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V.併用療法 | ||||
ステロイド剤による早期治療、ペースメーカーや抗不整脈剤の進歩により
突然死が減少したが、治療困難な重症心不全を合併する心サ症が顕在化し、今後の
対策が必要である。
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1.抗心不全薬 | ||||
一般の心不全と同様に強心配糖体と利尿剤が基本である。経口薬としてデパノミン
やベスナリノンなども使用されるが治療効果が飛躍的に改善したとはいえない。
ACE阻害剤や硝酸剤による血管拡張療法による治療の試みも始まっており、今後の
予後改善が期待される。いまだに治療抵抗性の心不全が多くみられ、心筋繊維化が
進んだあとでの治療効果が期待できないのも仕方がない。この点から、心筋細胞の
繊維化が広範に起こる前に十分な治療を行わなければならない。
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2.抗不整脈剤 | ||||
心サ症は心室細動や完全房室ブロックのような重篤な不整脈のみならず、心室性期外
収縮、上室性期外収縮などの多彩な不整脈が高頻度にみられ、抗不整脈剤治療を要する
ことが多い。
近年、抗不整脈剤の開発が進みアミオダロン、フレカナイドなどの強力な抗
不整脈剤の使用が可能になったが、詳細は関係の成書を参考にされたい。一剤で治療困難な
場合は多剤併用を行うが心機能抑制作用の少ない薬剤を選択し、催不整脈作用発現の有無に
注意をはらう必要がある。ステロイド剤と抗不整脈剤投薬により改善したかのようにみえても
重篤な不整脈が潜在することがあり、抗不整脈剤治療の継続に配慮をしなければならない。
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3.ペースメーカー | ||||
心サ症は完全房室ブロック、二枝ブロックなど、進行する高度の刺激伝導障害が特徴である。
このためペースメーカー植え込みが頻繁に行われ、長期生存例の増加に大きく寄与している。
心サ症には潜在性心不全が多く、ペースメーカーの選択にあたっては左室流入血流が保たれ
生理的に近いDDDやAVsequentialタイプが望ましい。
ペースメーカー植え込み例の長期予後をみると、心不全を有するものに死亡例が多くみられる。
また、突然死の例にステロイド内服中断例がみられ、ステロイド剤中断により心サ症が憎悪し、
心室頻拍や心不全あるいはペースメーカー作動不良などをきたしたことによるのではないかと示唆され、
注意を要する。
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4.植え込み型除細動器(AICD) | ||||
心サ症には抗不整脈剤で抑制できない心室頻拍や細動のため治療に困窮することがある。
悪性心室性不整脈治療に開発されたAICDの植え込みが米国で心サ症に行われ、心室頻拍ある
いは細動による突然死の抑制に有効であったとの報告がある。
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5.心臓移植 | ||||
早期発見、早期治療が行われつつあるにも拘わらず、難治性の心不全と不整脈による
死亡例が徐々に増加しており、最終的治療法として心臓移植が考えられる。しかし、サ症は
心臓移植の除外対象の免疫異常疾患であり、適用の可能性がないはずであるがスタンフォード
大学で行われ、その後の報告も心サ症に心臓移植を認めていく方向を示した。
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おわりに | ||||
心サ症のステロイド剤治療は早期投与・長期継続が原則であり、早期治療は心病変進行を
抑制するが、心室瘤形成の可能性が残る。ステロイド剤は重症心不全や不整脈の改善をもたらし、
併用治療を加えることにより救命および長期生存が得られる。治療中の心病変活動性の評価は
主に核医学検査によるが、特異性と精度の向上が必要である。心サ症のステロイド剤治療は
長期継続されるが、終了決定の基準は明らかではなく今後の検討が必要である。
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