オーディオ日記 第54章 今は空も飛べるはず(その10)2022年11月8日


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Roon Bridgeの比較:

RoonはPCオーディオと云えばPCオーディオなのだがいろいろな出力デバイスを組み合わせて使うことができる強みがあり、その出力デバイスの多くは市販されている所謂ネットワークオーディオ機器から選択可能である。Roon Serverは普通のPC(Windows、Mac、Linux)に普通にインストールすれば良いだけ(特別なスキルは不要)なので環境構築自体はかなり容易だと思う。また、拘る向きには自作PCでそれなりに手を加えるも良し、あるいはお高いRoon Nucleusや超お高いTaiko Audioまであって結構多彩。

Roonの全体としての使い勝手はそのUIに代表されるようにかなり良いのでこの評価はもう定着しているものと思う。機能や音も充分評価できる。ただ、PCオーディオにおけるその他のソフトウェアとの比較で「音云々」を語るのは案外と難しい点もある。手前勝手な判断ではあるがRoon Serverの部分よりも「出力デバイス」側の機器や能力に結果的に依存した音になっていると思う。

出力デバイスの構成、構造に関しては、カスタムメイド基板のRoon Ready機器もあれば、単にRoon Bridge(または相当機能)をインストールしただけのもの、あるいは使用環境に応じて自分でインストールしたり、設定するものと多彩で価格もいろいろで一元的に評価するには難しいものがある。実際、まだまだほんの一部の機器しか実聴できていない。

当方もRoon 2.0に絡んでしばらくは使ってみようかと考えていることもあって、せっかくならばこの出力デバイスによる音の比較をしてみたくなった。我が家の環境ではいくつかの出力デバイスの候補があるので、プラットフォームの異なる以下の三通りをお遊びがてら比較してみることとした。

1.Bluesound Node(出来合いのネットワークオーディオ機器の代表として)
2.ラズパイ4にRoon Bridgeをインストールしたもの(廉価PCオーディオの代表)
3.PC(Linux)にRoon Bridgeをインストールしたもの(正統派?PCオーディオの代表)

三通りのプラットフォームにてRoon Bridge出力を比較した構成図:
Roon Bridge Test

この三通りの出力デバイスからのデジタル出力はちょっと悩んだが、「すべてUSB出力で統一」して比較することとした。これは多用しているBluesound Nodeのデジタル出力に関してUSBの方がより好ましいと感じていることから、一旦これに合わせてみようと。また、ネットワーク的にはいずれもHUB介在構成とした(過去の経験からはHUB介在無しの直結の方が好ましい印象がラズパイ4ではあったが)。

何だかんだ云っても、基本はx86のPCベースかarmプロセッサーベースということになってしまうような気もする。現状ほとんどのネットワーク機器(ネットワークストリーマ)は案外と万能(でかつ廉価)なarmプロセッサーを使用している(除く高級品)のだ。Bluesound NodeはARM A53 1.8GHz/4coreでラズパイ4はARM A72 1.5GHz/4coreと後発のNodeの方が少し速い。

ラズパイ4は純正OSであるRaspberry Pi OS/Lite 64bit版をベースにRoon Bridgeのみをインストールしたもの。PCはArch Linux x86 64bit版にこちらもRoon Bridgeのみをインストールしたものでテストし、その他の機能は一切入れずRoon Bridgeに特化させている。

なお、USB出力を受ける後段の機器は図にもあるように、INTONA USB Isolator、MUTEC MC3+USBである。ここへマスタークロックを注入しデジチャンへS/PDIFで渡すという我が家のいつもの構成である。このため、Roon Serverから見た上記の各出力デバイスは192KHz/24bitをPCM信号の最大値として設定している。またDSD音源は176.4KHz/24bit(音量は+6dB)へのリアルタイムダウンコンバートとなる。

