プノンペン旅行情報メモ
カンボジアの首都プノンペンは欧米人を中心に旅行先として人気が急上昇しているらしいのですが、観光地としてはまだまだ発展途上という感じを受けます。そんな未熟ぶりも含めて、最新の情報を経験した範囲でまとめてみました(2017年9月現在)。内容に責任はもてないので、あくまで自己判断のうえ、ご利用ください。

■プノンペンは旅行先としてどうなのか?
日本人が個人旅行するのに便利な環境は少しずつ整ってきています。全日空(ANA)が昨年秋から成田発着の直行便を運航しており、6時間弱で行き来できるようになりました。しかも、繁忙期でなければ往復6万円前後で購入できます。加えて、2015年6月にオープンした東横インと、その前年にできたイオンモール(東横インから徒歩圏内)の存在が大きいですね。「海外に行ったらできるだけ日本と離れた生活を送りたい」と考えるような偏屈な人を除けば、この2カ所をベースにプノンペンの町を楽しんだほうが「快適・便利・安全・安心」だと思います。

プノンペンの東横インは、ネット上では「日本のビジネスホテルそのまま」なんて書かれていますが、そんなことはなく、国内よりは少し上のランクのホテルになっています。たとえばバスタブの大きさ(容量)は2倍近くあり、お湯を溜めるだけでも時間がかかるほど。待てない僕はずっとシャワーでした(笑)。その他、気づいた点を挙げておきます。この内容で1泊35ドルほどですから、個人的にはかなり満足できました。なお、予約は公式サイトから行ったほうがいいです。現地でチェックインするときに会員になればその場で割引されます。
・客室内にはWi-Fiだけでなく有線LANも来ているので、いろいろ安心です。ただし、これはカンボジア全体の問題なのか、調子が悪いと速度は200kbpsほどしか出ません(最高だと1000k前後)。
・トイレが洗浄機付きなのは海外では画期的!
・ANA便と連動した空港への送迎が無料で付いています。ただし、迎車は16時には出発してしまうので、入国手続きに時間がかかると間に合わない可能性があります(係員やチェック用の機械がかなりトロく、旅行者1人が通過するのに5〜10分かかります。僕は日本でビザを取っていたにもかかわらず、ぎりぎりでした)。心配な人は、事前に「確実に行くから待っていてほしい」と伝えておいたほうがいいかもしれません。
・朝食はあたたかいおかず4品、サラダ、ごはん、おかゆ、パン、サラダ、果物と、けっして豪華ではないものの充分な内容です。おかずは毎日変わるので飽きませんでした。
・客室内の冷蔵庫は利きがよく、ペットボトルを凍らせて持ち歩けるほどで、暑い場所だけに重宝しました。館内には無料で使える洗濯乾燥機やウォーターサーバーなどもあり、設備はかなり充実しています。
・1階ロビーのバーや最上階のしゃぶしゃぶレストラン&バーではビールが1ドルで飲めます。ただし、町中ではカンボジア産ビールを2缶1ドルほどで売っているので、まとめ買いして部屋の冷蔵庫で冷やしておけば、もっと安いです。ちなみに、ホテルの近くではイオンに向かう道の最初の角を右に曲がって左側に小さな食料品店があり、愛想のいい店主から買えます。
・プノンペンはもともと北のほうが中心だったので、南側の東横インは街外れのような印象を受けますが(そう書いている人もいる)、今、若い人や外国人が集まっているのはこっちのほうなので、むしろ賑やかなエリアに近いです。旅行者向けの店が多いボンケンコンや注目の人気スポットであるバサック・レーンは徒歩圏内ですし(夜は気をつけましょう)、プノンペンでもっとも若者が集まるという夜市Jet's Container Night Marketはホテルから1ブロックしか離れていません(ここはすごく盛りあがって楽しそうなのですが、冷房がないので暑いのが弱点)。
※東横イン@プノンペンの公式サイト
https://www.toyoko-inn.com/search/detail/00251

■イオンモールが「頼みの綱」
2014年に開業したイオンモールは、プノンペンで最大かつ最高級のショッピングセンターとして大人気です。そして旅行者にとっても、ほとんどの用事を安全かつ快適に済ませることのできる貴重な施設だといえます。まず、大きなスーパーマーケットがあり、ここを1周すればカンボジアで売っているものはだいたい把握できます。価格も、他のスーパーや市場と比べて、せいぜい1.5倍程度なので、安心代が加わっていると思えば、そんなに高くは感じません。

イオンモールで特筆すべきは食事施設の充実ぶりでしょう。安いほうから紹介すると、スーパーレジ前のフードコートは町中とほぼ同じ値段なのに清潔で冷房も効いているのですから、天国みたい(笑)。ここだけでカンボジアの代表的な料理はだいたい食べられますし、丼や寿司などの和食もあります。びっくりしたのは、天ぷらそばがわずか2ドルだったこと。思わず注文してみたところ、味はカップ麺とどっこいどっこいというレベルでしたが、一応、エビ天が入ってました(すっごく小さいけど)。

