旅にて聴く音:
ようやく空が白みかけてきた頃、一斉に鳥たちが会話を始める。羊蹄の山の麓が急に騒がしくなる。余りにたくさんの種類の鳴き声があるし、すぐ近くに居る訳ではないのに声の大きさやその明瞭さに少し驚く。一体何を話しているんだろうとテントから顔を出してもまだ飛び回ってはおらず姿は見えない。ふかふかで心地良いシュラフに潜り込み直してじっと耳を傾けてみる。それぞれの鳴き声がどんな鳥のものなのか見当もつかず互いの朝の挨拶の様で何だかせわしなくも感じるのだが、山のしじまに響き渡って聞き飽きることはない。辺りがぐっと明るくなってくる頃には鳥たちの会話もひと段落していく。さてさて、コーヒーを沸かす時間となったようだ。
サーマルを見つけてその中で急な旋回を開始する時、機体を流れていく風の音が変わる。吹き上げる気流に乗って上昇を続ける音がハーモニーとなる。そこに僅かに機体の震える音が加わる。今まで大人しかった操縦桿が暴れ始める。飛びたい、上昇したい、そんな声にも思える。それを御しながら昇降計を横目でちらっと見るのだが、これに頼らずとも身体ごと持ち上げられて行くのを感じる。飛ぶこと、それは喜びでもある。
ここで聞く風の音は、セーリング時に感じるものとはまた異なる。ヨットの上では風が頬に当たり髪を持ち上げ乱す。そして掻き分けて行く波の音も案外と大きいもの。ヨットが進みたいと意思を示す方向はティラーにかかる微妙なヘルムで感じ取らねばならない。そしてそれに逆らい過ぎることなくそっとコース修正してあげるのだ。うまくブローに乗ってプレーニングを始めればハルが歓喜の声をあげてくれる。ここにもいろいろな風の音のハーモニーがある。一方で、コックピットの中では音は聞こえても風そのものとして体感することは少ない。キャノピーに開いた小さな空気口から取り入れている僅かな流れを感じるのみ。
エンジンを持たぬ機体は一定の高度まで下降してくればそれ以上飛び続けることは能わない。なおサーマルを探し続けることは無謀だし、空中に立ち止まることもできないので、このままいつまでも空に留まっている訳にはいかない。心の中では抗いつつも冷静に機体を地上に戻してあげねばならない。高度を落として着陸姿勢に入るためにダイブブレーキを出す時、それは激しく抵抗する風の音となる。いやだ、降りたくない、機体も自分の心もそう叫ぶかのように。
旅は冒険でありまた喜びでもある。今回の北海道は22日間の旅となった。前回が20日間、その前が14日間と年齢を重ねながらも少しづつ旅程が長くなってきている。学生時代には援農(今はもう死語となったが)しつつ45日間程滞在していたことを思い返せば、まだまだ短いとも云えるのだが。
そしてこの間、音楽やオーディオとは触れ合えていない。マスタークロックの電源も落として出掛けたので、帰宅後にちゃんと音楽を聴けるようになるにはしばらく時間が掛かるだろうと覚悟はしているが、音楽を聴きたいという飢餓感はやはり募るもの。一応丸24時間ほどのクロックのウォームアップの後、いつもの音楽を流し始める。
何だろう。我がオーディオからはある種小奇麗な、それなりの音は出てくる。だが、これが良い音とは最初は全く思えなかった。音楽もまたナチュラルな楽器の響きが合わさったものとは感じられずとても人工的。自然界にある音とはどうしても違う、という違和感が心を覆い尽くす。思い余って鳥の声を収録してある環境音楽を聴いてもみるが、ちょっぴり付け足したようなエコー感もあって冒頭に書いたような感動が蘇ってくることはない。
Dan Gibsonの環境音楽的な音源:(これは結構良い音源で好きなものだが)
スピーカーのエッジやダンパーがほぐれていないのか、クロックのウォームアップがまだまだ足りないのか、、、もちろん時間の経過とともに少しづつではあるがいつもの音のようには感じられ始める。つまりはこの人工的な響きに慣らされてこなければ良い音と感じることが難しいのか。
オーディオはオーディオの音として楽しめれば良いんだろうと思うし、自然にある音を完璧に再現できることはないと理解はしているのだが、改めて難しさを感じてしまった。もしかしたら、アナログオーディオを突き詰めればこのような違和感はかなり減少するのかもしれないとも思うのだが、今やデジタル中心の環境であるため最早後戻りはできない。
