オーディオ日記 第54章 今は空も飛べるはず(その6)2022年9月30日


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roon2.0で思うこと:

roon2.0へのバージョンアップについて、roonがティザー(覆面)広告的にその内容や機能を明らかにしないままバージョンアップ情報を流していたので注目していたが、9月22日(日本では23日)のリリースにてその内容が判明し、正直かなりがっかりもしている。

当方はroonを普段使いとしていないので利用契約はしていないが、それでもまぁroon2.0を試してみようかということで取り敢えず一ヶ月単位の契約を行った。音楽再生アプリの月額使用料金としては、ドルベースでの料金が上がった訳ではないが、昨今の急激な円安もあって非常に高額に感じてしまう、、、のは自分だけだろうか。もちろんそれに見合う価値を見出せれば問題はないのだが。

今回のバージョンアップの事前情報として、自宅にある(NAS)音源を外出先でスマホ等から聴けるようになる、という予測はあったのだが、結果としてそのまんまでそれ以外に見るべき機能アップはない。もちろん、Tidal、Qobuz以外にもストリーミングとして密林対応を望む声も多く、当方もその一人であるのだが、大方が密林サポートに関しては悲観的な見方をしていた。しかし現実はその悲観的予測通りであった。

今回の目玉の機能(roon arcと呼ぶが何の略称か分からない、まぁ外出先から自宅へのアクセスというVPN的な機能がベースなのだが)を渇望しているユーザーがどの位の割合でいたのかは見当が付かないのだが、当節それを大々的にバージョンアップの謳い文句にする意義は当方には理解できない。ストリーミングで膨大な音源を自由自在にどこにいても(通信料の担保は必要だが)聴ける現況において、画期的あるいは魅力的とは(あくまでも当方の意識の範疇だが)思えないのだ。

roonのアドバンテージはいろいろとあると思っているのだが、日本で正式にサービスされていないTidal、Qobuzのみのサポートで、最近はQobuzについては日本からの新規加入がかなり難しくなっている。かってはVPNトンネル機能等を利用すれば加入できたのだが、現状はそれだけでははじかれてしまう。この辺りは、楽曲をストリーミングにて提供する国が限定されているという許諾権契約に絡むらしいのだが、正確なことは判らない。

肝心のストリーミングサービスの間口を広げることが今後のroonにとっても最重要課題であるはずと当方などは思うのだが、事はそう簡単ではないということだろうか。思えば、密林や林檎に関してはネットワークオーディオ機器のメジャープレーヤであるLINNもLUMINも対応できていない。一方でAuralicやSilent Angelという中国系企業は既に密林対応がなされている。かってLUMINが対応できないのは香港に拠点を置く中国系企業であるからかもしれない、と邪推してみたが、どうやらその見方は当たってはいなかったようだ。だが、この差はどこから来ているのか? いろいろと思案してみるのだがこれだという要因までは思いが至らない。

roonは一度バージョンアップをしてしまうと容易に元に戻せないので、音質面での1.8と今回の2.0の正確な比較はできないが、あまり変化したようには感じられない。(これは当方の再生環境と出力デバイスにも依存しているかもしれないのだが、まぁroon labsのCTOが自ら 違いはない と云っているくらいなので)

ただ相変わらずであるが、Bluesound Nodeのroon bridge機能を利用しての再生では良い音がしない。Nodeではroon bridge機能のみを有効にすることができず、その他の多くの機能と同居していることが原因かと思う。LUMINなどはroon bridge専用モードというものがあって、他の機能を全てオフってしまうことが可能。NODEでもroonの出力デバイスとする場合はこの専用化してしまう機能が欲しいと思う。

roonからAoE Symphonic-MPDを出力デバイスとすれば良い音となるし、ラズパイにおいてもroon bridge専用モードのアプリ( ropiee やSilent Angelの提供している VitOS for Raspi4 )を使えばかなりイケてる音になる(末尾参考)。今回の2.0の音質確認においては、この手のものは現状再テストする意義も薄いので、少し環境を変えてのテストとしてみた。

Arch Linuxにroon serverを インストール したものをコアとすれば、ROCKよりは環境制限が緩やかなのでこちらで改めて環境構築をした。出力デバイスはいくつか選択肢があるのだが、Arch Linuxに直接続したUSB DDC出力としてみた。これは一番シンプルだし、余っているElectro ArtのUDA DDCが転用できる、という安易な考え方で。(従ってRAAT経由のroon brdigeではない)

