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U.ステロイド剤の功罪 | ||||||
ステロイド剤早期投与・長期継続は、刺激伝導障害、心室頻拍、心不全の
改善をもたらすが、一般的副作用や心筋繊維化促進による心室瘤形成など合併症
の問題も抱えている。
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1.効果 | ||||||
a.心不全に対して ステロイド剤は心不全に直接的な薬理作用を持たないはずであるが、 改善を認めた報告が散見される。治療初期の強心剤や利尿剤の作用に負うところが 大きいが、肉芽腫消褪による心機能改善への関与も示唆される。いずれにしても、 ステロイド剤を病初期に用いることは肉芽腫を拡大させず、結果的に心不全抑制に 役立つことになる。
b.不整脈に対して 一方、心室頻拍抑制効果も認められるが、抗不整脈剤を併用してもコントロール
困難な症例が多数認められる。われわれはこのような症例の加算平均心電図に頻拍の
基質の残存を証明しており、Holter心電図による観察の継続が必要と考えている。
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2.合併症 | ||||||
a.一般的副作用 ステロイド剤の選択や内服方法を工夫しても長期連用のため一般的副作用の
満月状顔貌、皮疹、多毛などは避けられず、高血圧や糖尿病などの合併防止に
努めなければならない。
b.心筋細胞繊維化 ステロイド剤治療は心病変の進行を抑制して重症不整脈や心不全の改善を
もたらすが、心筋細胞の繊維化は心機能の低下を起こし難治性心不全を生じる
ことがある。ステロイド剤治療による心筋繊維化は、Robertsらが示唆したように
心室瘤形成を促進する危険性があり、心エコー図などによる観察を定期的に
行わねばならない。心室瘤の報告はステロイド剤投与例だけでなく未治療例にも
みられることから、心室瘤形成は一部の症例には避け難いもので、ステロイド剤は
心室瘤誘発の一因子であるに過ぎないとも考えられる。
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