だが、これはおそらくはアナログやデジタルという以前の我がオーディオの課題なんだろうと思う。つまりはまだ全然オーディオの旅路の終わりには辿り着けておらずやるべきことが沢山ある、ということに過ぎない。
オーディオの音として現状の音楽を楽しめない、という訳では決してない。良い音楽に出会えればそれなり感動するし、耳タコの好きな音源も、ストリーミングから流れる新たな出会いの曲にも魅力を感じる。だが、それらは心の底から求めている音楽の音や響きとは決して同じにはなってはくれない。
どうすれば圧倒的なリアリティを得られるのだろうか。それは必ずしも大音量ではない。普通に聴くピンピンと生きた現実の音、現実の楽器の音の存在感、更には演奏そのものにあるような魂の響き。オーディオ的な音は何とか出るのかもしれないが現実の音と聞き間違うような音では決してない。我がオーディオからは現実の音は聴こえてこない。ここにはどんな差があるのだろうか、、、
良い音を求めたいのなら、そこに向かう安穏とした道はない。果てもない。ある意味でそういう厳しい面もある。だからこそオーディオは趣味としても深くまた面白い。決して到達はできないかもしれないが追い求めることを諦めれば、そこで前進する歩みは終わる。
自分がどのような構成で音楽を聴きたいのか、それを定めたならば迷いは禁物なのだろう。デジタルとアナログでは当然かなりの差異があるが、デジタルであっても選択肢の幅は広い。ストリーミングの可能性に賭けるならば、それに適した構成、環境を突き詰めることが不可欠となる。ある意味で吟味された結果の音でなければならないのだ。
それ故に自分の甘さが身に沁みる。ストリーミング音源であることを言い訳に「究極のデジタルトランスポート探し」を放置しかねない自分にも自分でちょっと腹が立ってしまう。ここまで来たのなら、来れたのなら、この先にも行けるはず。訪ね歩く細道はまだまだ続いている。どこにたどり着けるのか、それは今の自分には定かではない。だが、行かねばならぬ。
だが、何処へ? そして何を? 自らがその答えを探り出さねばならない。
「君と出会った奇跡がこの胸にあふれてる。きっと今は自由に空も飛べるはず」:
4way MW16TX構成の設定値(2022年1月3日更新)
項目 |
帯域 |
備考 |
Low |
Mid-Low |
Mid-High |
High |
使用スピーカー ユニット |
- |
Sony SUP-L11 |
SB Acoustics MW16TX |
Sony SUP-T11 |
Scan Speak D2908 |
- |
能率 能率(90dB基準相対差) |
dB |
97.0 (+7.0) |
87.5 (-2.5) |
110.0 (+20.0) |
93.0 (+3.0) |
|
DF-65の 出力設定 |
dB |
+1.0 |
+1.0 |
-9.0 |
+4.0 |
|
マスターボリューム アッテネーション |
dB |
-9.0 |
-2.0 |
-3.0 |
-0.0 |
|
パワーアンプでの GAIN調整 |
dB |
0 |
0 |
-12.0 |
-12.0 |
|
スピーカーの 想定出力レベル |
dB |
89.0 |
86.5 |
86.0 |
85.0 |
|
クロスオーバー 周波数 |
Hz |
~ 140 |
140 ~ 710 |
710 ~ 4000 |
4000 ~ |
High Pass ~ Low Pass |
スロープ特性 設定 |
dB/oct |
flat-48 |
48-48 |
48-24 |
24-flat |
|
DF-55 DELAY 設定 |
cm |
-8.0 |
+19.5 |
-37.0 |
+25.0 |
相対位置と 測定ベース |
極性 |
- |
Norm |
Norm |
Norm |
Norm |
|
DF-55 DELAY COMP (Delay自動補正) |
- |
ON |
自動補正する |
DF-55デジタル出力 (Full Level保護) |
- |
OFF |
保護しない |
|