PCオーディオ編


TOP Audio Topics DIARY PROFILE LINK

1.標準PCの環境セッティングと再生ソフトウエア
かなり多くの人はiTunesをPCの再生ソフトウエアとして利用しているかと思う。当然ながら、これだけiPodやiPod TouchそしてiPhone、iPadが販売されているので、その所有者は(極まれな例外を除いて)iTunesを使用していることになる。当方も最初はiTunes、フォーマットはMP3ということから、PCオーディオを始めた。が、出てくる音には全くと言って良いほど納得ができなかった。(尤も、iPodをイヤホンで聴く分には、いくらかパリッとした音ではあるが、通勤電車では充分楽しめたことも事実であるが)この組み合わせでPCから我が家のメインシステムに接続して出てくる音楽は、そう思い出せば正に第一世代のCDプレーヤが出始めた時の音に似ているとも云えて、音の造詣に心地良さが感じられない。この原因はいくつかの要素が絡み合っているが、PCオーディオとして捉え、良い音を目指すのであれば、いくつか構成、環境について最低限考慮せねばならない事項がある。

(1)オーディオインターフェース
・USB、FireWire、PCI等のオーディオインターフェースを経由して、アナログまたはデジタルの出力を取り出すことが前提であり、PCのマザーボードからアナログ出力を取り出すのはまず問題外である。(PC本体から光ケーブル経由のデジタル出力が取り出せる場合はそれを次善とすることもコストを考えれば、PCオーディのスタートにはなろうかと)
・ビットレートについては、将来的なことを考え最低でも24bit/96KHzをサポートしていることが望ましいが、これは最近の製品ではほぼ問題ないと思う。ただし、中古品を入手する場合には念のため確かめた方が良い。これは後述するが、CDの基本的なビットレート(16bit/44.1KHz)をアップサンプリングした上で、アナログ変換を前提としているからでもある。
・DAコンバータ部については、当然ながらアナログ変換の品質が音を支配することになるので、留意が必要であるが、これは結局のところ購入したオーディオインターフェース内臓のDACに依存するか、オーディオインターフェースはPCからのデジタル出力の取り出しと割り切って、使い慣れた(あるいは好みの)DACを使用するか、であるが、オーディオに感心のある向きは既にそれなりのDACをお持ちの場合も多いので、まずは手持ちのDACで考えた方が(CD等との音質比較の観点からも)良いと思う。ただし、お手持ちのDACが48KHzまでしか対応のない場合は、オーディオインターフェースに内臓のDACを使用した方が良いかとも思う。

(2)ハードウエアドライバとOS
・各オーディオインターフェースにはPC のOSに対して固有のドライバ(USB接続の場合はOS標準ドライバのケースが多いが)が必要となるが、極力ASIOドライバが使えるものを選択すること。なお、ハードウエアの制約によりASIOがサポートされていない場合は、ASIO4ALLというソフトウエアを利用することをお勧めする。これは擬似的にASIO環境を実現するソフトウエアである。(ただし、すべての再生ソフトウエアがASIO4ALLを使用できる訳ではないことにご注意。ちなみにiTunesは使用できない。FOOBAR2000、Winamp等は利用可能)ASIOドライバの大きな利点はOSのカーネルミキサーを経由せず音声出力を行うために、余分な音声合成処理がPC内で行われない。これは再生品質に非常に重要なポイントである。特にWindowsXPにおいてはこの音声処理が洗練されていないため、ASIOを使用することは必須であると云える。こう書くとWindowsXPはPCオーディオ用のOSとして相応しくないと思われるかもしれないが、ASIOの使用により、OS環境の管理・コントロールがし易い事もあって、現時点ではむしろWindows系のPCオーディオ用OSとしては一番適していると考えている。(詳細は(4)PC環境設定を参照)
なお、WindowsVISTAは88.2KHzのデジタル出力ができない点に不満が残るが、WindowsVISTA、Windows7であればWASAPIの使用をお勧めする。これはWindowsXPにおけるカーネルミキサーの問題を解決したものである。WASAPIを使用できる音楽再生ソフトウエアも、Foobar2000、Winamp、iTunesなどメジャーところは既に対応されている。ユーザーの非常に多いiTunesが対応している点は特筆ものと思うので、VISTA以降のOSでiTunesを利用している方は是非ともWASAPIに切り替えて聴いてみて欲しい。
MacOSの場合は音楽再生よりも楽曲作成(DAW)の領域が主であり、再生専用とするケースでは比較的ソフトウエアの選択肢が少ないが、音質的にはWindowsほどあれこれと苦労することはない。Linuxの場合は、当方が発展途上にあるため、本質的な評価が出来るまでには至っていないが、音質重視であればMPD(Music Player Daemon)よる専用機化がひとつの方向性と見ている。ただし、ある程度Linuxの知識が前提となる。

