４．サンプリング周波数（アップサンプリング）考察

アップサンプリングによる効果を狙うことを基本に考えたい。PCオーディオにおいては、ソフトウエアでアップサンプリング（CDをリッピングしたものは88.2KHzに。）の方法とD/Dコンバータによる方法、アップサンプリング機能つきのDACを使用する方法など、いくつか考えられる。DACが24bit/96KHzまでサポートしていれば、まずソフトウエアでアップサンプリングさせてみることを推奨する。ただし、その際、PCの環境設定による安定化が非常に重要であり、これが不十分だと音切れなど、逆効果も起こりうる。
当方は、16bit/44.1KHzのFLACファイルを24bit/88.2KHzに再生ソフトウエア（PC内）でアップサンプリングをさせており、CD再生の場合は、トランスポートとDACとの間にD/Dコンバータを接続し、同様に24bit/88.2KHzにアップサンプリングしている。24bit/96KHzのFLACファイルの場合、アップサンプリングは当然不要なので、D/Dコンバータを経由しない接続としている。

PCオーディオを語る上で、避けて通れない議論がデジタルデータのビット長と量子化周波数である。当然ながら、ビット長はなるべく多く、周波数は高いほど、オリジナルのアナログ音源への再現性が増すと考えて良いと思う。昨今はマスター音源と俗に云われている、24bit長の88.2KHz、96KHｚ、192KHzのハイ・サンプリング・レートのデジタルデータが音楽配信サイトにて高価ではあるが、購入出来るようになってきた。では、CDの16bit/44.1KHzとの違いはどれほどあるのだろうか、と云うことになる。ビット長と周波数は例えて云えば「器の話」であり、録音の良し悪しは「中身の話」ということであるが、オーディオに永年親しんできた身にとっては、問題は「録音の良さ」である。古来、「曲、演奏家、録音」と語られて来た点は、デジタル時代であろうと当然ながら何も変わらないが、大きな器であること自体がポテンシャルを秘めているともまた事実である。標準的なデジタルデータがCDをベースとした44.1KHzである限り、これをUpsamplingして、その器が秘めている音質への可能性を享受したいと考えることも、また当然の帰結と云えるであろう。では、Upsamplingすることによる、音質への効果が「現実的なレベル」であるのかどうか検証したくなるのもまた人間の性かもしれぬ。聴感だけを頼りに、16bit/44.1KHzの音と、これを24bit/96KHzまたは88.2KHzにUpsamplingした音を比較すれば、音の滑らかさ、高域の漂うような質感の差が、気分的なものも含めてある、と思う。厳密な観点から、その正当性を立証できるのか、ブラインドテストではどうか、と云うことも指摘可能であるが、当方はやはりUpsamplingしたものに軍配を上げたい。比較的新しいDACではDA変換の直前にUpsamplingを行わせているものが多いことも、またひとつの傾向であろうと当方は見ている。

では、同じアナログ音源をそれぞれ24bit/96KHzと16bit/44.1KHzでデジタル化し、オリジナルのアナログ音源と比較したら、どうなるであろうか。そして、16bit/44.1KHzとしたものは、再度Upsamplingして聴いてみたら、と云ういろいろなチャレンジをしてみたくなる。

１）アナログ音源を24bit/96KHzにデジタル化したものは、（当方の個人的な実験からの感想に留まるが）ほぼオリジナルと差がつかない、と云っても良いと思う。

２）24bit/96KHzから16bit/44.1KHzへダウンコンバートしたものは、かなり明らかに音のしなやかさ、透明感が失われ、やや硬質な感じが滲み出てくる。

３）16bit/44.1KHzをUpsamplingしながら、再生させてみると、わずかであるが失われたしなやかさが戻る。ただし、やはりオリジナルとの微妙な差が感じられる。

このような実験が全てにあてはまり、結果的に正しいと声高に主張するつもりは毛頭無いが、自分としてはUpsamplingはやらないより、やった方が良い、との結論である。つまり、Upsamplingするメリットは感じられるが、デメリットは基本的にはない。（ただし、PC上でソフトウエア的にUpsampligする場合は、PCをしっかりとチューニングしないと、音が途切れたり、安定性が失われてしまうので、この点はしっかりと対策を施す必要がある）

これらの実験、検証を通じて、アナログ音源の保存においては、それが貴重な録音であれば、24bit/96KHzにしておくことを当方は選択している。（HDDが大分安くなったことによる恩恵が非常に大きく、またありがたい。）