オーディオ日記 第57章 道の向こうへ(その1)2024年 1月 8日


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禁断の遮断特性:

現状それなりの満足度にて音楽を聴かせてくれるようになってきたとも思う我が家の構成や設定なのだが、贔屓目で甘い評価になってしまっているところを差し引いて冷徹に鑑みれば、どうしても「まだまだ感」が残る。

音楽の自然さや楽器の音のリアリティを今一歩、二歩と追求したくなるのだが、具体的にどのような方法、手段があるのだろうか、、、これ以上を求めるのは自分の力量では最早無いものねだりに近いような気がするけれど、やはりあれやこれやと妄想してしまうのは仕方の無いこと。

単純に考えれば「装置」と「部屋」ということになろうか。だが、装置という観点では自分なりにできることのやり尽くし感があって次の妙手というのはなかなか具体性を持って浮かんでこない。儚い向上の期待感というレベルでのアイデアは多少あるにはあるのだが、敢えてやってみようという原動力になる程の熱意には満たない。Solid SilverのSPケーブルなどは試してみたい筆頭なのだが、現実の選択肢が余り無い(コストの問題もあるが)ことも言い訳のひとつになってしまっている。

ただ、どうしても頭を離れないのは、各機器の「限界性能」をちゃんと引き出せているんだろうか、という根源的な疑問。それなりのユニットや機器は揃えたような気もしているのだが、追い込み使いこなしてこその装置。この部分は間違いなく及第点ではないと自分でも思う。

部屋については、住居の断捨離を行った時に専用のリスニングルームを諦めざるを得なかったが、元々あまり大音量で聴く方ではないし、部屋の特性として現状大きな問題を抱えている訳ではないこともあって敢えて視野からは遠ざけている(もちろん部屋としてのS/Nの課題もあるし響きの豊かさという欲求を十二分にカバーは出来ていないけれど)。

聴く音楽の主流が小編成の弦楽曲やピアノ曲ということもあり、「音に包まれる」あるいは「音に埋もれる」、「音に塗れる」という感がやや不足していることは何となく自分でも気が付いている。この点で云えば、音が部屋に満ちている(音量とは別の次元で)という状況には至っていない、ということか。あるいは音の密度が薄い、とも云えるのかもしれない。これは部屋がリビング兼用で全体としては20数畳の広さがあるので、そもそも音量自体が足りていないということになるのかも。

周波数特性の平坦化や低歪化は基本の基として、これだけでは音楽の満足度、充実度は得られないし、ある程度音量は担保しないと音楽の実体感には繋がらないんだろうとは思う。では、質的な観点を維持しながら、単に大音量化に走らず、ここで求めるような音の包まれ感を醸し出すようなことは可能なんだろうか。そしてそれが音楽の自然さや楽器の個々の音のリアリティの表現に繋がるのだろうか、、、

率直に云えば、明快な解は無い。無いと思う。だがこのような観点でつらつら考えているとちょっとやってみたいアイデアも生まれてきた。それは4wayスピーカー構成における各ユニット間のスロープ特性の変更である。デジタルチャンデバの導入によって随分と前には-48dB/OCTあるいは-96dB/OCTという急峻なスロープ特性を使ったこともあるのだが、当初を除き永らく-24dB/OCTを採用してきた。ここ最近は達人のアドバイス等をいただき、-12dB/OCTにチャレンジして自分なりにはそこそこの評価も出来るような設定に落ち着いてきたという経緯がある。-24dB/OCTに比して(音の切れは後退するかもしれないが)-12dB/OCTの方が幾分のびやかでかつふっくらした音になるような気もしていて、より自然さを求める自分の嗜好にはマッチするように感じている。

そこで、考えてみたのは、更に-6dB/OCTという一次のスロープ特性を採用したらどうなんだろうか? という素朴なもの。一般論的には-12dB/OCTの場合は隣り合わせのユニットの位相を合わせるため4wayであれば正相、逆相、正相、逆相という接続となる(-24dB/OCTの場合は全て同相が基本)。-6dB/OCTでは全て同相の接続で良く、また位相の回転が少なくなるというアドバンテージもある。反面、各ユニットが広い帯域に渡って音を出すので、ユニット自身の性能が相当問われるし、ユニット間の干渉による弊害によって音の切れが悪くなるという課題もある。