音源は自分のライブラリ音源全部を指定してしまうと、また解析やら何やらでえらく時間とパワーを消費するので、DSD音源のフォルダー部分のみを指定することとした。上記USB DDCはS/PDIF出力なので、Native DSDでは出力できないため、そこはroonのパワフルなDSP機能を享受してみようというもの。DSD音源は一旦352.8KのPCMに変換され、出力設定で規定する176.4Kへ落とされる。また、この際にパラメトリックイコライザの適用と6dBの音量アップを指定して置く。

パラメトリックイコライザに関しては必須ということではないが、roonのDSP機能として使い勝手や音も申し分ないと感じているので、今回は「小音量時のコンペンセータ機能」として利用してみようと考えた。これはパライコのON/OFFをroon remoteで簡単に切り替えられるので、通常時はオフ、夜間などの小音量時はオンにするというイメージである。夜間の試聴で実際にこのON/OFFを切替ながら聴いてみたが、案外といいね! という感じで目論見は一応成功かも。

現在、クラシック系のDSD音源をシャッフル再生しながら、この駄文を書いているが再生音は悪くないな~という感じ。だが、肝心な点は来月もこのroonの料金を支払いたいか? と考えるとどうにもその気にはならない。2.0で機能追加された部分は当方は全く使わないし相対として利用料金が高すぎるのでは、と思うのだ(現状の円安下ではroon+Tidalの月額料金の合計は案外と恐ろしいことになるのだが、これは日本という貧乏国の特殊事情と云えるのかな)。

ネットワークストリーマー機器のメーカーや音楽再生アプリの世界で、現在roonがどのようなポジションにあるのか、いろいろと考えてみているのだが、「きっとこうだろうな~」というほどの考えはまとまらない。ストリーミングについてはせめてTidalが国内において正式対応となれば良いのだが、こちらも見通せていない。roonのみならずTidalや密林、林檎も正確なユーザー数は決して公表しないので、世界的なユーザー分布も判らない。この辺りはマーケティング戦略上のマル秘事項である故か、、、

roon bridgeの機能によって、多彩な出力環境を整えられることはメリットだし、roon brdige対応の機器も実際多い。UIを含めた使い勝手については評価するオーディオファイルも多いだろうと思う。roonはそのアドバンテージをどのように生かしていくのかベストな道なのだろうか。

(参考)VitOS for RPI4については馴染みが薄いと思うので以下に使用方法を記す。是非遊んでみてくだされ。

1.導入手順
(1)ダウンロードしたものをマイクロSDカードに書いて起動
(2)iPAD等に「VitOS Manager」を別途インストールして、起動
(3)VitOS Managerからラズパイに接続して「roon bridgeのインストール」を指示
  (基本勝手に探して来てくれる)
(4)この段階で一旦、USB DDC/DACを接続しておく
(5)roon remoteからcoreに接続し、出力デバイスに現れることを確認
(6)当該デバイスを出力ゾーンとして選択して再生可能となる(USB出力)

2.環境設定
上記の導入、設定ではUSB DDC/DACへの出力となるので、HATからの出力に変更したい場合
(1)マイクロSDカードをWindows PC上で操作し、「config.txt」に適切な設定を行う
(2)VitOS for RPI4(ArchLinuxベース)へSSH接続しての作業は可能だが推奨しない

「config.txt」への追加設定例(Hifiberry Digi-Proを出力先HATとするケース)
#
# Add config.txt parameter for VitOS RPI4 Test
#
# enable HAT and specific driver (digi-pro)
dtparam=i2s=on
dtparam=i2c_arm=on
dtoverlay=hifiberry-digi-pro
# disable wifi/bluetooth
dtoverlay=disable-wifi
dtoverlay=disable-bt
# disable audio
dtparam=audio=off
# disable LAN led
dtparam=eth_led0=4
dtparam=eth_led1=4


                 4way MW16TX構成の設定値(2022年1月3日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
SB Acoustics
MW16TX
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 110.0 (+20.0) 93.0 (+3.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.0 +1.0 -9.0 +4.0
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.0 86.5 86.0 85.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz

140
140

710
710

4000
4000

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-48 48-24 24-flat
DF-55 DELAY
設定
cm -8.0 +19.5 -37.0 +25.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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