限界を超える?:
オーディオに対する熱意というものは、何とも不思議なところがあって、音が低調だな~と思うと時はまぁこんなもんか、もう限界なんだろうな、と心が闇に落ちてどうにも温度感が低くなってしまう。おやっ、そこそこ、、、となってくると微妙にテンションがあがる。それにつれて、もうちょっともうちょっと、という欲が顔を出す。そして、そこで打った施策が(真実はどうであれ)それなりに期待に応えてくれたと思える時、ぐっと燃えてくる。そんなサイクルを長い間にわたって同じように繰り返してきたようにも思う。
10年、20年前の自分の音がどうであったのか、定かに記憶出来ている訳ではないので、その時点で「良くなった~」と思えた音がどの程度のレベルだったのか比較検証のしようがない。自らの日記を読み返してみれば、その時点での紆余曲折はいろいろあれど概ね音が良くなったと思うような印象の繰り返しであって、果たして絶対値として音の良さが積み上がってきているのか、あるいはどう変わってきたのか、正確に推移を語ることは自分でもかなり難しい。
それでも、その時点、時点で自らの納得のレベルが僅かづつでも向上していれば、足掻いてきた意義、成果があると信じる。遥か昔の音より本当に成長できたのか、自問してみたとて明確な答えはどうにも出しようもないので、心の拠り所となるのは結局のところ「今の音」の納得感や満足感なのかもしれないが。
そんな頼りない自らの尺度なのだが、やはり僅かであっても前進したいし、その実感を手にしたい、、、100%の理想の音は夢物語でも、心底音楽に浸れる。そう思える我がオーディオにしていきたい、そういう熱意だけは(多分)持ち続けてきた、、、
このところの4way構成における遮断特性の見直しを含めた音が、結果としてプラスの方向となっていることは大変嬉しいことなのだが、こうなってくるとまた気を良くしていつもの様に、更なる成果を求めたくなる。高域方向の音の自然さやエアー感に加えて、低域方向にも欲が出てくる。即ち、厚みを維持したままよりソリッドにシャープに心地良く軽く、、、という低域である(まぁ、無茶な欲求であることは百も承知)。
クラッシック系の音楽を聴く割合が多いので、傾向としてある程度意識して低域の膨らみを求めている(測定結果からも明らかなように)のだが、ここに改善の余地はないだろうか。僅かに音の過剰感があるようにも思える部分もある。では何らかの変更を加えるとしたら、どんな点か。そう考えてみた時に、単純に思うのは、求めている膨らみを敢えて抑え気味にしたら、そのような方向性に至るのでは? ということ。少なくともPOPS系の再生においてはクラシック系の音楽とは若干異なるキレの良い低域への欲求もある。
1月18日の測定結果:Smoothing 1/3rd Octave(左)の場合、音圧の分布が読み取り易く課題も見えてくる
Smoothing 1/12th Octave(右)では山谷が目立ってしまうのでそちらに引き摺られる
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で、前回測定した結果を眺め、反芻しながらあれこれと想いを巡らせてみた。40~50Hzの膨らみを少し抑えつつ、100~200Hz辺りを僅かでも充実させるようなプラン。それが何となく良さそうにも思えてくる(もちろん、平坦な周波数特性が必ずしも音が良い訳ではない)。だが、問題はそれをどうやって実現するか? 低域というのは部屋の影響が大きい。もちろんシンプルなのはイコライザ機器の追加による調整、最適化が思いつくのだが、その対応では好結果を決して生まないことは経験が教えてくれている。イコライザというものは、山を押さえることはできても、谷を埋めることは案外と難しく、また音の質感に対して決して万能ではない。じゃ、どうするか、、、
つまるところ、デジチャンも裏を返せば、DSPによる処理なので内部では謂わばデジイコに近い演算処理を行っている訳だ。だから、敢えて新たにイコライザ機器を追加したりすることなく、デジチャンの機能の範囲の設定でこれを行うことが可能なのでは?、そういうシンプルなアイデアである。当方のデジチャン(DF-65)にはイコライザ機能は無いので、クロスオーバー周波数、出力レベル、遮断特性という設定を駆使してその対応を行うことになる。なお、当然ながらスピーカーユニット自体の配置も低域の調整にはかなり重要な要素となる。
