オーディオ日記 第51章 行く道は果て無く(その17)2021年5月27日


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低域を考えてみる:

一般的な人間の可聴帯域は20KHz程度まで(加齢によって時には10KHzを下回ることも)と云われているが、ほとんどの楽器の基音は4KHz程度まで。さらに音楽をかたち作る重要な帯域、エネルギー量の大きいところとなればせいぜい1KHzちょっとくらいまでであろうか。

そして人間が「低域」と捉える音の範囲はせいぜい20Hz~200Hzあるいは250Hz程度。だが、この帯域の重要性、そして再現の難しさ(スピーカーユニットを含めた機器の全体能力、ならびに音響空間である部屋への依存度という点で)はオーディオファイルであれば日々痛感するところではないだろうか。

我が家の全般的な音についてその改善、成熟の歩みがあまりにも遅いながらも僅かづつ纏まりを見せて来てはいるものの、やはりこの「低域」の再生についてあれこれと策を考えざるを得ない。まだまだ理想には遠いものと云えるだろう。

だが、低域のスピーカーユニットの再生能力そのものについては、我が家の音楽再生空間の容積を考えれば必要にして十分な量のエネルギーを供給してくれていると思う。また、集合住宅故に20Hz~40Hzを強烈に放射できるような仕掛けを求めている訳でもない。周波特性について測定上特段の問題も無くおそらく現状を大きく凌駕するようなユニットにはなかなか出会えないだろう。

だがその「質」については、客観的なメジャメントは難しくもあるのだが、より練り上げてみたいと思う。そして、200Hz前後から1KHzを担当する中低域ユニットとの連携も重要なファクターとなる。この二つのユニットが部屋という制約の中でうまくコラボレーションしてくれれば我が家の音も存外にブラッシュアップできるのではないか、、、そこそこには聴けるとは思いつつも、そのような邪な考えがこのところ頭を去らない。より厚みがあって太い中低域にするために、中低域ユニットのサイズアップ(6.5インチから7.5インチへ)も考えてみてはいるものの、現状の6.5インチユニットの音はすこぶる快調で、この軽快さとキレを失うことがあれば本末転倒となってしまう。

そんな、もやもやっとした思いが続くので、改めて何か良いアイデアがないものか無い頭を捻ってみた。目標とするのは、

1.ボトムエンドはシャープに、140~200Hz辺りの充実度も保つ。
2.中低域ユニットの明晰で反応の良い音を保つ。

で、方法論としては単純に配置見直しから音響調整グッズの導入、イコライザ等による補正などがすぐ浮かぶのではあるが、これらの対応には「よし、やろう!」という気力が満ちて来ない、、、

結局、これに向けて思いが至ったのは、低域ユニットのスロープ(遮断)特性。現状は160Hz、-24dB/octである。一般論的には-24dB/octで充分かつ遜色のない繋がりと音が出せると思うのだが、過去により急峻な-96dB/octを試して一時それを採用していたことがあった。当時は全ユニットを同じ遮断特性で統一すべし、というイメージが自分の中にあったため、4wayのユニット全てを-96dB/octのスロープ特性としていたが、こうしてしまうと非常にクリーンな音のイメージが得られるのだが、その反面音の溶け合いやしなやかさ、音楽的な楽しさが今一歩かも、ということでしばらく継続していたのだがこれを-24dB/octに戻してしまった経緯がある。

今回のアイデアは「低域のユニットのみを-96dB/oct」としたらどうなるだろうか? というもの。これ自体はデジタルチャンデバでなければ試行が難しいものでもあるのだが、とりあえず現状の-24dB/octと-96dB/octの周波数測定を実施してみた。ここから見て取れるのは、-24dB/octではやはり案外と上の方の周波数までレスポンスが残っているということ。低域ユニットと中低域ユニットの音が理想論的に混じり合えば良いのだが、それがうまくいかなければ却って部屋の影響を受けて音の混濁感につながる可能性もあることは否定できない。

中低域ユニットの低域側は-48dB/octとしてみた。それ以外は従来通り-24dB/octである。うん、確かに全体としてすっきりとした感じとなるが低域の力感自体は失われていないようである。中低域ユニットが醸し出す鮮度感も上々。ただし、クロスオーバー周波数が160Hzのままでは大分低すぎる感じなので、ここを徐々に上げていった。

やはり最低でも200Hzにしないと音の厚みについてはダメであろうと感じる。だがさらに224Hz、250Hzと上げてみて、音楽のふくよかさにポイントを置けば250Hzのクロスオーバー周波数が意外にも心地よく感じる。また、低域ユニットが中低域ユニットに「被ってしまう」という感じも急峻なスロープ特性にしているお陰か思ったよりはかなり減少しており、エコー感や空気感、S/Nについての悪化もほぼ感じられない。実際のところのこの点が存外の効果をあげているのかもしれない。

中低域のユニットも250Hz~1KHz辺りの受け持ちレンジであればむしろ動作が楽(低歪の領域を使えるし、振幅も小さくて済む)というメリットも想定できそう。課題は音の溶け合いや音楽の充実度ということになると思うのだが、低音楽器の明晰度やマッシブ感もそこそこ。ボーカルにおける低い方の声の領域も若干すっきり感はあるものの厚みもあって悪くない。高域方向にも特段のマイナス要素は今のところ無さそう。

低い方の二つのユニットの干渉度合いが少ないことの恩恵なのか、部屋の影響もやや小さくなるように思えて響き全体の違和感は無い。最終的にはどこにクロスオーバー周波数を設定するかでまだまだ評価は変わる可能性があるが、この低域ユニットのみ急峻なスロープ特性を適用するのも現状では「あり」という結論である。

もちろん、急峻なスロープ特性にするということは位相の回転が激しくなるというデメリットも考えられる。だが、低域のみに使用するということであれば、元々低域については位相回転の感知能力は低い訳だし、位相が回転した音は急峻なスロープによってほとんど出てこない、ということもある。いずれにしても得失があることなので、しばらくは今回の設定と従来の設定でどちらがより自分にとってしっくりとくるのか、見極めていこうと思う。


                 4way MW16TX構成の設定暫定値(2021年5月27日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
SB Acoustics
MW16TX
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 110.0 (+20.0) 93.0 (+3.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +0.7 +0.7 -10.5 +4.7
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -3.0 -3.0 -5.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 88.7 85.2 83.5 80.7
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

250
250

1000
1000

3550
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-96 48-24 24-24 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -10.0 +28.0 -37.0 +27.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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