オーディオ日記 第54章 今は空も飛べるはず(その12)2022年11月28日


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プライスレス:

世の中的にはBlack Fridayなるものが大流行で、オーディオ関連であっても例に洩れず普段より廉価に買い物ができるということは有り難いことでもある。Roonからは3ヶ月間2ドルで改めて使ってみないか、というこれもBlack Friday絡みのメールが。一連のRoon 2.0のテスト後、サブスクは一旦打ち切ったのでこのようなお誘いが来たものと思うが、それにしても思い切った料金設定である。まぁ来年からがっつりと料金が上がるようなので、ユーザーを取り込んでおきたいということだろう。

音楽再生ソフトウエアの分野でもライセンス購入費用という扱いではなくサブスクリプション料金とするのは収益の面からもある種自然な流れと思うが、かなり強気に高額な料金設定をしているRoonもこういうオファーをするんだな、とちょっと感慨深い。ソフトウエアの場合は販売量に応じて原価が変動しないので、収益の最大化を考えればとにかくユーザー数の拡大が最重要。

オーディオ機器全般を眺めつつ、何故このような価格設定をしているのか考えてみると案外と面白く興味が尽きない。もちろん(開発費用を含む)生産原価と販売量の兼ね合いがあるのだろうけれど、そのバランスを大きく越えるような価格の機器もたくさんある。一方で、音そのものにはあまり拘っていないが、新しい機能を取り込んだ多機能な機器で意外と思えるほど廉価なものもある。もちろんその価格に見合うような販売計画と実績の裏付けが必要となるものと思うが。

昨今の情勢(コロナ、ウクライナ、半導体不足、円安等々)でオーディオ機器も例に漏れずそこそこ高騰のようであるが、欲しい~と思う機器が出てくれば結局価格は購入判断の第一条件にはならないのかも。そういう観点では「絶対欲しい」と思わせる機器の魅力の前にはオーディオファイルは勝てないのだ。まして、試聴などして、「これは良い、、、」と思えてしまえば後は一直線。

趣味の世界においては、価格や費用というものは(前提となる財力の有無は別にして)多分本筋ではない。そういう意味ではここでの価値はやはりプライスレスであって、モノとして考えれば(高価な機器においては)美術品、骨董品に近い価値観を持たざるを得ないものなのかも。

一方で、廉価な機器に関しては、趣味の世界の自己表現あるいは自己実現においてはあまり重きを置かれないことももう一つの事実である。もちろん、オーディオファイル目線から見て、音も評価できず製品としての魅力も薄い、というものであればそれは仕方の無いこと。だが、キラリと光る機器だってある。多少手間隙も掛かるかもしれないが、それなりに環境を整えてあげればかなりのパフォーマンスを示してくれるものも。

特にデジタルの領域では単なるストリーミングに留まらず、それを核とした新しい機能、サービスが次々と登場してくるような感もある。それに対応するソフトウエア、ハードウエアの組み合わせはじっくりと熟成を待つような世界ではない。ぼやぼやしていたらあっという間にそのサービス自体も無くなってしまったりする。この変化に追随していくにはサプライヤー側、ユーザー側いずれにとっても新しい技術と世の中の潮流を見極めるということが必要なるんだろうと思う。また、メーカーとしては新しい技術を素早く取り込んで商品化していくセンスやフットワークも重要になる。

コンポーネントとしての機器は一般論的にはこのような変化には対応できにくいが(ハードウエア的なアップグレード対応を売りにしている良心的なメーカーももちろんある)、デジタル領域の世界ではソフトウエア(ファームウエア)のアップデートによって多くのケースで進化、変化に対応できるようになっている。もちろん当該機器がディスコンになったり、メーカーが消えてしまえばその限りではないが。

当方が現状遊び倒しているラズパイであるが、これは誰が見てもオーディオ機器ではない。だが、PCオーディオ的な端くれとしてそのポテンシャルを考えると非常に面白くまた「オーディオ機器」としても有能である。昨今はラズパイも品不足で案外と高騰しているのは少し残念な点でもあるが(それでも1~2万円のレベル)。

評価できるポイントは、新しい機能への柔軟な追随が可能なこと。もちろん、その機能に対応するソフトウエアが提供されていることが必須条件なのだが、多くのものが無償で提供されている。ただしそれらを適切に利用していくためにはある程度のスキル、ノウハウを身に付けなければならないというハードルはある。

