今度は大澤の眉がピクリとあがる。
「確認って?」
「セキュリティカメラ見せてもらった。あ、これは内緒だからね」
相手に信じさせたい気持ちと、自分の秘密はばらしたくないという気持ち。その二つが交錯し、なんとも中途半端な説明になる。が、大澤はとりあえず信じたらしく、それ以上は突っ込まずに言った。
「・・・で、なんでマズイんだよ。別に、俺らだってここに居る訳だし。あいつがあいつの仲間とつるんでるんなら、干渉する必要なんかないだろ?」
「バカ。その仲間が問題なんじゃない」
なんでバカ呼ばわりされなければいけないのかと、大澤がちょっとムッとする。が、次に滝口の口から出た言葉に、そんな気持ちもフッ飛んだ。
「宮坂の肩抱いてた男。下手なヤクザよりもタチが悪いわよ」
***As I grew up***
「あれ?先輩まだ居たんですか?」
中山の声に一ノ蔵が振り返る。一ノ蔵は曖昧な笑顔で返すと、鞄を持ち直して言った。
「いや、係長とは現地で待ち合せになったんだ」
「にしたって、もう出ないとマズイんじゃないですか?」
「そうなんだけど・・・」
なんだか分からないけど胸をよぎる不安感。総務だから、今日西川がなにをするということは無いだろうし、係長だって仕事絡みの状況でなにかをしてくるとは考えられない。取り越し苦労だということは分かっているものの・・・なんだろう?(←野生の勘)
「じゃあ、俺行くわ」
「官能美人によろしく」
コーヒー片手に笑顔の中山。どうして宮坂に会うことが分かるのだろうか?(←そりゃ分かるでしょう)
「あぁ。なにかあったらすぐに電話してくれ」
「先輩の方が、なにかありそうですけどね」
爽やかに返して来る割にはチクチクと痛い。一ノ蔵は大きな手で軽く胃を押さえると、念のために聞いた。
「お前、今日は残業?」
「はい。寺島さんにパソコン教えてもらうんです。あっちの方にいますよ」
「ふぅん」
そのせいか、妙に機嫌がいい中山。一ノ蔵は一度歩きかけて立ち止まり、力無く振り返ると言った。
「中山」
「はい?」
首を傾げて返す中山。苦労の無い顔だなぁ・・・と一ノ蔵は思った。
「何かあったら、電話してもいい?」
***As I grew up***
利人は部屋の鍵を開けると、黎子を中へと促した。景色の良い最上階のスイート。黎子はリビングのソファに座って遠くに視線を投げた。
「何か頼みます?」
「うーん、パーティの後でいいわ。そういうことよりも、なんかこう・・・・足りないのよねぇ・・・」
腕を組んで目を閉じる黎子に、利人が眉を上げて微笑む。またいつもの退屈病が始まったらしい。
「次の仕事まで余裕があるなら、旅行にでも行きますか?それとも近場でゆっくり?」
利人は黎子の斜め向かいに座りながら、黎子の表情を読む。と、その時部屋のベルが鳴った。
「誰かしら?」
「ちょっと待ってて下さい」
利人が立ち上がり、覗き穴から外を見る。そこにいたのは、見たことも無いスーツ姿の男だった。
念のためチェーンをつけたままドアを開ける。すると、スーツ姿の男が利人の方を向いた。
「突然失礼します。私、一八出版の大澤と申しますが、こちらは菱川様のお部屋でよろしいでしょうか?」
背筋のスッと伸びた一見好青年である。利人は、社員証を見せて話す大澤をじっと見つめて返した。
「ちょっと待って下さい」
一度ドアを閉め、チェーンを開ける。再びドアを開けると、今度は利人が外に出てドアを閉めた。
「お待たせしました。菱川の友人の竜神です。なにか御用でしたら代りに伺いますが」
その瞬間、大澤は利人から匂う何かを察していた。要は「うわー、こいつ。同類くせー」ということなのだが。
「そうですか。実は菱川様が急にお部屋を取られたというお話を伺いまして、具合でも悪くされたのかと」
あくまでも好青年の仮面を崩さない大澤を見ながら、利人も微笑を崩さない。マスコミ関係ではないことを悟ると、話半分。大澤のスーツの趣味やらコロンの趣味やらをチェックして、クールに返す。
「あぁ、ご心配には及びません。早く来過ぎてしまったので、控え室代りに取っただけなんです。社長が、大澤さんに確認するようにと?」
「いえ、あくまでも私個人の判断です」
大澤は、ゴシップ程度の知識でなら竜神利人を知っている。菱川黎子の若いツバメということらしいけど、これはちょっと違うな・・・と踏む。それにしたって、年下なのに妙に出来上がった雰囲気。こいつは何者だ?