1階のフードコートは安くていいものの、いつも大混雑なので、人混みを避けたければ3階のフードコートに行ってください。カンボジア・シンガポール・ベトナム・インド・中華・西洋料理、デザート&ドリンクなどのブースがあり、1食4〜10ドルくらいでちゃんとした食事ができます。ここは、ゆったりしていて景色もよく、長時間、休息してても何も言われないので、パソコンなどで作業するにも便利ですね(イオン内はフリーWi-Fiあり)。

その他、モール内に本当にたくさんのレストランがあり(和民からドイツ風ビアホールまで)、とにかくイオンに逃げ込めば生活はなんとかなります。ちなみにダイソーなどの百円ショップも2軒進出していて(価格は1.9ドル)、品揃えは日本と同じだから、必要なものがあったときには重宝します(爪切りや耳かきを買うとか)。
※イオンモール@プノンペンの公式サイト
http://aeonmallphnompenh.com/

イオンモールはすっかり地元に定着し、2号店ができるといった話もあるくらいですが、ANAと東横インに関してはそれほど大人気というわけでなさそうなので(ホテルの空港送迎は往復とも僕1人でした)、もしかすると撤退も考えられます。そうなると一気に不便になるので、プノンペンに興味がある人は、今がチャンスかもしれません。

■プノンペンの観光に関して
話は前後しますが、プノンペンではどこでも米ドルが通用するので、カンボジアの通貨であるリエルに換金する必要はまったくありません。むしろ、お釣りでもらうリエルの処理に困るほど。慣例的には4000リエル=1ドルなので、僕は4000リエルずつ貯まるごとに小分けし、1ドル札代わりに使うようにしていました。

見るべきところは非常に少ないです。はっきり言っちゃうと「王宮とシルバーパゴダ」「ワットプノン」「国立美術館」「トゥール・スレン博物館」「キリング・フィールド」の5カ所と市場くらい(ワットプノンはかなりしょぼいので4カ所でも充分です)。なので、1週間もいた僕は、ひたすら退屈してました。まさかこれほど何もないとは……。

ただし、人類の負の遺産であるトゥール・スレン博物館とキリング・フィールドは、歴史や社会に関心がある人なら一度は訪れるべきでしょう。注意すべきは、この2カ所は相当に落ち込むので、そのあと、半日ぐらいは楽しい気持ちにはなれないということです。僕はポルポト時代に関する本をけっこう読んでいて、それなりの免疫があったつもりにもかかわらず、かなりショックを受けました(すでに30年近く経っているのに、あまり風化してないです)。通常の観光ツアーの場合、プノンペンは「アンコール・ワットのついで」に行くところなので、せいぜい1日しかかけず、トゥール・スレンとキリング・フィールドを駆け足で回ったあとに、「市場でおみやげを探してからレストランでカンボジア料理を楽しんでいただきます!」なんて脳天気なスケジュールが組まれているのですが、あれって気持ちの切り替えは大丈夫なのかなあ。

公共交通機関がほとんどなく、流しのタクシーも少ないプノンペンでは、移動の足は基本的にトゥクトゥク(バイクで引っ張る馬車みたいなもの)になります。相場は近距離(2キロぐらいまで)で3ドル、それ以上の中距離で4ドルといったところです。実は地元民価格はこれより1ドル程度安いのですが、ホテルなどで客待ちしているドライバーの場合はこのあたりで納得してあげるのが「ぼられる側」のマナーだと思います(そこで待っていてくれるんだし、旅行者の行きたいところはよく知っている便利な存在です)。しつこく交渉すれば地元民価格までもっていくことは不可能ではありませんが、手間もかかるし、時間がもったいないので、旅行者価格で手を打ったほうがよさそう(一度やったら、ものすごく悲しい顔をされた)。その分、うまく関係を保って馴染みのドライバーをつくったほうが、あとで、いろいろ便宜を図ってもらえます。ちなみに、王宮など観光スポットの前で客待ちしているトゥクトゥクは、最低でも5ドルといった高い値段をふっかけてくるので(10ドルとか言うやつもいる)、そういうときは交渉する必要はなく、他を探してください。そのうち適正旅行者価格を提示してくるドライバーが必ず現れますから、その人のクルマに乗ればいいのです(100メートルほど離れれば地元民価格で乗れることもあります)。

2人乗りで運んでくれるバイクタクシーもありますが、事故のリスクが高いので積極的には勧めません(危ないわりにはそんなに安くない)。

■プノンペンの治安に関して(+スマホSIM情報)
この項目はいちばん説明しにくいです。僕自身は1週間プノンペンの町をほっつき歩いたものの、一度も危ない目にはあいませんでした。しかし、いろいろ情報を集めると、やはり危ないときは危ないようです。