ラズパイをベースにいろいろ実験(と称した遊び)を通して感じることは、デジタルトランスポート的な機能として利用できるカバー領域である。一般的なライブラリ音源やネットラジオの再生は当然として、Air Play対応、Bluetooth対応など。ストリーミングの観点で見れば、Apple Music、Amazon Music、Spotifyなどの音楽をこれらの機能によってスマホ等と連携しラズパイに送り込み、再生することなど朝飯前。これらはいずれも最近の廉価なネットワークストリーマで実現していることでもある。

拘る向きには、Roon Bridge(所謂「Roon Ready」相当になる)やDiretta Target PCとすることも可能。まぁ、極廉価とは云え、PCであることは間違いないので、当然ではあるが、ここにもある種のプライスレスの世界があると思う。決して高価ではなく、誰でも購入できるレベルの価格。その上で出来ること、対応範囲は広い。現状は出来なくてもソフトウエアの登場によってほどなくできることになる、という世界でもある。

今までの多くのネットワークオーディオ機器がLinuxベースで作られてきたように、新たに登場してくるこの手の(廉価な)機器も基本Linuxベースであり、ハードウエア的には(まんまのラズパイをビルトインしたような製品もあるが)ラズパイに搭載されているARMプロセッサーのCPUアーキテクチャを採用したものが多い。一般論的にはユーザーは使用する機器がどのような技術ベースに立脚しているのか知る必要はない。簡単、便利に使えれば良いのだ。だが、このことによってLinuxの世界で特有な無償ソフトウエアが創出されてその恩恵は誰でも享受できる。

しかしながら、ラズパイというものはある程度はその中身を理解していることが必要とはなる(あるいは知ろうとする努力)。そして、自分が使いたいと思う機能を持つソフトウエアをピックアップして自分でそれを組み込めば良いのだ。ソフトウエア領域のみならず、電源系を含めたハードウエア領域に関して豪華なパーツを奢ることだってできる。デジタルからアナログ部分へ至る機器構成をしっかりと整備すれば期待に応えてくれるような「半端無い」実力を示す(超高額な機器に匹敵するとまでは云わないが)。

そのようにして出来上がった自分流の「ラズパイオーディオ機」はOne and Onlyでもあるし、これもまたプライスレスと呼ぶに相応しいと思う。蛇足ながら当方のような高齢への道を歩みつつあるオーディオ愛好家にとっては知的刺激としてとても有効であることを付け加えておきたい。

だが、そうは云っても、WindowsならともかくLinuxなど敷居が高くて、インストールに必要なコマンドなども判らないし、という方も多いだろう。だが、ここにもそのようなスキルはほぼ不要。ブラウザーからのGUIによる設定だけで大丈夫、という仕掛け( MoodeAudioVolumio など)も大変ありがたいことに存在するのだ。ラズパイの基板一枚を手にすればUSB出力の音楽再生プレーヤを簡単にセットアップできる。ラズパイ特有のオーディオ出力基板(S/PDIFやI2S、もちろんDAC搭載のアナログ出力も)を仕入れれば更に世界は広がる。そして、そこから展開するデジタルトランスポート周りの遊びは尽きることなく、いつの間にか必要なスキルは身に付いていく。

(参考)興味はあるけれど、、、という方のための「 ラズパイオーディオ入門

自分にとって、スキルを身に付けること、「何かができるようになる」ということは大切なこと、それは必要なチャレンジであって、それこそが真にプライスレスなんだと思う。

(追記)
まだあまり詳しい情報がないのだが、 SFORZATO が年内にもAmazon Musicに対応する見込みと。これ自体は期待大である。「Taktina」というソフトウエアとの連携でTidalやQobuzを含めた横断検索もできるらしいのだが、はてその意義はどこに、、、当方としては圧倒的というレベルでの音質と不足の無い操作性、それで密林音楽を聴けることになるのならそれで充分と思う。

(2022年12月23日追記)
SFORZATOのトランスポートは「DST-Lacerta(ラ・ケルタ)」というプロダクト名で15万円以下を目指すとの情報あり。この機種はUSB出力専用?かも知れない。なお、製品発表は2023年1月末頃にずれ込むと。(追記終わり)


                 4way MW16TX構成の設定値(2022年1月3日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
SB Acoustics
MW16TX
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 110.0 (+20.0) 93.0 (+3.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.0 +1.0 -9.0 +4.0
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.0 86.5 86.0 85.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz

140
140

710
710

4000
4000

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-48 48-24 24-flat
DF-55 DELAY
設定
cm -8.0 +19.5 -37.0 +25.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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