オーディオ日記 第54章 今は空も飛べるはず(その8)2022年10月5日


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RAAT vs AoE:

些末な音の比較などもう卒業した方がいいんじゃないかとこのところ考えてきたのだが、roon 2.0のバージョンアップに絡みroon bridgeで遊び始めて、またお馬鹿な比較などしてしまった、、、

というのも、ラズパイ4上で動かしているroon bridgeをcoreからのLAN直結(HUB介在無し)にしたところ、案外と云うか、やはりと云うか、そこそこ良い感じであったので、これをもう少し突き詰めてAoE Symphonic-MPDと比べてみたくなった。AoE(Audio over Ethernet)とRAAT( Roon Advanced Audio Transport )に関しては、音源データをネットワーク(ethernet)を通じてプレーヤ側から出力機器(デバイス)側へ受け渡すという考え方・仕組みは根底に同じコンセプトを持っていると云えるだろう。だが、AoEは極力シンプルにこの音源データを受け渡すということに徹底しているので、ほとんどそれのみの限られた機能しか持たない。一方でRAATはroon coreの周辺にある出力デバイス(それがroon readyであれば)を探し、その構成情報を拾い集めて来て、音楽データを任意の出力デバイスへ送り出すという強力なもの。

高価なソフトウェアとボランタリーベースで開発されたソフトウエアとそもそも比較する意義は薄いのかもしれないが、やはり興味が尽きないのだ。今までは環境面では若干の差異があったのだが、今回roon bridgeをroon coreの稼働しているPCと直結させているので、

1.AoE Symphonic-MPD(FrontEnd、Arch Linux x86/64 PC)~ AoE smpdplayer(BackEnd、Raspi4用のカスタムアプリ)
2.roon(core、Arch Linux x86/64 PC)~ roon bridge(Raspi4、Raspberry Pi OS64/Lite)

上記の二つの構成を同じプラットフォーム、同様の接続環境で較べてみる、ということができる訳だ。AoE Symphonic-MPDのフロントエンドとコアを稼働させるのはファンレスPCで単にroon serverを追加インストールしただけ。AoEのバックエンドとroon bridgeは同じラスパイ4で起動用システムを都度差し替える。接続用のLANケーブルは同じものだし、音源も内蔵のSSDからなので、ハードウエア的な環境は全く同一で、異なるのはソフトウェア部分のみ、と云い切って良いと思う。なお、roonは普段使いとしていないので、AoE Symphonic-MPDが当方にとって所謂「標準原器」となる。

RAAT vs AoE

そもそもHUBの介在の有無で音が変わるのか、という疑問もあろうかと思うのだが、今までの経験上AoE Symphonic-MPDに於いてはこの直結の方がかなりベターと感じてきた。roon bridgeに関しては、HUBの介在した構成でしか過去テストしていない。またラズパイのみならずBluesound NODEをroonの出力デバイスとする構成においてもここは同様でHUB介在である。だが、実際roon bridgeを直結としてみると、純度あるいは透明感、昨今ではエアー感の表現と云うのだろうか、この辺りが「およっ」という感じで良さげに感じられてしまうのだ。そのHUB介在無し、直結構成でRAATとAoEの比較が、同一のハードウエア環境で今回できる。

となれば、比較をやらざるを得ないのが人情というものだろう、、、(勝ち負けを求めている訳ではないが)

音源については(白熱の勝負? となりそうなので)ハイレゾ音源(192K/176.4K)とDSD音源に限定した。ただし、DSD音源はどちらのケースでも176.4K/24bitへのダウンコンバートなる(roonはこのダウンコンバート時、+6dBの設定ができるのだが、AoE Symphonic-MPDでは+6dBはできない。この点は違いとなる。また、AoE Symphonic-MPDはUSB出力は対応していないため、ラズパイ側の出力はHAT経由のS/PDIF出力の一択である。