カンボジアという国を一言で説明するなら、タイやマレーシアとは20年以上、ベトナムに比べても10年以上遅れた印象で、要するに「途上国」なのですから、警察力などによる治安維持にはあまり期待できません(町中でも警察官はあまり見ない)。それなのに、僕がなぜ危ない目にあわなかったのかというと、カンボジア人特有の「人の良さ」に守られたような気がしますね。基本的にやさしい人が多いので、いろいろな面で助けられました。しかし、この状況は、あくまで人の善意に頼っているだけですから、もし悪い人がいたら防衛システムは効きません。したがって、やはり、人の目が届かないところを少人数で歩くのはやめたほうがいいと思います。実際、僕も街灯のない暗い町を歩きながら、「今、襲われたらアウトだな」とびくびくしていました。そもそも、暑いプノンペンでは地元の人はほとんど歩かないので、「歩行者=観光客」と思われがちです。なので、足早に通り過ぎるならともかく、同じ場所を何度もうろうろしていたりしたら、襲ってくださいと言っているようなものです。

多くの旅行者向け安全情報では、バイクを使ったひったくりに注意するように促しています。後ろから近づき、バッグを取っていくそうです。実際、そういった場面をみかけることはありませんでしたが、ショルダーバッグは狙われやすいので、やめたほうがいいでしょう(あるいはたすき掛けにして、目を離さない)。リュック(デイパック)については、地元の女の子たちも普通にしているので、一応、安全だとされているようです。それでも、パスポートや財布といった本当に大事な物は入れず、最悪、盗まれても旅行を続けられるものだけにしてください。

少し前の情報では、町中でスマホを出すとひったくられるとか、トゥクトゥクの上で見るのも危ないとか書かれていますが、今は地元の人も多くがスマホを持っているので、そんなに心配することはないと思います。それでも、最新機種は狙われやすいらしいので、安いSIMフリー機を用意し、現地で買ったSIMを入れて使うのが便利で安全ですね。SIMは空港の到着ロビーでも売っていますが、イオンモールの2階の東端、ノジマ電気の中にスマートというキャリアのブースがあるので、そこのほうが落ち着いて買えます。僕は1週間で10ギガ(通話&ショートメッセージ付き)のものを6ドルで買いました(これがいちばん安かった)。どう考えてもオーバースペックで、滞在中、動画をがんがん見たものの、使いきれなかったですね。購入にはパスポートが必要だとされていますが、コピーでも大丈夫です(それを店がコピーするルールなので本物かどうかは関係ない)。設定は向こうでやってくれるので、「言語」を英語にしておいたほうがいいかもしれません(日本語のままでも、店員は自分のスマホと見比べながら、なんとかしてくれる)。

■カンボジア料理に関して
割とおいしいです。資料を読むとカンボジア料理はプラホックという魚を発酵させた味噌状のものを味付けの基本としており、すごく癖がありそうに思えるのですが、これらの調味料は香りよりも主に「うまみ」を増すために使われているので、全体的には日本の「肉野菜炒め」とか「具だくさんスープ」といったさっぱり料理に近くなります。これに合わせる米もインディカ米(長粒米)ではあるもののインドやタイに比べると短く、粘りがあるので、今まで食べてきた「アジア米」のなかではいちばんおいしかったですね。日本人にとっては違和感の少ない味です。

余談ですが、プノンペン滞在中に、一度、タイ料理を口にする機会がありました(イオンモール内のドイツ風ビアホールが、なぜかタイ料理推しだった)。カンボジア料理に慣れてきたところで、あの「辛くて甘くて酸っぱくて……」という味付けに出会うと、ちょっとびっくりしますね。何か、すごくクセの強い料理に感じられる。一応、僕も料理研究家なので言わせてもらうと、タイ料理というのはアジアの中ではものすごく先を走っている前衛的なものだと思います。それに比べて、カンボジア料理はスタート地点からあまり動いていないので、特徴には欠けるものの、「アジアの舌」を持っている人には馴染みやすいのではないでしょうか。

個性的なメニューとしては生の胡椒を具として使った炒め物があります。他国ではまず考えられない贅沢な料理で、イカやエビと合わせるレシピが多く、けっこうおいしいです(少しだけピリピリする)。観光客がよく行くレストラン「クメール・スリン」にもあるので、一度、お試しください。なお、生胡椒はイオンにも売っており、1.5ドルほどで両手一杯分ほど買えます。日本にも持ち帰りは可能ですが、一応、空港で植物検疫を受けてください。
※生胡椒の参考資料
https://moori.musyozoku.com/post-102/
https://moori.musyozoku.com/post-10524/