オーディオ日記 第53章 超えてきた壁越えられぬ壁(その18)2022年5月19日


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実験の続き:

デジタルトランスポートとしてのPCに関してそこそこ長い間取り組んできたのでそれなりに経験値も蓄積された(つもり)とは思っていたが、改めて整理してみようと思うとやはり判らないことだらけ。自分として納得するような理論にも至れないし、音質向上に関してそうそう簡単に成果を挙げられる訳でもない。現実は一筋縄ではいかない、ということだろう。

心情的にはオーディオも(世の中も?)Simple is the Bestとは考えているのだが、どうもデジタルの世界はそのアプローチは必ずしも正解では無いように昨今は思えて仕方ない。電源系ノイズ対策などは一般論的にもやった方が良いだろうとは納得しているのだが、アイソレータやリクロックのお世話になっているような現状の構成を鑑みてもとてもシンプルとは云えない。

デジタルファイルの音源の処理に関しても、プロセッサーによる演算領域の話とデジタルオーディオ信号(I2SやS/PDIF)の精度の相関がもうひとつ腹落ちしない。演算処理能力がデジタルオーディオ信号の生成に関わる「精度」にどの程度関与しているのだろうか。プロセッサーに供給される電源の質が演算処理の結果に影響を与えるはずもないのだが、デジタルオーディオ信号となった途端にどうもその「脆弱性」が顔を出すようだ。

仮説としては、デジタルオーディオ信号は時系列で流れており、無垢で何ら身を守る術を持っていない?ので、あらゆる外部ファクターの影響受けてその信号精度が「劣化」する。そうだとすれば、デジタルオーディオ信号を痛めつける要因をひとつひとつ潰して行くことは必然となる。特に時間(クロック)に裏打ちされた連続する情報なので途切れることは許されず効果的に劣化の訂正を行うことも簡単ではない。クロック精度が一つのポイントであることは誰しも納得する部分でもあろう。なお、リクロックという手法もあるがそれでも完全性を担保しているとは思えない。USB信号においては「リパケッタイズ」というアクロバティックな手段もあるが、それが高精度(100%?)を保証しうるものなのか理解できていない。

あれこれと考えれば考えるほど判らなくもなる。元々音に関して感覚的なところでやってきてもいるのでデジタルオーディオの本質など分かっちゃいない、とも云えるか。だが、理論は突き詰められていなくても「経験則」というものは有用である。理論が解明されるまではこの経験則に頼るというのもあながち間違った方向ではないだろう。

古来「経験則」はいずれの場合でもそれなりに有用だとは思うのだが、これはまた本質に対する誤謬を生みやすく世間的に見れば誤った常識となってしまう危険性も常にある。オーディオについて云えば、結果は音を感覚的に捉え是非を判断することがどうしても最終となるため、そこには判断力の個人差や思い込みという不確定要因が入り込む。

今思うことは一般論として語られる常識を改めて洗い直し、右へ倣え式の判断をしてはならないんだろうということ。そのためには地道に取捨選択を重ねる必要がある、と。

さて、前回までの基本要素的な実験の中で僅かに見えてきたことがひとつあって、それはネットワーク的な要素が音質面で排除できないファクターでもある、ということ。これはサーバーPC(NAS相当)に音源ファイルを置かない構成が良かった、またフロントエンドとバックエンドのネットワーク接続は直結(ハブ介在なし)が良かった、という当方なりの判断によるもの。(ただし、これはSymphonic-MPDのAudio over Ethernetという仕組みに依存するものかもしれない)

上記の観点から言えば、ネットワークとしては他のデータがなるべく流れていない状況を作ること。そしてネットワーク速度は遅いより早い方が有利とも考えられる。たが、経験則としてはLAN速度は低速(1Gよりも100M)の方がベターという認識もあるのだ。音源データ(デジタルオーディオ信号となる前)の伝送は必要にして充分な速度でバックエンドに供給されていればそれで音が変わるはずは無い、という感覚も未だあるのだが、その辺りを検証してみたくなった。