だが、この点を良い方向に解釈すれば、部屋を音で満たす、という方向にプラスとはならないだろうか。もちろん、各ユニットが-6dB/OCTでしか減衰しないので、かなり上下の帯域の音を出してしまう。このため、その本来の帯域外における質の確保が音の混濁感を生じさせないためにもかなり重要なポイント。一方で、位相の回転が少ないことは、音の実体感という観点でプラスのファクターとなってくれるという期待値もある。

中高域、高域のユニット達:このクオリティがカギを握るか
Bliesma M74B 02

まぁ、あれこれと考えるよりもやってみることだろうし、デジタルチャンデバの効能のひとつである設定の変更の容易さ、これを使わない手は無い。で、全チャネル-6dB/OCTのスロープ特性として、リスニングポイントで良い感じのフラットネスが得られたのは、200Hz、800Hz、5600/6300Hzというクロスオーバー周波数(反射波をある程度含めた上での測定のため中高域、高域はクロスオーバー周波数を若干離す必要があった)。とりあえずこの設定で試聴を開始したが、音楽が少し艶やかになる。裏を返せば少々華やか、落ち着きが無くなるとも云えるだろうか。小編成のクラシック系には余韻感などそこそこあってマッチすると思うが、POPS系の切れの良さを必要とする音源となると中低域辺りにやや雑味が増すような印象となる。これはトレードオフがあって難しいところ、、、、

まずはこの設定をベースとしてあれこれと設定を弄ってみることとしたが、目的とするところに少しでも近づけるだろうか。やはりそんなに簡単、単純ではなさそうな気もするけれど、もう少し追ってみる価値はあるとも思える。とにかく高域、中高域のユニットからの出音はつまったところが無く極めて伸びやかになってくれてバイオリンがとにかく心地良い。ユニットの素性が良いというお陰もあるかもしれないが、このアドバンテージは捨てがたい。雑味や混濁感を出さずに音のキレを、、、などという欲が顔を出してくる。

やはり難しいのは、15インチウーファを-6dB/OCTで使う(かなり上まで音が出てしまう)という点なんだと思う。であれば、ここを若干妥協して-12dB/OCTに変えて本来望ましくない帯域の音を抑える、というアプローチもありか。この設定にしてみたところ、POPS系の低域にも充分と対応できそうなことが判ったので、低域のクロスオーバー周波数を微調整で280Hzまで上げる。更にもうひとつ、中低域のユニットの上方向のみ-12dB/OCTとして、ここもクロスオーバー周波数を900Hzに上げてみた。全体で見ると変則的なスロープ設定にはなるが、音像や音場の違和感はあまりない。肝心の再生音であるが、高域感というか艶やかさをしっかり残しつつ、当初の全て-6dB/OCTの設定に比せば、すっきりとした感じで課題と思った点もある程度クリアーできた感じになる。

これが正解なのかどうかはまだ判らない。結論を急ぐ必要は無いと思うので、この設定であれこれと聴き込んでみて結果が「吉」なのかを吟味すれば良いのかも。デジチャンのメモリには-24dB/OCTの設定、-12dB/OCTの設定も残してあるので、聴き比べしつつ。まぁ、当方の駄耳だけでは厳密な評価や判断は難しいかもしれないが、半歩前進となってくれることへの淡い期待もある。ほんの少しでもこの先へと行けることになるだろうか、、、


                 4way構成の-6dB/oct設定値(2024年1月8日暫定)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
(Experimental)
BeW-16
Bliesma
M74B-6
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 97.0 (+7.0) 92.0 (+2.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.2 +0.7 +2.1 +4.7
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.2 86.2 84.1 84.7
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz

280
280

900
900

5600
6300

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-12 6-12 6-6 6-flat
DF-65 DELAY
設定
cm -7.0 +20.0 +20.0 +20.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-65 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-65デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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