で、早速聴き較べを始める。Bluesound Nodeから。音源はまずはDSD音源を使ってみた。Node単体の場合、DSD音源は事前に自分でPCMへダウンコンバートしておく必要があるので、リアルタイムダウンコンバートはRoon Serverと組み合わせた場合のみ聴けるようになるのだ。実はNodeではRoon Bridge機能のオン/オフはできず常に稼働状態になってしまっていることが残念な点。Roonの出力デバイスとする際もその他の機能を一切停止する、というような設定はない。この辺りの影響もあるのだろうか、、、前から若干は感じていたがやはり今回もすっきりとしない音で時にノイズが入ったりもする。Node単体で聴いた方が随分と良い音がしてしまうのが不思議なくらいなので、当方の理解できていない何らかの設定上の課題があるのかもしれない。

ちょっとがっかりな音だったので、次はPCベースにしてみた。こちらは音楽に没頭できてかなり納得、評価できる音がする。これならば常用するのにも遜色が無いと思う。Nodeとの差異の理由について正確な判断はできていないのだが、ハードウェアプラットフォームの違いというよりはソフトウェア部分の稼働環境(Roon Bridge機能にてほぼシステムを占有しているのかどうか)によるものと推測している。

ラズパイ4はNodeよりもCPUパワーが劣るので、若干心配したのだがこちらはなかなかのパフォーマンス。ラズパイ4 vs PCの比較はまだ完全にはできていないのだが大きく後退するような印象はなく、Nodeの時のような不満点はないので及第点とも云えるだろう。このことから、やはりNodeにもLuminのような「Roon Bridge専用モード」があれば良いのに、と強く思うのだが、翻って考えてみれば、NodeをRoonの出力デバイスにしようと考える人はまぁ普通ではほぼいないかも。

一口にRoonと云っても構成、環境がいろいろとあるので、それによって音は異なってしまうのだろうが、やはりポイントとなるのは出力デバイス側であり、しっかりとその吟味が必要だと感じる。Roon Serverの多彩な機能(特にDSP)を使いこなすにはRoon Serverの稼働するプロセッサーのパワーは間違いなく高い方が良いと思う。一方で音の面の支配力は出力デバイス側にあって、これをどのように選択するのかが重要だけれど、現状選択肢が多すぎて逆に迷うことにもなりそう。

当初は安易にラズパイ4くらいでいいんじゃ? と思っていたがArch LinuxにてRoon Bridge専用に仕立てたPCを出力デバイスとするとこちらが一番良い、という結果になった。実はこの構成、今回のテストで初めて構築、使用してみたもの。かってのJPLAY Dual PC環境を思い出すようなPCの2台構成でもある(JPLAYの時は2台ともWindowsベースであったが、今回の構成は2台ともLinux)。

やはり音の不思議があって、分散させることによる何か微妙な差があるんだろうと思う。だが、長年PCオーディオにトライしてきたにも係わらず、その因果関係を明確に指摘することは今でも難しい。今後、このLinux PCの2台構成でAoE Symphonic-MPDとも比較してみようとも考えているのだが、PCベースの場合現状直接S/PDIFを出力するスタイルが我が家では採用できず(対応する出力カードが無いため)、USB出力onlyとなってしまうので同じ条件での比較はできないのがちょっと残念。今更PC用のS/PDIF出力カードを調達する気にもなれないのだが、このRoon Bridge専用PCのコンセプト、もう少し追い込んで(遊んで)みる価値はありそう、、、

(おまけ)
Linux PCを出力デバイスとする構成に絡んで、同様の環境がDirettaでも構築できることに思いが至り、こちらも実験してみた。DirettaホストはWindows環境のJRMC。DirettaホストもLinux版としてこちらも2台構成のLinuxでトライしてみたいと考えている。

Direttaは44.1KHz限定の試用版で、同様にMUTEC MC3+USBへ出力:
Diretta Test


                 4way MW16TX構成の設定値(2022年1月3日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
SB Acoustics
MW16TX
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 110.0 (+20.0) 93.0 (+3.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.0 +1.0 -9.0 +4.0
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.0 86.5 86.0 85.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz

140
140

710
710

4000
4000

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-48 48-24 24-flat
DF-55 DELAY
設定
cm -8.0 +19.5 -37.0 +25.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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