オーディオ日記 第52章 目指す頂は見えてきたか(その9)2021年9月2日


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再会

密林を掻き分けるようにしながら数多の音楽との再会を続けている。音楽に係わる自分史をたどれば、また自分の来し方も朧気にではあるが見えてくる。音楽事始めとして、初めてLPを買ったのは「サウンドオブミュージック」のサウンドトラック盤で中1の時。この頃のLPの価格は当時の自分の金銭感覚からしてかなりの値段なので鮮明に覚えているのだが、映画に大いに感動した(目覚めた?)ことも記憶に生々しい。もちろん今でも好きな映画の上位ランクインでもある。だが、この段階ではまだ音楽を聴ける喜びであってそれを再生する装置云々というところまで開眼はしていなかった。

オーディオというものの魔力を感じて装置にある種の理想を持つようになったのは高2の時に衝撃的な出会いをしたThe Beatles、「Abbey Road」であることは既に何回か書いた。これは音楽と装置(これを聴いたのがJBL OLYMPUSとMcintoshという組み合わせであったことがやはり大きい)という両輪が回り始めたタイミングでもあったんだろうと思う。高2ということは17歳、その時の鮮烈な印象を引き摺って、それから既に半世紀を超える時間が流れていったことになる。アナログディスクからCDへ、そしてファイル音源へと音楽媒体の姿が遷り変わっていき、現状はストリーミングという僅か数年前であればあまり実感できていなかったような環境、世界へと切り替わった。

アナログプレーヤはCDプレーヤ(CDトランスポート)へ、そしてPCへと装置も姿形を変えた。さらに一旦は終着駅かも?と思われたラズパイへと辿り着いたのだが、これも主たる再生環境が「ネットワークストリーマ―」という機器へと急速にシフトして行っている状況にある。

一つの要因として思うことは、音楽の方がより比重が高い、ということなんだろうか。装置は確かに音源なければ只の箱、という見方もできる。だが素敵な音楽をより良い音(と環境)で聴きたいという根源的な欲求に変化があった訳ではない。あるいは現状のネットワークストリーマ―機器であっても音楽を聴く上で装置としての決定的な不満要素は意外にも少ない、ということなんだろうか。

社会人一年目でふと買った一枚のアナログディスクに自分としてはかなり異色なのだが「Mari Trini」というスペインの女性歌手のものがある。声はちょっと独特で表現は難しいのだがハスキーなシュガーボイスと云えば良いのだろうか。少なくとも日本人的な感覚での女声を期待しうるものではない。だが、この声と曲の雰囲気が痛く気に入って大事に聴いてきた。(アルバムタイトルは「Canta en Frances」というもの)

CD時代になって、この方のCDが発売されぬものかと期待したのだが日本ではマイナーな歌手なので叶わず、アナログディスクからデジタルリッピングしてファイル音源としてはみたが長年聴き続けたこともあって傷やノイズの影響からは逃れられず少々残念な思いもあった。と、そこへふと天啓とも思われる声が響く「密林を探してみよ!」

どうかな~という懐疑心が無かった訳ではないが、検索してみた。スペインでは70年代を中心に結構人気があった方のようで案外とアルバムが多い。もちろんお目当てのアルバムもあった。素敵である。間違いなく素敵な歌声。心に染み入る。そして内心の期待以上に音も良い。これに勢いを得て他のアルバムも聴いてみる。やはり好きな歌手であることに変わりはなく、今に至るまで未知であった曲にも感激する。ライブアルバムもある。最早感涙、、、、

このようなこともあって更に密林探索に拍車が掛かっている。汲めども尽きぬ泉のようでもあり、一人掘り起こせば、また記憶の糸が次へのインスピレーションというか、確かこんな人もいたよな、という想いでアーティストや曲を漁る。かって聴いた記憶があっても二度と巡り会えないと思っていたような曲にも再会できる。それによって登録されたプレイリストもどんどん増えていく。あまりにも急速に量が増えるのでどのような体系で管理していけば良いのか、その整備が追い付かないのが悩みでもあるのだが、今はとにかくプレイリストに一旦登録してまた忘れ去ってしまわぬようにするのが急務かと考えている。コロナ禍で外出を控えめにしていることも一役買っているのだが、とにかく音楽を聴いている時間が長くなっているこの頃でもある。

オーディオを趣味とする中で「装置 VS 音源」という課題は常に付いて回る。超絶的な装置も一つの選択であるし、お気に入りの音源を理想通り、ベストに鳴らすことの醍醐味、またそのアプローチも重要であると思う。だが、自分にとっては半ば過去であった音楽を次々と聴いていく中で、微細な音質の差は「音源の差」に吸収されていってしまう。好みの音楽が自分の現在のシステムと相性が良ければさらに幸せでもある。

要は中身としての音楽が肝であってオーディオ装置はツールである。もちろん自分が納得するクオリティーが確保された普遍的な音が再生できる装置でなければならないことは論を待たないのだが。そのようなことをつらつらと考え、突き詰めていくと「もう装置への散財は終わり」にしてもしても良いのかも、ということがちらちらと頭の中に見えてくる。いや、理想は追求したいんだ、まだ究極ではない、という心の声も聞こえる。だが、半世紀近くあれこれやってきて頂に辿り着けたと思えないオーディオにこの先(老い先短い身で)劇的に良くなるようなことを夢想するのはあまり現実的でもない。

もちろん僅かでも向上させたいという気持ちには変わりはないし、あの世には残高は繰り越せないことにも気付いた今、何かを我慢をすることも無いのだが、ここまでやってきた装置で「音楽を楽しめる」ということが何よりも重要なことではないだろうか。機器弄りもPC弄りも楽しい。だからそれは続ければ良い。ちゃんとブラッシュアップすればプラシーボとは云い切れない結果も伴ってくる。

だが、自己満足を求めて永遠の無いものねだりをすることについてはそろそろ自らを戒める必要があるのかも。もしかしたらストリーミング再生(という新たな環境)がそれを気付かせてくれたのかもしれない。


                 4way MW16TX構成の設定暫定値(2021年6月23日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
SB Acoustics
MW16TX
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 110.0 (+20.0) 93.0 (+3.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +0.7 +0.7 -10.5 +4.7
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -3.0 -3.0 -5.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 88.7 85.2 83.5 80.7
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz

200
200

800
800

3550
4000

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-96 48-48 48-24 24-flat
DF-55 DELAY
設定
cm -10.0 +28.0 -37.0 +27.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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