結果として両者の差は正直微妙である。明確にここ、と違いを指摘できるようなところはない。ただ(思い込みなのかも知れないが)感覚的にはAoEの方がナイーブ、RAATの方がメリハリというか実体感がありこちらも高く評価できる、という印象だろうか。この辺りはもう好みの世界なのかもしれない。その僅かな差異がどこから生じているのか言い当てることは最早困難。強いてあげるとすれば、AoE Symphonic-MPDのバックエンドは極めて軽量でCPU速度も本来性能の六分の一程度しか消費していない。roonはベースのOSがRaspberry Pi OS/Liteとは云え、標準的な機能をかなり保持しており、CPU速度は定速1GHzの設定としてる。この辺りにその微妙な部分があるのかもしれないが、その要因分析を追い込めるような気はしない(多分、当方の聴き分け能力では無理かも?)。

ハードウエアプラットホームを同一条件とした場合のソフトウエアのアルゴリズムの差を検知することはこのレベルともなると相当に難しい、と改めて実感した次第。ただ、いずれもがかなり高度な音を聴かせてくれると思う。どのような使い方をするのか、いろいろな外部条件や組み合わせの機器、普段聴いている音源の種類やストリーミングサービスの内容など、それによって結局は好みを含めて最適な選択をすれば良いということだろうか。ただ、このHUBを介在させないというroon bridgeの直結構成はもし可能な環境があれば是非試してみていただきたいと思う。当方もせっかく環境を作ったので遊び倒したいと思う。

高精度のHUBを介在させると音質が改善するという情報やメーカーのノイズ低減というい宣伝文句、ユーザー事例としての報告もあるのだが、もちろんいろいろな環境条件によっても印象の差や是非はあるかもしれない。でもこれは費用も掛からないので試してみる価値はある。

roonは高機能でroon remoteの操作性も優れていると思う。一方でMPDベースのAoE Symphonic-MPDは音楽再生に必要にして充分な機能と、yaMPCという秀逸なリモコンアプリも存在しているので、単純にビハインドしている感はない。だが、だが、残念なことにAoE Symphonic-MPDもAir Playを使用しなければ密林音楽の再生はできない、、、そもそもAir Playでの再生ではAAC256に圧縮されるしハイレゾも無理なので音もへったくれもないのだ。

Tidalを選択しているユーザーならroonは鉄板だと思う。だがここは天邪鬼で行きたい。roonよ、密林をサポートしてくれ~。あるいは、密林よ、roonを買収してしまえ! (これはちょっと無茶振りかな)

(注記)
roonはLAN直結を意識した設計にはなっていないと思われる点が見つかった。roon bridgeを直結した構成ではHUB介在による伝送遅延が無くなることがひとつの要因であると推測しているが、LAN速度が高速の場合受信側がアンダーランを起こすケースがある。これは送り出し側のroonがペーシング制御を行わず(受信側の能力勘案せず)一方的に送り出すことに起因すると見ている。現在いろいろと設定を試しているが「LAN速度を100Mbps/Half Duplex」とするとこの事象は起こらずなので、この点を踏まえたチューニング要素があることを付け加えておきたい。直結の例やその際の設定情報などかなりネット検索をしたが、ほとんど情報は得られなかったので、これは貴重な経験値と思う。なお、AoEではこのような点は設定上のパラメターとして考慮されているがroonでは該当する設定はない。

(参考)LAN速度を100Mbps/Half Duplexにする設定例
ethtoolコマンドにて設定するので、「/usr/lib/systemd/system/LAN100.service」を以下の内容で新規作成する。直結用のネットワークアダプタ―の名前(ここではeth1)を指定する。作成後に「systemctl daemon-reload」、「systemctl enable LAN100」、先にリンクアップさせた上で「systemctl start LAN100」、設定の確認は「ethtool eth1」。

[Unit]
Description=Link Speed control to 100M
After=network-online.target
[Service]
Type=oneshot
User=root
ExecStart=/bin/sleep 10
ExecStart=/bin/ethtool -s eth1 speed 100 duplex half
[Install]
WantedBy=multi-user.target


                 4way MW16TX構成の設定値(2022年1月3日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
SB Acoustics
MW16TX
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 110.0 (+20.0) 93.0 (+3.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.0 +1.0 -9.0 +4.0
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.0 86.5 86.0 85.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz

140
140

710
710

4000
4000

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-48 48-24 24-flat
DF-55 DELAY
設定
cm -8.0 +19.5 -37.0 +25.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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