LAN速度を変える方法はいくつかあって、OS上のツールによる設定で落とすことも可能なのだが、ここを敢えて直結しているフロントエンド、バックエンド間に100Mのハブを突っ込む、という本来は全く無意味かつ野蛮な方法を取ってみた。フロント、バックいずれのネットワークアダプターも1G対応のものだが、オートネゴシエーションによって自動的に速度が落とされる。(かって、Giga bit対応ハブよりも100M対応のみのハブの方がベターという伝説?もあったことを思い出しつつ。またハブは多段で接続した方が良いという意見もあった)

だが結果は、、、何と100M対応のハブを突っ込んだ時の方が落ち着きがあって好ましく感じる(ただし力感は後退かも)のだ。このハブはフロントエンドとバックエンドにしか接続していないので他の余分なパケットは基本流れない。1Gの直結よりも100Mハブの介在の方が? 何で? 敢えて理屈を付ければ、バックエンドが受け取るデータが低速度であることによってより負荷の平準化がなされるから、という程度しか思いつかない。

ハブにおいてはStore and Forward方式でデータを中継するので、ほんの僅かながら伝送ディレイも発生するだろう。元々音楽データの伝送量はさして大きくないのでハイレゾであっても100Mの速度があれば足りる。これは速度だけの問題か? それともハブにおけるこのStore and Forwardの影響か。

昨今LANケーブルの光対応が流行っているのだが、伝送データ的にコンピュータ間の受け渡しと見ればそこには差がないはず。一般論としてはメタルのLANケーブルでは「何らかのノイズ?」が伝播してしまう、という説。これも一理あるとは思うのだが、メディアコンバータという「機器が介在」しているということもまた事実。これは何らかの緩衝域が介在することによる影響(あるいは効果)とは考えられないだろうか。メディアコンバータの内部処理に詳しい訳ではないが基本はハブと同じような機能であろう。とすれば、メタルや光という素材の部分もあるのだろうけれど、前述の緩衝域の効果もあるのかも。それ故にメディアコンバータ性能にも依存する? つまるところ、ここでもSimple is the Bestは成り立っていないし、今回のこの実験でもとてもシンプルとは云えない(ある意味お馬鹿な構成でもある)。

かって、お高いハブが登場してきた時に、ネットワーク上の経路にはなくても構成に入れるだけで音が良くなる、とも云われていた。それに関しては実感は無いのだが、今回の構成の実験は何だかそれに近いような気もする。だが、挿入したハブは極普通の廉価なもの。ここでも頭で考えた理論と実地(これが経験則となるかは?だが)は一致しない。

当方の(頭の固い)オーディオ的常識では余分な機器など介在させない方がベターなはずなのだが、、、もちろんその差は「気のせい」とも云えるレベルなのかもしれないし、余分な雑念が正しい評価を妨げているのかもしれない。ある種単純な変化なのか、本当に音質向上になっているのか更に聴き込む必要があろう。従って現時点ではこれがひとつの成果、とまでは云い切れないのだが、ある条件下における経験則として心に留めておく必要がある。

この先はデジタルオーディオ信号部分にも切り込んでみたいのだが、既にリクロック、マスタークロックなど(機器としては決してベストなものではないが)手を付けている。USBにもリパケッタイズする仕組みを取り入れている。単純に機器を交換したり、構成を変えれば音は変わるのだろうが何が本質なのか自分では納得していない。オーディオの音には理屈は必要ないのかもしれないが、、、


                 4way MW16TX構成の設定値(2022年3月10日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
SB Acoustics
MW16TX
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 110.0 (+20.0) 93.0 (+3.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.0 +1.0 -9.0 +4.0
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.0 86.5 86.0 85.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz

140
140

560
560

3150
4000

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-18 48-48 48-24 24-flat
DF-55 DELAY
設定
cm -8.0 +19.5 -37.0 +25.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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