(3)再生ソフトウエアとファイル形式
・音楽ファイル形式については、基本的にMP3のようなLOSSY CODEC(元の16bit/44.1KHzのデータには戻せない、不可逆圧縮となるもの)は音質の観点からは推奨できず、LOSSLESS CODEC(完全に16bit/44.1KHzのデータに戻せる「可逆圧縮」をしたもの)か、CD等と同一なWAVE形式ファイルを利用する。ファイルの管理、ならびに音質の観点から、FLAC(Free Lossless Audio Codec)をここではお勧めする。
・FLACはこの分野の製品でいち早くオーディオ愛好者を魅了したLinn社のDSシリーズ製品でもサポートされている通り、いろいろな製品、ソフトウエアでのサポートの幅の広さにより、PCオーディオの標準的なファイル形式とも云える地位を確立しつつある。また、将来性(特に24bit/96KHz、192KHzへの対応)という観点からもお勧めできるポイントとなる。なお、iTunesはApple社独自のLOSSLESS CODESを使用(Apple Lossless Audio Codec : ALAC形式)しているため、他のソフトウエアでこれを再生することはできない(例外はあるが)ので、Apple社製品で満足できる場合は良いが、将来的に再生ソフトウエアを変更しようとした時には、対応できないという点が大きなネックとなってしまう。(iTunesはASIO4ALLを組み込むことができない点も当方としてはあまり評価が出来ない点である。ただし、iPod、iPad管理用には必須となってしまう点は仕方ない。この辺りについては、Apple社の囲い込み戦略もあり、JailBreak(脱獄)を図るなど、これに抗う動きもあるようだが、これは本題ではないので、ここでは割愛する)
・音楽再生ソフトウエアについては、上述のような音楽ファイルの形式と使用できるハードウエアドライバとの関連性から注意深く選定する必要がある。

(4)PCの環境設定
・PCオーディオにおいては音楽専用に近いPCとすることが望ましく、その場合は不要なアプリケーションをインストールしない、稼動させない、不必要なOS機能(プロセス)を極力停止させるなどの環境面での設定・コントロールをしっかりと行うことが必須となる。(本件の詳細については「PCオーディオ実験室」に詳しいので、そちらを参照されることをお勧めする) また、ソフトウエアの自動アップデートなど余分な機能も動かさないなど、CPUの負荷を「音楽再生」になるべく振り向けられるようなチューニングを行うことにより、顕著に音質向上が認められる。特にアップサンプリングをPC上のソフトウエアで行うためには、この対応は音楽再生の音質と安定性からも必ず行う必要が出てくるし、それを行っただけの効果があると認識している。

ここまでの整理を一旦行うと、以下が推奨内容である。
・ファイル形式はFLACに統一することを(経験上から)強く推奨する。
・CDのリッピングを行う場合のビットレートは16bit/44.1KHzとすること。(やむを得ず、MP3とする場合は320KHz、最低でも256KHzとすべきである。ただし、PCオーディオ用として音質に拘る場合はMP3は推奨しない)
・オーディオインターフェースはASIOにより駆動できるもの。(インターフェース自体はUSB、FireWire(IEEE1394)、PCIのいずれかは問わない)
・PCのOSには基本的に依存しない。ただし、後述するアップサンプリングをPC上で行わせる場合には、WindowsにおいてはXPの選択を推奨する。Windows7の場合は、WASAPIを使用することをお勧めする。
・再生・楽曲管理ソフトウエアは、FLAC形式、ASIOドライバー(またはASIO4ALL)をサポートしているものが望ましい。例として、Winamp、Foobar2000、Frieve Audio、Sound Player Lilith、cPLAYなど。楽曲ファイルの管理面や操作性、音質にそれぞれ特長があるので、いろいろと試した上で、どこにこだわるかで決定すれば良いと考える。当方は、音質最優先の場合はcPLAY、BGM的に聴く場合はWINAMPと、二つのソフトウエアを併用している。cPLAYは使い勝手の面からはかなりとっつき難い点もあるが、音質の観点からは自信を持って推奨できる。

(注)音楽ファイル形式については、最初の段階にて環境選択を誤ると、後からリッピングのし直しなど、相当無駄な作業を行うこととなるので、注意が必要である。PCオーディオは高音質であること、かつ将来に向けても汎用性が確保されていること、という二つの観点からの選択をしっかりと行うことが重要であり、かつ望ましいと考える。当方はスタート時にあまり深く考えず、また充分な知識も無かったので、この点の選択を誤り、iTunesでのAAC(MPEG4)から始めてしまい、MP3への移行、MP3も128KHzから256KHzへとリッピングのし直しを行い、その後FLACの16bit/44.1KHzと、結局何度もリッピングをする羽目になってしまった苦い経験がある。音楽データベースファイルはすぐに数千曲にもなり、これを後から変更することは時間的な観点から至難となる。現在当方は既に一万曲を越えるファイル数となってしまっていることもあり、すべての楽曲のFLACへの移行が完了できていない。


next index back