当たるも八卦、当たらぬも八卦、このようなちょっとお馬鹿なチャレンジも気軽にできてしまうことがデジチャン、ならびにマルチアンプシステムの良さなのだ。で、やってみた。結果としての設定内容は下記に掲載したが、かなり変則的な内容である。
このような設定、調整作業に於いて良い塩梅を探すことは聴感だけでは(当方の能力では)絶対に不可能。部屋の影響が作用するので、低域は設定にリニアに反応はしないため変動幅の微妙な動きから推測しつつ調整、測定することが不可欠である。測定によって音の質、それ自体を捉えることは極めて難しいのだが、周波数バランスという観点では非常に有用と思う。オーディオファイルを自認する方であれば間違いなくしっかりとした測定を行ってシステムチューニングへフィードバックをしているものと思うが、音の質が上がれば上がるほど、この全体バランスが聴こえに対して重要ともなる。
さてさて、このような調整にて音楽を聴いて結果は吉と出るかどうか、それがそもそもポイント。少なくともPOPS系に於いては、ここで設定した内容の方が従来よりもベターと感じられた。もちろん、ソリッドでシャープで心地良く軽くという命題に対して百点などということはあり得ないが。また、クラシック系であっても100~200Hz辺りを充実させている効果なのか「低域の下支え」にあまり不満はない。従って、現時点ではまぁまぁのレベルなので、一応基準点はクリアーしたと考えて良いだろう。
総体的に見れば、僅かなブラッシュアップなのかもしれないとは思う。けれど、その僅かな積み重ねが大事なこと。機器としての素材の吟味も重要だけれど、今あるシステム構成にてリスニングポイントに於ける「聴こえ」を客観的に把握し、そこから「好み」の方向に持っていくこと。多分この繰り返しが無ければ音は成長しないと思う。手持ちの機器の限界性能を引き出すことの難しさは痛感するが、自らが限界、天井を作ってしまってはいけないのだと。
SONY SUP-T11用4way構成の-6dB/oct設定値(2024年1月25日暫定)
項目 |
帯域 |
備考 |
Low |
Mid-Low |
Mid-High |
High |
使用スピーカー ユニット |
- |
Sony SUP-L11 |
(Experimental) BeW-16 |
SONY SUP-T11 |
Scan Speak D2908 |
- |
能率 能率(90dB基準相対差) |
dB |
97.0 (+7.0) |
87.5 (-2.5) |
108.0 (+18.0) |
92.0 (+2.0) |
|
DF-65の 出力設定 |
dB |
+1.8 |
+0.7 |
-7.0* |
+4.7 |
|
マスターボリューム アッテネーション |
dB |
-9.0 |
-2.0 |
-3.0 |
-0.0 |
|
パワーアンプでの GAIN調整 |
dB |
0 |
0 |
-12.0 |
-12.0 |
|
スピーカーの 想定出力レベル |
dB |
89.8 |
86.2 |
86.0 |
84.7 |
|
クロスオーバー 周波数 |
Hz |
56 ~ 315 |
315 ~ 1000 |
1000 ~ 5600 |
6300 ~ |
High Pass ~ Low Pass |
スロープ特性 設定 |
dB/oct |
6-18 |
6-12 |
6-12 |
6-flat |
|
DF-65 DELAY 設定 |
cm |
-19.0 |
+20.0 |
-47.0 |
+20.0 |
相対位置と 測定ベース |
極性 |
- |
Norm |
Norm |
Norm |
Norm |
|
DF-65 DELAY COMP (Delay自動補正) |
- |
ON |
自動補正する |
DF-65デジタル出力 (Full Level保護) |
- |
OFF |
保護しない |
|