「そうですか。それはお気遣いありがとうございます」
利人は利人で、大澤のことをじっくり観察している。大澤自身は自分の好みではないけれど、良い趣味をしてるなと感心。
「では失礼いたします。お休みのところ、申し訳ありませんでした」
「とんでもない、では後程」
一礼をして去る大澤の後ろ姿を見ながら、利人が部屋に戻る。大澤は、絨毯敷きの廊下を歩きながら「こりゃ面白い」とニンマリ微笑んだ。
***As I grew up***
「やっほー!来たよん!」
パーティ会場に来たカナメが、受け付けの端にいる大澤の元に軽快な足取りで近寄る。大澤は待ってましたと言わんばかりの顔でカナメの肩を掴むと、受け付けから少し離れた所にへそ出し姿のカナメを引っ張った。
「忍は?」
「今来る。なんかね、来る途中で様子がちょっと変になって・・・」
「変?どうしたんだよ。車に酔ったか?」
ヒソヒソ声で眉を寄せる大澤。カナメはうーんと視線をくるりと回した後に返す。
「そういうんじゃないと思う。あれは、考えゴトしてる顔だね。珠ちゃんに中学時代の話したっていうトコから、ちょっと黙りだしたから」
「中学時代って・・・変な話したんじゃないだろうな?」
「やぁねぇ。アタシとあんたの話しかしてないわよ。あ、でもあんたが大学生のオトコ相手に初体験すませたって話はしたかも(←おい。しかも人のことだけ話してるし)」
「お〜ま〜え〜な〜〜!!」
ゲンコツをフルフルと震わせ、大澤がカナメを怒りの目で見つめる。と、その怒りを逸らすように、カナメが自分の格好を見せて言った。
「あ、ほらほら、動き易い格好!こんなもんでいいっしょ?」
大澤は、嬉しそうにくるりと回るカナメを上から下まで見る。たわわな胸の下のラインを惜しげも無くさらした上に、シースルーのボレロを羽織り、下はそれに合わせた白のパンツ。へそのピアスは綺麗なガーネット。白を基調に赤を差し色にしたコーディネートだ。
大澤は、悪くはないけど・・・と思いながら肯いてみる。が、顎に手を沿えると、あっさりと返した。
「お前・・・それ、走ったら乳首飛び出すんじゃないか?」
「う〜ん。出るかもね」
カナメの方もあっさりと返す。
「ま、いいか」
が、大澤もカナメの露出には慣れているのか、大した心配もせずに納得。カナメもうんうんと肯いた。
「で、どうしたのよ。これから何があるっていうのさ?」
大澤につられたのか、腕を組んでカナメが真剣な顔をして見せる。大澤は核心をついた質問に、小さく息を漏らした。
「・・・・・・・・・・アイツが来る」
呟くように言われた言葉に、一瞬カナメが目を見開く。が、イマイチ実感が持てなかったらしく、目を細めて聞き返した。
「アイツ・・・・って、まさか・・・・アイツ?」
大澤は黙って、深い肯きで返す。と、カナメが大澤の目を見つめたまま大きく口を開いた。
「なんで!?」
「それは・・・・」
「芳之?滝口」
大澤が言いかけた時に、背後から宮坂が現れる。ビクンと跳ねるように振り返った二人は、焦りの笑顔を浮かべて言った。
「忍。来たのか」
「あ、しいちゃん!買えた?」
カナメの問いかけにアイボリーのスーツを着た宮坂が小さな紙袋を振って答える。すると、大澤がここぞとばかりに聞いた。
「なに買ったんだ?」
「目薬。なんかコンタクトがゴロゴロして気持ち悪くってさ」
話を逸らす口実なのだが、そこは宮坂、疑いもせずに返す。
「大丈夫か?」
「うん。多分、目が疲れてるだけだと思うから」
「そうか、無理するなよ。じゃあ、受付け済ませて中に。俺も後で行くから」
大澤の誘導で、宮坂とカナメが移動をする。二人の姿が消えると、大澤は次に捕まえなければいけない相手のことを思って、ため息をついた。
「大澤さん」
「え?」
突然、隣りに立っていた受付けの女の子が声をかけて来る。大澤は社内営業用の笑顔で顔を向けると、あくまでも爽やかに言った。
「なに?」
「噂には聞いてましたけど、今の方ですよね?」
意味ありげな笑顔で大澤を横目で見て来る。大澤は「へ?」と思いながら首を傾げた。
「大澤さんの、恋人」
「はぁ!?」
噂には聞いていたって、どんな噂だよ、と思う。が、大澤にとって次の彼女の台詞は、更に驚くべきものだった。
「滝口さんっておっしゃるんですか?迫力のある美人ですよね〜」
あ・・・カナメ・・・ね(←そりゃそうでしょ)と、ちょっぴり肩の力が抜ける。と同時に、一瞬宮坂のことかと思った自分の腐れ具合に思わず笑ってしまった。
***As I grew up***
「それ嘘」「DJ」からの客演あり(苦笑)。
これもひとつのリサイクル?上手く絡んでくれたら御愛敬。
っつーか、新しい名前考えるのも大変になってきたのですよ・・・(^^;)