「被団協」277号−2002年2月

主な内容
1面 米の核体制見直しへの抗議  在外被爆者に法適用を
2面  原爆症認定裁判   「集団提訴」   平成14年度予算  「核かくしかじか」
3面 都道府県だより 吉永小百合さんチャリティーコンサート・朗読会
4面 相談のまど

米核体制見直しに抗議 

 米・国防総省は1月9日、「核戦略総合見直し計画」の概要を発表。@核および通常兵器の攻撃システム、Aミサイル防衛など防衛システム、B新たな脅威への即応能力を高める防衛基盤の再活性化――を三本柱とする新たな核戦略方針を打ち出しました。2年後にネバダで地下核実験を再開する可能性も示唆されています。
 この「核戦略見直し」計画は、テロや「ならず者国家」の脅威に対処するためと称していますが、本音は、他国の核兵器の無力化と、使いやすい新たな核兵器の開発にあるとして、大きな波紋を呼び起こしています。

 世界支配へつき進むブッシュ政権

 米ブッシュ政権は就任直後から、CTBT批准棚上げ、ミサイル防衛計画推進、ABM条約離脱など、核兵器廃絶の方向に逆行する政策を強引に推し進めています。今後は米ソ冷戦時代のような戦略ミサイルを主軸にすえた大掛かりな軍備を整理しつつ、局地戦でも使いやすい小型の核兵器(たとえば地下貫通型核爆弾など)の開発・配備に、いっそう重点が移されると予想されます。
 テロ事件に対するアフガニスタンへの「報復戦争」でブッシュ政権は、クラスター爆弾、燃料気化爆弾などの無差別大量別殺りくを生み出す残虐兵器を平然と使用しました。「核戦略の見直し」には、これらの高度化する「通常兵器」と新たな核兵器によって軍事力の圧倒的優位を確立し、一国世界支配の体制を作り上げようという露骨な狙いがうかがえます。  抗議声明

 「抗議行動旬間」 日本被団協が提起

 日本被団協は、米政府に断固抗議するとともに、2000年5月のNPT再検討会議でアメリカ自身も認めた「核兵器廃絶の約束」を守ることを強く要請。3月1日から10日までを、この問題での「全国いっせい抗議行動旬間」とすることを代表理事会で決め、行動を呼びかけています。



在外被爆者に平等な法適用を

 韓国に帰っても健康管理手当は継続支給されるべきだと訴えていた韓国人被爆者・李康寧さんに、長崎地裁は12月26日、「被爆者の地位は(日本からの)出国で失われない」として、国に手当をうち切った分103万円の支給を命じました。
 在外被爆者に「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」の適用を認めたのは、昨年6月、大阪地裁の郭貴勲訴訟での判決についで2件目。
 判決は、現行法について「根底には国家補償的な配慮があり、在外被爆者に不利益となる限定的な解釈はすべきでない」とのべています。
 李さんは長崎の三菱兵器大橋工場で被爆、94年7月に被爆者手帳と健康管理手当を取得、9月に釜山に帰国して手当を打ち切られました。

 「控訴するな」と座り込み

 判決の翌27日、李康寧さんと長崎からの支援者と日本被団協は、厚生労働省前で「国は判決に従い、控訴するな」と寒風をついて座り込み。行動は1月7日にも行なわれました。
 しかし厚生労働省は1月8日、福岡高裁に控訴しました。控訴理由は、@健康管理手当を原爆医療と切り離して支給するのは制度になじまない、A現行法が可決されたとき、在外被爆者への支給を盛り込んだ修正案が否決されている、B広島地裁は現行法は国内でのみ適用されると判決している――というもの。

 日本被団協は控訴に抗議

 日本被団協は控訴について事務局長 談話 を発表し、「被爆者が国外に居住するすることで受給の権利を奪うことは、法の趣旨に反する」「国はすべての被爆者に援護施策がおよぶよう、現行法を国家補償の法律に変えることをあらためて要求」しました。

 郭貴勲裁判の第3回控訴審は2月5日、大坂高裁で開かれます。



【原爆症認定裁判】

 東裁判 齋藤医師が証言

 東京に住む被爆者・東数男さん(72歳)が、肝機能障害で原爆症認定を求めている裁判の第13回口頭弁論が12月20日、東京地裁の大法廷で開かれました。この日は、広島で被爆者医療に取り組んでいる齋藤紀・福島生協病院長が証人に立ち、130人が二交代制で傍聴しました。
 齋藤証人はあらかじめ「意見書」を裁判所に提出しており、東側弁護団はまず、「この意見書はなぜ書いたのか」と質問。齋藤証人は、「国側の主張は、被爆者の実情とかけ離れ間違っているからだ」と答え、その誤りを丁寧に証言しました。
 東さんは被爆直後にアメリカ占領軍やABCC(原爆傷害調査委員会)の診断を受け、発熱、脱毛、血性下痢、白血球減少などの急性放射線傷害に苦しんだことが記録として残っています。
 齋藤証人は、この診断書を分析し「細菌感染への抵抗力は落ちていた」と述べ、東さんの障害が放射線よるものであることを明らかにしました。
 次回は3月15日、沢田昭二・名古屋大学名誉教授が証言します。(東友会)

 安井裁判 支援連絡会の総会開く

 北海道の安井原爆訴訟支援連絡会は1月11日、札幌市内で2002年度総会を開きました。
 総会では、弁護団長から裁判の現状・到達点について、前回までの準備書面で被爆状況を詳細にし被爆線量の検証を行なったこと、低線量被爆とガン発症の関係、前立腺ガンの特徴等を明らかにしたことなどが報告されました。今後の課題については、証人の採用、前立腺ガンと被爆の因果関係の医学的補強、新たな認定基準への批判的検討などが述べられました。
 また、支援署名10万筆の早期達成、支援連絡会の組織強化・拡大、集団提訴が動き出した際の対応などが議論されました。(北海道被爆者協会)



「集団提訴」に向け動き

 原爆症認定の「集団提訴」に向け、各地で様々な動きが生まれています。
 広島では12月17日に「被爆者援護法研究会」が開かれ、日本被団協と内藤雅義弁護士から、集団提訴について提案を行ないました。研究会には二つの広島県被団協・相談所の代表、弁護士、医師、研究者、ソーシャルワーカーなどが参加。今後新たな認定申請、再申請を行ない、現在異議申し立て中の事例と合わせて、提訴に取り組むことになりました。
 東京では1月17日に「原爆症認定・集団訴訟のための懇談会」が開かれました。東友会、医師、弁護士、民医連などから20人が参加し、内藤弁護士の報告を受けて集団提訴に向けた認定申請者の発掘などに取り組むことになりました。



平成14年度被爆者対策予算案

 平成14年度被爆者対策費が、厚生労働省から発表されています。これによると、総額1632億4,200万円で、昨年より25億7,300万円の減額となっています。減額の主なものは、対象者の減少のよる諸手当・医療費の減。諸手当額は、今年度も昨年度と同様、据え置きとなっています。
 特徴点は、在外被爆者支援事業として新たに5億円を計上。しかしこれは、「在外被爆者に現行法の適用を」という要求には応えず、渡航費用・治療費の援助などに当てるものです。また、長崎の被爆未指定地域を健康診断特例地域に指定して、健康診断実施のため2億6,000万円を盛りこみました。

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